第45話:飢えに狂った「自称・婚約者」。その嘘が最後の扉を閉ざす。
第45話をご覧いただきありがとうございます。
ついに禁断の手口に走ったエルザたちですが、それは自らの首を絞める結果となりました。
アルスの名声は、今や彼らのような悪意ある者を自動的に排除するほどの巨大な「壁」となっています。
王都アステリアの裏通りにある、薄暗い酒場。
仕事を失い、数日間まともな食事も摂れていないエルザ、ガイ、ミレーヌの三人は、どん底の淵にいた。
「……もう限界だわ。このままじゃ、本当に野垂れ死ぬ……」
ミレーヌが震える声で零す。その横で、エルザは濁った瞳を怪しく光らせた。
彼女は懐から、かつてアルスが大切に持っていた、古ぼけた身分証の写しを取り出した。追放した際、嫌がらせで奪い取っていたものだ。
「……これを使うわ。……いい、私たちはアルスの……『賢者アルス様』の、極秘の協力者だったことにするのよ。私が彼の婚約者で、あんたたちはその側近。……そう言えば、どこかの商人が金を出すはずだわ」
「おい、エルザ……それは不敬罪どころじゃ済まないぞ」
「うるさい! 背に腹は代えられないわ! あいつの名前だけで、世界中が動くのよ? 少し分前をもらったって、バチは当たらないわ!」
エルザはなりふり構わず、近くにいた裕福そうな貿易商に近寄り、作り笑いを浮かべて声をかけた。
「……そこの貴方。実は私、あの救世主アルス様の婚約者なのです。今、あの方は極秘で領地の開発資金を集めておられまして……」
その言葉を聞いた瞬間、酒場の空気が凍りついた。
商人は同情の眼差しを向けたのではない。蔑みと、そして「恐怖」を湛えた目でエルザを見た。
「……おい、お前。今、アルス様の名を騙ったか?」
「え……? だから、私は婚約者で――」
「衛兵ッ! ここに不敬の詐欺師がいるぞ! 聖域の主に泥を塗ろうとする不届き者だ!」
商人の叫びに、瞬く間に周囲の人間がエルザたちを取り囲んだ。
今の世界において、アルスの名は単なる有名人の名前ではない。人々の平和を守り、救いを与えてくれる「信仰」にも等しい絶対的な聖域なのだ。
その名を汚そうとする行為は、全市民を敵に回すことを意味していた。
一方、俺は領主館のテラスで、リアナが用意してくれた温かいスープを飲んでいた。
「アルス様、最近、王都で貴方の名を語る不届き者が増えているようですが、王宮が厳重に対処しているとのことです。……貴方は、もう何も心配しなくていいんですよ」
「……そうか。俺の名前が、誰かを守る助けになっているならいいんだけどね」
俺が静かに目を細めると、足元でフェンリルが安心させるように喉を鳴らした。
エルザたちが今、冷たい牢獄へ引きずられていこうとしていることなど、俺の耳に届く必要もなかった。
俺の日常は、もう彼女たちの醜悪な悪意が入り込めるほど、脆いものではなかったから。
アルスの名を騙るという「最後の一線」を超えてしまった旧パーティー。
彼らがアルスを捨てた事実は、もはや世界中が知る「大罪」として、彼らの逃げ場を完全に奪いました。
物語はいよいよ最終局面。アルスの幸せと、彼らの末路。
その結末を、ぜひ最後まで応援してください!
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、ブックマークと共に、アルスの伝説を完結へ導いていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!




