第27話:ドワーフの王、俺の「魔導コンロ」を見て技術の敗北を悟る。
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エルフに続き、ドワーフの王までもがアルスの元へ。
アルスの「便利になればいいな」という純粋な思いが、職人の世界に革命を起こしてしまいました。
エルフたちが領地の庭園を整え始めた数日後、今度は地響きと共に、頑強な体躯を持つ一行がハルバート領を訪れた。
大陸随一の採掘と鍛冶の技術を誇るドワーフ族。その王であるドランが、自慢の髭を震わせて俺の前に立っていた。
「おい、小僧……いや、アルス男爵! ガルド商会を通じて回ってきたあの『魔導具』……ありゃあ一体何なんだ!」
ドランが俺の目の前に叩きつけたのは、俺がリアナの家事の負担を減らすために適当に作った『魔導コンロ』だった。
「何って……ただのコンロですよ。魔石のエネルギーを熱に変換する回路を、少し効率化しただけです」
「『だけ』だと!? この微細な魔力刻印、そして熱伝導の安定性! わしらドワーフの熟練工が一生かけても辿り着けぬ境地だ! これを作った奴は神か変態のどちらかだと思っておったが……まさか、こんな若造だったとはな!」
ドランはコンロを抱え上げ、まるで国宝を眺めるような目で凝視している。
俺にとっては、火力の調整が楽になればいいなと思って指先で描いた回路に過ぎないのだが。
「頼む、アルス男爵! わしら一族を貴殿の領地で雇ってくれ! この技術の端くれでもいい、近くで学ばせてほしいんじゃ!」
ドワーフの王が、地位も名誉も投げ打って俺に頭を下げる。
結果、ハルバート領にはエルフに続き、大陸最高の鍛冶集団までもが移住することになった。
一方、王都の裏路地。
逃亡の果てにボロボロになったエルザたちは、質屋の軒下で雨を凌いでいた。
「……ねえ、エルザ。さっき通った商人が持ってたあの魔導具……アルスが作ったものなんですって。火も出ないのに料理ができる、魔法のような道具……」
ミレーヌの虚ろな言葉に、エルザは震える手で自分の汚れた胸元を掴んだ。
「……火なんて、魔法を使えばいいじゃない……。あいつの作るものなんて、全部紛い物よ……っ!」
だが、そのエルザの手からは、もう火を灯すための魔力すら一滴も溢れることはなかった。
かつてアルスが、彼女たちのためにどれほど繊細に、どれほど献身的に魔力を調整し、道具を整えていたか。
それを「当たり前」だと思っていた代償は、あまりにも残酷な形で彼女たちに突きつけられていた。
領地の工房からは、ドワーフたちの槌音と活気ある声が響いてくる。
俺の小さな工夫が、新しい仲間たちの情熱に火をつけ、領地をさらに強く、温かく変えていく。
俺は、リアナがコンロで淹れてくれた温かいお茶を飲みながら、その賑やかな音に耳を傾けていた。
ドワーフの王をさえ虜にするアルスの発想力。
彼の魔力が生み出す品々は、今や世界の産業そのものを塗り替えようとしています。
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