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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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82/147

第81話  アシスト

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐犯の罠に陥った慎吾とリナは、誘拐と殺人の濡れ衣を着せられる。

後藤に逮捕されるも、慎吾は堂島の銃を奪い、逃走を試みた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第81話  アシスト


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2008年12月19日(水)、午後3時34分。

都内にある、とあるホテルのロビー。


堂島「・・・ ・・・」


本来、銀座駅での警備にあたっているはずの堂島だが・・・


藤岡から預かったUSBの情報が気になり、近場のホテルの中へと入って行った。そしてロビーにある、自由に使えるパソコンの前に座る。


ポケットからUSBを取り出すと、パソコンに接続した。


堂島「・・・ ・・・」


USBに入ってたファイルはわずか1つ。迷わず堂島は、それをダブルクリックする。


しばらく動作が重くなったような動きを見せるが・・・やがて、あるサイトに繋がった。


堂島「これは・・・」


藤岡が収集したと言っていた・・・証拠の数々が映し出される。


テキストファイル、画像ファイル、音声ファイル。


それらが相互に関連づけられ・・・


あらゆるファイルは、女子大生のリナ、そして彼氏の慎吾が犯人であるという証拠として、サイト内に掲載されていた。


リナが警視庁サイトに違法にアクセスし、事件の報告書をダウンロードした履歴。


事件現場に現れた駅での防犯カメラに慎吾が映っている映像に加え・・・その駅へ出向かうまでの、都内各所に設置されたカメラに映っていた慎吾の映像もある。


そして・・・


後藤がこの事件に関わっているという証拠ファイルまで出てきた。


堂島「まさか・・・ 源さんが!?」


画像ファイルの1つをクリックする。


殺された堂島の兄・・・そしてその横で、サプリメント容器を手にしている後藤の写真があった。写真の下には


【 この写真は1年前に撮影されたもの。

   彼は、殉職した堂島のサプリ好きをよく知っていた。


   おそらく後藤容疑者は、堂島のサプリにカプセル型毒物を混入。

   それを摂取した堂島は警備中にカプセルが溶け、毒殺された。


   これで田園調布での殺害も説明がつく 】


と書かれてある。


堂島「・・・ 嘘だ・・・ まさか源さんが・・・

    兄を殺したなんて・・・ 」


さらにその下にある、音声ファイルのリンクをクリックすると・・・


「警視庁サイトに不正侵入して、情報を流すヤツがいる・・・

  警察の中にそんなヤツがいるなんて・・・ 

 

  本人以外、絶対思わねぇよな」


後藤本人の声だ。



堂島「・・・ ・・・」



【 声紋照合の結果 後藤源治郎の声との一致率 99% 】



(堂島「源さんは・・・ 警視庁の情報を漏洩させていた・・・?」)


その他、数多くの証拠は・・・


後藤が今回の主犯格である事を示していた。




・・・ ・・・。


17時間前。


12月18日(火)、午後10時34分。羽鳥邸。


堂島「は・・・ はぁ、はぁ・・・」


ようやく我を取り戻し、横のソファに手をかけながら、何とか立ち上がった堂島。未だに、銃を向けられた事を思い出すと体が震え出す。


(堂島「ど、どうすれば・・・」)


容疑者の2人は、堂島の銃を奪い・・・先輩の後藤に銃を向け逃走。堂島は、今に至る状況を少しずつ思い出していった。


(堂島「で、電話・・・ 110番・・・」)


横を見ると、瞳が電話をかけている。応接室にある唯一の電話だ。


瞳「えぇ・・・そう。明日は会社にいけないから。えぇ。

   更新プログラムのチェックと・・・


   ハーフナノディスクのデバイス関係を・・・」


何やら仕事の指示を出しているようだ。瞳の横では、警備主任の井上が心配そうに見守っている。


堂島「け・・・ 警察・・・ 警察に連絡を!!」


あわてて堂島は自分の胸やポケットをまさぐった。


堂島「・・・ ・・・」


携帯電話がない。全てのポケットをまさぐるも、目当ての物は見つからなかった。


堂島「あ・・・」


瞳に声をかけようにも、ずっと電話の向こうに指示を出している。


堂島「・・・ ・・・」


つい先ほど、堂島は醜態をさらしてしまった。当初の威勢は完全に消え、瞳に声をかけられない。


堂島「あの・・・」


横にいた井上の方に声をかける。


井上「どうなさいました?」


振り返った井上が優しい表情で返事した。


堂島「あ・・・ 私の携帯を・・・ 見なかったでしょうか?」


井上は静かに首を横に振る。


井上「さぁ・・・」


堂島「あ・・・ この家には、他に電話は?

    お借りしたいのですが・・・。すぐに署の方へ連絡を」


井上「この家には・・・電話は1つだけです」


井上は、未だ電話中の瞳の方を見た。


堂島「そ、それでは・・・。

    失礼ですが、あなたの携帯電話をお借りできませんか?


    至急、署に連絡を・・・」


井上「すいません。私は、携帯電話なるものを持ってなくて・・・」


井上は、再び堂島に視線を移して応える。


堂島「・・・ ・・・」


堂島は今一度瞳の方を見るが・・・


瞳「違う違う!

   そっちのサーバじゃなくって、3階奥の部屋にある方よ!」


瞳は、電話を終える気配がない。

堂島はあたりに自分の携帯が落ちてないか、しばらく探すが・・・


堂島「・・・ ・・・」


全く見つからない。ひょっとしたら・・・


(堂島「あの大学生らが、自分の携帯を奪いとった?」)


と、思い始める。


堂島「す、すいません。また戻ってきます。

    一度外に出て、署に連絡してきますので・・・」


井上は無言で頷いた。


まだ腰に違和感を感じる堂島は、壁伝いに歩き、早足で玄関に向かって行った。


瞳「・・・ ・・・」


玄関の閉まる音を確認した瞳は、静かに受話器を置く。


井上「・・・ ・・・」


井上は自分の尻の下に置いていた・・・堂島の携帯電話を取り出す。


そして静かに・・・堂島が座っていたソファの下に、それを潜り込ませた。



・・・ ・・・。


午後11時4分。とある港。


後藤は静かにブレーキをかけ、車を止めた。


後藤「着いたぞ・・・」


慎吾は後部座席からリナと共に降りる。慎吾の持つ銃・・・その銃口は、後藤に向けられたままだ。


慎吾「では・・・。エンジンはかけたまま、後藤さんも降りてください」


後藤は無言で運転席のドアを開け、ゆっくりと降りた。


慎吾「手錠の鍵をください」


慎吾の持つ銃口は、後藤からはずれる事はない。


後藤「持ってない。手錠の鍵は、コートに入れてたからな。

    そっちが、何も触るなと言ったんだ」


慎吾「・・・ ・・・」


しばらく後藤を見ていた慎吾。確かにあの時、後藤に何も触るなと指示した。 


慎吾「わかりました。じゃぁ、車から10m離れてください」


後藤は言われた通り、慎吾らを見つめたまま後ずさりする。


慎吾「リナ先輩。運手席側から入り、助手席へ乗ってください」


リナ「え? ちょっと・・ まさかあんた・・・」


慎吾「大丈夫です。僕、免許持ってますから」


リナ「いや・・・ そういう・・・ 」


慎吾のこれまでの行動は、常軌じょうきを逸している。


警察から銃を奪い、人質にしたかと思うと・・・もう1人の捜査官からも銃を奪った・・・


銃で脅したまま、パトカーで逃走。そして今度は


慎吾「僕がパトカーを運転します」


と言っている。


(リナ「行くトコまで、行っちゃった・・・」)


リナは、右手を慎吾と手錠で繋がれたまま、運転手席側からパトカーの中に入り、助手席に座った。


慎吾は引っ張られるように、運転席へと座る。


慎吾「さっき言った通り・・・

    この港は閉鎖され、半径3kmに人はいません。


    港の入り口で、あなたの携帯と銃2丁・・・

    そしてパトカーを置いておきます」


後藤「律儀に返却するって事か・・・」


慎吾「えぇ。ただし1発撃ってますので・・・始末書の方はお願いします」


後藤「・・・ ・・・」


後藤はずっと慎吾の目を見続けている。


慎吾「僕の言った通り・・・ 

    必ず携帯電話と、アタッシュケースを調べて下さい」


そういうと、ハンドルを10時10分に握った。アクセルを踏み込もうとしたその時・・・


後藤「待て!」


後藤が声をかける。


後藤「・・・ ・・・」


慎吾「・・・ 時間稼ぎですか?」


後藤「いや・・・。まだ、お前らの事を信用出来ないが・・・

    言われた事は必ずやるさ。だが・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


後藤「都内の全警察に・・・ 追跡されるんだぞ?」


慎吾「それは承知しています。

    でも、こうする事が・・・」


後藤「・・・ 他にも方法があっただろう?」


慎吾は首を振る。


慎吾「いえ・・・。こうする事が・・・

    あなたにも1番迷惑がかからない方法。


    そして・・・ あなたの協力がなければ、彼を捕まえられない」


後藤「おとりになる・・・ って事か・・・」


慎吾「今は信じられなくても構いません。

    携帯とケースを調べてくれれば・・・ 」


後藤「何故それらに、何かがあると?」


慎吾「残念ですが・・・ それを説明する時間はありません。

    もう行きます・・・」


そう言うと慎吾は・・・アクセルをぎこちなく踏み込んだ。


後藤「・・・ ・・・」


慎吾「海を背にして3km! お手数ですが・・ そこまで歩いてきて下さい!」


慎吾は窓の外の後藤へ声をかけた。そして車は、勢いよくその場から走り去った。


後藤「・・・ ・・・」


12月の夜・・・ 

コートも与えられず、寒空の東京の港へ放り出された後藤。


後藤「まさか・・・」


しかし、その寒さを感じる事無く・・・ 小走りにパトカーを追いかけて行った。




・・・ ・・・。


慎吾とリナは港の入り口でパトカーを捨て、人気のいない通りを足早に歩いていた。


リナ「これから・・・ どうするの?」


先が見えないリナは、慎吾に尋ねた。


慎吾「リナ先輩・・・ヘアピンを貸してくれますか?」


リナ「ヘアピン?」


慎吾「えぇ・・・ ヘアピンです」


リナ「何で?」

 

慎吾「手錠・・・ ハズします」


リナ「・・・ あんた・・・ ハズせんの?」


慎吾「えぇ・・・。 007シリーズは全て見ましたから。

    ハズし方はバッチリです」


リナ「・・・ ・・・」


何か言いたかったが・・・ ぐっとこらえて、リナは自分の髪を止めていた1本のヘアピンを外し、慎吾に渡した。


慎吾「・・・ ・・・」


ヘアピンを歯で噛むと、その先を5mmほど直角に曲げる。さらにそこから3cmほど先を反対方向に直角に曲げ、器用に手錠の鍵穴に差し込んだ。


すると今までびくともしなかった手錠の外枠が・・・

何かのストッパーが外れたようにスルスルと動きだし、見事に外れた。


慎吾「や、やった! うまくいきましたよ! リナ先輩!!」


今の状況には似つかわしくない、子供のような屈託のない笑みを浮かべる慎吾。


リナ「・・・ ・・・」


この時・・・ 

リナはある思いが頭をよぎった。しかし、すぐにそれを振り払う。


慎吾「・・・ ・・・」


何かしら戸惑いの表情を浮かべている慎吾が・・・


慎吾「ホントは、もう少し・・・

    リナ先輩と繋がっていたかったですけどね・・・」


キャラに合わない事を言った。


リナ「え!?」


唐突な慎吾のセリフに、思わず大声をあげるリナ。


慎吾「あー・・・ じょ、冗談ですよ! 冗談!!」


そういうと慎吾は、口を横に広げ、笑って見せた。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「さぁ、行きましょう。妹さんを救いに!!」


慎吾の変な言動に混乱しながらも、リナは会話を続ける。


リナ「ど、どこに行くのよ・・・? 妹がいる場所、わかるの?」


慎吾「いえ、まだわかりません。でも妹さんのいる場所へ・・・

    連れて行ってくれる人の所へ行くんですよ」


リナ「って事は・・・ 黒幕の所?」


慎吾「えぇ」


リナ「かなり危険よ・・・ 作戦はあるの?」


慎吾は再び子供のような笑みを見せた。


慎吾「もちろん」



             (第82話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


2人は黒幕のいる場所へと向かった。


直接対面するのは危険と判断した慎吾は、ある作戦を実行に移す。


そしてとうとう・・・



次回 「 第82話  携帯に隠された秘密 」

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