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ファインプレイ


あれが悪い。これができない。

残酷はいつでも転がっている。



"自己投影"の能力を手に入れたのはジャニー・立早であるが、こいつが生まれたきっかけは全ての生命体が持った希望や願いの残酷だった。

願いとは見えない何かに頼むこと。それ即ち、人間が空想をしている神様。

願いの残酷達が結集して作られた能力が"自己投影"。



『神は世界を統べるんだ。世界を纏める支配が幸福を……』



己の支配を伸ばそうと立早から離脱し、能力だけで暴走している。

しかし、こいつは支配と言葉を使うが、支配を実行する術はないだろう。NPCという役割だけを置いた存在に全てを変えるつもりだ。

幸福なレールを走る人生列車に人間達が乗り込む形。

残酷に砕かれた者達にとっては幸福であろう。しかし、残酷に砕かれてもその残酷を乗り越えて得た成功者達は望むか?Noだろう。

希望を己で勝ち取った者と、希望を己で勝ち取れぬ者は違う。



『悪魔め!我に立ち塞がるな!』

「その気はねぇよ。テメェに希望があるなら、俺を殺してみろよ」



"自己投影"は自分の世界を広げるべく、死闘を何度も試みる。しかし、この悪魔の前では残酷に返り討ち。

幾度も解体され、あらゆる攻撃を様々な形で防御される。



『くぉっ……。なんだ、こいつ。意味がわかんねぇ強さ……』



狂っている。この神の野望はここから始まるというのに、なんでこんな化け物が第一歩目に現れる。信じられない。残酷の象徴にして悪魔。夢と野望を消し去る最低野郎。



『ぅっ!』



いつも浮かぶ希望にはすぐ、巨大な絶望が待っている。それが現実。つまり、こいつは現実。悪魔は現実。現実は悪魔。希望を刈り取るのは現実。ここで殺せ。我が殺せ。我が殺せ。


『殺す、殺す』


殺せ、殺せ、殺せ。この悪魔を殺せ。現実を殺せ。幾度、体が捥がれても殺せ。神の希望を殺す悪魔は殺す。ここで殺す。今、殺す。



「決心できた感情を剥き出しにすんな。どーせお前じゃ無理だ」



己の世界が広がる事が我が希望。

己の世界が広がるからこそ投影。


『神が望んでいる!悪魔め!邪魔をするなぁ!』



死を何百も味わって、気合と使命を手にした"自己投影"。不死身の体に備わると少々面倒だ。

広嶋との死闘は広嶋が死ぬまで戦うつもりとなった"自己投影"。また広嶋も、この化け物をこれ以上を生かしてはおけない。ここで奴が死ぬまで戦うつもりだ。

超強力な防御 VS 超強力な回復。単独で世界を滅ぼすことができる二人が、破壊とは違う方向に力を傾けた時、気合や理論などとは無縁の泥戦闘となる。

お互いが命を狙いながら、命を取られないようにする。これで終わりだ!なんて、トドメの言葉は永久に使われない。




「長くなるな」



広嶋は"自己投影"を難なく傷つけながら言葉を漏らした。

果てしないHPを一撃で0にすることはできない。無論、ザラキもハサミギロチンもない。あっても効かないだろう。

崩すべきは"自己投影"の回復システム。奴が立早を葬った時のように最大HPを削るという行為ができれば"自己投影"も殺せる。しかし、広嶋にはそーゆう細かいことはできない。

彼が考えるのはゲームシステムから考えることではなく、より単純な戦闘から答えを出そうとしていた。






「やばいな」


自称神様と通称悪魔の戦闘をとても遠くから感じているテンバーがいた。

握り締めているのはもう死んだ立早の本である。



「実力は五分か、広嶋がその上をいっているかだが」



テンバーの不安は自分の能力から察する結末。



「広嶋の本は作れる。しかし、名も分からない敵の本は作れない。あれは立早じゃないな。私じゃ広嶋の援護はできない」



"歴史偉人本"はテンバーが最後のページまで読むことで対象者を殺すことができる。予知のような形で起こる死であるが、広嶋にそれが作れて"自己投影"に作れないことはこの先の結末を示している。

こういった使い方もできるのだ。

だからといって、諦めるわけにはいかない。



「クソ!どうすれば広嶋が勝つ!?もう私くらいしか生き残りはいないぞ!」



ここで生まれた夢がある。NPCになるのはごめんだ。

必死に自分のできることを網羅するテンバー。考えた結果、消さずに残しておいた立早の本を読む。



「くそ」



こんな低俗な小説は読みたくはないと思いながら、立早の過去を知るために本の間をテキトーに開いた。

"歴史偉人本"をどんどん遡って読めば対象者の忘れた過去も知る事ができる。

いくらお互い死なないといっても、死に遠いのは"自己投影"の方だとテンバーは察している。情報がなければいけない。だから、立早の本はそのまま残しておいた。



「?なんだ?」



テンバーのファインプレイ。そして、自分がファインプレイをした事を今になって自覚。



「ページ数が増えている?馬鹿な!立早は完全に死んだはずだ!?」



空白のページが数ページ続いてから、テンバーに届く向こう側の世界からのメッセージ。メッセージ内容に驚きながら読み進む。特に登場人物に驚いている。



「立早だけじゃない!X76、川城、……パンパンも……!?どーゆうことだ!?なんで立早の本の続きに彼等が現れる!?」



また、驚きの声は別の者を呼び寄せた。



「あ、あら~……。立早のNPCかと思ったら、あなたね」

「!シ、シィエラ。生きていたのか!」



自分の能力を見られて嫌な顔を見せるテンバー。遭遇したのは立早との戦いで疲労していたシィエラ。



「面白そうな本を読んでるじゃない」

「!お前には見せないぞ」

「うふふふ、なら死ぬ?弱った私を殺せるかしら?」


テンバーは能力の性質から露見は嫌っていた。しかし、もうこっち側の生き残りが3人しかいないことは分かっている。なんで自分が入れたかが不思議なくらいだ。嫌いだが付き合いもう終わればない。はず。



「どこからか情報を取得する能力かしら?」

「そんなところだ!いいか、お前は読むな!あとで教えてやる!そのままジッとしていろ!」


わずかな希望が書かれた未来のページを緊張しながらテンバーは読んでいく。この世界じゃないところで何かがあるのだ。




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