第35話:魔界が平和になった煽りで、聖女たちが魔物の残党に追い回される。
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アルスが魔界を救ったことで、図らずも旧パーティーがさらなる苦境に立たされることになりました。
善行が、悪意を持った者への最大の「ざまぁ」になる。これこそが本作の醍醐味です。
魔界の全回路を俺が「肩代わり」して再起動させたことで、魔界を覆っていた死の霧は完全に晴れ渡った。
魔王城のバルコニーから見下ろす景色は、かつての荒廃が嘘のように、生命の輝きに満ち溢れている。
「アルスよ……。貴殿の魔力が供給され始めてから、魔族の赤子の生存率が劇的に上がった。我が民を救ってくれたこと、言葉では言い尽くせぬ」
魔王が隣で深く頭を下げる。
「いえ。俺はただ、止まっている流れを繋いだだけですから」
俺がそう言って微笑むと、魔王は「その謙虚さが恐ろしいのだ」と苦笑した。
しかし、魔界が浄化されたことで、一つだけ予期せぬ事態が起きていた。
浄化された空気を嫌った凶暴な魔物の一部が、魔界から追い出されるようにして人族の領地、それも辺境の未開地へと逃げ出したのだ。
一方、王都から遠く離れた荒野の街道。
逃亡を続けるエルザ、ガイ、ミレーヌの三人は、かつてない恐怖に直面していた。
「……ひっ、なんで!? なんでこんな場所に、魔界にしかいないはずのAランクモンスターが……!?」
エルザの目の前には、魔界の浄化によって居場所を失い、飢え狂った『ブラッド・オーガ』の群れが立ち塞がっていた。
「ガイ! 盾で守りなさいよ! ミレーヌ、魔法は!?」
「無理だ……! 装備も魔力もない俺たちじゃ、あんなの……一発で終わりだ!」
「あうぅ……アルス……アルス、助けて……! どうして、どうしてこんな時だけいないのよぉ!」
かつてアルスが、彼らに指一本触れさせなかった魔物たち。
アルスが世界を救えば救うほど、その「余波」によって、アルスを捨てた者たちが追い詰められていくという皮肉。
彼女たちはまだ知らない。
自分たちを襲っている絶望の正体が、アルスが魔界に平和をもたらしたことによる「幸福の裏返し」であるということを。
俺は、魔王が用意してくれた最高級の魔酒を傾けながら、遠い空の下で起きている悲劇など知る由もなく、新しい世界の平穏を噛み締めていた。
魔界に平和をもたらしたアルス。彼の力は、今や世界の生態系すら変えようとしています。
追い詰められたエルザたちが、この窮地をどう「乗り越えられない」のか。
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