第41話:救世主の穏やかな朝と、誰にも望まれない者たちの帰還。
第41話をご覧いただきありがとうございます。
いよいよ最終章、第3章の開幕です。
世界を救ったアルスが手に入れた「当たり前の幸せ」と、
自由になればなるほど、自分の罪に締め付けられるエルザたち。
この「存在価値の断絶」を、最後まで描き切ります。
ハルバート領の朝は、世界で最も清浄な魔力の風と共に訪れる。
かつて、ボロボロのローブを纏い、他人の魔力を肩代わりすることに明け暮れていた俺は、今、最高級のシルクに包まれて目を覚ます。
「アルス様、おはようございます。今朝はエルフの里から届いたばかりの果実で、冷たいスープを作りましたよ」
リアナが窓を開けると、庭園に住まう精霊たちがキラキラと輝き、俺の目覚めを祝福するように踊った。
「ありがとう、リアナ。……なんだか、贅沢すぎて今でも夢を見ているみたいだ」
「夢ではありませんよ。これは、あなたが世界を救い、みんなに愛されている証拠なのですから」
テラスに出れば、黄金の毛並みを輝かせたフェンリルが甘えるように鼻先を寄せてくる。
俺が少し指先を動かすだけで、領地の隅々まで豊かなマナが行き渡り、人々の笑顔が生まれる。
俺は今、自分の魔力を「誰かに強制される」のではなく、「自分の意志で誰かを幸せにする」ために使っていた。
一方その頃。
王都アステリアの外縁にある、薄暗い放免所。
鉱山での刑期を終え、数年ぶりに自由の身となったエルザ、ガイ、ミレーヌの三人は、門の外で立ち尽くしていた。
かつて王都を闊歩していた「暁の聖光」の面影はない。
エルザの肌は荒れ果て、自慢だった金髪はパサパサに乾いている。
「……戻ってきた。戻ってきたわよ、王都に。……さあ、まずはギルドに行って、私たちの名前を再登録させなきゃ」
エルザが虚勢を張るように歩き出すが、すれ違う民衆の視線は冷ややかだった。
街の至る所には、アルスの功績を讃える石像や、彼の領地で作られた魔法具が溢れている。
「ねえ……あの人たち、私たちのこと見て笑ってない?」
ミレーヌが怯えたように呟く。
彼女たちの耳に届くのは、かつての自分たちへの賞賛ではない。
「おい、見ろよ。あいつら……あの賢者アルス様を陥れた大罪人だろ?」
「よくもまあ、ツラを出せたもんだ。あの方のおかげで世界がこんなに平和になったっていうのに、自分たちの恥を晒しに来たのかね」
アルスが世界を救えば救うほど、世界は彼を愛し、彼を傷つけた者たちを拒絶する。
エルザたちが手に入れた「自由」は、どこへ行っても「賢者アルスを裏切った者」という消えない烙印に監視される、逃げ場のない檻でしかなかった。
俺は、シルフィア王女やルナリスが待つ朝食の席へと向かいながら、爽やかな風に目を細めた。
もう、あの三人のことを思い出すことさえない。
俺の世界は、俺が守りたい人たちの温もりだけで、十分に満たされていたから。
アルスの穏やかな日常が、かつての仲間たちにとっては最大の毒になる。
第1章から続くこの物語の「答え」を、完結に向けて一気に加速させていきます。
皆様のこれまでの応援が、アルスをここまで連れてきてくれました。
完結という最高の瞬間を、ぜひ一緒に見届けていただければと思います。
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