立早のRPG①
『う、うぐぅっ』
体の再生が遅い。また、再生できてもHPの回復ができない。
『ここは我の居場所なんだ』
広嶋によって解体された"自己投影"はゆっくりと壊れた世界を直そうと体を賢明に動かした。しかし、思いのほか歩く事が大変だった。中々前に進まない。
白い糸が絡み付いてくる。
『な、なんだ?』
「あら~。どこにお逃げなさるのかしら?」
"自己投影"が出くわしたのは最悪のシィエラ。"無駄名努力"の糸がもうすでに体に絡み付いていた。
才能を占めている"自己投影"には効力は少ないものの身動きがとれない。
シィエラは広嶋のおかげで大分休め、多少ながら"無駄名努力"を発動できる状態まで回復した。
「ここはもうあなたの世界じゃない。だから、あなたは死ぬべきなの」
『死?』
動きが鈍ったとはいえ、彼女に告げられる死など怖くはなかった。もっと怖い者と戦った"自己投影"はこの状況下でも認めない。
『我に死などありえんわ!我が神だからだ!!』
「ふ~ん。けど」
与えられた才能は削るのには時間が掛かったが、必死かつ命をかけて集めた物には強く、シィエラの力が反応していった。
「どちらもあなたが決められることじゃないわ」
『!ぶぅっ!うぐううぅぅっ』
突如、"自己投影"の黒い腹が膨れ上がっていく。それを抑えようとするも、抵抗むなしく押し返される。
『で、出るな!死体のデータ共!暴れるなぁ!げぇっ』
「あなたが必死に集めたNPC。全部返してもらうわ」
シィエラの糸が"自己投影"を引き裂き、黒い煙が一気に噴出した。シィエラも、テンバーも、広嶋も一瞬に飲み込むほどの黒い煙だった。
黒い煙は徐々に形を変えて人の形へと変わっていく。色が少し影に包まれているもののシィエラが出会った事のある人々がそこにはいた。
「パンパンくん、川城さんも、あの機械もいるのね」
「オォ~」
「どうやら私達は奴の体の中にいたようだね」
体の中から飛び出した全てのNPC達。
『ぐうぅっ。戻れ貴様等。戻れ!』
「無駄ね。私の能力でそーゆうの、無理にしてる」
"自己投影"が次に対峙したのは自分が取り込んだはずの世界だった。
「あ、チート装備になってる!」
「体ヲ完全ニ取リ戻シタ」
「私もです。完全に力を取り戻した」
俺も、僕も、私も、と。一気に本来の姿となった全員はあれほどの仕打ちをした"自己投影"に牙を向けようとした。自分が殺してきた者達とはいえ、これだけの数がいっぺんに来たら勝ち目なんてない。心からすでに負けていた。
"自己投影"は絶望色の瞳になりそうだった時。
「待て!」
奴に殺されたはずの立早が、"自己投影"を庇うようにみんなの前に立ち塞がった。
「もう止めてくれ!」
この世界のヒーローが舞い降りた瞬間だった。
数えられないほどの人間達が敵と憎んでいても、ただ1人だけ庇える俺。
「殺さないでくれ!許してくれ!」
『た、立早』
俺にはこいつしかいなかったから。裏切られて、自分も裏切って。
裏切って分かった。俺、裏切るなんてできねぇ。そんな卑怯な事、本当はできなかったんだ。
力がない今だから俺は言える。
超、弱ぇっ。
「お願いだ!もう!」
だから、ほんの少しでもどちらにも償えるように行動してみた。大切な者を救えて、みんなが救われる手段を選んだ。
「これ以上、俺の友を虐めないでくれ!」
言葉はハッキリと伝えた。しかし、その後。立早は後悔すら感じられずに二度目の死を遂げる。
頭を撃ち抜かれて"自己投影"の回復も間に合わない即死となった。




