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修羅馬鹿①

城の中は闘技場というフィールドだった。観客はどうやら、タンバリンとカスタネットを叩く程度の動作を込められたNPCのようだ。審判もいない。闘技場にある看板にはデスマッチと書かれていた。

城への入場が他者を異世界へと移動させる罠だった。



「1番目ト2番目ハコーユウ運命カ」



望んで入ったのはX76。望まず入ったのは川城。


「どうやら立早は頭を使ったか。一人ずつ確実に葬るようだな」

「構ワネェサ、ドッチニシロ。全員殺スノハ俺ダ」



世界を構築できる能力を最大限に使い、嫌らしく攻める。

城の中に入ってきた76名を団結させまいと、分断して別世界に飛ばす。対して大きくない世界を50以上用意するのは容易かった。

そして、入っていく奴等に罠を仕掛けるのも容易かった。

X76と川城、広嶋、シィエラ。立早にはこの四人が早い段階で城に入っていくだろうと分かっていた。

広嶋には見透かされ、シィエラも感付かれたものの、主力の2人をこうして激突させることができたのは結果オーライだろう。



「立早を倒すまで止めないか?」

「無理ダ」



だが、立早の粋な計らいなど。X76にとってはどーでも良かった。

別に。


「俺ハテメェヲ殺シタクテタマンネェ」

「…………X76」



ゴングはない。

それでも、殺し合いとなるならば。川城もX76に言ってやる。槍を構えながら、彼に送る最高のアドバイス。



「やはりお前はこれ以上喋るな。聞き取り難い」

「安心シロ」



モウ俺ノ声ヲ聞ケネェヨ。



X76は即座に変型し、この障害物のない綺麗な闘技場の世界を火の海に変える。それほどの兵器をいくつも同時に放ったのだ。世界の隅まで火は点って全てが燃え盛った。熔ける観客、闘技場。

己の力で生み出した世界は立早の創造力を陳腐にする地獄絵図になった。

こーゆう世界を、……理不尽しかない世界を造り出せるのなら、立早に分がある。



「いや、よそう」



地獄の炎に包まれながらも川城は冷静な表情だった。汗を一つも出さない、異常者。



「まずはお前を殺してから、立早を殺すことを考えよう」



順序を決めた。今はX76に集中する。川城にわずかにあった頭の余力は全てX76に傾いた。

そこら中に立ち上る炎に隠れるように身を低くし、人間の視力では近くにいても川城の体は見えない。

火の上を平然と静かに速く走り、炎と煙の揺れが乱れに乱れて索敵も難しい。ここまでの細かい動きは、立早が用意してくれたパラメータ付きの装備では実現できない走行技術。



対人間相手ならば川城の技術力はトップクラス。

X76が機械仕掛けでなければ見つけられないだろう。

川城と住んでいた世界にある技術力の差が出ていた。X76には対象者の体温を認識できる装備が埋め込まれている。炎の中にいるとはいえ、人間の体温は比べればとても低く、いかに速く動き隠れていてもバレバレであった。

分かっている。

それを理解しているのはX76だけであり、川城は理解していない。二人の齟齬が生み出すのは結末の違い。

川城はX76の目の位置は何度も出合って把握している。だから、死角から飛び出し、彼を串刺しにするまでは一瞬という読みがある。

X76はその狙いを逆手にとり、カウンター一閃。



不協和音一号は川城がX76に与えた、鋭く速い突き。



「っぉ」




間違いなく死角から飛び出したにも関わらず、タイミング良くX76は動き、致命傷を回避。突きまで避ける計算はなかったのだろう。

刺したということは川城の足が一瞬止まることになる。

獲物が掛かったと公言しているように、X76の兵器は待ち構えていた。2つの銃口が川城の機動力である両足に標準を合わせていた。



避けられん。



咄嗟の判断で川城はさらに前へと足を出し、体を前のめりにもした。

何が大事かを判断している余裕はなかった。川城にあったのは事前の捨てるリストであった。

弾丸が発射される刹那に銃口を二箇所、なんと恐怖も見せず掴んだ。放たれる凶弾は川城の両腕を躍らせる。しかし、川城の手は銃口から離れない。それどころか銃口を強く握りながら、かなりの重量を持つX76を持ち上げるだけでなく、上へと投げ飛ばす。



聞いていられない痛い音がまだ鳴っている。痛みが分かりやすく見えながら、戦闘も炎も盛り上がっていた。



「グングニル」



川城の"超人"能力、"貯金戦士"はスロースターターとなるのも仕方がない能力だった。

無類の強さを引き出せる反面、仕留められなければ息切れする。勝負所を誤れないという特性。

本気の爆発力は多くの兵器を駆使するX76よりもあり、持久力はそれほどない。本気じゃなくとも、強いほどの身体能力を持つ川城が見せるその上。



七色のオーラが川城を覆った。



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