第80話 【G】のシナリオ
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐犯の罠に陥った慎吾とリナは、誘拐と殺人の濡れ衣を着せられる。
後藤と堂島に逮捕されたその時・・・
慎吾は真犯人の正体が分かったという。
その翌日。捜査官の後藤が、護国寺で自爆テロを起こしたという犯行声明文が・・・。
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第80話 【G】のシナリオ
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後10時9分。羽鳥邸・応接室。
後藤「では・・・。非常に残念ですが、娘さんとその彼氏を・・・
署まで連行します」
後藤は容疑者の母親・瞳に静かに告げた。
瞳「ちょっと待ってください! 娘は無実です!!」
ソファから立ち上がり、声を上げる瞳。
後藤「しかしロッカーの鍵は・・・娘さんのポケットから出てきました」
瞳「でも!!」
後藤と瞳は、しばらく言い合っていた。その向こうで・・・
リナ「は・・・ 犯人がわかった?」
右手に手錠をかけられているリナは、反対側で手錠をかけられている慎吾に小さく耳打ちした。
慎吾「えぇ・・・」
慎吾はじっと、後藤を見続けている。
リナ「だ、誰よ・・・。犯人ってのは・・・?」
慎吾「はい・・・。犯人は・・・ ・・・」
横に立っている堂島を気にしながら、慎吾はリナに黒幕の名を伝えた。
リナ「うそ!!!」
思わず声をあげたリナ。2人の背後にいた堂島が、すぐさま怒鳴りつける。
堂島「こら! お前等は逮捕されたんだ! おとなしくしろ!!」
リナ「・・・ ・・・」
一瞬堂島を睨み付けるも、静かにするリナ。横にいた慎吾が、小さな声で語りかけてきた。
慎吾「間違いありません。何故かは後で話すとして・・・。
完全に状況が変わりました。犯人が彼となると・・・。
警察署に連れて行かれたら・・・僕らは終わりです」
未だに言い合っている後藤と瞳を見ながら、小さくリナに語り続ける。
慎吾「そして何より・・・妹さんも、危険です。
どうにかして、ここから出なければ・・・」
慎吾は、今いる応接室の全体を見渡す。この場にいるのは・・・リナと自分。リナの母親・瞳と、羽鳥家警備主任の井上。そして、警察側は後藤と堂島の2人。
後藤は警察内部に犯行グループに関わる者がいると聞いて、必要最小限・堂島と2人だけで羽鳥邸に訪れていた。
慎吾「・・・ ・・・」
何かを模索している慎吾。慎吾の左手、そしてリナの右手は1つの手錠で繋がれている。仮に手錠で繋がれた状態で、逃げたとして・・・全力疾走で、年寄りの後藤は振り切れるかもしれない。だが、若い堂島を振り切れる自信はない。何よりもこの男は兄を殺された恨みを自分達に持っていて、簡単に逃がすことはないだろう。ヘタすれば銃で狙われる可能性もある。
(慎吾「それ以前に・・・」)
慎吾は自分の左足の痛みを思い出す。これでは、どうやっても全力で走る事は出来ない。
(慎吾「ど、どうする・・・?」)
しばらく慎吾は目を閉じた。
慎吾「・・・ ・・・」
そして、意識を集中する。
慎吾「ハァ・・・ハァ・・・」
何かが頭の中に入ってくる。
(慎吾「こ・・・ ここで・・・。僕が動かなければ・・・」)
目を開いた慎吾は、大きく息を吸って・・・
慎吾「・・・ ・・・」
そして吐いた。さらに精神を集中した後、横にいた堂島に
慎吾「お・・・おい、堂島・・・」
呼び捨てで声をかける。
堂島「・・・ ・・・」
その言葉に対し、ジロリと睨み付ける堂島。
慎吾「兄は・・・、どうやって殺されたかわかるか?」
リナ「?」
その言葉に堂島は過敏に反応する。 リナは突然の慎吾の言動を、全く理解出来ない。
堂島「何を・・・ 言っている?」
無意識に堂島は、銃を握りしめた。
慎吾「テトロドキシンって毒は・・・極限にまで体がマヒして・・・
呼吸困難に陥るんだ・・・」
堂島「おい・・・ 貴様・・・」
リナ「ちょ・・・ 慎吾・・・」
リナと堂島を無視し、慎吾は無表情で語り続ける。
慎吾「ツボクラリンは・・・
体に入ると、地上にいながら溺れた感覚になる。
その苦しみは、体験した者にしかわからない・・・」
側に立っていた堂島は銃を取り出すと、右側から慎吾の頭に銃を向けた。
リナ「し・・・」
リナが目を大きく見開いたその時。
(「安全装置はついている! 今だ!」)
堂島が銃を向けた瞬間、慎吾は自由な右手で銃口を上から押さえこんだ。
そして銃口を中心としてネジを回すように、ぐるりとひねる。
堂島「ぐあ!!」
引き金にかかっていた人差し指があらぬ方向に曲げられた堂島。思わず悲鳴をあげ、尻餅をつく。
リナ「な・・・?」
度重なる慎吾の想定外の行動。リナはどう反応したらよいのか、もう追いつけない。
慎吾は力の抜けた堂島の手から、銃を奪い取る。
奪うとすぐに銃を口元に持っていき、そのまま安全装置を歯ではずした。
堂島「このや・・・」
痛めた右手を、反対の左手で強く握った堂島が大声をあげようとした時だった。
ズキューーン・・・
慎吾は銃を真上に向けて発砲した。銃声が鳴り響いた瞬間・・・
応接室にいた全員は反射的に頭を低くし、ゆっくりと銃声の聞こえた慎吾の方に注目した。
慎吾「ハァ・・・ハァ・・・」
天井に向けて発砲した直後、慎吾は堂島に銃口を向けていた。
後藤「な・・・」
後藤はすぐに自分の銃を取り出し、慎吾に向ける。
リナ「・・・ ・・・」
リナは、ただただ事態を見守ることしかできない。
慎吾「銃を降ろせ! 降ろさなければ、この男を撃つ!」
銃を堂島に向けつつ、後藤に対して大声を張り上げた。
後藤「・・・ ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
銃口を向けられた堂島は、さっきまでの威勢は完全に消えている。
堂島「・・・ ・・・」
銃を向けられた経験など一度も無い。立ち上がろうにも・・・立つ事が出来ない。
(堂島「こ・・・ 腰が・・・」)
腰を抜かした経験もない堂島は、今、自分に何が起こっているのか・・・それすらも思考が働かない。
堂島「・・・ ・・・」
ただ、銃を向けられている事だけは認識した。
慎吾「すでに6人殺してるんだ。1人、2人増えたって死刑は変わらない」
視線は後藤から動く事は無く、銃口の先も堂島から動く事はない。
瞳も井上も・・・そしてリナも、緊張しながら事態を見つめている。
慎吾「銃を降ろさなければ・・・ 撃つ」
後藤に再び大声を張り上げた慎吾は、右肩を後藤に向け、左肩は見えないように立つ。
後藤「・・・ ・・・」
後藤と慎吾の距離は約5m。それに対し、慎吾と堂島の距離はわずか30cm程度。
もしここで後藤が発砲し、
(後藤「ハズしたら・・・」)
堂島は間違いなく射殺されると思われた。
後藤「・・・ ・・・」
しかも慎吾は後藤に対して体を真横に向け、当たる確率が低くなるような態勢をとっている。
後藤「っく・・・」
しばらく慎吾に銃を向けていた後藤。腰を抜かした堂島を見る限り、あてになるように思えない。
(後藤「藤岡なら、動けただろうに・・・」)
どうにもならないようだと判断した後藤は・・・
後藤「わかった!」
両手を挙げ、ゆっくりと銃を下に降ろした。
後藤「・・・ ・・・」
銃を降ろす際も、慎吾から視線を外すことはない。
慎吾「こちらに向けて銃を蹴り出せ」
頷いた後藤は、言われた通り銃を蹴り飛ばした。フローリングの床を、音を立てて銃が滑ってゆく。
慎吾は目の前で止まった銃を拾い上げ、ジーンズの腰の部分にそれを押し込んだ。
慎吾「次は携帯だ。よこせ!」
頷いた後藤は、ポケットに入っていた携帯を取りだす。再び床を滑らせ、慎吾に携帯を渡した。
後藤「どうせ・・・。逃げられんぞ」
携帯を拾う慎吾を見て、後藤が声をかけた。
慎吾「それはどうかな? 次はパトカーだ」
言いながら、携帯を右ポケットに押し込む。
後藤「パトカー?」
慎吾「そうだ。ある場所まで移動する」
後藤「・・・ わかった。堂島は解放してやれ」
慎吾「いいだろう」
言うと慎吾は、銃を堂島の頭に押しつけた。
堂島「ひぃ!!」
後藤「こら!! 解放しろと言っただろう!!」
堂島の恐怖は極限にまで達し、体は震えのあまり硬直する。
慎吾「玄関まで行け。不審な動きをすれば、迷わず撃つ」
後藤は右手の平を垂直にして、慎吾の方に向けた。
後藤「わかった。今、玄関に向かう。絶対撃つな・・・」
ソファの横にあったコートに手をかけようとする後藤。
慎吾「何も触るな! そのまま玄関へ行くんだ!」
堂島に銃を押しつけながら声を荒げる慎吾。
後藤「わかった! 今すぐ玄関へ向かう・・・」
そしてゆっくりと、玄関の方に向かって歩いて行く。
慎吾の握る銃の先は、堂島の頭から後藤の背中に変わっていた。
後藤の後ろを慎吾、そして手錠で繋がれたリナが歩いて行く。
堂島「・・・ ・・・」
腰を抜かしている堂島は、立ち上がる事すら出来ない。
瞳と井上は・・・ ただ、事態を見続けているだけだった。
2分後。
後藤は慎吾に銃を向けられたまま、パトカーの運転席に座った。後部座席に、手錠で繋がれた慎吾とリナが乗り込む。
後藤の首の後ろには、嫌な感覚があった。
後藤「・・・ で?」
慎吾「まずは急いでここを離れる。指示した場所へ走らせろ」
後部座席から銃口を後藤の首にあて、慎吾が声をかけた。
後藤「・・・ ・・・」
眉をひそめながらも、エンジンをかける後藤。
後藤「こんな老いぼれ、一人殺したところで・・・どうにもならんぞ」
そして車を走らせた。
慎吾「言う通りにすれば、殺す気は無い・・・。指示する港へ走らせろ」
慎吾は、都内にある港へ向かうよう後藤に指示した。
後藤「今頃・・・ 堂島か羽鳥家の人間が通報しているぞ・・・」
慎吾「わかってる。サイレンを鳴らせ。急いでここを離れる」
後藤は言う通りにした。
・・・ ・・・。
同時刻、羽鳥邸。
井上「奥様・・・ 警察に電話するべきではないでしょうか?」
呆然とソファに座り続けていた井上と瞳。
瞳「・・・ ・・・」
堂島はまだ腰を抜かした状態で、肩で息をしている。
瞳「リナには・・・。何か考えがあるはず。
あの子が、人を殺したなんて・・・ 絶対にありえない」
その時、瞳の携帯電話にメール着信を告げる音が鳴った。
瞳「・・・ ・・・」
黙ってその携帯を見る瞳。
【着信】 リナ 【タイトル】 なし
【内容】 私を信じて。雛子を助けるには、こうするしかなかったの。
犯人は緻密な計画で、私達を陥れている。
でも絶対に、雛子を助けるから。だから私を信じて。
瞳「・・・ ・・・」
メールを見ながら、涙を浮かべる瞳。ちらりと堂島を確認した後、瞳はソファから立ち上がる。
井上「奥様・・・ どちらへ・・・?」
瞳「井上さん。ついてきて・・・」
堂島を横目に、瞳は奥のキッチンへ向かった。井上も瞳に続く。
堂島が視界から消えたところで、瞳は井上に声をかけた。
瞳「娘を信じる事にブレはありません。
だから・・・ 警察に通報する事はしません」
4年前・・・
湾岸警察署で、瞳は娘2人と共に覆面男らの銃撃戦に巻き込まれた事がある。
その時リナは、必死で瞳と雛子を守り通した。
そのリナが・・・妹を誘拐し、ここ数日で起きている連続殺人に関わっているなど・・・
瞳「ありえません。犯人にハメられたんだと確信しています。
だから井上さん・・・」
瞳は涙目で井上を見つめた。その視線を受けた井上は優しい笑顔で声をかけた。
井上「わかっています。私もお嬢様を心から信頼しています」
キッチンの奥から、チラリと堂島の様子を見る。
井上「まぁ、彼は・・・ 放って置いてもよさそうです」
瞳「私達に出来る事は他にないかしら・・・。
雛子を助けるために・・・」
井上「今のように・・・ 芯を強く持ち続ける事・・・
それがまず第一かと」
瞳「そうね・・・」
キッチンを出て、応接室の方を見る。
瞳「もう1つ・・・。出来る事があったわ」
視線の先には、腰を抜かした堂島の姿があった。
・・・ ・・・。
午後10時34分。首都高速道路。
後藤「この後・・・。どうするつもりだ?」
相変わらず、後部座席から慎吾に銃を向けられている後藤。
慎吾「この連続殺人を止め、誘拐犯を捕まえる」
後藤「・・・ ・・・。まるで、犯人じゃないみたいな言い方だな・・・」
慎吾「もちろん。犯人は警察の中にいる。あなたもその可能性がある」
後藤「何をバカな」
リナはずっと横で黙っている。
リナからしてみれば・・・ 慎吾は大変な事をしでかした。
誘拐や殺人には無関係なれど・・・捜査官を銃で脅している。
これで自分も慎吾も、完全に警察から追われる身。
(リナ「妹が危険なのに・・・」)
警察は、犯人が自分達であるとみなして動いている。
(リナ「まるで・・・ 4年前と同じ・・・」)
4年前、警察はヒロを誘拐犯と断定していた。そして・・・結局、父親もヒロも死んでしまった。
このままでは・・・・妹も死ぬ。
(リナ「これからどうすれば・・・」)
1時間先ですら見えない未来・・・リナはただ途方にくれた。
慎吾は奪った銃を、手錠がかけられている左手に持ちかえる。そして右ポケットの中から、携帯電話を取り出した。
後藤から奪った携帯だ。
慎吾「リナ先輩」
その携帯をリナに渡した。リナはそれを右手で受け取り、自由な左手にパスをする。
リナ「な、何よ・・・」
慎吾は再び銃を後藤の首にあてた。
慎吾「裏カバーを開けて、バッテリーを取ってください」
眉をひそめるリナ。
リナ「何で・・・?」
慎吾「電源を完全に断って・・・。GPS追跡を避けます」
リナ「あ・・・ OK・・・」
小さな声を出した後、言う通りにする。
(リナ「ここまで来たら・・・ 後戻りは出来ない」)
慎吾はじっとリナの方を見た。
慎吾「・・・ ・・・」
そして、ちらりと裏カバーのとれた携帯電話を見る。
慎吾「・・・ ・・・」
さらに視線を後藤に移し、声をかけた。
慎吾「今から・・・ ある指示を出します。言う通りにしなければ・・・。
最も最悪なシナリオが待っています」
いつの間にか丁寧口調になっている慎吾。後藤に銃を向けたまま、冷静に語り始める。
慎吾「明日・・・ 【G】駅で、あなたが死ぬというシナリオが・・・」
(第81話へ続く)
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次回予告
慎吾は後藤に指示を出した後、港に置き去りにする。
そしてリナと共に、 黒幕の元へ向かう事にした。
一方、羽鳥邸では・・・
次回 「 第81話 アシスト 」
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