第77話 潔白を証明できないワケ
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、接触するも、逃げられてしまった。
リナと2人、羽鳥邸に戻ったが・・・ 警察の堂島に銃を向けられる。
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第77話 潔白を証明できないワケ
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後9時49分。羽鳥邸、玄関前。
堂島「布田駅では逃がしたが・・・ 今度は逃がさんぞ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
銃を向けられた慎吾は、じっと男の目を見ていた。
堂島「そのまま邸内に入るんだ」
負けん気の強いリナだが、緊迫した状況に冷や汗を流す。
リナ「警察官が・・・ 一般市民に銃を向け、脅していいわけ?」
それでも言うべき事を口にした。
堂島「ふん! 一般市民にこんな事はしないさ。
一般市民にはな・・・
まずは中へ入れ! 話はその後だ!!」
ややテンパったという表情の堂島。その言葉に、反射的にリナが言葉を発した。
リナ「あんたさぁ!」
さらに文句を言おうとした時、慎吾がリナの手を強く握った。
慎吾「今は・・・ 従った方がよさそうです・・・」
慎吾が見る限り・・・堂島の様子はかなりおかしい。
堂島「とにかく外へ出る選択肢は無い!! さっさと中へ入れ!!」
銃を向けたまま、堂島は2人に大声を出す。頷いた慎吾は、玄関の方を向いた。
慎吾「リナ先輩・・・。僕に・・・ 任せて」
リナの手を握ったまま、羽鳥邸の玄関を開け、中へと入る。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾が主導権を握ってる事にとまどいながらも・・・
(リナ「やっぱり・・・ 慎吾もおかしい・・・」)
リナは言いたい事を抑えて、手を握られたまま羽鳥邸の中へ入って行った。
堂島「応接室だ」
銃を向け続けている堂島の指示に従い、2人は応接室へ足を運ぶ。そこには・・・
母親の瞳、そして警備主任の井上がソファに座っていた。そして反対のソファには、後藤が座っている。
瞳「リナ!!」
驚いた表情の瞳が、リナに声をかけた。
リナ「ママ・・・」
元気なく返事をするリナ。その背後で堂島が、慎吾とリナの方へ銃口を向けている。
井上「リ、リナお嬢様・・・」
羽鳥家警備主任の井上は、状況が全く判らない。
娘が警察官に銃を向けられているのを見て、瞳が声を出した。
瞳「銃を向けるなんて、どういう事!? さっさと銃を降ろしなさい!!」
その言葉に反応したのは、瞳の向かい側に座る後藤。
後藤「私が説明しましょう。堂島、銃を降ろせ」
堂島「・・・ ・・・」
しばらく沈黙を保った堂島だが、やがて慎吾に向けられていた銃口は、下を向いた。
(慎吾「堂島・・・? 2日前に亡くなった人と同じ名前・・・?」)
銃を向けていた男の名前を知った慎吾。【D】で殺された警察官・堂島と同じ名字である事を不思議に思う。
報告書では・・・殺された方の堂島は、身長が191cmで体重も100kgを超える体格のよい男だった。そして銃を向けていた方の堂島は、中肉中背で身長も170cm程度と平均的。
(慎吾「体格はかなり違うけど・・・ 兄弟・・・?」)
向かいに座っていた後藤が、瞳に声をかけた。
後藤はタバコに火を付け、ゆっくりと説明を始める。
後藤「まず、こちらにいる男・・・ リナ君の彼氏だが・・・」
邸内にいた慎吾を除く全員の目が、慎吾に向けられた。
後藤「雛子君の誘拐があった当初から・・・
挙動不審が見られたんですがね・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
慎吾は沈黙を保っている。
後藤「実は誘拐事件の翌日から、ここいら周辺で殺人事件がありまして。
秋津で始まり、翌日は分倍河原。
そして調布・・・。さらには田園調布、恵比寿・・・
毎日1人ずつ、殺されています」
リナ「わ・・・ ・・・」
反論したげなリナだが、慎吾が手を握り、それを止める。
後藤「実は駅名の頭文字が、A・B・C・D・・・と続いてましてね。
どこぞの小説の殺人犯が・・・
同じようなシチュエイションで、人を殺しているらしいのです。
そして彼・・・」
後藤は慎吾を睨み付ける。
後藤「彼は、秋津・分倍河原・調布に姿を現しています。
いずれも、事件当日に・・・」
周りにいた連中も、じっと慎吾に視線を突き刺した。
後藤「しかし、田園調布と恵比寿には姿を現していない。
この2駅で殺人事件があった日には・・・
彼は外出禁止令を言い渡されてましたからね。私に・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
黙って聞いていた瞳だが、ここでようやく口を開く。
瞳「まるで・・・。彼が犯人と言わんばかりの話し方ね」
後藤はタバコをふかしながら、落ち着いた口調で返す。
後藤「まぁ、続きを聞いてください。
不思議な事に彼は、田園調布で我々警察の・・・」
後藤は、チラリと堂島を見た。
後藤「同僚が殉職した日に、田園調布を警戒しろとも言ってます」
後藤は【堂島】という言葉は伏せ、【同僚】という言葉で説明する。弟の堂島に配慮した形だ。
リナ「家の中にいた彼が、どうやって田園調布で人を殺すのよ?」
たまらずリナが口を開いた。
堂島「お前は黙れ!!」
田園調布で兄を亡くした堂島。降ろしていた銃を、再びリナに向けた。その様子を見た瞳が、ものすごい剣幕で堂島を睨み付ける。
後藤「堂島! むやみやたらに、銃を人に向けるんじゃない!!」
堂島「・・・ ・・・」
口を真一文字に結んだ堂島。2,3度頷くと、銃を降ろした。
後藤「・・・ ・・・」
しばらく堂島を睨んだ後、後藤は続けた。
後藤「警察側の捜査では・・・一連の殺人事件はグループによるもの。
彼も犯行グループの1人とみなしています」
吸っていたタバコを、灰皿にトントンと軽く押しつける。
後藤「実は今日、布田駅でまた遺体が見つかりました。
この日警察は・・・布田駅で、多くが警戒にあたっていました。
この一連の連続殺人を止めようと・・・
しかし、それでも人が死んだ」
(リナ「ふ、布田駅!?」)
(慎吾「布田!? 【F】は府中本町でなく、布田だったんだ・・・」)
慎吾とリナは、このとき初めて【F】駅で人が殺された事を知った。
声は出さず、黙って後藤の話を聞く慎吾。
後藤「手口はこうです。まず、コインロッカーに爆弾を仕込み・・・
爆発させる。警察は爆破されたロッカー近辺に集まり・・・
もちろん、その周辺を警戒する」
リナ「・・・ ・・・」
リナは反論したいが、その度、慎吾が強く手を握ってくる。
後藤「ロッカー騒ぎの間に・・・
女子トイレの中で、ある女性を殺害した・・・」
話を聞いていた瞳が眉をひそめた。
瞳「待って・・・。女子トイレで殺害?
彼が女子トイレに入って人を殺したと?
男が女子トイレに入れば目立って・・・」
後藤「殺したのは彼じゃありませんよ。
まぁ、もう少し話を聞いてください。
布田駅の防犯カメラをチェックしたところ・・・
コインロッカーに爆発物を入れる犯人の映像がありました」
(リナ「・・・ ・・・ まさか・・・」)
後藤「今、目の前にいる2人です。あなたの娘、リナ君が・・・
ロッカーにリュックを入れる姿が、はっきりと映ってます。
リュックを入れた1分後に、そのロッカーが爆発しています」
瞳は首を横に振った。
瞳「私の娘が・・・ ロッカーを爆破した人物だと!?
そして人を殺した・・・? あまりにも馬鹿げた見解・・・
断言します。それは何かの間違い! ありえません!!」
娘の彼氏だけでなく、娘本人までもが犯人扱いされて、憤りを露わにする瞳。
後藤「残念ですが・・・
女子トイレに入って行く、リナ君の姿も確認されています」
瞳「これは・・・ 警察側の完全な捜査不十分です!!」
後藤は軽く笑った。
後藤「実は・・・まだ、証拠はありましてね。
警察は6件にもおよぶ連続殺人・・・
それと羽鳥雛子誘拐事件が、同一犯だとほぼ断定しています。
もちろんその証拠を・・・今、お見せします」
後藤は横に置いてあったカバンの中から、数10枚の書類を取り出す。
後藤「ここ数日、警視庁の内部サイトを無断で・・・
ハッキングしている者がいまして・・・」
リナ「・・・ ・・・」
リナはゴクリと唾を飲み込んだ。
後藤「これらは、警察側の内部資料。けして表に出ることはありません」
後藤は取り出した用紙を、瞳の前にバサッと放り投げた。
後藤「これらの資料は・・・ つい先ほど、羽鳥邸2階の客室・・・。
つまり彼が現在寝泊まりしている部屋から、押収したものです!」
慎吾「・・・ ・・・」
ちらりと、2階の客室を見た慎吾。「令状は?」と聞きたかったが・・・おそらく、持っているだろう。
後藤が差し出した資料は・・・本当は令状を取る前、この日午後1時過ぎに藤岡が慎吾の泊まっている部屋から押収した物。違法取得の物ゆえ、本来、証拠としては認められないが・・・
後藤の嘘を、慎吾とリナが気づくことはなかった。
(慎吾「これは・・・僕のミスだ・・・」)
資料を見つめながら、自分のミスに責任を感じる慎吾。
後藤「犯人は警視庁のサイトに侵入し・・・
どの駅にどれだけの人員を配置して警戒するか・・・
また、警察がどこまで捜査を進めているかを知り・・・
その裏をかくように犯行に及んだ」
慎吾「・・・ ・・・」
後藤「これらの捜査資料は彼の部屋から発見された。
だが、彼の部屋にはパソコンはない・・・」
瞳「・・・ ・・・」
後藤「そして彼がパソコンをしている姿を誰も見た事が無い・・・」
今度は、リナに視線を移す後藤。
後藤「リナ君。君はいつも・・・
ノートパソコンを、肌身離さず手元に置いてるそうだね。
見せてくれるかな? アクセス履歴を調べたいんだ」
リナ「・・・ ・・・」
後藤「失礼だが・・・リナ君の部屋も調べさせてもらった。
しかし、ノートパソコンはどこにもなかった。
いつも持ち歩いてるなら・・・ 今もそれを持っているはずだ」
リナ「・・・ ・・・」
リナは黙って、首を横に振った。
後藤「出せない? 警視庁の内部サイトにアクセスした・・・
履歴があるから、出せないという事かな?」
慎吾曰く、口から出任せの達人であるリナだが・・・
リナ「・・・ ・・・」
その場をしのぐ言葉が見つからない。
後藤「怪しい点がなければ、ノートパソコンを出せるはず。
出さなければ、さらに自分を追い詰める事になるぞ・・・」
あくまでも冷静に後藤は言い放った。
瞳「リナ! ノートパソコンを出すのよ!
身の潔白を証明して!!」
リナ「・・・ ・・・」
視線を床に落としたリナは、ゆっくりと首を横に振る。
リナ「出せない・・・。あのパソコンは・・・ もう手元にない・・・」
そして、苦しそうに声を絞り出した。
リナのノートパソコンは・・・ 布田駅のコインロッカーと共に爆破された。
リナの立場からは、ヘタに【布田駅】という言葉も言えない。自ら布田駅に行った事を認めてしまう事になる。
瞳「どうして!? どうして出せないの!?」
その時だった。
ジリリリリーン・・・
応接室にある電話・・・ 広い羽鳥邸の隅々まで聞こえるよう、甲高い音をたてて鳴り響いた。
後藤はすぐに時計を確認する。
後藤「10時ちょうど・・・」
メッセージ通り・・・ 誘拐犯からの電話だと確信した。
後藤にとってみれば、慎吾とリナは犯行グループの一味。そしてこの電話の向こうには・・・彼等と手を組んでいる別の人物がいるはずだ。
ジリリリリーン・・・
すでに慎吾とリナを抑えていることで、警察側に有利と思っている後藤。瞳に電話に出るよう指示した。
後藤「ただ、彼等を拘束した事は黙って下さい。
無事に雛子さんを取り戻すためです」
混乱状態の瞳が首を横に振る。
ジリリリリーン・・・
リナが殺人犯行グループの1人で、さらに警視庁サイトに違法アクセスし・・・実の妹を誘拐し、身代金として1億を要求している。
頭脳明晰な瞳といえど、冷静にこれらの情報を処理するのは無理だ。いや・・・むしろ、そのストーリーは荒唐無稽としか思えない。
後藤「早く出てください!
残った犯行グループに逃げられては、元も子もありません!」
ジリリリリーン・・・
混乱から抜け出せない瞳は、どうしたらいいのかわからない。
リナ「ママ、出て!」
狼狽する母親を見て、リナが声をかけた。
ジリリリリーン・・・
リナ「私は犯人じゃない! それを信じて、雛のために出て!
私が犯人じゃないのなら・・・
今、ここでその電話を取らなければ、雛が危険になる!」
真っ直ぐと瞳を見つめ、力強く声をかけるリナ。
リナの言葉を受け、ようやく少し頭の中が落ち着いた瞳は・・・静かに電話に出た。
瞳「も・・・ もしもし・・・」
声「1億は、まだあるかな?」
何かの機械を通したであろう、電子音声がスピーカーフォンで邸内に鳴り響く。間違いなく誘拐犯だ。
その声を聞いた、その場にいる全員に緊張が走った。
瞳「あ、あるわ・・・」
声「府中本町では、混乱が続いていたのでね。仕切り直しだ。
明日午後3時に、1億を持ってきてもらおうか」
瞳「あ、明日の3時ね・・・。絶対に行くわ! だから雛子を・・・」
声「わかっているさ。明日午後3時に・・・ 護国寺駅だ」
(後藤「やはり【G】駅を指定してきたな・・・」)
前日、犯人は誘拐した雛子を介して【F】駅を指定した。その時、連続殺人事件と関連がないと思っていた後藤は、偶然で処理したが・・・
(後藤「連続殺人、そして羽鳥雛子誘拐は同一犯行グループによるもの。
間違いない!」)
そう確信した。
瞳「あ、明日3時。護国寺駅ね・・・。
ど、どこにお金を持っていけば・・・?」
声「金は4つのアタッシュケースに分けてるな?」
瞳「えぇ・・・。言われた通り・・・」
声「2つは、駅のコインロッカーの中に入れろ」
瞳「わ、わかったわ・・・。残り2つは・・・?」
声「駅を出たら、駅名通り護国寺に出る。
残り2つは、護国寺本堂まで運ぶんだ」
瞳「わ、わかった・・・。2つは駅のコインロッカー。
2つは護国寺本堂ね。そ、その後は・・・?」
声「来たらわかる。お金さえもらえれば・・・
娘は返す。約束しよう」
瞳「そ、その言葉!! 絶対よ!!」
犯人はタイムリミットを設定している。それを過ぎたら・・・雛子を殺すという宣言もしている。
声「あぁ・・・。では明日午後3時。絶対に遅れるな」
そのタイムリミットまで・・・あと、26時間だ。
瞳「ま、待って!!」
後藤の、会話を伸ばせというジェスチャーを見ながら、瞳が声を出した。
瞳「えっと・・・ あの・・・
ロッカー!! そう! コインロッカー!!
どのコインロッカーに、お金を入れればいいの!?」
声「金を入れるロッカーは決まっている」
瞳「わ、わかった。ちょっと待って・・・
ロッカーの番号を、メモする物を取って・・・」
声「必要ない」
瞳「え?」
声「羽鳥リナが、そのロッカーの鍵を持っている。以上だ」
そう言うと電話が切れた。
リナ「な・・・」
リナも・・・そして慎吾も目を丸くする。そして・・・その場にいた全員が、一斉にリナの方を向いた。
(第78話へ続く)
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次回予告
完全に敵の罠にはまったリナ、そして慎吾。
全ての状況は、リナと慎吾が犯行グループだと示していた。
そして2人は、逮捕される。
しかし!!
逮捕されたその時・・・とうとう黒幕の正体に気づいた!
次回 「 第78話 黒幕の正体に気づく瞬間 」
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