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第15話 ギガースの遠征  (2628)

 イレーネに到着したギガースは市民から大歓迎をうけた。見た事のない巨大ロボットの雄姿に感激した市民は、これでサラルの脅威から解放されるとドームから総出で歓迎した。ギガースは歓声に応えつつイレーネの中心の通りを走行して行く。誰が用意したのか、約八十年前「ニューヨーク」建設当時に流れていた曲が流れた。


 【New York, New York(words by Fred Ebb)】

   Start spreadin’ the news,  I’m leavin’ today

   I want to be a part of it  New York, New York

   These vagabond shoes,  are longing to stray

   Right through the very heart of it  New York, New York ・・・


 この曲が流れると、長い間サラルに苦しんできたイレーネの人々は笑顔を取り戻し歓声を上げて一緒に歌い踊る市民が沿道に溢れた。

 イレーネにギガースが到着して以降、サラルの群れがイレーネ周辺に近づく事は無くなった。イレーネに到着して一週間後、ギガースはイレーネから10キロ南のサラルパーク方面に向かうことになった。サラルパークは20年前、共和党のダニエル大統領がサラルとの友好のために造ったテーマパークだったが、今はサラルの群れが人間が造った川の流れに沿った洞窟に生息しているだけだった。巨大ロボットギガースが轟音を立ててサラルパークに近づいていくと、多くのサラルはパニックになり子供を抱えて逃げ去っていった。一部のサラルは投石・槍投げで反撃して来たが、ギガースはサラルの攻撃を鋼鉄の防御版で跳ね返し、胴体部分の銃眼からの連続弓攻撃でサラルを撃ち落としていく。数時間後、サラルは散乱する死体を残し逃げ去って行った。その後もギガース部隊はイレーネ周辺の各所でパトロールを続けてサラルを追い払い、イレーネの人々を安心させた。


 イレーネ周辺のギガースのパトロールが一段落したある日、ライラ隊長がジュリアとロビンの住宅ドームを訪問した。

「ジュリア、ロビン!久しぶり、元気そうでよかった!」

「ありがとうライラ!ギガースが私たちを救ってくれた!」

「ギガースが来たからにはサラルどもを一匹残らずこの島から追い出して見せる!安心して!カモーン!」

 ライラが案内されたドームの中にはルーク、クレア、エリックの3人の子供たちが笑顔で迎えた。

「ライラ隊長ようこそ!」と子供たちが声を揃える。

「オーマイゴッド!かわいい子供達!」

 ライラは満面の笑顔で子供たちをハグしていく。

「ライラ見て、あなたが贈ってくれた銀の銃よ!この銀の銃が私達を守ってくれた!」ジュリアが涙を流しながら感謝を伝えた。

「私たちノードを離れたことを後悔してる。サラルとは共存できない、私達が間違っていた」

「でもあの時のあなた達のノードを離れた選択も理解できる。何が正解なのかやって見なくちゃ判らない」

「サラルの近くで暮らす事になって、私達は判った。サラルは人間の悪い部分を多く持った生き物よ!」

「一番悪い人間にも優しさのカケラがある。それが人間らしさと言うものだ。サラルにはそれがない」

「ノードはあれから地下避難所と地下トンネルの建設が完成したのよ、何時でもノードに戻ってきて!みんな大歓迎よ!」

「私達はノードに帰りたいと思っていた。でもノード警備隊やギガースが助けに来てくれて考えが変わった、私達はイレーネに残って戦う!」

「私もイレーネ防衛のために警備隊員になった。妻と子供達を守って見せる!」とロビンが力強く語った。

 18歳になり既に警備隊員となっていたルークも「私はもうすぐギガース部隊に入隊します!」と元気よく言った。ライラがいつもの決め台詞を叫んだ。

「みんな!サラルを一匹残らずやっつけるよ!ついて来て!カモーン!」

 その後は、ライラのこれ迄の武勇伝が披露され、笑い声の絶えない時間が過ぎた。


 数か月後ギガースはノード政府からの指令でイレーネ周辺から、さらに南の山岳地帯に向かう事になった。ライラ隊長はイレーネ政府に「ギガースはこれから南の山岳地帯のパトロールへ向かうが、イレーネに年1回以上立ち寄る予定であり、緊急事態にはすぐに駆け付ける」事を約束した。

 イレーネ市民が総出で見送る中、ギガースは警備隊員やユニコーン型ロボを乗せたジープの隊列を率いて出発していく。イレーネの市民はギガースの遠ざかる姿をいつまでも手を振って見送った。


 ギガースは6台のキャタピラーを前後左右に備えており走行中も安定していたが、高低差のある山岳地帯で万一倒れる事が有れば致命的なので、偵察ドローンで進路を確かめつつ慎重に走行して行った。ギガースは山岳地帯を進み、サラルの生息地を発見次第接近していく。ギガースの姿を見るとサラルの群れは石や槍で攻撃を仕掛けてきたが、ギガースは何事もない様に攻撃を跳ね返し、無数の銃眼から連続弓で矢を雨のように降らせサラルを仕留めていく。


 ギガースはフィヨルド地形の高い崖や深い谷を避け、なだらかな平地を選んで走行して行く。イレーネから30キロ南に進んだところで、ギガースは進路を西に向け、ノードの南を目指して進んでいく。この進路はイレーネ南からノード南に至る100キロの山岳地帯からサラルを追い払うという目的をもっていた。ギガースは高低差のある山岳地帯を一日20キロ程度のゆっくりした速度でサラルの群れを捜索しながら進んでいった。サラルの群れはギガースの姿を遠くに見るだけで逃げ去るようになった。

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