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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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79/147

第78話  黒幕の正体に気づく瞬間(とき)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗かいとが、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、接触するも、逃げられてしまった。


リナと2人、羽鳥邸に戻ったが・・・ 

後藤は慎吾とリナが犯人と断定。その証拠も示す。


直後、誘拐犯からの電話では・・・ 身代金を入れるロッカーの鍵を、リナが持ってると言う。


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   第78話  黒幕の正体に気づく瞬間とき


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月18日(火)、午後10時3分。羽鳥邸、応接室。


声の主の最後の言葉は・・・ 決定的だった。


(慎吾「完全に・・・ 完全に犯人の罠にはまってしまった・・・」)


慎吾とリナの顔は、みるみる青ざめる。この場を切り抜ける方法など皆無のように思えた。


【 Come to Fuda station at 3:00 p.m. today. 】

( 今日の昼3時、布田駅に来い )


リナを布田駅に呼び出し・・・


【 Go to a restroom. And find a key in the second private room. 】

( トイレに向かえ。そして、2つめの個室の中から鍵を探し出せ )


コインロッカーの鍵をリナに握らせる。

おそらくすでにロッカーには、爆弾の仕込みがあったんだろう。


【 Put all your luggage in the coin-operated locker. 】

( コインロッカーの中に、荷物を全て入れろ )


リナにノートパソコンをロッカーに入れさせ・・・


【 Last mission. Return to your house with the key. 】

( 最後だ。鍵を持って、家に戻れ )


鍵をリナに握らせたまま、ロッカーを爆破。


256文字のパスワードを破棄すると同時に(もっともリナは全て記憶したが)・・・


2人を陥れる為の策略。



リナ「・・・ ・・・」



今思えば、全て自分達を罠に陥れるための指示・・・


2人はそう確信した。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


後藤、堂島、瞳、井上の視線全てが2人に向いている。


しばらくのの後、後藤がゆっくり口を開いた。


後藤「ロッカーの鍵を・・・ 持っているんだな?」


反射的に、ジーンズのポケットを抑えたリナ。


リナ「・・・ ・・・」


ここで鍵を出してしまったら・・・


後藤「出すんだ」


犯行グループだと認める事になる。


後藤「我々は令状を持っている。

    従わない場合、無理に調べる事も出来るんだが?」


リナ「・・・ ・・・」


リナと慎吾は、犯行グループの一員ではない。それは100%事実なのだが・・・


(リナ「この状況では・・・ 警察には通じない」)


ましてや、この複雑な犯人のトラップを証明するとなると・・・それなりの時間と労力を要する。


いや、それ以前にこれだけ完璧な【濡れ衣計画】をやってのけた犯人だ。


(リナ「私達の身の潔白を証明する何かを・・・

     残しているとは思えない・・・」)


この状況で警察に濡れ衣を証明する事など、不可能に思える。


慎吾「リナ先輩・・・」


小さな声で慎吾が声をかけた。


慎吾「ここは・・・ 出した方がいいです。

    強制的に体をまさぐられるよりは・・・」


慎吾の言うことは正しいが・・・ ここで逮捕されたら・・・


妹の命が、さらに危険になる。犯人を自分達だと思っている警察に、妹を救えるとはとても思えない。


リナ「・・・ ・・・」


リナは首を横にふった。


(リナ「ここで捕まるワケにはいかない・・・」)


慎吾「リナ先輩!!」


慎吾が大声をあげた。


慎吾「従ってください!!」


その後、小さく声をかける。


慎吾「僕に・・・ 考えがあります・・・」


リナ「・・・ ・・・」


後藤「仕方ない。堂島、リナ君を調べ・・・」


慎吾「待ってください!!」


慎吾が後藤の言葉をさえぎる。そして、リナの目をじっと見つめた。


慎吾「僕を・・・ 信じて!!

    必ず・・・ 妹さんを助けますから・・・」


リナ「・・・ ・・・」


極限まで追い詰められたリナ。慎吾がいなければ・・・1分後の自分が、どんな行動をとるのかわからない。


リナ「・・・ ・・・」


涙目で慎吾を見つめ返した後・・・


リナ「わかった・・・」


決断した。


(リナ「慎吾の言葉に・・・ 賭けてみる・・・」)


瞳や井上が眉をひそめて、見守る中・・・ 


リナはポケットからコインロッカーの鍵を取り出した。そしてそれを、後藤に向けて投げる。


後藤「どうも」


鍵をキャッチした後藤は、一言だけリナに言葉を発した。


そのやりとりを見ていた瞳は、一瞬天を仰ぐ。直後・・・


瞳「犯人に・・・ ハメられたんだわ!!」


その言葉は力強く、今でもリナの事を信じているという感情があふれていた。


瞳「警察の対応が間違っています!!

   リナは・・・ 犯人に強要されたに違いありません!!」


後藤「残念ですが・・・ 」


後藤は無表情のまま、瞳に言い放つ。


後藤「娘さんを逮捕します」


瞳「!?」


後藤「堂島・・・ 2人に手錠を」


ずっと2人を睨み付けていたた堂島・・・


堂島「こいつらが・・・ 兄を・・・」


下に降ろしていた銃を、リナに向けた。


後藤「堂島! 銃を降ろせ! 手錠だよ!!」


首を横に振った堂島。かすかにその手が震えている。


堂島「・・・ すいません、源さん。手錠は置いてきました・・・」


後藤「何だと!?」


堂島「ロッカーの鍵が出た事で・・・

    こいつらが兄を殺したと、100%証明されました」


何かを思い詰めたように語る堂島。その場にいた全員に再び緊張が走った。


後藤「落ち着け、堂島! まさか撃つつもりじゃねぇだろうな?」


堂島「兄の・・・ かたきを・・・」


堂島の体は、さらにブルブルと震え始めた。


リナ「・・・ ・・・」


ゴクリと唾を飲んだリナは、冷や汗を流しながら堂島の目を見つめ返す。


後藤「ここで撃って、兄が喜ぶとでも!?

    お前の兄は、正義感の塊のようなヤツだったじゃないか!」


堂島「・・・ ・・・」


堂島の銃口はリナに向けられたままだ。


堂島「くそぉ!!」


一言叫んだ堂島は・・・ 銃を降ろした。

その場にいた堂島以外の者は、深い深呼吸をし、胸をなでおろす。


後藤は自分の手錠を堂島に投げて渡した。


後藤「俺のを使え。1つしかないから・・・、わかってるな?」


堂島「・・・ ・・・」


堂島は無言で、リナの右手に手錠をかけた。


瞳「リナ・・・」


母親の前で、リナは手錠をかけられた姿をさらす事になった。


リナ「・・・ ・・・」


生まれて初めての手錠は、とても冷たくて無機質だ。


リナ「 ? 」


左手にも手錠をかけられるかと思ったが・・・ 堂島は反対側の手錠を慎吾の左手にかけた。


1つしかない手錠だから、そのようにしたんだと理解する。


同時に・・・ このままでは走って逃げ出す事もできないと認識した。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾もまた、初めて手錠をかけられる。テレビや映画で、犯人が手錠をかけられるシーンは数えられないほど見てきたが・・・。


(慎吾「まさか自分が・・・」)


かけられた手錠をじっと見つめていた。


(後藤「全く・・・ 堂島のヤツ、テンパりやがって・・・。

     後で面倒な事になるぞ・・・」)


そう思いながら、後藤は時計を確認した。


後藤「午後10時7分・・・ 容疑者確保・・・と」


そして携帯を取りだして電話をかける。



瞳は何も出来ず・・・娘とその彼氏に、手錠をかけられるのを見る事しかできなかった。


警備主任の井上も、どうしたらいいのかわからない表情を浮かべるだけだ。


後藤「あぁ後藤だ。今、容疑者を確保した。あぁ、今は2人だけだ。

    それと3人目の人物から・・・


    明日は護国寺駅に身代金を持ってくるように指示があった。

    そうだ・・・ くわしい事は署で話す。じゃぁ、後で・・・」


電話を切った後藤はポケットに携帯を入れようとした。


ガシャン。


その手からスルリとこぼれ落ちた携帯は、床にたたきつけられる。


後藤「おっと・・・。丁寧に扱えって、注意されたばかりなのに・・・」


苦笑いをしながら、後藤は携帯を拾った。


後藤「待てよ・・・」


何かを思い出した後藤は、再びどこかに電話をかけた。


その様子を見ていた慎吾。


慎吾「・・・ ・・・」


手錠でリナと繋がれたまま・・・


慎吾「・・・ ・・・」


目を大きく見開き、口をポカンと開けた。


慎吾「そうか・・・」


そして小さな声で言葉を発する。その声は少しずつ大きくなっていく。


慎吾「そうか・・・ そうか!!」


目は宙を漂よいながら、一人納得の言葉を連呼した。


慎吾「そうだったんだ・・・」


口を開いて、しまりのない表情を浮かべたまま・・・リナの方を向くと


慎吾「りなせんぱい・・・」


気の抜けたような声を出した。


リナは絶望的な状況で、涙をこらえている。


妹のためにどうするべきかを考えるが、何も思い浮かばない。その場に似つかわしくない慎吾の表情を見て、眉をひそめた。


リナ「な、なによ・・・ 変な顔して・・・」


直後、慎吾が信じられない事を口にする。


慎吾「犯人の正体が・・・ 




      わかりました・・・」


そして慎吾は・・・


後藤「あぁ藤岡。今、2人に手錠をかけたところだ。

    これから、署に連行する・・・」


電話中の後藤をじっと見つめた。



             (第79話へ続く)

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次回予告


翌日午後3時、護国寺。


大規模な自爆テロが起こる。


直後、警察署には・・・ テロリストからの声明文が届けられた。



次回 「 第79話  犯行声明文 」

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