第95話 希 望
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾と共に誘拐犯を追う。
2人は黒幕が警視庁捜査官の藤岡である事を突きとめるが、彼等のアジトで捕まってしまった。藤岡はリナに、ウィーン大学のサーバに侵入すれば、家族を解放するともちかける。
一方慎吾は、藤岡に自白剤を注射された直後に心停止してしまった。
リナは父親のセキュリティを突破できず・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第95話 希 望
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(藤岡が提示した、新しいタイムリミット・・・12月20日24時)
2012年12月20日(木)、19時ちょうど。目黒基地内。
ブーーー!!
リナ「・・・ ・・・」
部屋に鳴り響いたブザー音。その正体はすでにわかっている。
扉が開き、銃を持った覆面男が入って来ると・・・無言で食事を床に置いた。仕事を終えた男はすぐに部屋を出て、再び扉が閉まる。
そして部屋にアナウンス音声が鳴り響いた。
藤岡「さて・・・ ラストゲームのリミットまで5時間を切った。
ここしばらく、キーボードを叩く時間が少ないようだが・・・?」
リナ「・・・ ・・・」
返事をする気力もない。必死に頭は動かしているが・・・打開策が一向に見つからない。
残り5時間はあるが・・・
リナ「・・・ ・・・」
ハドリアンズ・ウォールの壁が余りにも高すぎる。
藤岡「ふ・・・ 返事する気力もないか。
まぁ、あと5時間はゲームタイム。
いい結果を、期待しているぞ・・・ ふふふ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
一言も会話を交わさず、アナウンスは切れた。
リナ「・・・ ・・・」
食欲もないリナ。運ばれた食事を見ることなく・・・ただパソコンを見ながら、途方に暮れていた。
・・・ ・・・。
(藤岡「・・・ ふっ。羽鳥教授の娘といえど・・・
さすがに、父親の壁は越えられぬか・・・」)
別の部屋で、藤岡はパソコンの画面を見つめていた。リナのいる部屋のモニター画面を見ながら、笑っている。
(藤岡「さて・・・ こちらは・・・」)
マウスを操作し、別ウィンドウを開く。
(藤岡「・・・ 動きはないか・・・」)
そのウィンドウには・・・ ベッドで横たわる慎吾の映像が映っていた。
(藤岡「ミスターボンド・・・ 寝たまま・・・ って事はないよな?」)
・・・ ・・・。
19時32分。リナのいる部屋。
リナ「・・・ ・・・」
もはや万策尽きたと思われたリナ。そのリナの一筋の光を照らすものがあった。
ド~ ミ~ ソ シ~ ドレド~ ♪
ザルツブルグ・モーツァルテウム大学のサイトから、懐かしい曲が鳴り響く。
(リナ「・・・ K.545 ・・・」)
父親の魁斗と、母親の瞳は・・・この曲をきっかけに付き合ったと聞いた。それゆえ、4年前のクリスマスには・・・
この曲を家族のみんなに演奏してやろうと、ヒロにレッスンをつけてもらった。結局クリスマスが来る前に・・・ ヒロは亡くなった。行方不明だった父親も・・・年が明けた後、遺体で発見された。
リナ「・・・ ・・・」
この曲を聴くと・・・ 嫌でもヒロと父親を思い出す。
(リナ「ヒロ先生・・・ パパ・・・
私・・・ どうしたら・・・」)
このまま5時間が過ぎれば・・・ 母親と妹も失い、天涯孤独の身となる。絶望的な状況で、とうとう涙をこぼしてしまった。
リナ「 !? 」
突如、背後に気配を感じた。
リナ「・・・ ・・・」
部屋の中には、もちろん誰もいない。背後にある扉をじっと見つめる。
リナ「・・・ ・・・」
立ち上がり、扉の所へ近づくと・・・ 扉に耳を当てた。
リナ「・・・ ・・・」
扉の向こうに・・・ 何者かがいるような、いないような・・・そんな気配を感じる。
リナ「な・・・ 何・・・? だれか・・・ いるの・・・?」
胸騒ぎが起こり、徐々にそれが大きくなっていく。
リナ「・・・ ・・・」
扉の向こう・・・ 誰かがいると確信した。覆面男でもなければ、藤岡でもない・・・。
リナ「慎吾・・・?」
向こうを確認したいが、扉を開くことは出来ない。
リナ「・・・ ・・・」
再びパソコンのところへ戻り、ずっと表示されている慎吾を映し出すカメラ映像をチェックする。
リナ「・・・ ・・・」
ベッドの上に横たわる慎吾。そして、横にあるメディカルモニタでは・・・心電図に動きはない。
いや・・・
リナ「・・・ し、心臓が・・・ 動いている・・・?」
わずかだが、心電図が波打つ波形を映し出しているように見える。
リナ「・・・ ・・・」
非常に微妙ではあるが・・・確かに波形を描いている・・・ように見える。
だが・・・
父親に聞いた事がある。亡くなった直後も、しばらく心臓は動き続ける時があると・・・
(リナ「でも、あいつが【慎吾は死んだ】と言ってから、だいぶ経ってる。
それに、もし死んだとしたなら・・・
心電図や脈拍をチェックする・・・ 意味はないはず・・・」)
よくよく考えれば・・・死体に、数時間もメディカルチェックを行うことは不自然。
(リナ「何か・・・ 何かが・・・」)
リナの頭の中で、何かが交錯する。
リナ「 !? 」
再び背後から気配を感じ、後ろを振り返るが・・・ 扉が見えるだけで、何も代わり映えのしない室内のまま。
(「K.545だ!」)
リナ「誰!?」
確かに聞こえた。扉の向こうに・・・ 誰かがいる。そう、リナは確信した。しかし厳重なロックがかかっている扉は、開ける事などできはしない。
リナ「・・・ K.545・・・」
リナは両手で頭を抱えながら・・・パソコンから流れてくるモーツァルトの【ピアノソナタ第16番】(K.545)を集中して聴きいる。
(リナ「何・・・? この曲に・・・ 何かあるっていうの・・・?」)
目を閉じ、妹が誘拐された日の事を思い出す。そして今に至るまでの事を振り返り始めた。
リナ「・・・ ・・・」
必死にあらゆる場面、あらゆる状況を思い出すリナ。
(リナ「・・・ あった・・・」)
そして、あの事を思い出した。
リナ「・・・ ・・・」
ゆっくり目を開き・・・ 室内に設置されているカメラの位置を確認した。
リナ「・・・ ・・・」
カメラは2台。リナはテーブルの上にあった、鉛筆を握りしめ・・・カメラに見えないように、用紙に何かを書き始めた。
リナ「確か・・・」
574A7-2-17B-6-99F26B4452-79B-3-1B77847-2
5-194DA-99-3BF06BF2DF5B488ACF0-6E-4F066
06-20AC23-63F0B06F57E9F3AADEC-43719-9-8
-4-47-A8-4C-4-19-96B8C-41D82-278-305-D7
-1-93A9-1B-863-249-75BA-84-98-51AB-4-C5
4CF1-6B-67-3-2-7593F08-A0D0129-3-1-523-1
-942-AA-6541-2-1-90697B ・・・
どんな数字も一度見たら忘れない・・・リナがかつて「数字依存症」と読んでいた特殊能力。実際はヒロと共に、湾岸警察署の7階から落ちた時に頭を強打し、それがサヴァン症候群となって得た能力だ。
リナの母親に届いたメール。ハドリアンズ・ウォールをくぐり抜け・・・しかも慎吾が言うには、けしてこれは中身を破壊されたトラッシュメールなんかではない。
(リナ「何かを伝えようとしている・・・暗号だって、慎吾は言ってた」)
そのメールの内容を16進数で覚えていたため、アルファベットの部分も正確に思い出すことができた。
リナ「・・・ ・・・」
今度は「K.545」のスコア(楽譜)を、簡単に殴り書きする。
リナ「・・・ ・・・」
メール内容と、モーツァルトのスコアを交互に見つめた。
わずかに動いている慎吾の心臓
ハドリアンズ・ウォールをくぐり抜けたメール
モーツァルトのK.545
そして死んだはずの慎吾に、メディカルモニタをつけた藤岡
リナ「・・・ ・・・」
何かが見えそうで、見えない。そんなモヤモヤした状態がしばらく続く。そして・・・
リナ「も・・・ もし・・・」
ある1つの事を仮定すれば・・・ 全てこれらは一直線に繋がっている。
リナは藤岡の監視下にあるパソコンを使わず、紙の上に鉛筆をはしらせ、何かの計算を始めた。
(リナ「仮定が正しいならば・・・」)
家族全員が助かる道が見えてくるはずだ。
そして・・・
(リナ「で・・・ できた!!!」)
20時54分。とうとうリナは・・・
母親に届いたメールの解読に成功した。
その内容は・・・ リナの仮定が正しい事を示し・・・
そして・・・
再び家族でクリスマスを迎える事ができる・・・その光でもあった。
(第96話へ続く)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回予告
タイムリミットを迎えたリナ。
リナは2つの大学のサーバ侵入に成功していた!!
そして藤岡から・・・
次回 「 第96話 ゲームクリア 」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




