第10話:かつての仲間は装備を売り、俺は王家から贈られた屋敷で癒やされる。
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ついに物語の折り返し地点です。
王宮の加護を受けて「癒やされる」アルスと、文字通り身ぐるみを剥がされていく旧パーティー。
王都の特等地に建つ壮麗な白亜の屋敷。それが、今日から俺の家になった。
広い庭園には魔力が循環する噴水が踊り、室内には一流の職人が手がけた調度品が並んでいる。
「アルス様、お召し替えの準備が整いました。お風呂になさいますか? それとも、先にお食事になさいますか?」
ギルドを辞めて俺の専属使用人となったリアナが、清楚なメイド服姿で微笑む。
「……正直、まだこの広さに慣れなくて。でも、ありがとう、リアナさん」
「もう、『さん』はいりませんよ。私はあなたの使用人なのですから。……さあ、こちらへ。王家秘蔵の魔力回復香を焚いたお風呂です」
案内されたバスルームは、まるで宮殿のようだった。
湯船に浸かると、最高級の香油と、リアナが用意してくれた極上の癒やしが、これまでの疲れを溶かしていく。
かつてエルザたちと旅をしていた頃は、野宿か、ネズミの走る安宿が当たり前だった。
重い荷物を背負い、仲間の魔力を肩代わりしながら、冷たい床で眠る日々。
……それが今や、一国の王女に尊ばれ、愛らしい女性に傅かれている。
その頃。
王都のどん底、不衛生な路地裏にある質屋の前に、エルザたちの姿があった。
「……本気なの、エルザ? これを売ったら、私たちはもう戦えないわよ」
ミレーヌが震える手で抱えているのは、彼女が命の次に大切にしていた『賢者の杖』だった。
エルザの手には、かつてアルスが誕生日に贈った、聖なる加護を宿した首飾り握られている。
「うるさいわね! 背に腹は代えられないわよ! 借金を返さなきゃ、明日から牢獄行きなのよ!?」
質屋の老主人は、彼女たちが差し出した装備を、汚物でも見るような目で鑑定した。
「……ふん、手入れが最悪だ。魔力回路がズタズタじゃねえか。杖と首飾り、合わせて銀貨十枚だ」
「なっ……!? 冗談じゃないわ! それだけで金貨五十枚はする代物よ!」
「それは持ち主の腕が良かった時の話だ。今のあんたらの淀んだ魔力が染み付いた装備なんて、誰も買いやしねえよ。嫌なら他へ行きな」
老主人の冷酷な言葉が突き刺さる。
アルスがいた頃は、彼の【魔力肩代わり】によって装備の摩耗すら防がれ、常に最高の状態が保たれていた。彼らは、自分たちの存在そのものが、装備すら劣化させる「毒」になっていることに気づいていなかった。
「……くっ、分かったわよ。売りなさい、ミレーヌ!」
銀貨十枚。
かつての英雄パーティーの全財産は、アルスが昨夜食べたディナーの一皿分にも満たない額に成り果てた。
質屋を出たエルザは、遠くにそびえ立つアルスの屋敷――夜空を照らすその豪華な灯りを見上げ、血が滲むほどに唇を噛んだ。
「アルス……アルス……! どうしてあんただけが、そんな場所で……っ!」
彼女たちの絶望は、まだ底を知らない。
質屋の主人の言葉が突き刺さりますね。「持ち主の腕が良かった時」……そう、すべてはアルスのおかげだったのです。
旧パーティー、ついに武器すら失いました。ここからどう「自滅」していくのか。
「リアナさんのメイド姿最高!」「聖女様の自業自得っぷりが加速してる!」
と思っていただけたら、ぜひ【★★★★★】で応援をお願いします!
次回、アルスの屋敷を「あの女」が訪ねてきます。お楽しみに!




