第83話 真犯人の行方
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐と殺人の濡れ衣を着せられたリナと慎吾は、警察の銃とパトカーを奪い逃走。
そして、2人は・・・
黒幕・藤岡が動き出すのを静かに待つ・・・。
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第83話 真犯人の行方
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月19日(水)、午前4時47分。都内のとあるネットカフェ。
慎吾「ほら、見て下さい。やっぱり、そうですよ」
リナ「・・・ ・・・」
リナと慎吾はネットカフェのPC画面を見ている。
リナは自分の携帯電話、そして羽鳥邸に設置されている固定電話の電話会社サーバに侵入。今までの電話履歴を画面に映し出していた。
最初に誘拐犯から電話があったのは・・・
12月12日(水)午後6時31分。リナの携帯。着信は妹の携帯。
ちょうど1週間前・・・ これが全ての始まりだった。
慎吾「おそらく藤岡さんは・・・
リナ先輩の部屋で、パソコンを見つけられなかった。
そこで、リナ先輩のお母さんよりも先に電話したんです」
リナ「しかも妹の携帯で・・・ 私の部屋から・・・」
同日、午後11時19分には、リナが押収した妹の携帯に誘拐犯から電話が入る。これが2回目の犯人からの電話だ。
その約2時間後に・・・ 藤岡は後藤と共に羽鳥邸に現れた。
リナ「でもさ・・・ ほら、この3回目の電話の履歴」
12月13日(木)午前1時41分。羽鳥邸の電話。着信は不明。
リナ「この、着信不明の時なんだけどさ・・・」
慎吾「藤岡さん本人が言ってました。
どこからの着信かハッキリしないのは・・・
スクランブルがどうとか?」
リナ「いや。着信先はいいのよ。ただ、この電話が鳴った時って・・・
確かあいつ、羽鳥邸にいた時でしょ?」
慎吾「えぇ。ちょうど僕と、藤岡さんと、後藤さんが書斎にいて・・・
リナ先輩のお母さんが書斎に入ってきた時、電話が鳴りました」
リナ「何であいつが目の前にいるのに、電話がかかるのよ?」
すでに犯人と断定している藤岡を、リナは【あいつ】よばわりする。
慎吾「あの時確か・・・ 藤岡さんはポケットに手を入れたまま。
そして電話の主は、一言も喋ってませんでした。
つまり藤岡さんは・・・
その場にいながら、ポケットの中で電話をかけたんです」
リナ「・・・ なんで、そうまでして電話をかけるの?」
慎吾「単純に考えれば・・・ 自分は犯人ではないというアピールですね」
その後も、電話履歴を全てチェックしたが・・・
犯人から電話がかかって、なおかつ犯人と会話をした時、藤岡は羽鳥邸におらず・・・
そして藤岡が羽鳥邸にいる時の電話は・・・ 妹が会話をしていた。
慎吾「思えば秋津、分倍河原にも彼はいました。直接僕と会ってますし。
報告書では、調布駅の殺人現場でも捜査にあたってます。
本人が殺して・・・本人が捜査にあたった・・・
ひょっとしたら、自分が都合のいいように何か手を加えたかも」
リナ「田園調布は? 堂島って警察の人が死んだ時って・・・
あいつ、あんたと羽鳥邸にいたでしょ?」
慎吾「報告書を読む限り・・・堂島さんの死因は、おかしな点があります。
普通、あれだけ多種の毒物を一気には飲み込めないもの・・・
最初の毒が体に回れば、次の毒は体が受け付けないですし」
リナ「・・・ ・・・」
何か言いたげなリナだが、黙って慎吾の話を聞く。
慎吾「おそらくですが、毒物をカプセル錠剤にしたのではないでしょうか?
殺された堂島さんは、事前にそれを藤岡さんから手渡された。
そしてそれを服薬し・・・カプセル錠剤の時限式毒薬で殺された」
リナはゴクリと唾を飲み込んだ。
慎吾「生きた状態で、複数の毒物を取り込むには・・・
それしか考えられません。恐ろしいですが・・・」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「それにあの時は・・・僕に疑いの目を向けてましたからね・・・。
おそらく、僕が分倍河原や調布に姿を見せたことで・・・
藤岡さんは、この連続殺人のシナリオを書き換えたのかも」
リナ「じゃぁ、最初のシナリオとは違うって事?」
慎吾「えぇ。僕らを・・・犯人に仕立てあげようとしたんです、途中から。
4年前、リナ先輩の彼氏が誘拐犯の濡れ衣を着せられたように」
リナ「ますます・・・ 許せないわ・・・ あの男・・・」
慎吾「連続殺人から4日目。いわゆる【D】の日ですが・・・
彼は羽鳥邸で僕を追い詰めると同時に・・・
さりげなく、自分は全く無関係だと言うアリバイを作った」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「堂島さんが倒れたと連絡があった直後、田園調布に出向いてます。
そして警察の裏をかくよう、田園調布から恵比寿駅へ行った」
それを聞いて、リナがハッとする。
リナ「そっか・・・。田園調布と恵比寿なら、目と鼻の先だし。
そのまま恵比寿駅で、5人目を殺したんだ・・・。
殺害後羽鳥邸に戻ってきても、時間的なズレはほとんど生じない。
全て・・・ つじつまがあう」
慎吾「布田駅で・・・ 正直、おかしいとは思ってたんですよ。
タイミングよくメールが来ては、指示を出し・・・
そして、ロッカーを爆破させた。
1つ間違えば、僕らが直撃を受け即死です」
リナ「そうしなかったのは・・・ 私達を犯人にするため」
慎吾「その通り。それよりも・・・
彼はあの時、布田駅のどこかで僕らを見てたんですよ。
でなければ、あんなタイミングのいいメールは出せないですから」
リナ「敵ながら・・・ マジむかつくけど、見事にハメられたわ・・・
悔しいけど、頭の良さ・・・悪知恵は天下一品ね・・・」
慎吾「でも・・・ まだわからない事もあります・・・
僕らを陥れるだけなら、こんな手の込んだ事をやる必要はない」
リナ「どういう事?」
慎吾「彼は警察の立場にいますからね。僕らを陥れるだけなら・・・
殺害の証拠の1つでも僕らに押しつけ、問答無用で逮捕するだけ」
リナ「・・・ まぁ・・・ そうだけど・・・」
慎吾「それ以前に、リナ先輩のパソコンが欲しいのなら・・・
箱根で強引に奪う事も出来たわけですから」
リナは2度首を振った。
慎吾「まだ何か・・・ あるんですよ・・・
彼が【ABC】で人を殺さなければならない・・・
何かの理由が・・・」
リナ「例の・・・ 私が見たあのサイト・・・
12月22日に関係ある・・・って事かな?」
慎吾「そうとしか、考えられません。12月22日・・・
何かが起ころうとしている・・・」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく沈黙を保つ2人。
リナ「まぁ・・・ 考えてもわからないものは・・・」
慎吾「わからないですしね・・・」
慎吾はちらりと、PC画面の下にある時計表示を見た。
慎吾「もう午前5時過ぎ・・・。今の内、寝ておきましょう・・・」
リナ「そうね・・・ この24時間は・・・ さすがに疲れたわ」
慎吾「彼は今、都立病院。
動き出すとしたら、身代金受け渡しの午後3時前・・・」
リナ「うん。けっこう睡眠とれるはね」
慎吾「えぇ。次こそ妹さんの居場所を突きとめる時!
じゃぁ・・・ お休みなさい」
そういうと慎吾は、3畳ほどあるネットカフェの個室の中で立ち上がった。
リナ「え? 何? どこ行くの?」
慎吾「あぁ・・・ 僕、トイレの個室で寝ますよ。
昨日も大学のトイレで寝てましたから、慣れてますので」
そう言うと、軽く笑って見せた。
リナ「何言ってんのよ? ここで寝なさいよ・・・
トイレなんかで寝たら、体力、余計に奪われるわよ?」
慎吾「え? えっと・・・じゃぁ、リナ先輩はどこで・・・寝るんです?」
リナ「私もここで寝るに決まってるじゃない」
慎吾「え!?」
リナ「な、何よ・・・ その顔?」
慎吾「あ・・・ いえ・・・ その・・ だ、大丈夫です!!」
リナ「はぁ?」
慎吾「いえ、その、あの・・・
絶対、リナ先輩に手を出したりしませんから!」
リナ「・・・ ・・・」
ようやく慎吾の挙動不審な理由を理解する。
慎吾「じゃぁ、少し・・・ 寝かせてもらいます」
そう言うと、慎吾は倒れるようにその場で横になった。
リナ「全く・・・ 別に何も警戒してないし・・・
とっとと寝・・・?」
リナの視線の先・・・ 慎吾はスースーとすでに寝息を立て始めていた。
リナ「・・・ ・・・」
その寝顔を見て、小さく笑う。慎吾の【らしさ】は、今の緊迫した非日常を一瞬とはいえ、忘れさせてくれる。
(リナ「慎吾も、この24時間・・・ 大変だったしね・・・」)
寝ている慎吾の左太ももを軽く触れてみた。瞬間、慎吾は寝ながらも眉をひそめた。
リナ「・・・ ・・・」
大学で、正体不明の男に麻酔銃か何かを撃たれた箇所だ。
(リナ「あの男も・・・ 気になるけど・・・」)
藤岡の事、妹の事、正体不明の男の事。そしてこれからの事・・・
いろいろな思いが交錯する中・・・いつの間にかリナも、眠りに落ちていた。
・・・ ・・・。
午後3時11分。警視庁交通管制センター。
「車が動き出しました! 監視カメラの映像で、本人と確認しました!」
後藤「絶対、行き先を突きとめろ!! 尾行チームにも連絡を入れろ!」
「わかりました!!」
警視庁交通管制センターにいる後藤は、藤岡が車で移動しているのを確認した。
この日後藤は、護国寺には出向いていない。羽鳥瞳も厳重な警備をつけ、湾岸警察署で待機している。
容疑者・藤岡は・・・この日、【G】である後藤を殺害するため、後藤の携帯電話に、ある仕込みを施していた。
後藤「・・・ ・・・」
昨夜、羽鳥邸で・・・容疑者だと疑わなかった慎吾とリナを追い詰めたが・・・
(後藤「今思えば・・・
あの大学生2人を容疑者に仕立てたのも、藤岡だった・・・」)
皮肉にも・・・ 携帯電話に仕込まれた爆発物に気づいたのは、慎吾だった。
(後藤「彼が言ってくれなければ・・・ 今頃死んでいた・・・」)
それだけではない。自爆テロのテロリストとして、この世の最期を迎えた事になる。
大学生カップル、そして自分を誘拐犯・テロリストに仕立て上げ・・・
まるでゲームのように【ABC】で人を殺してきた・・・その理由が全く見えない。
(後藤「あいつの狙いはいったい・・・」)
・・・ ・・・。
午後3時35分。首都高速。
藤岡「・・・ ・・・」
バックミラーを見ていた藤岡が、無表情のままアクセルを踏み込む。
(藤岡「覆面・・・ 」)
自分を尾行している覆面パトカーに気づいていた。
藤岡「・・・ ・・・」
藤岡はハンドル横にある、何らかの電子機器を操作し始める。
藤岡「・・・ ・・・」
直後、アクセルを深く踏み込み、一気に車を加速させた。
・・・ ・・・。
午後4時21分。交通管制センター。
後藤「見失った!?」
「は・・・はい・・・ 衛星画像にも・・ 映ってません・・・」
後藤「何故!? GPS追跡は!?」
「そ、それが・・・ 突然信号が途絶えて・・・」
後藤「・・・ ・・・」
何かを叫びたいが・・・ 言葉が出てこない。
相手はこちらの尾行に対して、行方をくらました。この後、ひょっこり警察署に顔を出すとは思えない。
後藤「ぐ・・・」
唇を噛みしめる後藤。この連続殺人の犯人を・・・取り逃がしたかのようにみえた・・・
・・・ ・・・。
午後6時52分。都内某所。
リナ「ほ、ホントにここ・・・?」
慎吾「えぇ。やっぱりあの追跡装置が役に立ちました」
2人は、とある民家の影に隠れ、ある方向を向いていた。
リナ「でも・・・ どうやって入るの、ここ・・・?」
慎吾「こ、これから考えます・・・」
リナ「ここ・・・ 基地でしょ?」
慎吾「えぇ・・・ 確か陸上自衛隊や航空自衛隊がある・・・
目黒基地です・・・」
(第84話へ続く)
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次回予告
犯人の示したタイムリミットまで、5時間をきる。
警察は必死に藤岡を捜索するが、彼が姿を現すことはなかった。
慎吾とリナは・・・ とうとう敵のアジトに潜入した。
次回 「 第84話 アジト潜入 」
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