第43話:かつての聖女、かつての「荷物持ち」の仕事に就く。
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かつてアルスに押し付けていた「汚れ仕事」が、そのまま自分たちの唯一の生業になる。
この皮肉な運命の逆転こそが、第3章における断罪の形です。
アルスの高みと、彼女たちの深淵。その対比をさらに深めていきます。
ギルドを追い出され、王都の華やかな大通りからも疎外されたエルザたちは、場外の吹き溜まりにある下級労働者の斡旋所にいた。
「……仕事があるだけありがたいと思いな。お前さんたち、前科持ちの上にギルドから指名手配寸前のブラックリスト入りだろ? まともな店じゃ雇ってくれねえよ」
鼻をつまむような男が差し出したのは、王都の巨大な排水路の清掃任務だった。
魔導具や魔法を一切使わず、手作業で溜まった汚泥を掻き出す――かつて「暁の聖光」が最も蔑んでいた、底辺中の底辺の仕事だ。
「……やりなさいよ、ガイ。あんたの筋肉は、そのためにあるんでしょ?」
「……俺だけじゃない。お前もだ、エルザ。……もう、命令できる立場じゃないんだぞ」
ガイの冷めた言葉に、エルザは唇を噛み締め、震える手で泥まみれのスコップを握った。
かつてアルスが、自分たちの代わりに一手に引き受けていた「地味で汚い準備」の数々。
自分たちが華々しく魔物を倒している裏で、アルスがどれほどの泥にまみれ、どれほどの重荷を背負っていたか。
それを知ろうともせず、「無能」と切り捨てた報いが、今、全身を覆う悪臭と泥となって返ってきていた。
一方、俺はハルバート領に新設された「魔導図書館」の開館式典に出席していた。
「アルス様、この図書館の知識があれば、貧しい村の子供たちも魔法を学び、自立することができます。……貴方は、力だけでなく未来をも与えてくださるのですね」
司書となったリアナが、感極まった様子で俺に微笑みかける。
「いや、俺が持っている知識なんて、みんなで共有したほうが役に立つからね」
俺が式典のテープをカットすると、集まった何千人もの人々から、割れんばかりの拍手と祝福の声が上がった。
「賢者アルス様、万歳!」
「聖域の主、アルス様、ありがとう!」
その大歓声は、王都の下水道で泥を啜っているエルザたちの耳にも、遠く、微かに、けれど残酷なほどはっきりと届いていた。
「……あいつの声だ。……みんな、あいつを呼んでる。……なんで……。なんで私じゃないのよ……っ!」
エルザは泥の中に膝をつき、声を殺して泣いた。
かつてアルスが捧げていた献身は、今や世界を救う光となり、彼女たちの元には、自分たちがかつて吐き捨てた「泥」だけが残されていた。
自分たちがどれほど恵まれていたのかを、最も惨めな形で知ることになった旧パーティー。
アルスが築いた「誰もが学べる平和な世界」において、彼女たちだけが過去の罪という重荷に縛られています。
物語の結末に向け、アルスの幸せを願ってくださる皆様の声が執筆の原動力です。
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