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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
83/147

第82話  携帯に隠された秘密

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐犯の罠に陥った慎吾とリナは、誘拐と殺人の濡れ衣を着せられる。

後藤に逮捕されるも、慎吾は堂島の銃を奪いリナと逃走。


そして2人は・・・ 黒幕の元へ向かう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第82話  携帯に隠された秘密


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月19日(水)、午前1時37分。都内某所。


慎吾とリナの2人は、人通りの少ない通りを歩いていた。


慎吾「やっぱり・・・ 東京はすごいです」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「こんな深夜でも、欲しいのがすぐ手に入るんだから」


慎吾は満足そうに、小さめの紙袋を抱いている。


リナ「なんで・・・ 墨汁ぼくじゅうとアロンアルファ・・・?」


つい先ほど、慎吾は24時間ストアーである物を購入た。大きめの墨汁、瞬間接着剤、そして・・・


慎吾「きりもですよ。これで、追跡装置を作ります」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「今、犯人を捕まえても、妹さんの居場所は示してくれないでしょう。

    リナ先輩の妹さんこそが、犯人にとって切り札ですからね」


犯人の目線に立つ慎吾だが、リナは「確かに・・・」と思わされる。


慎吾「だから・・・ 彼は必ず妹さんの所に行く。

    そこを追いかけます。そのための追跡装置です」


リナ「・・・ ・・・」


小さな溜息をついたリナ。やがて首を縦に振った。


リナ「まぁ・・・ ここまで来たら・・・ 任せるわ。

    妹さえ助けてくれれば・・・ 私はそれでいい」


慎吾「任せて下さい。さぁ、行きましょう。病院へ・・・」


リナ「うん・・・」



・・・ ・・・。


午前1時37分。湾岸警察署。


後藤「どうだ?」


とあるラボの一室。後藤は白衣を着た初老の男に声をかける。


男「中に・・・ 見慣れない、何かがありますね。携帯電話の物ではない・・・」


その男は、モニターを見ながら応えた。モニターの向こうには、白い大きな電子機器がある。

後藤は機器を操作する男の肩に手をかけ、若干申し訳なさそうに口を開いた。


後藤「こんな時間にすまんな。

    科捜研のあんたがいてくれて、助かったよ。」


               ※ 科捜研 = 科学捜査研究所


男「いえ。ちょうど布田駅、府中本町駅での爆破騒ぎもあったので。

   ロッカーに仕込まれていた装置の分析を依頼されてましたから」


後藤「そうか・・・ で? 中には?」


視線の先にあるのはX線装置。その中に、後藤の携帯電話が設置されている。


男「くわしくは、解体しないとわかりません。ただ・・・」


後藤「ただ?」


男「何かの液体のような物も入っています。これは・・・

   経験上、爆発物が仕込まれている可能性があります」


後藤「ば・・・爆発物が?」


男「えぇ。処理班を呼ぶべきですです」


後藤「・・・ 爆発物処理班か・・・ じゃぁ、機動隊だな」


男「私が、朝一で機動隊に連絡しましょう」


後藤「ダメだ。今すぐ呼ぶ」


そう言うと後藤は、室内にある電話に手をかけた。何か言いたげな男に、後藤は次の指示を出す。


後藤「一刻を争うんでな。

    悪いがそちらは、あのアタッシュケースも至急調べてくれ」


後藤が指さした先には・・・ 4つのアタッシュケースがあった。


男「わかりました・・・」



・・・ ・・・。


午前2時44分。都立病院、地下駐車場。


慎吾「ありました。あの車です・・・」


慎吾は1つの車を見つけ、指さす。


リナ「なんで、わかんのよ・・・? 普通の車にしか見えないんだけど?」


慎吾「まぁ・・・ 一言で言えば、霊能力・・・ですね」


リナ「・・・ ・・・」


もはや、慎吾の理解不能な行動や言動は慣れてしまったリナ。


慎吾「えっと・・・ 防犯カメラがあっちにあるから・・・

    ここなら・・・」


慎吾とリナは、大きめのバンの後ろに身を隠すように移動した。


リュックの中から紙袋を取り出した慎吾は、さらにその中から大きめの墨汁ときりを取り出す。


墨汁の底に錐を垂直に立て、小さな穴を開ける。時折墨汁を上下に回し、その穴から数滴の墨汁が、一定間隔で垂れるのを確認する。


(「うん・・・ いい感じだ」 )


横で見ていたリナが、思わず口を開いた。


リナ「それが・・・ 追跡装置?」


慎吾は笑顔で応える。


慎吾「えぇ。もちろん」


リナ「あのさ・・・

    GPSみたいな装置で、電波を発生させるのが確実じゃない?


    後は受信機で・・・」


慎吾は首を横に振った。


慎吾「相手は電子機器のプロですよ。そういう相手には・・・

    デジタルより、アナログの方がいいんです」


リナ「ふ~ん・・・」


リナは唇をとんがらせるも、納得した表情を見せる。


慎吾「さて・・・ リナ先輩、ちょっと待ってて下さい」


そう言うと慎吾は、狙った車に向かって行った。

車の後ろで身をかがめると、後方左側のタイヤ・・・その内側に、墨汁を瞬間接着剤で接着する。


墨汁の底はタイヤの中心を向くよう、ちょうど午後8時を示す時計の短針のように取り付けた。


(慎吾「こ、これで、いいんだよね・・・? 多分・・・ 」 )


しばらく自信なさげにそれを見つめた後・・・ リナの元へ戻っていった。



・・・ ・・・。


午前3時38分。湾岸警察署、会議室。


会議室の一番前、マイクを握った後藤。会議室には、深夜にも関わらず、50人近くの警察官や捜査官が集まっている。 今現在、動ける者のほぼ全てだ。


後藤「諸君。こんな時間に招集をかけて申し訳ない。

     だが、今現在進行中である・・・

 

     連続殺人事件の犯人の逮捕状が取れた」


マイクを通して、後藤が話を始めた。


「あの大学生カップルの逮捕状は、すでに取ったはずでは?」


1人の警察官が後藤に声をかける。


後藤「大学生カップルに関しては、現在まだ捜索中。

     もちろんこの事件に関わる重要人物として、全力で追っている」


そう言いながらも後藤は・・・ あの2人が加害者ではない事を、すでに確信していた。


後藤「この連続殺人事件の犯人は・・・

    現在進行中の別の誘拐事件・・・その犯人と同一であると断定」


瞬間、会議室はどよめいた。


連続殺人事件、そして誘拐事件・・・この2つの事件が同一犯による犯行である事は、藤岡から聞かされていた後藤。


それを署内の者に話すのは初めてだ。


会議室のざわめきの中・・・


後藤はマイクを握り直し、大きな声で話を続けた。


後藤「現在、誘拐された羽鳥雛子は未だ行方不明。

     さらには、【ABC】連続殺人も未だ進行中。


     そこで・・・

     犯人逮捕のための作戦を、今から説明する!」



・・・ ・・・。


同時刻。都内のとあるネットカフェ。


慎吾「どうですか・・・?」


慎吾は、パソコンを操作するリナに声をかけた。


リナ「くわしくは載ってないけど・・・

    緊急の対策会議らしきものを開いているみたいね」


警視庁のサイトにアクセスしたリナは・・・サイト内のあらゆる最新情報に目を通す。


慎吾「僕らの事は?」


リナ「載ってる・・・。追跡中だって・・・」


慎吾「まぁ・・・ それは覚悟の上ですから。他には?」


リナ「【G】駅での厳重な警備網をしいて・・・

    私達を追跡。そして対策会議・・・」


更新時間の新しい情報を、1つ1つチェックしていくリナ。


リナ「・・・ ・・・」


その中に・・・


布田駅で殺された女性の報告書もあった。その情報に目を通した瞬間・・・


慎吾「ど、どうしました!? リナ先輩!?」


突然リナは目頭を押さえ、ボロボロと涙をこぼし始めた。


リナは首を横に振りながら、声を絞り出す。


リナ「ううん・・・ ごめん・・・」


慎吾の前で、涙目になった事はあれど・・・ 涙をこぼした事は1度もない。


勝ち気な性格で、けして人に弱みを見せる事は無いリナだが・・・


人前で涙を流したのは・・・ ヒロに次いで2回目だ。


リナ「・・・ ・・・」


リナが目を通した、【F】駅での事件報告書。


深田ふかだ文江ふみえという女性が、腹部をフォークで刺されて殺害されたとあった。


(リナ「深田先生・・・」)


ヒロと出会う前、リナのピアノの先生だった。リナが小さい頃から・・・長い間、リナにピアノをレッスンしてくれた恩師である。


とても優しくて、リナがうまく弾けない時も、笑顔で励まして・・・


ヒロとタイプは違えど・・・リナが心から尊敬するピアノの先生だった。


その先生が殺された事は・・・ リナには現実として受け止めるには、あまりにも辛かった。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾の前だというのに、涙が止まらない。


リナ「 ? 」


ふと、慎吾がハンカチを差し出しているのに気づいた。


慎吾「あ、いや・・・ すいません・・・」


リナはハンカチを受け取ると、そのまま涙をぬぐう。


ひとしきり涙を流した後・・・ 哀しみよりも怒りがこみ上げてきた。


(リナ「絶対に・・・ 許さない・・・」)


そして慎吾に声をかける。


リナ「慎吾・・・」


慎吾「な、何です・・・?」


慎吾もリナの怒りのオーラを敏感に感じ取る。


リナ「私の妹・・・ 絶対に助かるわよね?」


大きく頷いた慎吾は、芯の通った声で応えた。


慎吾「もちろんです! 僕がいれば、千人力ですよ!」


リナ「・・・ ふん・・・」


相変わらず似合わないセリフを口にする慎吾。


リナ「信じてるわよ・・・」


慎吾「えぇ。後は待ちましょう・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「しばらくすれば・・・

     妹さんの場所へ案内してくれるはずです。



     藤岡さんが・・・ 」



・・・ ・・・。


ざわめく会議室・・・ 


後藤「【G】駅での相手の出方は、間違いなく今説明した通り!」


マイクを握り直した後藤は、今一度大きな声をあげた。


後藤「羽鳥雛子の命が最優先事項! 

     そして警察の威信をかけ・・・ 



     容疑者・藤岡二三弥を必ず捕まえる!!」




             (第83話へ続く)

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次回予告


藤岡は病院を出た後・・・ 警察の尾行を察知し、行動に出る。


藤岡の運転する車は、警察も慎吾らも衛星を通じて監視していたが・・・


やがて藤岡の車を見失う。


しかしアナログの追跡装置が功を奏し・・・


慎吾とリナは、ある場所へ辿り着いた!



次回 「 第83話  真犯人の行方 」

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