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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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96/147

第95話  希  望

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追う。


2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまった。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかける。


一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまった。

リナは父親のセキュリティを突破できず・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第95話  希  望


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(藤岡が提示した、新しいタイムリミット・・・12月20日24時)


2012年12月20日(木)、19時ちょうど。目黒基地内。



ブーーー!!


リナ「・・・ ・・・」


部屋に鳴り響いたブザー音。その正体はすでにわかっている。


扉が開き、銃を持った覆面男が入って来ると・・・無言で食事を床に置いた。仕事を終えた男はすぐに部屋を出て、再び扉が閉まる。


そして部屋にアナウンス音声が鳴り響いた。


藤岡「さて・・・ ラストゲームのリミットまで5時間を切った。

    ここしばらく、キーボードを叩く時間が少ないようだが・・・?」


リナ「・・・ ・・・」


返事をする気力もない。必死に頭は動かしているが・・・打開策が一向に見つからない。


残り5時間はあるが・・・


リナ「・・・ ・・・」


ハドリアンズ・ウォールの壁が余りにも高すぎる。


藤岡「ふ・・・ 返事する気力もないか。

    まぁ、あと5時間はゲームタイム。


    いい結果を、期待しているぞ・・・ ふふふ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


一言も会話を交わさず、アナウンスは切れた。


リナ「・・・ ・・・」


食欲もないリナ。運ばれた食事を見ることなく・・・ただパソコンを見ながら、途方に暮れていた。



・・・ ・・・。


(藤岡「・・・ ふっ。羽鳥教授の娘といえど・・・

     さすがに、父親の壁は越えられぬか・・・」)


別の部屋で、藤岡はパソコンの画面を見つめていた。リナのいる部屋のモニター画面を見ながら、笑っている。


(藤岡「さて・・・ こちらは・・・」)


マウスを操作し、別ウィンドウを開く。


(藤岡「・・・ 動きはないか・・・」)


そのウィンドウには・・・ ベッドで横たわる慎吾の映像が映っていた。


(藤岡「ミスターボンド・・・ 寝たまま・・・ って事はないよな?」)



・・・ ・・・。



19時32分。リナのいる部屋。


リナ「・・・ ・・・」


もはや万策尽きたと思われたリナ。そのリナの一筋の光を照らすものがあった。


ド~ ミ~ ソ シ~ ドレド~ ♪


ザルツブルグ・モーツァルテウム大学のサイトから、懐かしい曲が鳴り響く。


(リナ「・・・ K(ケッフェル).545 ・・・」)


父親の魁斗と、母親の瞳は・・・この曲をきっかけに付き合ったと聞いた。それゆえ、4年前のクリスマスには・・・


この曲を家族のみんなに演奏してやろうと、ヒロにレッスンをつけてもらった。結局クリスマスが来る前に・・・ ヒロは亡くなった。行方不明だった父親も・・・年が明けた後(のち)、遺体で発見された。


リナ「・・・ ・・・」


この曲を聴くと・・・ 嫌でもヒロと父親を思い出す。


(リナ「ヒロ先生・・・ パパ・・・


     私・・・ どうしたら・・・」)


このまま5時間が過ぎれば・・・ 母親と妹も失い、天涯孤独の身となる。絶望的な状況で、とうとう涙をこぼしてしまった。



リナ「 !? 」


突如、背後に気配を感じた。


リナ「・・・ ・・・」


部屋の中には、もちろん誰もいない。背後にある扉をじっと見つめる。


リナ「・・・ ・・・」


立ち上がり、扉の所へ近づくと・・・ 扉に耳を当てた。


リナ「・・・ ・・・」


扉の向こうに・・・ 何者かがいるような、いないような・・・そんな気配を感じる。


リナ「な・・・ 何・・・? だれか・・・ いるの・・・?」


胸騒ぎが起こり、徐々にそれが大きくなっていく。


リナ「・・・ ・・・」


扉の向こう・・・ 誰かがいると確信した。覆面男でもなければ、藤岡でもない・・・。


リナ「慎吾・・・?」


向こうを確認したいが、扉を開くことは出来ない。


リナ「・・・ ・・・」


再びパソコンのところへ戻り、ずっと表示されている慎吾を映し出すカメラ映像をチェックする。


リナ「・・・ ・・・」


ベッドの上に横たわる慎吾。そして、横にあるメディカルモニタでは・・・心電図に動きはない。


いや・・・


リナ「・・・ し、心臓が・・・ 動いている・・・?」


わずかだが、心電図が波打つ波形を映し出しているように見える。


リナ「・・・ ・・・」


非常に微妙ではあるが・・・確かに波形を描いている・・・ように見える。


だが・・・


父親に聞いた事がある。亡くなった直後も、しばらく心臓は動き続ける時があると・・・


(リナ「でも、あいつが【慎吾は死んだ】と言ってから、だいぶ経ってる。

     それに、もし死んだとしたなら・・・


     心電図や脈拍をチェックする・・・ 意味はないはず・・・」)


よくよく考えれば・・・死体に、数時間もメディカルチェックを行うことは不自然。


(リナ「何か・・・ 何かが・・・」)


リナの頭の中で、何かが交錯する。


リナ「 !? 」


再び背後から気配を感じ、後ろを振り返るが・・・ 扉が見えるだけで、何も代わり映えのしない室内のまま。


(「K.545だ!」)


リナ「誰!?」


確かに聞こえた。扉の向こうに・・・ 誰かがいる。そう、リナは確信した。しかし厳重なロックがかかっている扉は、開ける事などできはしない。


リナ「・・・ K(ケッフェル).545・・・」


リナは両手で頭を抱えながら・・・パソコンから流れてくるモーツァルトの【ピアノソナタ第16番】(K.545)を集中して聴きいる。


(リナ「何・・・? この曲に・・・ 何かあるっていうの・・・?」)


目を閉じ、妹が誘拐された日の事を思い出す。そして今に至るまでの事を振り返り始めた。


リナ「・・・ ・・・」


必死にあらゆる場面、あらゆる状況を思い出すリナ。


(リナ「・・・ あった・・・」)


そして、あの事を思い出した。


リナ「・・・ ・・・」


ゆっくり目を開き・・・ 室内に設置されているカメラの位置を確認した。


リナ「・・・ ・・・」


カメラは2台。リナはテーブルの上にあった、鉛筆を握りしめ・・・カメラに見えないように、用紙に何かを書き始めた。


リナ「確か・・・」


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どんな数字も一度見たら忘れない・・・リナがかつて「数字依存症」と読んでいた特殊能力。実際はヒロと共に、湾岸警察署の7階から落ちた時に頭を強打し、それがサヴァン症候群となって得た能力だ。


リナの母親に届いたメール。ハドリアンズ・ウォールをくぐり抜け・・・しかも慎吾が言うには、けしてこれは中身を破壊されたトラッシュメールなんかではない。


(リナ「何かを伝えようとしている・・・暗号だって、慎吾は言ってた」)


そのメールの内容を16進数で覚えていたため、アルファベットの部分も正確に思い出すことができた。


リナ「・・・ ・・・」


今度は「K.545」のスコア(楽譜)を、簡単に殴り書きする。


リナ「・・・ ・・・」


メール内容と、モーツァルトのスコアを交互に見つめた。



挿絵(By みてみん)



わずかに動いている慎吾の心臓


     ハドリアンズ・ウォールをくぐり抜けたメール


 モーツァルトのK.545


   そして死んだはずの慎吾に、メディカルモニタをつけた藤岡



リナ「・・・ ・・・」


何かが見えそうで、見えない。そんなモヤモヤした状態がしばらく続く。そして・・・


リナ「も・・・ もし・・・」


ある1つの事を仮定すれば・・・ 全てこれらは一直線に繋がっている。


リナは藤岡の監視下にあるパソコンを使わず、紙の上に鉛筆をはしらせ、何かの計算を始めた。


(リナ「仮定が正しいならば・・・」)


家族全員が助かる道が見えてくるはずだ。


そして・・・



(リナ「で・・・  できた!!!」)



20時54分。とうとうリナは・・・



母親に届いたメールの解読に成功した。



その内容は・・・  リナの仮定が正しい事を示し・・・



そして・・・  



再び家族でクリスマスを迎える事ができる・・・その光でもあった。





           (第96話へ続く)

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次回予告


タイムリミットを迎えたリナ。


リナは2つの大学のサーバ侵入に成功していた!!


そして藤岡から・・・


次回 「 第96話  ゲームクリア 」

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