HP、100000000000000
川城 VS 立早。
海岸上での戦い。
しかし、場所などどーでも良かった。
まず、川城が立早を倒す事を目的としているため、力をセーブする必要はまったくなかったから。
そして、立早の能力が世界を操作するという力であるからだ。
人が本気を出す!と決めた時、一呼吸だけで本気になる。
しかし、本気の持続時間と本気の実力は人それぞれである。
立早はおそらく、本気を出すといって1秒も持たないだろう。すぐに漫画やらゲームに手がいく、意志が弱い者。いつだって本気を出せるが、すぐに本気を止められる者。
しかし、川城は本気を決めれば精魂尽きるか、目標を達成するまで突き進めるだろう。
「あ、あれ?」
自分の造り出した槍に頭を撥ね飛ばされる立早。
気付いた時には致命傷に等しいのを浴びた。
「やられたクマー」
あっさりくたばってしまう台詞を吐いてから
「なーんて、簡単に殺せると思うなよ!」
「生き延びることくらい理解できる。茶番は止せ」
広嶋とは違った理由での生存手段をとっている立早。一方、川城も前の戦いで生き延びた立早からこれしきじゃ死なない事は理解していた。
「川城、お前のHPは大体32万ってところか?」
「?なんの事だ?」
馬鹿丁寧に立早が首だけになった立早がこの生存手段を教えてくれる。
「元は全て0か1の世界。ターン方式のゲーム。パラメータの世界となった俺をこの程度で倒せると思うな」
本当に親切に、立早の左上に出現するモニターには彼のパラメータが表示された。
ジャニー・立早
HP 100000000000000
MP 100000000000000
攻撃力 300000
防御力 300000
「ふはははははははは、いくつ0があるのか分からないほど、数えるのがメンドいし、間違えそうなほどの桁だ!倒せるとでも思うか!?」
高笑う立早の頭をよそに川城は容赦なく、立早の胴体に追撃を加えていた。
「完全消滅させてどれだけのダメージになるかな?」
モニターのHPはどんどんと減っていく。
1分も経たない内に2桁も削り取った。
たった2桁とはいえ、とてつもない下落に立早は威勢を欠いた声をあげた。
「ちょ、お前。どーゆう攻撃力してんだ!?どんだけ攻撃回数が多いの!?0いくつあったか覚えている?めっちゃあったのに2桁削るの早すぎるだろ!」
「胴体が脆いな。次は頭を叩き潰そう」
川城はそう言いながら立早の頭に襲い掛かる。残りHPが全て頭にあるというわけではない。
どこぞの魔王や神様、ラスボス共は幾多の変身パターンを持っているものだが、立早にはそれがない。かといって常に無敵状態で存在しているというわけでもない。
無くなった部分をオートで補う超高速の復元能力。
頭だけになっていた立早に胴体と両腕が生える。
「お、お前!」
声を上げている間に起こる、暴力。
消し飛ばさせるほどの超高速の連続攻撃。反撃させる暇を与えない。
「俺のターンは……」
戦闘というものを勘違いしている立早。そもそもこれは戦闘ではない。相手がやり返したら、ちゃんとこちらが攻撃ができる優しい戦闘システムではなかった。
「ちょ、待て……」
消し飛ばされ、また復元される。止めてくれと声とジェスチャーを作り出しても、
「タンマ」
川城の感情は一ミリたりとも微動だにせず、立早を潰していく。
死んでも生まれるのならまた殺してやる。果てに近いHPを削らなければいけないとしても、
「そんなものはない」
「あ、なんで?」
決して諦めることはない。なぜなら、立早を殺さないと川城は元の世界に帰ることができないからだ。
復元がなければすでに10回以上も殺害されている。そこまで、一方的な攻撃を浴びてもまだ立早は余裕をみせた顔を出す。
「ば、馬鹿め!絶望しろ!お前に俺は……ぶべぇっ!殴るな!」
「殺すまで殺す」
「慄くがいい。げおぉっ!あげっ…………。はぁっ!ゲーム史でも類を見ない!ぐぉっ」
いちいち台詞を吐かなければいけない立早の奇抜な性格。
相手の胸の奥に突き刺さる絶望シーンを作り出したいようだが、マヌケ過ぎてできない。しかし、絶対的な実力差を見せ付けることをキッチリとやれた方がカッコイイのは確かだ。
「震えろ!お前の削った我の命など!なんの意味もない!」
立早のやった行為は相手の全ての努力を無に帰す、禁断の手段。
「"清涼英陵海・魚"(ウオミン・シスタ)」
立早の横に表示されているモニターに書かれたHPが一気に上昇を始める。川城の攻撃よりも早くHPが回復していく。
しかし、その間にも立早は川城にボコボコに殴られ、蹴り飛ばされ、串刺しにされている。体の復元がまだ間に合っていない。
「お、お前ぇっ。なに攻撃してんだ!?」
「は?」
HPの強制全回復。絶望としか言いようがない。誰も使わないことをやってのけるど畜生。
しかし、肉体が強くなるわけではなく、HPとは立早の命を繋げるだけのメーターに過ぎない。
「無駄なんだぞ!」
「で?」
本当の絶望は立早の方であった。
気付くのが遅すぎる。川城は戦う気などない。殺す気でいる。戦闘にすらならないほどのレベルに達したこれは、立早の深層に眠るトラウマと同じ。
"虐待"であった。




