第10話:冒険者登録②
今回は、冒頭が受付嬢視点で、途中からアイン視点に切り替わります。
ストラの冒険者ギルドの受付嬢であるモナは、今日もいつもの様に微笑みを浮かべて受付に立っている。
もちろん、ただの営業スマイルだ。
もう慣れたもので、冒険者に何を言われようとも大抵動揺せずにずっと微笑みを浮かべられる。
するとギルドのドアがカチャリと開いた。入ってきたのは、白銀色のさらさらな髪、翡翠色の大きな目をした男の子、いわゆる美少年だった。
そんな少年がこんな酒臭いギルドに何の用だろう。モナは少し疑問に思いながらも笑顔を崩さず、立っていた。
少年が受付までくると、その服の豪華さに少し驚いた……が、直ぐに元の笑顔を浮かべてなるべく優しい声色で少年に声をかける。
「こんにちは。何か依頼でもあるのかな?」
その服の豪華さからして、恐らく貴族だろう。貴族なら何か依頼をする為にギルドに来たのだろうか。
「冒険者登録をしたいんだけど……」
「えっと、ボクは何歳かな?」
「9歳ぐらいだけど……もしかして登録できない?」
9歳ぐらいという発言に自分の年齢すらもわからないのか、と思ったが、考えても無駄だと思い、また微笑みを浮かべる。
「冒険者ギルドに年齢制限は無いけど、試験を受ける必要があるからボクには……」
「ああ、そういうことか。それなら大丈夫だから。試験を受けさせてもらうよ」
さすがのモナも、これには少し心配した。
試験ではさすがに殺されはしないものの、試験官が高ランク冒険者だった場合は結構ボコボコにされる。この少年は耐えられるだろうか?
すると、少年のことを見て笑っている冒険者がいた。
「ガハハ。こんなガキが冒険者だって?無理だよ、無理。ゴブリンに殺られるのがオチだろうよ」
これはギルドの試験前の恒例行事だ。
弱そうな外見の冒険者は酒に酔っぱらった冒険者に絡まれる。ここは黙っておくのが最適解だ。
するとラガーの言葉に怒ったのか、少年がラガーを睨み付けた。だが所詮は子供が睨んだ程度の可愛いものだ。
ラガーは酒癖はあまり良くないものの、Cランク冒険者だ。そんな程度の睨みでビビりはしない。
むしろラガーが怒って少年に手を出すのではないだろうかーー誰もがそんなことを想像し、アインのことを心配した時、ラガーの口から「ヒイッ!」と小さな声が漏れ、椅子から転げ落ち、尻餅をついた。
その様子を見た他の冒険者達は、子供相手に何をビビっているのだと笑っていた。
これにはモナも思わず吹き出しそうになったが、その場にギルド長であるステザリフがいることに気づき、笑いを堪える。
そこでモナはステザリフが目を見開いていることに気が付いた。ステザリフの目線の先にいるのは……あの少年だ。
元Sランク冒険者であるステザリフが目を見開く様な人物ーーすなわちそれはステザリフですら驚く何かを持っている人物。
あの少年は何を持っているんだろう……モナは、興味深げに少年を観察する。
「……で、試験はいつ受けられるの?」
唐突に少年から声をかけられた。思わず声が上擦ってしまう。
「あっ、すみませんでした。試験でしたらこちらの紙に必要事項を書いて頂き、直ぐに受けることが出来ます」
「じゃあ今日試験を受けさせてもらうよ」
「今日……ですか?わかりました。ではこちらに必要事項をご記入下さい。代筆は入りますか?」
「いらないよ、自分で書けるから」
そう言って少年はサラサラと紙に書いていく。一度も止まること無く書き終えると、少年はペンを置いた。
「では、確認させて頂きますね」
そして少年が書いた紙を見る。
紙には、とても9歳が書いたとは思えないキレイな字が書かれてあった。紙に目を通していると、ある項目を見て眉をひそめる。
それは戦闘スタイルの欄だ。魔法にも、剣術にも丸がついているのだ。
魔法も剣術も使える、いわゆる魔法剣士はいるにはいるのだが、どちらも中途半端な冒険者が多く、大抵は大成しない。
それでも魔法剣士として登録するのか。チラリと少年の顔色を伺うが、特に何も変化しないので構わないのだろう。
さらに次の魔法適正の項目を見てモナは固まった。見間違いかと思い、思わず目を擦る。
すると、そんな様子を見かねた少年ーーアインが心配そうに「大丈夫?」と聞いてくる。
「え、ええ、大丈夫よ。それと、アインくん、この紙に書いたことに偽りは無い、よね?」
「全部本当のことだけど……」
モナは開いた口が塞がらなかった。
何故ならそこには、
「全属性の魔法が使用可能」と書かれていたからだ。
全属性の魔法を使えるだなんて、今の時代、賢者様くらいしか聞いたことがない。
光か闇以外の属性なら全て使える冒険者というのは稀にいるけれど、どの属性も使える冒険者だなんて初めて聞いた。
このアインという少年はとんでもない大物かもしれない……とモナは考える。
まだ試験をしていないので本当かどうかはわからないが、これならステザリフが驚いた理由にも説明がつく。
そして一通り目を通したモナは微笑みながらアインに試験の説明をする。
「試験は実力測定試験、そして実技試験があります。実力測定試験はレベルや魔力量、スキルなどの基本的なステータスを測るために行われるもので、実技試験は、その人が本当に冒険者として活動できるか試す為に現役冒険者の方と闘っていただくものです。そうですね、今回アインくんに闘って頂くのは……」
「俺が相手をしよう」
モナが驚いて声の方を見ると、そこにはステザリフが立っていた。
「ギルド長!」
「今回この少年の相手は俺がする。勿論死なれない様に手加減するさ。さあ、この少年も待っていることだし、早く試験を行おう」
嬉々として言うステザリフにモナは困惑し、ステザリフにこっそりと聞いてみる。
「本当に、良いんですか?」
「いいんだよ。むしろ俺が殺されそうだ。本気をださないとな」
そう言ってステザリフは腕まくりをした。
モナは、そういえばギルド長は戦闘狂だったな……と思いだして納得し、また微笑みを浮かべる。
そして、アインとステザリフを試験会場へと案内した。
☆
ようやく静かになった。
何やら受付にいるお姉さんがこちらを凝視している気がするのだが気のせいか?
「……で、試験はいつ受けられるの?」
「あっ、すみませんでした。試験でしたらこちらの紙に必要事項を書いて頂き、直ぐに受けることが出来ます」
「じゃあ今日試験を受けさせてもらうよ」
「今日……ですか?わかりました。ではこちらに必要事項をご記入下さい。代筆は入りますか?」
「いらないよ、自分で書けるから」
俺はお姉さんからペンを貰い、紙に記入していく。特に引っ掛かるような項目は無かったので直ぐに書き終わり、ペンを置いた。
「では、確認させて頂きますね」
お姉さんが紙に目を通していると、眉をひそめた。
何か変なことを書いたのかもしれない。全く身に覚えはないが。
さらに次の項目を見てお姉さんが固まった。そして何度も目を擦り始める。目にごみが入ったのだろうか。
「大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫よ。それと、アインくん、この紙に書いたことに偽りは無い、よね?」
「全部本当のことだけど……」
本当に思いあたる節がない。
お姉さんは諦めた様な表情をした後、微笑みながら試験の説明をしてくれた。
「試験は実力測定試験、そして実技試験があります。実力測定試験はレベルや魔力量、スキルなどの基本的なステータスを測るために行われるもので、実技試験は、その人が本当に冒険者として活動できるか試す為に現役冒険者の方と闘っていただくものです。そうですね、今回アインくんに闘って頂くのは……」
「俺が相手をしよう」
声の元は、お姉さんの後ろにいるおっさんだ。
誰だ、このおっさん。
見た目はどこにでもいるおっさんだが、強者の匂いがする。
「ギルド長!」
ギルド長だと?通りで強者の匂いがするはずだ。
でも何故ギルド長がわざわざ試験の相手をするんだろう?
俺が不思議に思っていると、
「今回この少年の相手は俺がする。勿論死なれない様に手加減するさ。さあ、この少年も待っていることだし、早く試験を行おう」とおっさんは嬉々として喋った。
お姉さんはギルド長に何やら耳打ちした後、また微笑みを浮かべる。
その後、俺はお姉さんに連れられてギルド長と共に試験会場へと向かった。
……何故かおっさんが妙にはりきっていた。
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