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私が頑張るとみんな死んじゃいますわ  作者: 孤独
VSシィエラ編
36/57

それは夢。頑張りは報われないのが、当たり前だった。

敵を見失っても戦い続ける。

強さが生み出すのは嬉しい結果だけではなかった。



「は、はは」



まだ、シィエラがここに辿り着く少し前のこと。

立早は顔面だけ復元させていた。


「ひ、人を。……この俺を殴りながら」


川城に改めて恐怖を覚えた。

ここまで命を使い切って死んだ奴を初めて知った。これが川城の強さをよく現していた。



「死にやがった」



石像のように川城は拳を振りぬいたまま、心臓を止めていた。

強化される能力を持っているが、もう体が耐えられなかった。攻撃を繰り出す度に体が悲鳴と亀裂を生み、本人も知らぬ間に死んでいた。

だが、死んでもなお川城は永久に戦い続けていた。



『俺は家族の下に行くんだ!』



死を知りたくない。絶望を知りたくない。そして、偽物の希望にも触れることを拒否しているかのようだった。

立早を永久に倒す事ができず、自分の限界にも気付けない精神世界を自分で作り出して、そこで戦い続ける。



『殺すまで殺す!立早ぁぁぁぁっ!』



自分が作り出す妻と子供がいたら、きっと偽者だと気付いてしまう。

それに川城が気付いた時。立ち直れない絶望が襲うことだろう。

幻影の中。家族の下へ辿り着くため、永久に彷徨うファンタジー。立早にも作れない悪夢に向かった川城であった。





つまり。



「もう終わった」



シィエラの言葉に答える川城は、川城ではなかった。

彼の能力を備え、彼を操ることができる。



「あなた」



立早の駒であった。

シィエラの言葉に答えた瞬間。彼は風のようにシィエラに飛んでいった。

強さに反する騙まし討ち。しかし、強さを手にしている者の騙まし討ちは正義である。

立早の体を幾度も殺してきた拳が



「負けたのね」



シィエラの発している糸に絡めとられて動くことができなかった。

生気を感じさせない瞳。体があっても、魂が感じられない姿勢。

立早の騙まし討ちに反応できたのは川城を信頼しつつも、信用していなかったことだ。彼が殺されている可能性も頭の隅にあったからだ。



「負け犬は消えなさい」



抵抗力を全て奪い取る糸が川城の体をつつんでいく。

全角度から包丁の切れ込むが入れられるように体に傷ができる。

ゆっくりとその切れ込みは深くなっていき、やがて切り落とす結末になる。

白い糸が赤く染まっていく。



「!あら、何かしら?このゴミ」



川城を葬った少し先に現れ始めたものをシィエラは見ていた。しかし、そこに意識がいったのは少しの間だけ。



「よ、ようやく。体が戻ったぞ」



立早が散りとなった状態から胴体まで復元することに成功。

彼の復元が遅れていたのは別の作業に力を入れていた。



「次はシィエラ・レイストルか」



HPが0にならなければ倒されることはない。しかも、HPは常に全回復してくる。

それに加え、自分を追い詰めた川城のHPを回復させられるとしたら。死亡から復活させることができるとしたら



「なんであんた、生き返ってるの?」



立早よりも早く復元していったのは川城であった。最大HPが立早も低いからこそ、復活までの時間も短い。

攻撃力、防御力、素早さが一級品。

ラスボス手前に出てくる雑魚キャラにしては強すぎて、厄介な奴だった。

心がない分、折れることはありえない。

回復と不屈という害悪を兼ね備えている。無敵というよりキリがないと表現できる。

擬似的な不死の成功を証明し、高笑いを始める立早。



「ふははははは!こーやって、何度でも蘇生して俺がこの男を倒した!終わりのない回復!蘇生を繰り返す化け物だ!」



川城を倒したことで、シィエラに対しても強気になれた。

それだけ川城が味方についたというのは大きいし、死んでもすぐに復活させられる。



「HP100000000000000に、ダメージを即座に回復できる魔法を持つ俺は誰にも倒せない!やはり俺は神様!不倒な存在!」



シィエラには立早の言葉の半分以上が



「あなたの頭って意味分からないんですけど」



シィエラの元いた世界にHPなんてモノは存在しない。また、回復という言葉も耳障り。

川城と立早を相手にすることには恐怖はなかった。

誰であれ、シィエラにとって敵などいないのかもしれない。強すぎるのだ。



「"禁勉"(きんべん)」



シィエラの右手に現れたのは自分の糸状にした魔力の束。太く、長く、強靭であり、糸ではなく。彼女に相応しいとも言える鞭であった。

弱者を甚振るにはもっとも適した武器。手にすれば誰が下か上かの区別が分かる。

鞭全体がシィエラの魔力ならば体の一部といっても良い。



「あ?今更鞭だと?無知じゃねぇの?それで俺に勝てると?本当の神様である俺に鞭が」



シャレを言っている間に、シィエラは鞭を振り回した。

鞭といっても、その長さは数メートルではなく。数キロに及ぶ射程距離がある。立早はそれほど長い武器を見ても勝てるという自信がシィエラの攻撃が始まるまで確かにあった。

浮き沈みの激しいメンタリティー。

シィエラの鞭が地面を激しく叩けば粉塵と地割れを生み出し、木は綺麗に切り落とされ、水は瞬時に蒸発するのだった。

鞭の動きは、川城が避けられるのが精一杯のスピード。立早にいたっては何度も厳しい鞭が叩きこまれた。

あらゆる防御と抵抗を無力化して叩き込む鞭の威力は川城の攻撃に匹敵する。



「逝きなさい」



鞭が作り出すシィエラの舞いは立早の世界が大きく揺れ動くほど、巨大な攻撃であった。

しかし、それだけで終わるシィエラではない。




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