第76話 銃を向ける者、向けられる者
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、大学まで辿り着く。男と接触した時、銃を撃たれてしまった。
リナからの電話で、ようやく意識を取り戻したが・・・?
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第76話 銃を向ける者、向けられる者
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後8時12分。
東京農工大学、工学部12号館。3階トイレ。
リナ「慎吾なんでしょ!? 声を聞かせて!!」
脳内に響くような大声・・・慎吾は、反射的に携帯を遠ざけてしまう。まるで拡声器を耳の近くにあて、遠慮無く大声を出されたようだ。再び携帯をゆっくり耳に近づけ、声を出す。
慎吾「リ・・・ リナ先輩・・・?」
携帯越しに、リナが大きなため息をついたのがわかった。
リナ「よかった・・・。
あんた連絡もないし、30分もそこから動かないし・・・」
しばらく音信不通になっていた慎吾。慎吾の契約している携帯電話会社のサーバにリナは侵入。慎吾の携帯端末から送られるGPSデータを検索し、どこにいるのかを突きとめていたが・・・
30分以上も同じ場所から動かない事を、とても心配していた。
リナ「死んだと思ったじゃない!ばか!!」
その大声に、再び携帯を耳から突き放す。
慎吾「僕は・・・ いったい・・・?」
リナ「何があったの? 簡単に状況だけ説明して!」
慎吾「・・・ ・・・」
頭を振り、ぼやけた脳内を少しずつ覚醒させる。
慎吾「確か・・・ トイレにあの男がいて・・・ えっと・・・
男に羽交い締めにされて・・・ 奥の個室に・・・」
少しずつ、意識がはっきりとしてきた。
リナ「はぁ!? あんた犯人ともみ合いになったの!?」
慎吾「い、いえ・・・もみあいというより・・・一方的にやられて・・・
最後は確か・・・ 銃を向けられました。
で、でも・・・ 生きてます。はい、大丈夫です!」
リナ「・・・ ・・・」
確実に慎吾は危険な目に遭っていた・・・ リナはその事を認識する。
リナ「いい? よく聞いて。周りを警戒しながら大学を出て!
大学を出て、北にちょっといけば【東小金井】って駅がある」
慎吾「東小金井・・・?」
リナ「そう! 私は今、吉祥寺ってトコで、そこに向かってる途中だから。
あんたもすぐそこに来て!」
慎吾「わ・・・ わかりました・・・」
携帯を切って起ちあがろうとした慎吾。左ふとももに強烈な痛みを感じた。
慎吾「あが!」 (※あが! = 「痛い!」の沖縄方言)
ジーンズを降ろして、痛い箇所を確認すると・・・太ももに何かが刺さった跡があり、そこから流れたであろう血がうっすらと固まっていた。
慎吾「こ、これは・・・?」
・・・ ・・・。
同時刻、都立病院。
藤岡「あまり携帯を落とさないで下さいよ」
藤岡は静かに携帯を後藤に返した。
後藤「あぁ、わかってるさ」
ポケットに携帯を入れる後藤。
後藤「じゃぁ・・・ また、一仕事残ってるんでな」
後藤は病室を出ようとした。
藤岡「源さん!」
それを藤岡が呼び止める。
後藤「何だ? まだ何かあるのか?」
振り返った後藤はじっと藤岡を見た。
藤岡「堂島を連れていってください」
後藤「堂島・・・? あぁ、弟の方か!」
藤岡「俺は明日まで病院だし・・・。
今、警察で信用出来るのは・・・源さんと堂島だけです」
後藤「堂島か・・・。兄を亡くしたばかりだが・・・」
藤岡「えぇ。兄を殺されて、非常に憤慨してましたし・・・。
あいつは完全にシロ。
俺の代わりとして、あいつを同行させて下さい」
後藤「・・・ ・・・」
藤岡「堂島には、俺から連絡を入れておきます」
後藤「わかった。
じゃぁお前が入院してる間は、堂島を連れて行くとしよう」
藤岡「えぇ。あいつなら・・・
絶対あいつらを、逃がしはしないでしょう」
後藤「ふっ。お前ほどじゃぁないが・・・ 堂島も頼りにするとしよう。
他に言う事は?」
藤岡「いえ・・・」
後藤「じゃぁ、今度こそ行かせてもらおうとしよう」
藤岡「お気を付けて」
軽く笑顔を見せた後藤はコートを羽織り、病室を後にした。
・・・ ・・・。
午後8時33分。東小金井駅。
駅前で待っていたリナは、右手に慎吾の姿を確認して胸をなで下ろす。慎吾に会ったら、開口一番。
「ばか! 心配させて!」
と、言うつもりだった。しかし・・・
慎吾は左足を引きずるように歩いている。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「あ! リナ先輩!!」
リナの姿を見た慎吾は・・・足を引きずりながらも、早足でリナの所へやってきた。
慎吾「すいません。何か僕、気を失っていたようで」
笑いながらリナに声をかけてくる。
リナ「・・・ ・・・ ま、まぁ・・・ 無事でよかったわ・・・」
笑顔ではあるが・・・ 足の引きずり方を見る限り、かなり痛そうだ。最初用意していたセリフは、自然に胸の奥へ消えた。
リナ「とりあえず・・・家に戻るわよ」
もっといい言葉のかけ方があるだろうが・・・ うまい言葉が見つからない。慎吾の斜め後ろに立ち、慎吾の背中に軽く手を添えながら一緒に歩く。
慎吾「あ、あれ・・・? 電車で行くんじゃ?」
リナは駅の中ではなく、左の通りを目指して慎吾を押していった。
少し広い通りに出ると、ちょうど横から走ってきたタクシーを止める。
リナ「話はタクシーの中で」
慎吾の背中を押して、タクシーに乗せ、自らも乗り込んだ。
リナ「ひばりヶ丘まで」
運転手に行き先を伝えたリナ。しばらくタクシーが走った後、慎吾の話を聞くことにした。
・・・ ・・・。
午後9時42分。羽鳥邸近くの通り。
左足を引きずる慎吾、そしてその背中を押すリナ。羽鳥邸の入り口目指して、ゆっくりと通りを歩いている。
慎吾「世界同時多発テロ・・・ 僕らには手が出せる事件じゃないですね」
リナ「えぇ、私達は・・・妹を助けるので精一杯だし・・・。
それにあんたも・・・ 危険な目に遭って大変だったわね・・・」
慎吾は笑って見せた。
慎吾「いえ・・・。でもあの人は・・・殺人犯じゃないのは確かです。
なんていうか・・・。
どこかで会ったことあるようなオーラを持ってたし」
リナは首をかしげる。
リナ「それがわからないのよね・・・。危険な目に遭ったのに・・・。
まるでそいつが、こちら側の人間みたいな言い方して・・・。
だいたいさぁ。あんたの知り合いに英語で喋る人いんの?」
慎吾「いえ・・・ いないですが・・・。なんていうか・・・」
リナ「まぁ、続きは家の中で・・・。あんたの傷も気になるし・・・。
毒じゃない事を祈っておいて・・・」
ちょうど2人は、羽鳥邸前の大きな銀門に辿り着いた。リナが門の前にあるボタンを押す。
リンゴーン・・・
呼び鈴が鳴った。
リナ「とりあえず、その左足の傷。井上さんに見てもらうから」
慎吾「多分・・・。麻酔銃かとは思うんですが・・・」
しばらくすると・・・
ブーーー・・・
甲高い機械音と共に、銀色の門が開いた。銀色の門の奥にはさらに赤い門がある。やがて赤い門が開くと・・・。
いつもそこにいるはずの・・・井上の姿が見えない。
リナ「あら? 井上さんは・・・?」
慎吾「いないですね?」
リナ「でも、門を開くには、誰かが内側から開けないと・・・」
邸内には、門を開けた誰かがいるはずだ。
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく門の前に立っていた2人だが、井上が現れる気配はない。
リナ「まぁ・・・ 入っておきましょう・・・」
リナと慎吾は門をくぐる。いつもなら、井上から受けるはずの金属探知の検査・・・それを受けず、中へと入って行った。
2人が門をくぐった後、羽鳥邸の大きな門が閉じる。
慎吾「・・・ ・・・」
門の横に警備小屋がある。そこに井上がいて、門を開け閉めしているのだろう・・・。そう2人は思っていた。
リナ「井上さん。何で姿を見せないのかしら?」
慎吾「・・・ ・・・」
やがて2人は、玄関の前に辿り着く。
慎吾「・・・ ・・・」
ふと慎吾が立ち止まった。ドアノブに手を伸ばさず、何かを考える表情を浮かべる。
リナ「 ? 」
慎吾の斜め後ろに立ち、慎吾の背中を押していたリナが首をかしげた。
慎吾「リナ先輩・・・」
リナ「どうかした?」
門をくぐってから、何かが慎吾に危険を知らせている。
慎吾「いったん外に出ましょう。なんだか気分が悪くなっちゃって・・・」
そう言うと慎吾は、踵を返した。
慎吾「!?」
しかし・・・ 振り返った瞬間、慎吾は目を丸くする。
制服を着けた男・・・ 井上ではない男が、慎吾に銃を向けていたからだ。
リナ「な・・・」
リナも振り返り、男を見た瞬間、目を大きく見開いた。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾もリナも、その男に見覚えがある。
(慎吾「布田駅で会った警察官だ・・・」)
堂島「安全装置はすでにハズしている」
その男・・・堂島は銃を慎吾に向けたまま、静かに口を開いた。
リナ「・・・ ・・・」
この日慎吾とリナは犯人の指示に従い、布田駅へ向かった。そしてコインロッカーの1つに、リナは荷物を入れ・・・直後、ロッカーは爆発。
爆発直前・・・ 慎吾とリナは、今、目の前にいる男に注意を受けていた。
リナ「・・・ ・・・」
普段のリナなら、例え相手が警察だろうと、無礼な態度を取る人間には【口】で反論する。しかし・・・
(リナ「よ、よりによって・・・」)
布田駅で爆破騒ぎの疑いをかけられると思い、逃げ出した。その状況を知っているだけに、下手な事を口にするわけにはいかない。
(リナ「こんな、ややこしい状況に・・・」)
頭の回転の速いリナは、どうするべきかを考えた。
堂島「中に入れ。外へ出ることは許さん」
冷静だが・・・ 強い口調で2人に言い放つ。
堂島「これは脅しじゃない。早く中に入るんだ」
堂島の握る銃の先は・・・ 慎吾に真っ直ぐ向けられたまま。
つい2時間前も慎吾は、銃を向けられた。しかしそれは麻酔銃・・・本物の銃ではなかった。
慎吾「・・・ ・・・」
だが、今向けられているのは・・・ 紛れもなく本物の銃だ。
(第77話へ続く)
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次回予告
母親と井上、そして捜査官の後藤が待つ応接室。慎吾とリナは、その応接室に姿を現す。
そして・・・
後藤に厳しい追及を受ける中・・・ 犯人からの電話が鳴り響いた。
次回 「 第77話 潔白を証明できないワケ 」
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