第59話:女神の独り言。天から届ける「お疲れ様」。
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女神ルナリスの視点から描かれる、アルスの「その後」の物語です。
世界を救った彼に相応しい、静かで、温かな安らぎ。
憎しみも、痛みも、すべてが過去となった場所で、彼はようやく自由になれました。
人々の前から姿を消して、数百年。神界にある白亜の庭園で、私は一人、下界を眺めていました。
そこには、彼が守り抜いた黄金の魔力が、今も血管のように世界中を巡り、人々の笑顔を咲かせている光景が広がっています。
「……本当に、お人好しなんですから。アルス様ったら」
私は、お気に入りだったあの領地で彼がよく淹れてくれた、ハーブティーの味を思い出していました。
神である私にさえ、お腹いっぱいの魔力と安らぎを与えてくれた、あの不思議な青年。
彼は今、私のすぐ隣、神々の座すらも超えた『安らぎの深淵』で眠っています。
もう、誰の痛みも肩代わりする必要はありません。
誰の身代わりになって、泥を啜る必要もない。
ふと、下界の隅っこに目をやります。
かつて彼を「道具」として扱い、自分たちの罪の中に沈んでいった者たちの魂は、もうどこにも見当たりません。
神である私でさえ、もう彼女たちの名前を思い出すことはできないのです。
憎しみさえも残さない、完璧な浄化。
アルス様がその生涯をかけて成し遂げたのは、悪を滅ぼすことではなく、悪そのものを「意味のないもの」へと昇華させることだったのかもしれません。
「ルナリス様、何をしておいでですか?」
背後から、懐かしい気配がしました。
そこには、かつて王女だった彼女や、忠実な使用人だった彼女、エルフの女王だった彼女たちが、生前のままの美しい姿で微笑んでいました。
ここは、アルス様が愛した人たちが集う場所。
「……ふふ、なんでもありませんよ。さあ、アルス様が起きる前に、最高のおやつを準備しておかないといけませんね!」
私は立ち上がり、光に満ちた庭園へと歩き出しました。
世界を背負い続けた彼が、ようやく手に入れた「永遠の休日」。
その幕開けは、これから始まるのです。
女神様やヒロインたちに囲まれ、本当の意味で解放されたアルス。
彼が遺した平和な世界は、今も彼自身の優しさで満たされています。
物語は次話、第60話でいよいよ大団円、最終回を迎えます。
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