第11話:冒険者登録③
お姉さんに案内されたのは水晶だけ置いてある小さな部屋だった。
「この水晶に手を置いて魔力を込めると、その人のステータスが分かるんだ。さあ少年、まずは手を置いてみてくれ」
ギルド長が顔に笑みを浮かべて急かしてきたので水晶へと手を伸ばした。手を置こうとすると次第に水晶がカタカタと震え始める。
俺の手が近づくにつれて段々と水晶の揺れが激しくなっていき、今にも割れてしまいそうだ。
「これ、大丈夫なの?」
「恐らくは、な。まだ手に魔力は込めていないよな?」
「一切込めてない。だけど……」
しかし、俺の手が水晶に触れるかどうか、といった距離まで近づくと、とうとう耐えきれなくなったのか、水晶はパリンという音をあげて粉々に砕け散った。
「「「……」」」
室内に重い沈黙が広がった。
二人が、砕け散った水晶の破片と俺の顔を何度も見比べている。
一方俺は、どうして水晶が砕け散ったのか考えていた。
神力を感じたから?でも神力はほぼ感じ取られないようにしている。魔力は込めていないし……うーん。
(Answer,私が、不自然に見えない様に水晶を破壊しておきました。)
全知全能かよ。
でも、なんで水晶を破壊する必要があるんだ?
(Answer,この水晶を調べた所、ステータスが隠蔽されているか調べられる機能がありました。ステータスの隠蔽が知られると、本当のステータスの開示を求められるのではないでしょうか?)
あー、確かにそれは問題だな。もし追及されたら、あっさり本当のステータスを公開する自信がある。俺そういうの直ぐに言っちゃうタイプだし。
俺が一人で納得している中、この沈黙を破ったのはお姉さんだった。
「ギルド長。新しい水晶を用意しますか?」
「……いや、その必要はない。この少年の実力が俺の見立て以上だったってことさ。それにステータスはあくまで数字に過ぎない。その実力を発揮できるかどうかは、模擬戦をするうえで確かめればいいさ」
「わかりました。それでは競技場に案内致しますね」
お姉さんは微笑みを浮かべながらこの部屋の隣にあった競技場へと案内してくれた。
ふぅ~、ギルド長から特に追求されなくて一安心した。さすがにあんなステータス見せられないからな。
「さあ、模擬戦をするか。この競技場では回復魔法の結界が張られているから死にはしない。だから全力を出してかかってこい……と言いたいところなんだが、正直即死した場合絶対に死なないとは言い切れないから少し手加減してくれ」
「わかったよ」
「ところで少年の武器が見当たらないが……」
そういえば闘う為の武器がいるな。今回は体術をする訳ではないから、素手で闘う訳にもいかないし。
どんな武器がいいのだろう。やはりギルド長が持っているような剣が主流か?
かっこいいのがいいな……と思い、俺は《収納》から適当に剣を出し、《鑑定》する。
名前:神剣ディスクレリ
性能:《光魔法SS+》
称号:創造神が300年かけて見た目にこだわって創った剣
え、この剣300年もかけて作ってたの?そういえば一時期かっこいい武器を使っている勇者に憧れて使いもしない武器を量産していた記憶がある。もはや黒歴史だな、今考えると。
取り敢えずこの剣はダメだ。ギルド長を即死させてしまう。もう少し手加減できる剣がいいな。
俺は神剣を《収納》で元に戻し、他の剣を探す。
名前:《未設定》
性能:《手加減SS+》
称号:創造神が暇潰しに適当に創った剣
お、これなら充分手加減できそうだ。この剣を使うか。
そしてギルド長の方に向きあうと、ギルド長は唖然としていた。
「い、今どこから剣を取り出したんだ……?」
「え?普通に《収納》を使って……」
「ちょっと待て。少年は剣士だったんじゃないのか?」
「一応魔法も使えるけど……」
「ということは、魔法剣士か!?しかもなんだ、その《収納》っていうのは。俺の知る限りでは初めて聞いたぞ、そんな魔法」
「え?知らないの?」
「何か出す時は基本アイテムボックスを使うからな。しかも、アイテムボックスは値段が高いから殆どの冒険者が持っていないさ」
「へぇ~レアなんだね」
「少年は全然知らないんだな。というかその剣、なかなかヤバそうな雰囲気を出していないか?……少年が最初に出した剣には、最早神々しさを感じたが」
まあ神剣だからな。
「多分大丈夫だよ。この剣には《手加減SS+》が付与されてるから」
「その剣には魔法付与もされているのか?《手加減SS+》っていうのは少し複雑だが……すごいな、魔法付与もできる鍛冶屋ってあんまり多くないんだけどな」
本当は俺が適当に創っただけなんだが。それを言うのもなんだと思ったので、黙っておいた。
俺は剣を構える。といっても、剣なんて使ったことが無いので、ギルド長の剣の構え方の見よう見まねだ。
「少年、大丈夫か?完全に剣の持ち方が素人のそれなんだが」
ギルド長は少し呆れている。
「大丈夫。やってみれば分かるって」
「そうか……なら遠慮なく行かせて頂こう!」
ギルド長が剣を構えたままこちらを目掛けて走ってくる。
見た目に反して足早いな、ギルド長。そこは伊達にギルド長をやっていないってことか。
だが見えない訳ではない。
それに……この剣が勝手に誘導してくれる。
俺の体が自然と動き、ギルド長の背後へと瞬時に回った。
そして驚いているギルド長の肩をバシッと剣で叩く。
これでも《手加減SS+》が付与されているが、叩かれたギルド長は崩れ落ちた。さすがに神が創った剣には耐えられなかったようだ。
しかしギルド長は結界の効果で直ぐに痛みが引いた様で、しばらくすると立ち上がり、豪快な笑みを浮かべて肩を叩いてきた。
「すごいなぁ、少年。こんな逸材が出てくるとは思わなかったさ。よし、これで少年の実力がよくわかったぞ」
そう言いながらギルド長は競技場の出口へと向かう。
「あ、ギルド長、まだ終わりじゃないですよ。アインさんは魔法剣士なので魔法の試験があります」
「ああ、そういえばそうだったな。ま、俺も見ていくか。少年の魔法も少し気になるしな」
ギルド長が目をキラキラさせてこちらを見てくる。そんなに期待に満ちた目で見られても困るな。
「魔法の試験では、あの人形に使用可能な属性の魔法を全てぶつけてもらいます。その威力の違いを見て、その人の最も得意な属性を調べる感じですね」
「なるほど、それじゃあどれぐらいの威力の魔法をぶつければいいの?」
「初級魔法で大丈夫ですよ。まずは火魔法ですね」
(火球)
俺が心の中で唱えると、俺の身長を二回り上回るぐらいの大きな炎が人形を丸焦げにしたが、結界の効果で直ぐに元通りになった。
「えっと……本当に初級ですか?」
「普通の《火球》だけど……」
「魔法まですごいのか!さすがだな、少年!」
またギルド長が俺の肩をバシバシ叩いてくる。
これが地味に痛いんだよな……
ともかく、そうして俺は初級魔法を次々とぶっ放していき、全属性の魔法を終わらせた。
「うーん。アインさんには弱点と言える弱点がありませんね」
「ま、いいんじゃないか?全然自重できないオールラウンダーとして活躍すればいいし」
これでも自重できてるつもりなんだけど。
「よし、俺もいいもの見れたし戻るか。あ、少年は俺に勝ったってことでDランクスタートだ。他の冒険者に何か言われたら俺の名前出しとけ。そうすれば恐らく黙るから。あ、俺の名前はステザリフな」
「Dランクっていうのは?」
「ああ、それはな、実は冒険者ギルドでは実力によってランク付けされていて……ってこれは受付嬢の仕事だな。詳しくは後で受付に行けば教えてくれるさ。じゃあな」
そして俺はギルド長と別れた後、お姉さんに誘導され、受付へと向かった。
閲覧、ありがとうございました。
続きが気になった方は是非ブクマや評価、お願いします!




