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修羅馬鹿②

槍とは手で握り、繰り出す物である。

今はX76の体に杭のように突き刺さった槍。攻撃力2600のグングニル。

本来の使用方法でなければ攻撃力が出ないのは普通だろう。まさか銃で殴ることが銃弾を打ち込まれると同じ攻撃力があったら、システムが狂っているとしか良いようがない。

だから、槍の本来の用途がなければ攻撃力は下回る。



「!」



川城が何か仕掛けてくると宙に浮いている間に察するX76。

降ろしてきた強さは今まで本気を出していない時間が考慮される。



「ふううぅっ」


煙と炎がどんどん川城の口に吸い込まれていく。恐ろしい吸引力であると同時に、短くて早い。足がわずかに動いた。

それからX76は川城の動作を見切ることができなかった。

強さという要素を攻撃力、スピード、防御力、耐久力という4つに分解し、いずれも限界に達した場合。

瞬間であっても、総合力の差で相手は滅ぶ。



川城はX76の体に刺さった槍にめがけて跳んでいた。右足が槍に届く。槍を蹴り上げてX76を突き破る。

X76の体に槍よりも大きい風穴が空く。蹴られた槍は威力を保ったまま、さらに上へと昇っていく。



「!…………アッ?」

「終わりだ」



X76が気付いた時。痛みより痛かったのが、敗北という二文字であった。

体に風穴が空いただけでなく、燃える地上に落下する際に胴体が二つに割れた。


「悪いな。私は自分の強さがあまり分からない」


これだけの敗北。

X76が分かった事。川城はいつでもどこでも、俺を殺すことができたということ。



「あなたと敵対する事になったのが残念だよ」

「…………ハハハハハ」



X76の瞳は、黒く、丸く、酷くなっていた。機械の表情でも、銃口にすら手を置ける川城に恐怖を与えられていた。

呪いが込められてぶつぶつと喋っていた。



強イ。強イ。強イ。強イ。強イ。



「何をする」

「ハハハハハハハハハハハ」



胴体が離れて生きている生物と出会えたのはX76と立早のみ。

これで二人目だというのに川城にはX76の企みが読めなかった。なにせ見る事ができないのだから、体が異常を見せなければ分からない。しょうがない。

血管が切れる音と共に川城の口と右目、鼻から血が吹き出た。



「!むっ、なんだ?」


その異常が未だに生み出している炎や煙よりも性質の悪いことを予感できた。



「ハハハハハハ」

「病気……か?」



"3/4"(スアナ)が川城の体内に入り込んだ。戦うよりも前から川城を侵していた。その卑劣さは強さとは良い難い。



「クタバレ、川城。俺ハテメェガ嫌イダ」

「理由はなぜかな?」



長々ト答エテヤル時間ハネェヨ。

テメェガ俺ヲココマデ追イ込ンダンダゾ。


「………ハ、遠カッタ。……ジュリー」



それだけを言い残して、X76は命を引き取った。

X76が新しい世界で最初の犠牲者となった。



そして、この闘技場の世界に開かれる新しい扉が現われる。火の海を歩きながら目指す川城。扉の手前で振り返って、血を流しながら死んだX76に向けて語る。



「あなたは強さを求めていなかった。そこまで陥る"何か"があった事が伝わった」



長く競ったライバルがいなくなると虚しくなる気持ちだった。



「私を病気にしたのですか?あなたのその執念には感服します。私でなければ死んでいた」


X76が死んだ後からやったのは川城なりの配慮だろう。せめて、一矢報いたぞと虚報に踊りながら地獄で楽しくすると良い。



「病原菌は脅威だ。多くの人間が死ぬ一つとされている。だが、私には通じない」



"貯金戦士"が引き出す強さには色んなバリエーションを持たすことができる。

治癒力の強化、病原菌に対する抗体の強化。毒物や呼吸困難からの回復力。

腕力、スピードのみならず、広大な影響力を持つこの能力はX76の全ての攻撃を無力化したと言える。



「……おそらく。X76は気付いていただろう?素体が人間である私が、この炎と死の煙が生んでいるこの場で平然と行動できているところから…………知らなかったことを祈る。そして、君の分まで私は頑張ろう」



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