だけど人間って不思議なもので
だけど人間って不思議なもので、と言うか欲深なもので、付き合う前には『付き合えるだけで満足』とか思っていたはずなのに、いざ実際に付き合い始めてみると、もっと自分のために尽くして欲しいみたいな、自分の感性に合わせて欲しいみたいな、の都合に合わせて欲しいみたいな、そういう気持ちが湧いてきちゃったりするんだよね。
で、付き合う前や付き合い始めたばかりの頃は気にならなかった部分が気になりだしたりして、そしてそれが自分の思い通りにならなかったら、
『自分に合わせてくれない相手が悪い!』
とか言って相手の所為にして自分を被害者にしてなんとか自分の思い通りにさせようとしたりするんだよね。本当に性質が悪い。
私はそういうの嫌だったから、なるべく自分を粉飾するようなことはしないようにと心掛けてた。
彼のことも、極力、美化しないようにとは心がけてるつもりだったかな。加えて、観音の前でもさ。
もちろん、人としての最低限の礼儀は守ろうとは思ってたけどさ。
そうしているうちに、観音とますます仲良くできてきてね。
幼い頃から観音は、利口な子だったと思う。すごく子供らしくあどけない様子も見せながらも、同時に、周りの大人の様子をすごくよく見てて、いい子でいようとしていた部分もあったと思う。
でもだからといって何かすごく無理をしている印象はなかった。ただ彼女は彼女のままで普通にしてるだけで<優しくていい子>だなっていう印象があったと思う。
ただ、その一方で、好き嫌いは多かったな。
しかもその好き嫌いも、子供がよく嫌うピーマンは全然平気で、それどころかゴーヤだって平気で食べて、なのにいかにも子供が好きそうな甘いチョコレートやケーキは、好きじゃなかった。それどころか甘いもの全般が好きじゃなかったみたい。だからもちろん、アンコとかも。
フルーツみたいな、酸っぱさの中に甘味があるものは好きだけど、ただただ甘いだけの物っていうのはお気に召さなかったってことかな。
普通そうやって子供が好き嫌いしていたら多くの親は治そうとするんだろうけど、ダンナは、彼女の父親は、ヘルパーさんやシッターさんに、無理に好き嫌いを直させようとはしなかった。その理由は、
「観音はすごくいい子なんだ。優しくて思いやりがあって、他人を傷付けることを望まない。自分よりも他人を優先することができる、素晴らしい子なんだ。でも、だからこそ、この上さらに好き嫌いまでなかったら、逆に完璧すぎる。完璧すぎる人間というのはむしろ歪なんだと思う」
なんだって。
でも、今なら彼の言ってたことも分かる気がする。




