第44話:俺の作った「便利魔法」が、彼女たちの仕事を奪う。
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アルスが自分の幸せを噛み締める一方で、彼の善意が旧パーティーを追い詰める。
復讐ではなく、ただ「善行」を積むだけで悪人が自滅していく。
この究極の格差こそが、第3章の目指す断罪の形です。
今日は、シルフィア王女やルナリスたちと約束していた休日だ。
俺は領地の湖畔で、リアナが用意してくれた特製のお弁当を広げていた。
「アルス様、あーん、してください! 神界でも食べられないような絶品ですよぅ」
「こら、ルナリス。アルス殿を困らせるな。……アルス殿、こちらのサンドイッチもなかなかの出来だぞ。食べてみてくれ」
女神と王女に挟まれ、俺は少し照れくさく思いながらも、穏やかな風を感じていた。
かつては自分の時間をすべて削り、仲間の魔力を肩代わりすることだけが俺の存在意義だった。
でも今は、こうして大切な人たちと笑い合い、自分自身の幸せのために魔力を使える。
「……ああ、本当に幸せだ」
俺がふと漏らした言葉に、隣で微笑んでいたセレスティーヌが優しく頷いた。
一方、王都の地下水路。
腰まで汚泥に浸かりながら作業をしていたエルザたちに、無情な通告が下されていた。
「おい、お前ら。清掃の仕事は今日で終わりだ。明日からは来なくていいぞ」
監督官の言葉に、エルザが泥だらけの顔を上げた。
「な……どういうことよ!? これがないと、私たち、今日のご飯も食べられないのよ!」
「ハッ、知るかよ。ハルバート領から、新しい『自動浄化魔導具』が王都に寄贈されたんだ。これ一個置いとくだけで、お前ら百人分の仕事が数秒で終わる。……あのアドス賢者様が、下層の民の苦労を減らすためにって無料で開放してくれたんだよ。感謝しな」
エルザの手から、泥まみれのスコップが滑り落ちた。
アルスが、善意で、誰かを助けようとして作った道具。
それが、皮肉にもエルザたちの「唯一の生きる糧」を奪い去ったのだ。
「……あは、は……。あいつが……あいつが世界を良くするたびに、私は死に近づいていくのね……」
エルザは暗い水路の中で、力なく笑った。
かつてアルスが捧げていた「肩代わり」という名の愛。それを踏みにじった彼女は今、アルスが世界中にバラ撒いた「新しい愛」によって、社会の隙間にすら居場所を失いつつあった。
湖畔には、楽しげな笑い声が響いている。
俺が新しく考案した「浄化魔法」が、世界を美しくし、そして誰かを絶望させていることなど、今の俺はもう知る必要もなかった。
アルスの作った便利な道具が、皮肉にもエルザたちの居場所を奪う結果となりました。
彼が世界を救えば救うほど、過去に彼を虐げた者たちの「存在意義」は消えていきます。
物語は完結に向け、一気に加速していきます。
アルスが手に入れたこの幸せを、最後まで一緒に見守ってください!
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