新しい世界で建てられた魔王城
生き残った人間達は100人と満たなかった。
「なんだ生きていたか……」
「お互い様ね」
生き残った者達は死んだ人間達よりも強かった。あの荒れ狂う天候、天変地異、地殻変動、全てを体験しながらも生存したのだ。弱い奴は死んでいる。
生き残り方が弱肉強食を示していた。
「で、なんだここ?」
「知ルカ」
色々な変化を遂げて作られた世界はとても寂しい藍色空に染まった空。澄んだ空気に、ただ一つだけ建てられた(?)というべき逆さ状態に造られたお城。
生き残った者達は皆、平面におり。全員が目で確認した。
「お、お金が……お金がないじゃないか!!」
音もよく響いた。だから、この怒声は全員が聞き発言者の方に振り向いた。
「あれだけ貯めたお金が無くなっている!ふ、ふざけるなよ!」
今まで努力より、行ってきた結果を分かりやすく表現している価値。そのお金が全て消し飛んでしまった。
テンバーはこの理不尽に怒りが爆発していた。
「馬鹿メ。金ハイザトイウ時、裏切ル」
X76はテンバーの怒りを笑っており、お金を失ったテンバーは用済みという意識をつけた。
まだ、広嶋とシィエラ、川城が様子見をしている中でX76が先にこの世界に建てられている城に向かって歩いていった。
罠は感じない。
「立早ノ最後ノ光ダナ」
あれだけの破壊を行った以上、立早が追い詰められているという理由が生まれるのも納得ができる。
この城の中に立早がいることも、多くの人間が抱いていた。
X76は城に堂々と入っていく。中はとても暗く、X76が入った途端、みんなから見えなくなってしまった。
「どう思う?私、ちょっと行きたくないわ」
「ならここで泣いてたらどうだ」
シィエラに対して口が出るわりに広嶋も動かなかった。
「ビビってるの?」
「さぁな?警戒かもな」
「守って欲しいわー広嶋くん」
「俺を盾代わりにしたいだけだろ」
シィエラと広嶋は実力者とはいえ、来たばかり。金を失ったテンバーが扇動するわけもなく。
「皆!これが立早との最後の戦いだ!」
人間達のリーダーとも言うべき、川城が率先して声を出して全員に忠告した。
「あの城に入れば立早との戦いになる。それは苛烈な戦いだ。参加する者、しない者。各々の判断で良い!だが、必ず立早を討ち取ってこの世界から脱出し、元の場所に帰ろう!」
X76に遅れたものの、川城の言葉に動いた者は多くいた。
留まったのは2割ほど。あとは全員、城へと向かっていく。走る者、歩いて向かう者、様々であった。
川城達が立早を倒せればいいやっと考える者は、入っても入らなくても死ぬのは確かだと広嶋は思っていた。進まなければ帰れない。進まないということは帰りたくもないとも言える。命を大事にしてやがる。
「私は行く!もう、ここにいる者達を守るつもりはない!」
川城が二番目に城に入る。すると、X76と同じく彼も突然消えてしまった。
何人かがそれに続く事で広嶋とシィエラは城だけが世界ではないと察する。その向こう側に何かがある。
「ふふ、ま。楽しめそうね。先に行っちゃうわよ、広嶋君。また会いましょ」
「お前の骨はちゃんと抱いてやるよ」
シィエラも城に入る者達と一緒に向かっていく。その彼女を見て声を掛けるパンパンがいた。
「シィエラさん」
「あら、パンパン。何かしらその装備?ダサいわね」
「チート装備です!」
「恥ずかしくない?外見も意識した装備じゃないとダメよ。ネーミングセンスが悪過ぎるわ」
そーゆうところを見て欲しいわけじゃない。
「僕も城に向かいます!何ができるか分からないけど。シィエラさんが行くのなら」
「あらあら、お荷物はいらないのよ?分かる?」
酷い言葉を言われて少し萎縮しかけたパンパン。
「お荷物にならないで」
これほど最後まで聞いて良かった言葉はなかった。
シィエラとパンパンは同時に城へと入って、消えていった。
50名ほど、城へと入っていた頃。広嶋もようやく重い腰を上げてテンバーに近づいた。
「お前はそーゆう性格だったな。中々賢しい」
「お金がないー」
未だに混乱しているテンバー。しかし、広嶋には見抜かれていた。
「演技は止めろ!金がないから留まる理由にはならねぇぞ!」
首元を捕まれ、持ち上げられるテンバー。正気というよりかは広嶋が言うように演技を解いた。
「く、苦しい。止めて。マジ止めて!死にたくない!これが真理だろ!」
「テメェは有能だ。城の中に入らないとダメだ」
「いやいやいやいや!無理無理!というか、川城、X76、シィエラ、それに君が行けば良いだろう!もう、大丈夫だ!私は中に入らない!」
テンバーの本音は正しい。3人だけで十分であるが、広嶋は気がかりを発見したからテンバーを無理矢理、城の中に連れて来たかった。
というか、する。
「とにかく、お前は俺の言うとおりにしろ!」
広嶋は"投手"でテンバーを城の中に投げ込む。
「うあああぁぁっ、止めてくれ!」
「大丈夫だ。用が済むまで守ってやる」
叫びながら城に入っていったのはテンバーだけだろう。
広嶋がテンバーが演技していたことが分かったのは意外にもパンパンの行動(生存)からだった。
自分とシィエラは確かに強い。この世界の防具がなくとも、身を守る程度なら朝飯前である。川城とX76は手に入れたチートの防具があり、さらに元から強い。
そして、生き残った者達の装備がそれなり優秀であり、身体能力だけで見れば見事な平均以下にいるパンパンまでもチート装備によって生き延びた。これにより装備の大切さ理解できる。
なのにテンバーは自ら戦闘向きではないと語っておいて、生存している。(少し失礼だが)
装備については詳しくない広嶋だが、テンバーの生存には不自然さを感じ取ったのだ。
少し前の荒れ狂った天候、災害から身を守る術はテンバーの肉体と装備では限られているが、避けられる術があったのでは?
そこまで到達する広嶋の異常な直感と、状況把握力、推察力、考察力。
声を掛けるまでの間にテンバーの能力が、未来予知の類を感じ取った。それならばこの世界で一番金を手にしたという理由も分かる。
「利用できれば十分な戦力だ」
ここにいる多くが戦闘狂。その中で稀有と言えよう、情報収集能力。
便利な上、弱いからこそ暴力で操りやすい。使い勝手がいい人間だ。




