立早のRPG③
『誕生した神様は何をするか判らないまま、その命を散らしてしまった』
どっかのパソコンの
どっかのメモ帳に書かれている。
そうだ。
「何をしているんだ、俺」
強い無力感に陥った。
成長が見えないことはとても苦しかった。いくら頑張っても、レベルアップ音が鳴らない。
少しだけ始めた時は楽しかったんだ。だが、途中で石ころに躓いただけで投げ出したものが多かった。
「世界がRPGなら良かったんだ。死んでも平気で、諦めなければ強くなれる」
必死にやってる成長物語のように人間がそうできていたら良かった。
友達が勝手にできる運命の方が良かった。勝手に強くなって、困難を乗り越えられたら良かった。
現実は理不尽だ。勝手にいい事が起こりはしない。このワンルーム以外は全て理不尽だった。
「疲れた。死のうかな」
死のうかなという台詞。何回目かな?覚えられないほど言って、言っただけ。
自分が求める成長の欲求を何かで満たし続けた。己の成長を全て、仮想で誤魔化し続けた。
強くなきゃいけないことを別のところに置いて来た。
「お前は死ぬんだ」
「!?」
「翌日、お前は自分の全てに復讐するため、列車に飛び込む」
「どこから言っている!?誰かいるのか!?」
「そりゃそうだな。もう生きていたって何もねぇもん。俺…………現実は辛かったもんな」
「誰だよ!?」
「けどな。こんな俺だって、勇気出して友達を裏切ったんだ。自分を裏切ってまで、世界を救えたんだ。酷いかもしれねぇけどな」
「さっきから何かが聞こえるな!かーちゃん!?ねーちゃん!?違うよな……俺に似ている声」
「偶然手にした力は俺が強くなったわけじゃない。報われないかもしれねぇし、続かないかもしれない。それでも、強くなるには偶然だけじゃダメなんだ!少しでも親を助ける気持ちを持てよ!」
言いたい事だけ自分に言って、声は消えていった。
別にこれが事件の引き金というわけではない。もう過去に言ってきただけだ。
成仏はした。
ジャニー・立早。死亡。
少しだけ自分が落ちこぼれ共と違い、力の夢を見れて。強さとは何かを見て来た。少しだけ仲間も生まれた。別れも味わった。世界も救ってきた。
満足に、かつて自分の作りたかった物を味わえた。
時は立早が死んだことすら忘れそうな時期まで遡った。彼の復讐はまだ裁判という形で残っているが、多くの人は彼がなんなのかを忘れていた。
「死んだ人間、47830人。ぶっ壊れた異世界、7つ。生存者3名」
広嶋はいつもの喫茶店でアシズムに結果の報告をしていた。
「結局、"自己投影"はシナリオ通りに自滅したのかい?」
「ああ。そこに居合わせたわけじゃないが、あいつの話だとそうらしい。ひでぇーよな。友達と装って裏切って、決死の覚悟にさせるなんてよ。仲間とかやっぱクズだわ」
「……広嶋くんが言うと様になるね」
広嶋はお茶を飲みながらアシズムに中身までしっかりと報告する。
「不死身のルーチンがなくとも、"自己投影"が勝つ事もありえた。なにせ俺も"自己投影"の世界を壊すだけでボロボロになったし、万の人数がいてもあれだけのHPと膨大な魔力が残っていた。じっくり戦えば逆だったな……。ま、俺が"自己投影"だったらの話だがな」
能力の相性しかり、それを操る能力者の力量も現れるものだ。
「そう考えれば立早がやったことは英雄もんだ。明智光秀と並べるんじゃねぇーか?」
「なるほど、彼が早死にするわけだ」
生き残った者が勝つという意味で広嶋が"自己投影"に勝ったと言える。しかし、トドメは刺していない。
「うるせー。少し気にしてんだよ、言うんじゃねぇ、死にてぇのか、アシズム」
「そうなの?」
「結構、俺にはこのパターンが多いんだよ。まったくよ。ミムラやのんが聞いたら弄りだすだろ」
"自己投影"の話はもうこれで終わり。
問題はもう一つの方だった。
「ところで生き残り2人の処遇はどうしたんだ?いきなり、こっちに引っ張るから何が起きたか俺が掴めないだろ」
「希望するとおりにさせたが……彼女は東京にいるよ。なんでも君と一緒にいる方が楽しいと言っていたからね。連れの彼、テンバーと言ったかな。彼は元の異世界に帰してあげたよ。商人になりたいというからそれだけの地位を与えてね」
アシズムの神様染みたアッサリとした紹介。"自己投影"が隣にいたら、神様はこういう奴だと言ってやろうと思う広嶋。まぁ、事実そうだけどよ。
「どうすんだ?」
「仕留め損ねたのは君だろ?君が全てにおいて責任を取りたまえ」
「いや、お前なら連れてきた時点で仕留められただろ?」
「殺すのは君だって、自分から言っていただろ?」
アシズムの言葉に広嶋はお茶を飲み干してから
「めんどくせぇのをまた抱えるかもしんねぇのかよ」
「平穏と平和が私達のやり方でもあるさ。最後まで頑張りたまえ」
アシズムは彼女の居場所が書かれた紙を広嶋に渡した。




