第78話 黒幕の正体に気づく瞬間(とき)
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、接触するも、逃げられてしまった。
リナと2人、羽鳥邸に戻ったが・・・
後藤は慎吾とリナが犯人と断定。その証拠も示す。
直後、誘拐犯からの電話では・・・ 身代金を入れるロッカーの鍵を、リナが持ってると言う。
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第78話 黒幕の正体に気づく瞬間
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後10時3分。羽鳥邸、応接室。
声の主の最後の言葉は・・・ 決定的だった。
(慎吾「完全に・・・ 完全に犯人の罠にはまってしまった・・・」)
慎吾とリナの顔は、みるみる青ざめる。この場を切り抜ける方法など皆無のように思えた。
【 Come to Fuda station at 3:00 p.m. today. 】
( 今日の昼3時、布田駅に来い )
リナを布田駅に呼び出し・・・
【 Go to a restroom. And find a key in the second private room. 】
( トイレに向かえ。そして、2つめの個室の中から鍵を探し出せ )
コインロッカーの鍵をリナに握らせる。
おそらくすでにロッカーには、爆弾の仕込みがあったんだろう。
【 Put all your luggage in the coin-operated locker. 】
( コインロッカーの中に、荷物を全て入れろ )
リナにノートパソコンをロッカーに入れさせ・・・
【 Last mission. Return to your house with the key. 】
( 最後だ。鍵を持って、家に戻れ )
鍵をリナに握らせたまま、ロッカーを爆破。
256文字のパスワードを破棄すると同時に(もっともリナは全て記憶したが)・・・
2人を陥れる為の策略。
リナ「・・・ ・・・」
今思えば、全て自分達を罠に陥れるための指示・・・
2人はそう確信した。
慎吾「・・・ ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
後藤、堂島、瞳、井上の視線全てが2人に向いている。
しばらくの間の後、後藤がゆっくり口を開いた。
後藤「ロッカーの鍵を・・・ 持っているんだな?」
反射的に、ジーンズのポケットを抑えたリナ。
リナ「・・・ ・・・」
ここで鍵を出してしまったら・・・
後藤「出すんだ」
犯行グループだと認める事になる。
後藤「我々は令状を持っている。
従わない場合、無理に調べる事も出来るんだが?」
リナ「・・・ ・・・」
リナと慎吾は、犯行グループの一員ではない。それは100%事実なのだが・・・
(リナ「この状況では・・・ 警察には通じない」)
ましてや、この複雑な犯人のトラップを証明するとなると・・・それなりの時間と労力を要する。
いや、それ以前にこれだけ完璧な【濡れ衣計画】をやってのけた犯人だ。
(リナ「私達の身の潔白を証明する何かを・・・
残しているとは思えない・・・」)
この状況で警察に濡れ衣を証明する事など、不可能に思える。
慎吾「リナ先輩・・・」
小さな声で慎吾が声をかけた。
慎吾「ここは・・・ 出した方がいいです。
強制的に体をまさぐられるよりは・・・」
慎吾の言うことは正しいが・・・ ここで逮捕されたら・・・
妹の命が、さらに危険になる。犯人を自分達だと思っている警察に、妹を救えるとはとても思えない。
リナ「・・・ ・・・」
リナは首を横にふった。
(リナ「ここで捕まるワケにはいかない・・・」)
慎吾「リナ先輩!!」
慎吾が大声をあげた。
慎吾「従ってください!!」
その後、小さく声をかける。
慎吾「僕に・・・ 考えがあります・・・」
リナ「・・・ ・・・」
後藤「仕方ない。堂島、リナ君を調べ・・・」
慎吾「待ってください!!」
慎吾が後藤の言葉を遮る。そして、リナの目をじっと見つめた。
慎吾「僕を・・・ 信じて!!
必ず・・・ 妹さんを助けますから・・・」
リナ「・・・ ・・・」
極限まで追い詰められたリナ。慎吾がいなければ・・・1分後の自分が、どんな行動をとるのかわからない。
リナ「・・・ ・・・」
涙目で慎吾を見つめ返した後・・・
リナ「わかった・・・」
決断した。
(リナ「慎吾の言葉に・・・ 賭けてみる・・・」)
瞳や井上が眉をひそめて、見守る中・・・
リナはポケットからコインロッカーの鍵を取り出した。そしてそれを、後藤に向けて投げる。
後藤「どうも」
鍵をキャッチした後藤は、一言だけリナに言葉を発した。
そのやりとりを見ていた瞳は、一瞬天を仰ぐ。直後・・・
瞳「犯人に・・・ ハメられたんだわ!!」
その言葉は力強く、今でもリナの事を信じているという感情があふれていた。
瞳「警察の対応が間違っています!!
リナは・・・ 犯人に強要されたに違いありません!!」
後藤「残念ですが・・・ 」
後藤は無表情のまま、瞳に言い放つ。
後藤「娘さんを逮捕します」
瞳「!?」
後藤「堂島・・・ 2人に手錠を」
ずっと2人を睨み付けていたた堂島・・・
堂島「こいつらが・・・ 兄を・・・」
下に降ろしていた銃を、リナに向けた。
後藤「堂島! 銃を降ろせ! 手錠だよ!!」
首を横に振った堂島。かすかにその手が震えている。
堂島「・・・ すいません、源さん。手錠は置いてきました・・・」
後藤「何だと!?」
堂島「ロッカーの鍵が出た事で・・・
こいつらが兄を殺したと、100%証明されました」
何かを思い詰めたように語る堂島。その場にいた全員に再び緊張が走った。
後藤「落ち着け、堂島! まさか撃つつもりじゃねぇだろうな?」
堂島「兄の・・・ 仇を・・・」
堂島の体は、さらにブルブルと震え始めた。
リナ「・・・ ・・・」
ゴクリと唾を飲んだリナは、冷や汗を流しながら堂島の目を見つめ返す。
後藤「ここで撃って、兄が喜ぶとでも!?
お前の兄は、正義感の塊のようなヤツだったじゃないか!」
堂島「・・・ ・・・」
堂島の銃口はリナに向けられたままだ。
堂島「くそぉ!!」
一言叫んだ堂島は・・・ 銃を降ろした。
その場にいた堂島以外の者は、深い深呼吸をし、胸をなでおろす。
後藤は自分の手錠を堂島に投げて渡した。
後藤「俺のを使え。1つしかないから・・・、わかってるな?」
堂島「・・・ ・・・」
堂島は無言で、リナの右手に手錠をかけた。
瞳「リナ・・・」
母親の前で、リナは手錠をかけられた姿をさらす事になった。
リナ「・・・ ・・・」
生まれて初めての手錠は、とても冷たくて無機質だ。
リナ「 ? 」
左手にも手錠をかけられるかと思ったが・・・ 堂島は反対側の手錠を慎吾の左手にかけた。
1つしかない手錠だから、そのようにしたんだと理解する。
同時に・・・ このままでは走って逃げ出す事もできないと認識した。
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾もまた、初めて手錠をかけられる。テレビや映画で、犯人が手錠をかけられるシーンは数えられないほど見てきたが・・・。
(慎吾「まさか自分が・・・」)
かけられた手錠をじっと見つめていた。
(後藤「全く・・・ 堂島のヤツ、テンパりやがって・・・。
後で面倒な事になるぞ・・・」)
そう思いながら、後藤は時計を確認した。
後藤「午後10時7分・・・ 容疑者確保・・・と」
そして携帯を取りだして電話をかける。
瞳は何も出来ず・・・娘とその彼氏に、手錠をかけられるのを見る事しかできなかった。
警備主任の井上も、どうしたらいいのかわからない表情を浮かべるだけだ。
後藤「あぁ後藤だ。今、容疑者を確保した。あぁ、今は2人だけだ。
それと3人目の人物から・・・
明日は護国寺駅に身代金を持ってくるように指示があった。
そうだ・・・ くわしい事は署で話す。じゃぁ、後で・・・」
電話を切った後藤はポケットに携帯を入れようとした。
ガシャン。
その手からスルリとこぼれ落ちた携帯は、床にたたきつけられる。
後藤「おっと・・・。丁寧に扱えって、注意されたばかりなのに・・・」
苦笑いをしながら、後藤は携帯を拾った。
後藤「待てよ・・・」
何かを思い出した後藤は、再びどこかに電話をかけた。
その様子を見ていた慎吾。
慎吾「・・・ ・・・」
手錠でリナと繋がれたまま・・・
慎吾「・・・ ・・・」
目を大きく見開き、口をポカンと開けた。
慎吾「そうか・・・」
そして小さな声で言葉を発する。その声は少しずつ大きくなっていく。
慎吾「そうか・・・ そうか!!」
目は宙を漂よいながら、一人納得の言葉を連呼した。
慎吾「そうだったんだ・・・」
口を開いて、しまりのない表情を浮かべたまま・・・リナの方を向くと
慎吾「りなせんぱい・・・」
気の抜けたような声を出した。
リナは絶望的な状況で、涙をこらえている。
妹のためにどうするべきかを考えるが、何も思い浮かばない。その場に似つかわしくない慎吾の表情を見て、眉をひそめた。
リナ「な、なによ・・・ 変な顔して・・・」
直後、慎吾が信じられない事を口にする。
慎吾「犯人の正体が・・・
わかりました・・・」
そして慎吾は・・・
後藤「あぁ藤岡。今、2人に手錠をかけたところだ。
これから、署に連行する・・・」
電話中の後藤をじっと見つめた。
(第79話へ続く)
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次回予告
翌日午後3時、護国寺。
大規模な自爆テロが起こる。
直後、警察署には・・・ テロリストからの声明文が届けられた。
次回 「 第79話 犯行声明文 」
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