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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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第89話  選ばれし者、選ばれざる者

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


リナと慎吾は、黒幕が藤岡である事を突きとめ・・・

リナの妹がいる部屋の直前まで来たが、敵のトラップにかかってしまう。


藤岡は慎吾達の命を賭け、ゲームをしようと言い出し・・・

2人はロシアンルーレットを、強制的にさせられることになった。


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   第89話  選ばれし者、選ばれざる者


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月19日(水)、23時2分。目黒基地内。


リナ「・・・ ・・・」


ゴクリと唾を飲み込み、目の前の銃を見つめるリナ。


藤岡「君の要求は聞いた。後は君が・・・ ゲームを進行するだけだ」


リナ「・・・ ・・・」


藤岡の言う通り。彼は自分の要求を受け入れ、ゲームに参加・・・そして生還した。


リナ「・・・ ・・・」


その場しのぎの達人のリナだが・・・ 絶体絶命の状況に、自ら追い込んでしまった。


慎吾「大丈夫です・・・。絶対弾は出ません」


横で慎吾が同じ事を繰り返し言い続けているが・・・


それも耳に入らない。


銃を見続けたまま・・・





10分以上が過ぎた。




藤岡「いいのか? リミットまであと45分程だぞ?」


リナ「・・・ ・・・」


男2人は・・・銃口を自分の頭にあて、確かに引き金をひいた。


しかし・・・


(リナ「冷静に考えなくても・・・ 正気の沙汰じゃない・・・」) 


とてもじゃないが、銃を自分の頭にあてる行為など・・・


(リナ「そんな真似・・・ 出来るわけがない・・・」)


慎吾「・・・ ・・・」


10分以上、リナに「弾は出ない」と言い続けていた慎吾だが・・・微動だにしないリナを見て、次の策を考えていた。


慎吾「リ、リナ先輩・・・ まずは銃を握って下さい。

    頭にあてる必要はないので・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「自分の事ではなく・・・ 妹さんの事を考えて・・・」


リナ「・・・ 雛(ひな)・・・」


意識はしてないが・・・リナは妹の名前を口にした。


慎吾「そうです。僕らは生きてここを出る。妹さんのためにも!

    そのために・・・ まずは銃を握る。


    3人でここを脱出するために・・・」


リナ「・・・ ・・・」


ゆっくりと・・・ リナはテーブルの上に自分の右手を出した。


藤岡「・・・ ・・・」


藤岡がじっと見つめる中・・・ リナは弱々しく銃を握りしめた。


(藤岡「ふふ。ここから自分の頭に・・・

     銃を持っていけるか?」)


慎吾「次は銃口を下にしたまま・・・右肩に銃をのせて下さい。

    絶対、他の人には向けないで・・・


    そして、引き金にも触らないで・・・」


引き金に触るな・・・ 慎吾の考えた作戦の1つだ。


ゆっくりと・・・リナは慎吾の言うとおり、銃を肩にのせた。銃口は下を向いたままだ。


慎吾「とにかく引き金には触らないで・・・銃を水平にしましょう」


リナ「・・・ ・・・」


手を動かせないリナ。


慎吾「妹さんのために・・・ 銃を水平に」


慎吾は2つのキーワードで、リナにロシアンルーレットをさせる作戦だ。


1つは【引き金に触るな】。そしてもう1つは【妹のために】。


リナ「・・・ ・・・」


作戦が功を奏してか、リナは肩の上で銃を水平するところまで来た。銃口は、リナの首筋を向いている。


リナ「ハァ・・・ ハァ・・・」


少しずつ呼吸が乱れていくのがわかる。


慎吾「大丈夫です。落ちついて・・・。

    そのまま・・・ 銃を水平に持ち上げましょう。


    引き金には触らず・・・ 妹さんの事だけを考えて」


リナ「・・・ 雛(ひな)・・・」


だんだん自分の意志なのか、慎吾の催眠術に動かされているのか、判別が出来なくなってきた。


銃を水平に持ち上げると・・・


銃口が、ちょうどこめかみのあたりに来たところでピタリと止めた。必然的に、人差し指が引き金に触れている。


慎吾「そのまま・・・目を閉じて・・・」


リナ「・・・ ・・・」


言う通りリナは目を閉じた。


藤岡「・・・ ・・・」


その様子をじっと守る藤岡。


(藤岡「ここまで、持ってこさせるとはな・・・。

     はたして、ここから・・・ 引き金を引かせる事ができるか?


     腕の見せ所だ・・・」)


小さく笑いながら、楽しむように2人を睨み続けた。


慎吾は右手にパワーストーンを握りしめたまま、リナの背中に左手で軽く触れる。そして意識を集中した。


深く呼吸した後、慎吾は目を見開いてリナに声をかける。


「絶対に弾は出ない。俺を信じろ。 

  俺を信じて・・・引き金をひけ」


目を閉じたリナの脳に・・・


慎吾の声が、ヒロの声に変換されて入ってきた。


(リナ「ヒロ先生・・・」)


目を閉じたまま・・・ 涙がこぼれ落ちる。


「リナ・・・ 俺のために・・・ 引き金をひいてくれ」


藤岡「・・・ ・・・」


リナは深く息を吸い込み・・・ 呼吸を止める。


「あの時言ったろ? 俺と君の想い出の中に・・・ 真実はある」


涙があふれるリナ。リナの脳の中で・・・ ヒロとの想い出が走馬燈のように駆け巡り始めた。


「俺の事だけを思い出せ!  そして引き金をひくんだ!」


ピアノをレッスンしてもらった事、学校で助けてもらった事、2人でテロリストの手から逃げた事・・・


「今だ!! ひくんだ!!」


リナ「・・・ ヒロ先生・・・ 愛してる・・・」




カシャーン・・・




3度目の無機質な音が、部屋に鳴り響いた。



慎吾「そのままゆっくり・・・ 銃をテーブルの上に置いて下さい・・・」


目を閉じたままリナは・・・ ゆっくりと銃を置いた。


直後頭をテーブルの上につけ、突っ伏した形になる。


リナ「・・・ ・・・」


涙が止まらない。そして、何がどういう状況なのか・・・把握出来ない。自分が生きているのかすらも・・・


慎吾「お疲れ様です・・・ リナ先輩・・・

    しばらく休んでて下さい」


慎吾の声も耳に入ってこないリナ。


藤岡「・・・ ・・・」


その様子をじっと見ていた藤岡。


藤岡「よく引き金を引かせたものだ・・・ そして生還するとはな。

    見事なものだ・・・」


これで、ゲームに参加している慎吾、藤岡、リナは1回ずつ引き金を引いた事になる。


藤岡「君に・・・【女】を操る能力はないと思っていたが。

    ふふ。この数時間だけで・・・ 君は驚かされる事ばかりだ」


しかし引き金は・・・2回ひいて、初めてゲームクリアとなる。


藤岡「今から君を・・・ ミスターボンドと呼ぶ事にしよう。

    もっとも4年前、そう呼ばれた男は・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


藤岡「死んだがな」


藤岡を睨みながら・・・慎吾は銃を握った。


藤岡「残り3発中、1発は実弾。確率は33%。

    ミスターボンド・・・ 引き金をひけるか?」


慎吾はゆっくりと銃口を、自分のこめかみにあてる。


慎吾「・・・ ・・・」



そこからしばらく・・・ 



引き金を引く事はできなかった。




藤岡「引き金をひきさえすれば・・・

    君は2度、引き金をひいた事になる。


    それはすなわち・・・ゲームクリア確定となる。

    引き金をひき・・・ そして実弾がでなければだがな・・・」


藤岡は小さく笑っていた。


慎吾「・・・ ハァ、ハァ・・・」


呼吸が乱れ、銃を握る手は震えが大きくなる。


藤岡「さぁ・・・ミスターボンド。君は選ばれし者か?」


興奮気味に藤岡は慎吾に声をかけてきた。


藤岡「それとも・・・  選ばれざる者か!?」


慎吾「・・・ か・・・ はぁ・・・ くぅ・・・ はぁ・・・」


満足に呼吸が出来ない慎吾を見ながら・・・藤岡は確信していた。


慎吾「く・・・ ぐくく・・・ 」


彼がルールを破り、銃口をこちらに向ける事が無いことを。


慎吾「あ・・・ あああああ!!!」


そして・・・・



カシャーン!!




彼が選ばれし者だという事を。





           (第90話へ続く)

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次回予告


最初にゲームをクリアしたのは慎吾だった。


そして藤岡を・・・ 


残り2発中、実弾1発のロシアンルーレットに追い込んだ。



次回 「 第90話  フィフティ・フィフティ 」

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