完璧すぎて逆に不気味
観音は、勉強も決して嫌いじゃなかった。保育園に通ってる間にはもうすでに小学校二年生レベルのカリキュラムはこなしてて、私が聞いたこともない国の国旗まで当たり前のように言い当ててた。
しかもとても楽しそうにするんだ。算数の問題だってそれこそパズルでも解くみたいにね。
実際、当時の彼女にとって勉強はあくまで遊びの一つだったみたいだね。
もちろん、彼女よりもっとできる子は他にもいたけど、それでも十分にすごいことだと思う。
いわゆる<美形>とまでは言わなくても笑顔がとても可愛らしくて見た目にも愛嬌があって、心優しくて、自分より他人を優先することができて、しかもそれが、無理してとかじゃなく我慢してとかじゃなく本当に平然とできて、その上さらに好き嫌いひとつないってなったら、確かに完璧すぎて逆に不気味だと思う。食べ物の好き嫌い程度の欠点があった方が、人間味があるくらいかもしれない。
何しろ彼女には、驕り高ぶった部分さえないんだ。本当に完璧すぎる。
完璧すぎる存在を前にすると、人間って、逆に不安になったりするんだって私も知ったよ。
だから観音に好き嫌いがあると分かった時には、驚くと同時に、なんだかホッとした気もした。ああ、彼女も人間なんだなって。
それが嘘偽らざる気持ち。
だからそれでよかったんだろうな。
『好き嫌いとかあったら将来困る』って言う人もいるかもしれないけど、自分の才能や能力や家柄や財力を鼻にかけて他人を見下して、ってするような人がいいの?
ホームヘルパーやシッターを余裕で雇えるそれなりに裕福な家庭に生まれて、勉強ができて、しかもそれを鼻に掛けず、心優しくて思いやりがあって、好き嫌いひとつない完璧な人間なんて、この世にどれだけいるの?
テレビとかで見かけるいわゆる<セレブな人達>って、完璧な人達? 正直、私にはそうは思えない。むしろ、何かというと他人と衝突したり、特に一部の人達は、暴言を吐いたり威圧したりして誰かを傷付けてるって印象しかないんだけどな。
観音はね、『誰かを傷付けようとする』ってことをしないんだ。誰かを意図的に攻撃しないんだよ。
今じゃ勉強もさすがに十人並みだし、容姿もまあ、見た目だけでモテるタイプとは言い難いとしても、バイト先でも<真面目>って評価で、信頼もされてる。
ミス一つしないわけじゃなくても、ミスをした時にはちゃんと謝罪してリカバリーもするんだよ。
『そんなの当たり前だろ!』って言うかもしれないけど、その<当たり前>をやらない人も、少なくないよね。
こんな<いい子>の観音なんだから、むしろ<好き嫌いがあるっていう欠点>があった方が可愛げもあると思うんだけどな。




