第54話:新しい家族との誓い。そして、誰も気づかぬ旅立ち。
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アルスが手に入れた「家族」という名の救済。
そして、誰にも知られることなく王都を去る旧パーティー。
憎しみすらも消え去った後の、徹底した「無関心」による決別。
これが、アルスが歩んできた道がもたらした、最も静かな結末への一歩です。
ハルバート領の領主館。そこには今、世界で最も穏やかで、幸福な時間が流れていた。
あの日、神殿で愛を誓い合った俺たちは、今、家族としての第一歩を踏み出していた。
朝、リアナが淹れる紅茶の香りで目覚め、シルフィアと剣の稽古をし、ルナリスの奔放な我儘に笑い、セレスティーヌと精霊の歌を聴く。
「……ああ、本当に幸せだ」
何度目か分からないその独り言に、隣で俺の肩に頭を預けていたリアナが、くすくすと笑った。
「アルス様、その言葉、もう今日だけで五回目ですよ。でも……私も同じです。誰かの身代わりではなく、貴方自身としてここにいてくれる。それだけで、私たちは救われているんです」
俺の手を握る彼女たちの温もり。それは、かつて冷たい地面に一人で横たわり、空腹と孤独に耐えていた俺には、想像もできなかったほど強くて優しいものだった。
俺の魔力は、もう誰の「代償」でもない。この家を満たす、温かな灯りそのものになっていた。
一方その頃。
王都アステリアの北門を、三人のみ窄らしい影が、誰にも気づかれることなく通り抜けていた。
エルザ、ガイ、ミレーヌ。
かつて王都中を熱狂させた英雄たちの姿は、そこにはない。
門番は彼らを見ても、通行証の確認すら面倒そうに手を振って追い払うだけだった。
「……行くわよ。ここには、もう……私たちの居場所なんて、一ミリも残っていないんだから」
エルザの乾いた声に、ガイもミレーヌも無言で頷く。
彼女たちは、ついに自分たちの「敗北」ではなく、「不在」を受け入れたのだ。
アルスを捨てた事実は、世界が彼を神格化したことで、もはや「語ることすら許されない禁忌」となっていた。
自分たちが誰であったか、何を犯したか。それを口にする自由さえ、この清浄な世界では奪われていた。
彼らが向かうのは、人の寄り付かない最果ての荒野。
誰の記憶にも残らず、誰からも恨まれず、ただ「初めからいなかったもの」として、ひっそりと朽ちていくための旅。
エルザは最後の一度だけ王都を振り返り、高くそびえ立つアルスの黄金像を見上げた。
その光は、もう彼女たちの足元を照らすことはない。
彼女たちは、自分たちが手放した「太陽」の背中を、永遠に追い続けるだけの、影のない旅路へと消えていった。
「……アルス様、見てください! 庭に珍しい精霊の花が咲きましたよ!」
ルナリスの明るい声が、館の廊下に響き渡る。
俺は笑顔で立ち上がり、新しい家族が待つ庭へと、迷いなく歩みを進めた。
自分たちの名前さえも捨てて消えていくエルザたち。
対照的に、愛する人たちに囲まれて新しい人生を歩み出すアルス。
この「断絶」こそが、第一話から描き続けてきた物語の最終回答となります。
完結まで、残りわずか数話となりました。
アルスの伝説がどのような大団円を迎えるのか、ぜひ最後まで一緒に見届けてください!
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