ぼくのかんがえたゆうしゃ②
『立ち合う剣士と同じ装備で剣士となった神様。その腕を少年剣士に見せつけようと、自信が顔に溢れていた』
勝負はまさに時間が決めていた。
『しかし、神様として剣を闘うために握ったことは一度もなかった。一方、少年とはいえ彼は剣を握っている時間があった』
「!っ」
立早の剣はパンパンの横を掠めた。こうして斬り込んだことはこれが初めて、どう戦えばいいのかよく分かっていなかった。一方でパンパンは立早の世界で必死に頑張って、戦って今まで生きてきた。
『少年剣士は神様の剣を先読みし、軽やかに避け、胴を決めたのだった』
「やあぁぁっ!」
わずかであれ、戦っていた時間がパンパンを勝たせた。
綺麗な音が響いて立早に一撃を浴びせたのだった。
『神様から剣士となった神様。自ら下落に向かった神様は、一回の敗北=絶対の死の宣告によって、二度と神様に戻ることなく命を終えたのであった』
「あ?」
決して体は痛くはなかった。
しかし、立早の心がこの時に折れた。
「か、か、か」
たった一撃とはいえ、これが川城やシィエラの一撃であれば体が吹っ飛んで、HPの回復をしなければいけない事態になっていた。
強い奴にしか攻撃はもらわないと思っていた。
「神様が下賎の者に……」
こんなに弱い奴に傷を付けられたという屈辱は怒りではなく、自分への失望を生み出した。
林檎が真っ二つに割られるように、馬鹿な頭が割れた。
「神が神が神が!!神が!!俺は神が!うががああ!あうぅ!神が傷つくだと!?神が、ただの凡人に負けるだと!?」
自尊心がとても些細な事で砕かれた。
自分が神であると自負し、やった事がない事でも可能だという虚位の自信に踊り、見事に敗北してこの狂いっぷりである。
「強いのは俺だ!俺が神様だ!神が人間に、人間に一本を取られるなんて、ありえない!!アリエナイ!!」
テンバーは本を閉じていた。
死が迎に来るのは少し後になるようだ。
「神は人の上に立つ者!人は下ぁぁぁ!!下ぁぁぁ!!」
シィエラには"自己投影"の真実が判った。
想像力や思想を自在に叶えるような能力だが、他者から与えられたイメージなどによって、立早の心が変化すれば変化した側に強く能力と精神が反映される。
「天才や神様は脆いのね……」
不屈の魂を心に決めれば不死身のように立ち上がり。
浪漫を抱き、一人だからできるカッコイイ台詞&ポーズを恥ずかしがる事もなく行えたり。
エロイ妄想をしたら、過剰に反応するように。
疑問を抱くと、その疑問に長く嵌ったり。
負けたという事実が決まれば、その負けが消えるまで引き摺っていく。
使用し続け、"自己投影"の中毒に陥った。
負けはただの負け。僅差だろうが、大差だろうが、大敗だろうが、負けでしかない。
「神は!!負けない!!」
能力が、腕力が、権力が、単純なる力があるというだけでは強いとは限らない。
また、諦めないことも強さとは言えない。
未確定。
「人間に!ただの凡人に!なに一つとて神が劣って良い訳がないぃぃぃっ!!」
立早はその能力が優れているだけであり、強さという点においては誰よりも劣る。どれだけ凄まじいステータスを誇り、操作できたとしても、彼にはそれらを扱える器量がまるでない。
パンパンは混乱している立早を注意しつつ、ボロボロのシィエラに手を貸した。
「に、逃げた方がいいよね」
「今はそうして欲しいわ。立早があーなっても、倒すまでには時間と多くの力がいるわ」
魔力がまた戻ってくれば戦える。
今はパンパンに甘えようとするシィエラ。
少しずつ混乱する立早から距離をとる。無事にパンパンはシィエラを救えると感じた。
「神がぁぁっ!」
だが、立早にとっても、パンパンにとっても、シィエラにとっても、テンバーにとっても。誤算が起こった。
『お前は用済みだ』
「へっぅ!?」
"自己投影"の防衛機能。
能力者の危機から救おうとしたその力は確かに正しく機能した。
立早の周りに一度彼を包み込んだあの黒い手が出現し、立早を飲んだ。
「うぐうぅっ、は、離せぇぇっ!」
常に立早の横に表示されていたモニター。その欄のHP、MP、攻撃力、防御力のパラメータが急速に下向していく。ただのダメージだけでなく、最大HPまで削り取ることで立早の自動の全回復を封殺する黒い手。"自己投影"の根源だからこそ成せるダメージ手段。
『もう世界は我が造り出す』
「や、止めろ!このままじゃ、俺が死ぬ!死ぬから!神様が死ぬなんて!」
『お前は神様じゃない。ジャニー・立早だろ?』
立早のHPは0に達した。
『神様なのは我しかおらん』




