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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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84/147

第83話  真犯人の行方

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐と殺人の濡れ衣を着せられたリナと慎吾は、警察の銃とパトカーを奪い逃走。


そして、2人は・・・


黒幕・藤岡が動き出すのを静かに待つ・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第83話  真犯人の行方


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月19日(水)、午前4時47分。都内のとあるネットカフェ。


慎吾「ほら、見て下さい。やっぱり、そうですよ」


リナ「・・・ ・・・」


リナと慎吾はネットカフェのPC画面を見ている。


リナは自分の携帯電話、そして羽鳥邸に設置されている固定電話の電話会社サーバに侵入。今までの電話履歴を画面に映し出していた。



最初に誘拐犯から電話があったのは・・・


12月12日(水)午後6時31分。リナの携帯。着信は妹の携帯。


ちょうど1週間前・・・ これが全ての始まりだった。



慎吾「おそらく藤岡さんは・・・ 

    リナ先輩の部屋で、パソコンを見つけられなかった。


    そこで、リナ先輩のお母さんよりも先に電話したんです」


リナ「しかも妹の携帯で・・・ 私の部屋から・・・」


同日、午後11時19分には、リナが押収した妹の携帯に誘拐犯から電話が入る。これが2回目の犯人からの電話だ。


その約2時間後に・・・ 藤岡は後藤と共に羽鳥邸に現れた。


リナ「でもさ・・・ ほら、この3回目の電話の履歴」



12月13日(木)午前1時41分。羽鳥邸の電話。着信は不明。



リナ「この、着信不明の時なんだけどさ・・・」


慎吾「藤岡さん本人が言ってました。

    どこからの着信かハッキリしないのは・・・


    スクランブルがどうとか?」


リナ「いや。着信先はいいのよ。ただ、この電話が鳴った時って・・・

    確かあいつ、羽鳥邸にいた時でしょ?」


慎吾「えぇ。ちょうど僕と、藤岡さんと、後藤さんが書斎にいて・・・

    リナ先輩のお母さんが書斎に入ってきた時、電話が鳴りました」


リナ「何であいつが目の前にいるのに、電話がかかるのよ?」


すでに犯人と断定している藤岡を、リナは【あいつ】よばわりする。


慎吾「あの時確か・・・ 藤岡さんはポケットに手を入れたまま。

    そして電話の主は、一言も喋ってませんでした。


    つまり藤岡さんは・・・

    その場にいながら、ポケットの中で電話をかけたんです」


リナ「・・・ なんで、そうまでして電話をかけるの?」


慎吾「単純に考えれば・・・ 自分は犯人ではないというアピールですね」


その後も、電話履歴を全てチェックしたが・・・


犯人から電話がかかって、なおかつ犯人と会話をした時、藤岡は羽鳥邸におらず・・・


そして藤岡が羽鳥邸にいる時の電話は・・・ 妹が会話をしていた。



慎吾「思えば秋津、分倍河原にも彼はいました。直接僕と会ってますし。

    報告書では、調布駅の殺人現場でも捜査にあたってます。


    本人が殺して・・・本人が捜査にあたった・・・

    ひょっとしたら、自分が都合のいいように何か手を加えたかも」


リナ「田園調布は? 堂島って警察の人が死んだ時って・・・

    あいつ、あんたと羽鳥邸にいたでしょ?」


慎吾「報告書を読む限り・・・堂島さんの死因は、おかしな点があります。

    普通、あれだけ多種の毒物を一気には飲み込めないもの・・・


    最初の毒が体に回れば、次の毒は体が受け付けないですし」


リナ「・・・ ・・・」


何か言いたげなリナだが、黙って慎吾の話を聞く。


慎吾「おそらくですが、毒物をカプセル錠剤にしたのではないでしょうか?

    殺された堂島さんは、事前にそれを藤岡さんから手渡された。


    そしてそれを服薬し・・・カプセル錠剤の時限式毒薬で殺された」


リナはゴクリと唾を飲み込んだ。


慎吾「生きた状態で、複数の毒物を取り込むには・・・

    それしか考えられません。恐ろしいですが・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「それにあの時は・・・僕に疑いの目を向けてましたからね・・・。

    おそらく、僕が分倍河原や調布に姿を見せたことで・・・


    藤岡さんは、この連続殺人のシナリオを書き換えたのかも」


リナ「じゃぁ、最初のシナリオとは違うって事?」


慎吾「えぇ。僕らを・・・犯人に仕立てあげようとしたんです、途中から。

    4年前、リナ先輩の彼氏が誘拐犯の濡れ衣を着せられたように」


リナ「ますます・・・ 許せないわ・・・ あの男・・・」


慎吾「連続殺人から4日目。いわゆる【D】の日ですが・・・

    彼は羽鳥邸で僕を追い詰めると同時に・・・


    さりげなく、自分は全く無関係だと言うアリバイを作った」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「堂島さんが倒れたと連絡があった直後、田園調布に出向いてます。

    そして警察の裏をかくよう、田園調布から恵比寿駅へ行った」


それを聞いて、リナがハッとする。


リナ「そっか・・・。田園調布と恵比寿なら、目と鼻の先だし。

    そのまま恵比寿駅で、5人目を殺したんだ・・・。


    殺害後羽鳥邸に戻ってきても、時間的なズレはほとんど生じない。

    全て・・・ つじつまがあう」


慎吾「布田駅で・・・ 正直、おかしいとは思ってたんですよ。

    タイミングよくメールが来ては、指示を出し・・・


    そして、ロッカーを爆破させた。

    1つ間違えば、僕らが直撃を受け即死です」


リナ「そうしなかったのは・・・ 私達を犯人にするため」


慎吾「その通り。それよりも・・・ 

    彼はあの時、布田駅のどこかで僕らを見てたんですよ。


    でなければ、あんなタイミングのいいメールは出せないですから」


リナ「敵ながら・・・ マジむかつくけど、見事にハメられたわ・・・

    悔しいけど、頭の良さ・・・悪知恵は天下一品ね・・・」


慎吾「でも・・・ まだわからない事もあります・・・

    僕らを陥れるだけなら、こんな手の込んだ事をやる必要はない」


リナ「どういう事?」


慎吾「彼は警察の立場にいますからね。僕らを陥れるだけなら・・・

    殺害の証拠の1つでも僕らに押しつけ、問答無用で逮捕するだけ」


リナ「・・・ まぁ・・・ そうだけど・・・」


慎吾「それ以前に、リナ先輩のパソコンが欲しいのなら・・・

    箱根で強引に奪う事も出来たわけですから」


リナは2度首を振った。

   

慎吾「まだ何か・・・ あるんですよ・・・

    彼が【ABC】で人を殺さなければならない・・・


    何かの理由が・・・」


リナ「例の・・・ 私が見たあのサイト・・・

    12月22日に関係ある・・・って事かな?」


慎吾「そうとしか、考えられません。12月22日・・・

    何かが起ころうとしている・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


しばらく沈黙を保つ2人。


リナ「まぁ・・・ 考えてもわからないものは・・・」


慎吾「わからないですしね・・・」


慎吾はちらりと、PC画面の下にある時計表示を見た。


慎吾「もう午前5時過ぎ・・・。今の内、寝ておきましょう・・・」


リナ「そうね・・・ この24時間は・・・ さすがに疲れたわ」


慎吾「彼は今、都立病院。

    動き出すとしたら、身代金受け渡しの午後3時前・・・」


リナ「うん。けっこう睡眠とれるはね」


慎吾「えぇ。次こそ妹さんの居場所を突きとめる時!

    じゃぁ・・・ お休みなさい」


そういうと慎吾は、3畳ほどあるネットカフェの個室の中で立ち上がった。


リナ「え? 何? どこ行くの?」


慎吾「あぁ・・・ 僕、トイレの個室で寝ますよ。

    昨日も大学のトイレで寝てましたから、慣れてますので」


そう言うと、軽く笑って見せた。


リナ「何言ってんのよ? ここで寝なさいよ・・・

    トイレなんかで寝たら、体力、余計に奪われるわよ?」


慎吾「え? えっと・・・じゃぁ、リナ先輩はどこで・・・寝るんです?」


リナ「私もここで寝るに決まってるじゃない」


慎吾「え!?」


リナ「な、何よ・・・ その顔?」


慎吾「あ・・・ いえ・・・ その・・ だ、大丈夫です!!」


リナ「はぁ?」


慎吾「いえ、その、あの・・・ 

    絶対、リナ先輩に手を出したりしませんから!」


リナ「・・・ ・・・」


ようやく慎吾の挙動不審な理由を理解する。


慎吾「じゃぁ、少し・・・ 寝かせてもらいます」


そう言うと、慎吾は倒れるようにその場で横になった。


リナ「全く・・・ 別に何も警戒してないし・・・ 

    とっとと寝・・・?」


リナの視線の先・・・ 慎吾はスースーとすでに寝息を立て始めていた。


リナ「・・・ ・・・」


その寝顔を見て、小さく笑う。慎吾の【らしさ】は、今の緊迫した非日常を一瞬とはいえ、忘れさせてくれる。


(リナ「慎吾も、この24時間・・・ 大変だったしね・・・」)


寝ている慎吾の左太ももを軽く触れてみた。瞬間、慎吾は寝ながらも眉をひそめた。


リナ「・・・ ・・・」


大学で、正体不明の男に麻酔銃か何かを撃たれた箇所だ。


(リナ「あの男も・・・ 気になるけど・・・」)


藤岡の事、妹の事、正体不明の男の事。そしてこれからの事・・・


いろいろな思いが交錯する中・・・いつの間にかリナも、眠りに落ちていた。



・・・ ・・・。


午後3時11分。警視庁交通管制センター。


「車が動き出しました! 監視カメラの映像で、本人と確認しました!」


後藤「絶対、行き先を突きとめろ!! 尾行チームにも連絡を入れろ!」


「わかりました!!」


警視庁交通管制センターにいる後藤は、藤岡が車で移動しているのを確認した。


この日後藤は、護国寺には出向いていない。羽鳥瞳も厳重な警備をつけ、湾岸警察署で待機している。


容疑者・藤岡は・・・この日、【G】である後藤を殺害するため、後藤の携帯電話に、ある仕込みを施していた。


後藤「・・・ ・・・」


昨夜、羽鳥邸で・・・容疑者だと疑わなかった慎吾とリナを追い詰めたが・・・


(後藤「今思えば・・・

     あの大学生2人を容疑者に仕立てたのも、藤岡だった・・・」)


皮肉にも・・・ 携帯電話に仕込まれた爆発物に気づいたのは、慎吾だった。


(後藤「彼が言ってくれなければ・・・ 今頃死んでいた・・・」)


それだけではない。自爆テロのテロリストとして、この世の最期を迎えた事になる。


大学生カップル、そして自分を誘拐犯・テロリストに仕立て上げ・・・


まるでゲームのように【ABC】で人を殺してきた・・・その理由が全く見えない。


(後藤「あいつの狙いはいったい・・・」)



・・・ ・・・。



午後3時35分。首都高速。


藤岡「・・・ ・・・」


バックミラーを見ていた藤岡が、無表情のままアクセルを踏み込む。


(藤岡「覆面・・・ 」)


自分を尾行している覆面パトカーに気づいていた。


藤岡「・・・ ・・・」


藤岡はハンドル横にある、何らかの電子機器を操作し始める。


藤岡「・・・ ・・・」


直後、アクセルを深く踏み込み、一気に車を加速させた。



・・・ ・・・。



午後4時21分。交通管制センター。


後藤「見失った!?」


「は・・・はい・・・ 衛星画像にも・・ 映ってません・・・」


後藤「何故!? GPS追跡は!?」


「そ、それが・・・ 突然信号が途絶えて・・・」


後藤「・・・ ・・・」


何かを叫びたいが・・・ 言葉が出てこない。


相手はこちらの尾行に対して、行方をくらました。この後、ひょっこり警察署に顔を出すとは思えない。


後藤「ぐ・・・」


唇を噛みしめる後藤。この連続殺人の犯人を・・・取り逃がしたかのようにみえた・・・




・・・ ・・・。


午後6時52分。都内某所。


リナ「ほ、ホントにここ・・・?」


慎吾「えぇ。やっぱりあの追跡装置が役に立ちました」


2人は、とある民家の影に隠れ、ある方向を向いていた。


リナ「でも・・・ どうやって入るの、ここ・・・?」


慎吾「こ、これから考えます・・・」


リナ「ここ・・・ 基地でしょ?」


慎吾「えぇ・・・ 確か陸上自衛隊や航空自衛隊がある・・・


    目黒基地です・・・」





             (第84話へ続く)

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次回予告


犯人の示したタイムリミットまで、5時間をきる。


警察は必死に藤岡を捜索するが、彼が姿を現すことはなかった。


慎吾とリナは・・・ とうとう敵のアジトに潜入した。



次回 「 第84話  アジト潜入 」

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