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強さをくれよ


我は神である!!




そう念じた直後に顎を打ち砕かれる。

痛覚を抜いているため、痛いは分からない状態であった。痛さとは体はもちろん、心までも影響する。とても簡単な心変わりや自分改革である。



「おええっっ、神に何しやがる……」



立早は何度両目を落とされたか覚えていない。痛みはないが、何度も視界を失う恐怖が心に宿った。

死なないことは確かであるが、拷問という名の戦闘である事も確かだった。

対接近戦では、立早は川城と戦う事ができない。



「神に何を」

「肩をへし折っているだけだ」



川城に肩を踏み落とされる。立早を地面に倒し、うつ伏せ状態に追い込んだ。

"貯金戦士"の全てを費やして強さを引き下ろした。借金も覚悟していた。

音を飛び越える反射神経と加速力。立早を一撃で裂く打撃。365日会社に赴く、超一流社蓄が備えている人外の持久力と継続力。

ここで終わって良いという信念で立早と戦っているのだ。

それが立早には理解できていない。



「HP全回復可能な神だぞ!お前の努力なんて無駄なんだ!」



相手なんてどうでも良い。だからなんだとしか、川城は感じていない。

殺すまで殺すことを実行する。立早を倒せなかった時点で元の世界に戻れない。大きな絶望はすでに自分で抱えた。相手や何かが振り翳した絶望なんて



「それに興味はない!」



殴られて体が吹き飛ぶ立早。まだHPには全然余裕があるし、全回復もできるため負けるわけがない。

しかし、勝てる気がしない。

復元されながら、自分が変わっていくことを感じる。



「おっ、おぉっ」



な、なんだこいつ。なんで諦めない?なんで戦う気でいる?

攻撃を止めろ。俺が攻撃できねぇだろ。瞬間移動で逃げるか?そんなみっともない事できるか、神がわざわざ戦地に来て敗走なんてありえない。ありえないだろフツー。恥を消しにきたんだ。



「止めろっ」



俺は、川城に勝てるのか?

とんでもねぇ、スピードとパワー、テクニック、非情さ。パラメータにすら表示できない物を持っている。俺は最高の装備をつけていても、ボロボロにされる。俺の装備は一体なんだったんだ?

勝てるどころか。俺はこいつから、に、逃げられるのか?



「止めて」



少し前の思考すら忘れるほど、立早は追い詰められていた。

それだけ川城と立早の戦闘における実力差があった。

恥をしてでも、逃げたい。死なないのに勝てないという予感から逃げを選ぶ男。

復元するポイントを変えることで擬似的な瞬間移動も可能である。しかし、それができる距離は死んだ地点から500mほど。こことは違う異世界に復元することはできない。


神と自称し、それだけの力を持つ立早と互角に戦える川城からは逃げられる距離ではない。



「はぁっ、はぁっ」


川城が視界にいなくなるだけでとてつもない安堵感が生まれた。


「!く、来るなぁっ!」


しかし、出会ってしまうと安堵感が吹っ飛ぶ。

立早の常識では500m離れて、物陰に隠れたら逃げ切れるという常識だった。

それが通じない。とうに立早の知っている戦闘ではない。



「749回」

「!?」

「お前が死んだ回数だ」



立早の首にかます川城のラリアットは首を撥ね飛ばすほどであった。これで750回目の死亡。

HPは回復もあって相変わらず残っているが、全回復がなければもしかすると死んでいたかもしれないダメージ量。



「ぱ、パラメータでなら勝てるのに……勝てない」



フラフラになっているのは精神的な疲労であった。

自分の優位が本当に優位なのか分からなくなった。

圧倒的な防御力やHPを持っていたとしても、頭を貫かれたら死亡するのは当たり前。鎧を着けたら鎧の部分だけが強くなるのが普通。

一見難解そうで実は単純なダメージ計算でも、はじき出せない攻防。



「これが戦いなのか。くそ」



現実の理不尽を川城に見せつけているはずだというのに、一方的にやられているのは自分。理不尽に立ち向かっているのが、自分の方だったと気付かされる。



「欲しい」



立早がボコボコにやられながら願ったのはパラメータではなかった。

川城に勝つ術が欲しいんじゃない。逃げる術が欲しいんじゃない。



「お前に立ち向かう強さが欲しい……」



死亡回数が1000に達しようとするとき、立早は川城に憧れを抱いて精神的に復活を果たす。神様でも魔王でも、最強でも、無敵でもなく。

目の前にある理不尽に立ち向かう強さが欲しかった。

涙ながらに立早は恐怖を纏いながら、川城と目を合わせた。




「川城、粘っていろ。敵がほぼ不死身でも殺せる」



一方、2人共知らないところで別の攻撃が始まっていた。

この世界に遅れてやってきたテンバーである。

立早をこの目で確認し、2人に気付かれないように遠く離れて立早用の"歴史偉人本"を作成する。

この小説を読み終えれば誰であれ、どんなにHPがあったとしても死亡する。この条件が成立すれば100%の死亡を確証している。

戦闘と暗殺の両方が立早に襲い掛かっていた。



テンバーが1ページ読むのに掛かる時間はだいたい20秒前後。新たにページが生まれるのには120秒ほど掛かる。現在の残りページ数は124ページ。

立早を完全な死に追いやるのには1時間ほどは掛かる。

テンバーが読み始めてまだ20分も経過していない。これほど長い時間はテンバーにも、立早にもなかった。



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