川城の教え子①
サーキット場。
広嶋とシィエラの共闘はもうすぐ終わろうとしていた。
最初は苦戦したものの、要領さえ分かれば一方的に敵を殲滅していった。
「そろそろキリが良いか?」
立早は戦闘も知らないし、戦場も知らなかった。
2人を足止めできる時間がどれだけなのか計算していなかった。
「シィエラ!お前は川城のところに行け!」
「あ~ら?私に命令するの?殺すわよ」
また、敵を完全に殲滅しなくても良いのだ。
広嶋もシィエラも、光景こそ見えないが川城が立早と戦っているような打撃音が届いていたのだ。
倒せる敵にいつまでも構う必要はない。広嶋はシィエラを川城の援護として向かわせたかった。
「どーしようもねぇ奴だ」
広嶋は敵を相手にしながら、なんとシィエラの方へ向かっていった。無理と言うなら無理矢理"投手"で投げ飛ばそうと考えていた。
とはいえ、シィエラを投げ飛ばすというのは無理な話である。彼女には無力化できる能力があると同時に、敵もまた倒されながらも、補充が早い。
「っと。雑魚に構ってられるかよ!」
広嶋の戦闘は現れる相手を瞬殺していく。シィエラよりも雑魚相手には向いている能力であった。
「まー。怖かったわー」
「ふざけんのはここまでにしろ。急いで川城の加勢をしろ。2対1なら確実性が増すだろ」
本命が出てきた時。
シィエラは少しな残念な顔をして広嶋に訊いた。これが広嶋に送る最後の言葉になるかもしれないからだ。
「もしまた違う世界に行っても、あなたと会えるかしら?」
「さぁな」
「そこは………シィエラに会いたい!くらい言って欲しいわ。ちょっとショック」
「ふざけてねぇで立早を殺しに行け」
広嶋の返しは予想できたが、
「浪漫がないわね~。ショックだけど行って来るわ。さようなら」
シィエラがサーキット場の外へと向かった。広嶋は彼女に敵を向かわせないよう、賢明の迎撃を行った。この地点から川城と立早の戦場に辿り着くまで20分以上は掛かる。
シィエラにも広嶋にも、自身を素早く移動させる手段がない。
それがギリギリで立早が生きられる可能性であった。
ボコボコに、ボロボロにされながらも、立早は生きていた。
「あっ、ううっ」
「しぶとい」
HPの無限回復に川城も少し参ったような声を上げた。
しかし、それでも攻撃は止まらなかった。
川城による立早の虐待は30分以上も続いた。
もう何千、何万回殺したか覚えていない。
川城にはこれしかないから止められない。
「ううぅー」
立早も度重なる復元に頭が壊れ始めたのか、呻き声を頻繁にあげるようになった。
「なんで戦うの?」
「家族が大事だからだ!」
時折、立早はやられながら川城に質問をしてきた。それを丁寧に答える川城。
家族のために、戦えるなんて立早にとっては絵空事で法螺だ。ありえない。家族なんて、友達なんて。
「そんなど畜生共のためにぃぃぃ!!この神と戦っていたというのか!?ふざけてんのかぁ!?それがお前の強さだというのかぁっ!?」
精神状態がとても不安定で浮き沈みをハッキリとさせていた。
「そんなので強いなんて許さない!自分のためだろ!自分が大事だろ!命が大事だろ!」
「お前には分からんだろうな!」
強いって事は容赦しないということ。
「家族が大事だから、お前を鴉の餌にして良いと考えられる」
説教とその五体で作り出す攻撃で立早の体に教え込む。
「護りたいもののためなら、非情になれる事もまた強さだ!」
川城は立早に対して殺意を実行しながらも、教えているという事実に気付いていない。
何千回目の肉塊から復元される立早。
「えぇぇっ、うあぁっ、おぅぅ」
「ゾンビのように復活するだけでは強さを得られないな」
「はぁぁ?」
「お前のやっている事は戦っているわけでもないし、逃げているわけでもない。止まっているだけだ。行動を止めた時、強さは死ぬ」
教えると同時に、立早は精神は傷付いていく。復元にも若干の鈍りが出てきた。
「止まってるだと?止まってるだと?」
止まってるだと?止まってるだと?
この神が止まってるだと?
俺は何千回も蘇ってる。何度でも、何度でも、無限大に匹敵しても俺は乗り越えるために、お前を
「お前をぉぉ、倒すために蘇ってるんだよぉぉっ!侮辱するなぁぁ!」
言葉だけ。
「理不尽なのは俺なんだ!お前が理不尽になって良いわけあるかぁぁっ!!」
言葉だけで理不尽を乗り越えられるわけもない。
心が折れるという精神状態に至らず、腐りきった方面に偏った。振り絞って攻撃しようとするも、その前に川城に止められる。
「うああぁっ、ああぁぁぁっ!」
自分なりのやり方だろう。
「お前が私に立ち向かう姿勢は買おう。だが、」
覚悟、犠牲、信念、執念、情熱、決して諦めない。
だが、しかし。
悟りがない!
己を知らずにして、何が覚悟か。何が犠牲か。何が諦めないだ。
馬鹿だろ。アホだろ。カッコイイですまねぇんだよ。誤ってすまないんだよ。
「神のお前がなぜ、人間に劣るのかを考えられんのか!?」
殴られること、蹴られることには慣れた。だが、心が傷付くことは一向に慣れなかった。
「お前の心は神ではない。ジャニー・立早という人間未満だからだ」
「っ!」
格別に痛い一発を立早はもらった。
「強くなろうとする神などいない。また、お前は人間ですらないのだ」
「うごおっ、ち、違う。神だと……言ったぞ」
「神ではない!人間にすらなっとらん!腐り、脆い、貧弱。それらの心を支えるために強さを求め、人を求め、生を求める!それこそ人間!万能、万物、全てを司るのが神!お前はどちらでもない!」
体の震えは殴られたことではないと立早自身も理解した。
「ただの生きているだけの"物"でしかない!」
言葉を聞いた時、心がぶち折れる音がした。
「悪戯にこのまま続けるか?」
「は」
立早は、
「は」
理不尽を知った。




