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私が頑張るとみんな死んじゃいますわ  作者: 孤独
VSシィエラ編
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努力を否定する努力家

「し、シィエラ・レイストルがこの世界から消えました!間違いなく、この世界からいなくなりました!」


彼女が存在しなくなった世界は祝砲が上げられた。

この世界の人々は嬉しい悲鳴を上げた。



「か、解放されたんだ!」

「やった!やったぞ!自由を手にしたんだ!」

「良かった。本当に良かった……みんな救われる」

「邪神が消えたんだ!」



同じ人間だというのに死んで良かった。消えて良かったという奴は確かにいる。

彼女がいるせいで非情なる猛毒は消えることがなかったからだ。だから、世界にいる人間全てがシィエラを殺したかったのだ。

世界から嫌われ、世界を滅ぼした毒が立早の世界にばら撒かれた。

神様は立早なのか、それとも"女神と邪神の二人羽織"と呼ばれるシィエラなのか。雌雄を決する。




「"陸困華"(りくこんか)」



"禁勉"と"陸困華"。

シィエラが本気になった時、見せる戦闘形態。元いた世界を滅ぼすに匹敵する大惨事を引き起こした。

全てを無力化して薙ぎ払う鞭"禁勉"。

そして、蠱惑な匂いと清潔な白を持つ花"陸困華"。

シィエラの足元から突然と花がいくつも咲いていき、白い花粉を吐き出し始める。



「ちょ、ちょっと待て!ヤバイんだが」



立早は二つの攻撃に目が追いついていない。

まずは襲い掛かってくる"禁勉"に対応しなければシィエラに近づけない。

川城を捨て駒にしシィエラから距離をとりつつ、鞭を見切れるところまで逃げだした。



「なんなんだ、あの女!?とんでもない棘がある美女なんだが!危ないだろ!鞭いてぇ、舐めてた!」



立早の救いはシィエラが近距離戦だけの戦士ではなかったこと。

川城との戦いでは反撃のチャンスすら見出せず、何千回と殺されて出た答えが自爆だった。遠距離での戦いならば、即死を除いて反撃不能の攻撃はまずない。



「どうするマイソウル!奴を倒せる必殺技はないのか!?」



妙にはしゃいだ声を出す立早。

数キロも離れて障害物もあれば、シィエラからは立早が映らない。一方、立早からはこの世界の創造主であるため、シィエラのある程度の位置は掴むことはできた。

戦闘というより、戦争の間合いに近い。



「こ、この距離ならばもしかして」



カッコイイポーズを決めながら、カッコイイ決め台詞を声に出し、カッコイイ技を放つことができるんじゃないのか?

やってみたいじゃん。でも隙だらけで途中で攻撃されたらかっこ悪いし、なによりカッコイイ技が相手に直撃するよりも先に相手がその……。俺を恥ずかしい奴だと見られたら嫌じゃん?見られない方が興奮するだろ。

そう。こんな風に!



「行くぞ!」



そう言って立早は無駄に魔法陣を地面に造り出した。演出にも拘り始める辺り、まだシィエラを舐めてかかっている。スロースターターな一面。

両目を閉じ、いかにもこれから魔法を放ちますよっと合図する構え。

右手は左胸、心臓の位置。左手は見えないワイングラスを天に向けているようだ。




「血を洗いし夜月、破壊行うは焔の太陽、交わりと共に破滅に導け」



何コイツ?急に喋りだしたんだけど。



ゆっくりと左手の小指から順々に、中に巻き込むように動いていく。見えないワイングラスは、立早の創造力によるとヒビが入り始めているようだ。ワイングラスがあってもなくても、何をしているのか意味が分からないポーズである。これをカッコイイと思える謎の美的感覚。



「さぁっ!創生の名を生み出すため、全てを無に変えよ!!」



ちょっとさ。勘弁してくんない。読むのが凄い辛いんですけど。こんなに辛い小説読んだの久々すぎるんだけど。何してんの、コイツ?



「"壱弐星座天子による・神話朗読"(エンジェル・リチュエート)」



神話どころか黒歴史だろ!!



誰かの叫びとは対照的に、立早の呼び起こしたのは天変地異と異常気象。

地震とは違い、地面全体が本当に生きているように動く。遠く離れた人間達も標的となっており、地面の揺れで足を止める者達を喰らうよう情報を組み込まれていた。



「な、何事だ!?」

「じ、地面が水のように動いて俺達を飲もうとしているぞ!」



地面の動きは自然の法則にあらず。

また、空の様子も変わっていき、大雪と共に雷までも降り注いだ。雷が木を焼けば火は止まることなく、地面に油でもひかれていたように瞬く間に広がっていく。

あのふざけた詠唱からは想像もつかない壊滅を即座に生み出した立早。



「お前の鞭、よくわかんねぇ花!チンケな攻撃なんて俺の思想で全て壊してやる!」



"壊滅"という言葉をこの世界で表現する。

立早が想像できる範囲で引き起こす。誰でも作り出す事よりも破壊することができる。紙に書いた誤字や落書きを消すためにある、本物の消しゴムが空からゆっくりと落ちていく。

それはあらゆる存在を消してくる魔法の消しゴムであった。接触したものを消し去る能力を携えている。シィエラの"禁勉"が現れた魔法の消しゴムを強く打ち込んだが、お互い似た能力を持つためか、単純な力量が勝負を決め、"禁勉"が弾き飛ばされる。



「ふはははははははは!どんな攻撃も通じない!なぜなら、俺の今さっき考えた最強だ!鞭で叩き落とせるわけがないだろう!」



日常的で平凡的な壊滅を表現できる立早。天気の移り変わり、地形の変動。ぼくのかんがえたさいきょーぶきのような、発想力。

一方、壊滅という言葉を別の意味で捉えているのがシィエラである。

否定を込めて、現実肯定。

努力の根本を削り取る空間領域の拡大。

シィエラが作り上げた白い花は綺麗な開花の後、黒ずんでいきながら枯れ始める。



「一度枯れた花は」



見えない汚染。

花が枯れることで周囲にある努力は無駄になったことを証明している。

また、花は枯れる前にいくつも種をばら撒き、空間をゆっくりと広げていく。シィエラの意志がなくとも、自動で繁殖してしまう。



「二度と咲かないの」



花の近くにいれば逃げ出すこともできない。

どれだけ努力をしても、何をしていても、シィエラ以外の存在の為すことは上手くいかない。永久に理想という幸せに到達できない場。多くを人生という拷問に吊るし上げた最悪の花。



シィエラと立早。

ぶつかるのはお互いの矛であり、"絶対"が"絶対"になるという制約。

シィエラは多くの希望である努力を、立早は幸福を生み出す創造力を基点に生み出された力。

二つの衝撃はあらゆる小細工を吹き飛ばした。

偽りの雲、雪、火、風さえもなくなり、見ることでしか感じ取れない。また、見たということは二つの力の余波を知らずに浴びているということ。



「お、俺の攻撃が押されている!?」



隕石の如く落ちてくる巨大消しゴムの落下スピードは徐々に落ちて行く。立早はその現実に心が揺らいだ。

"陸困華"によってどれだけの犠牲が生まれたか。世界中をどん底に陥れ、自らの居場所を失った。



「あなたは馬鹿なのにズルイわね」



シィエラは努力を否定する能力を持つが、

神様である立早と戦えるほどの力は多くの人間の努力を無下にしてきたからこそ、辿り着いている。

しかし、努力の理想系。スタートからゴールまで一本道の手法。



「だから、負けられないわ」



己の努力が正しいと判断できる多くが、他者の努力を否定することである。どれだけの量をこなし、どれほどの質をこなしたか。スタートラインの差など圧倒すること。他者の努力など遊びだと笑ってやることが自らの努力ではなかろうか?

彼女の力を批判する者、彼女の力に屈する者。その多くは


お前等が努力不足だから。

喚いてんじゃねぇよ。虫けら。目に映るだけで虫唾が走る。

虫を踏んで何が悪い。お前等も虫を踏むだろ。そんな感情なのよ。



「私の求めた力は、あなたのような人間の努力を」




ぶっ壊すためにある。


「それを信じて努力してたんだから」



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