川城の教え子②
いつからだったか。
継続という言葉が嫌いとなり、できなくなった。
努力という言葉も信じられない。
なぜなら、現実は継続や努力で変わるほど甘くはない。
金、才能、人脈、運、環境。
「はは」
なんで俺は神様に選ばれてないんだ。
酷いだろ。人生って酷いだろ?
もし、俺が神様だったら。全ての人間の努力が報われることを願う。そーゆう世界にしたい。
RPGのようにギリギリで倒せる困難があり、その困難に対してどんなに時間を費やしてもいいように困難を打ち砕ける仲間や環境をちゃんと用意したい。
成功できるというルートを確実に作りたい。
「ははは」
今、人間の困難は俺の世界から逃げ出したいということ。
神様を殺したい。
神様は死にたくはない。死ぬわけにはいかない。
むしろ、なんでこんな理想な循環をぶっ壊す?頑張って報われる世界は現実ではありえないんだぞ。
人間の理不尽め。わがままめ。
「うーーっ」
「?」
物は物なり。
「べ、勉強になった」
「!」
憧れた。強いっていいね。羨ましい。そして気付けた。
「あんたの強さが」
俺が求めていたのは。
攻撃力カンスト、防御力カンスト、魔力カンスト、HPカンスト、世界を一撃で滅ぼせる禁断魔法とかじゃねぇんだ。指標じゃない。
お前みたいな、圧倒的な絶望に対して心が折れないどころか、絶望を弾き飛ばす希望を持つ。
「分かった」
典型的ヒーローがそーゆう奴。
「川城昇」
現実を乗り越えようとする奴。
「俺のために死ね」
立早に大逆転の秘策は………。特になかった。
ただのかっこつけ。
当たり前である。立早は圧倒的なステータスを所有しているだけで、戦闘経験などは限りなく0。そんな奴が百戦錬磨を誇る川城に勝てるはずがない。
むしろ、何千回死ねば理解できるの?というほどだ。
だが、川城は立早の立ち上がりに何かを感じ取った。それはまだ立早に自分を殺す術が残されているという予測もあったからだ。
「ふ」
予測が現実になろうが、奇跡を起こそうが。起きた時点で川城は負ける。
少しだけ手を緩めたことを反省し、暴力を剥き出しにした。
現状。押されているのは明らかに立早であったが、現時点での優位は未だに立早であった。
削る事が困難なHPに加え、禁断に等しい全回復魔法が常に発動する。
当たり前に考えれば立早が倒れるよりも先に、川城が全力を使い果たしくたばる方が先である。ただ、川城の残虐かつ精神的な追い込みが立早のプラス思考を奪っていた。むしろ、奪っていなければ立早がすでに勝利していたかもしれない。
川城も立早も把握できていないところであるが、テンバーの攻撃とシィエラが向かっているという材料は川城にプラスになっているかは判断が難しい。
自ら精神攻撃を行うということは、単純なぶつかり合いでは勝敗が分からない。もしくはされる側が有利であるという場合が多い。精神の揺れは備わった技術と身体の低下に繫がり、勝機を作り出せる。
逆境を前に強くできる奴は厄介だった。
だが、少しずつ立早が川城のおかげで変わりつつあることを川城も感じた。
救いなのは立早が自分の大きな成長に気付けないでいること。
頭は確かに馬鹿であるが、神様だという自信を再び取り戻した時。嫌な予感はする。その予感を自ら潰すため、変わらずに立早を叩き潰す川城。日課のように立早を叩き潰す。
時間はボコられながら過ぎていき、
シィエラが到着するまで残り7分。
テンバーが本を読み終えるまで、25分を切った。
「!避けろ、川城!空から来るぞ!」
本を読んでいたことでテンバーは未来からの攻撃を察知した。しかし、叫んだくらいで運命は変わらない。
本に書かれている内容は現実となる。読み終えれば対象者は確かに死ぬのだが、現在の対戦相手である川城が死なないとは書かれていない。
立早はボコボコにされながらも、密やかに攻撃の準備をしていた。
派手で広域な戦闘が行える立早にとって接近戦は望まない。
しかし、自分には絶対の回復手段があることを今になって気付いた。それでも勇気を振り絞ったのだ。
「"寒鳴來挫魔・射手"(イ・レーラ)」
自分もろとも、川城を襲う巨大な白い雷を落としたのであった。自分で自分を傷つけるという選択をできたのは、自分自身も驚いていた。
そろそろ成長を自覚し始めた。




