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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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77/147

第76話  銃を向ける者、向けられる者

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐事件から5日目。慎吾は府中本町で見た不審な男を追いかけ、大学まで辿り着く。男と接触した時、銃を撃たれてしまった。


リナからの電話で、ようやく意識を取り戻したが・・・?


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   第76話  銃を向ける者、向けられる者


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月18日(火)、午後8時12分。

東京農工大学、工学部12号館。3階トイレ。


リナ「慎吾なんでしょ!? 声を聞かせて!!」


脳内に響くような大声・・・慎吾は、反射的に携帯を遠ざけてしまう。まるで拡声器を耳の近くにあて、遠慮無く大声を出されたようだ。再び携帯をゆっくり耳に近づけ、声を出す。


慎吾「リ・・・ リナ先輩・・・?」


携帯越しに、リナが大きなため息をついたのがわかった。


リナ「よかった・・・。

    あんた連絡もないし、30分もそこから動かないし・・・」


しばらく音信不通になっていた慎吾。慎吾の契約している携帯電話会社のサーバにリナは侵入。慎吾の携帯端末から送られるGPSデータを検索し、どこにいるのかを突きとめていたが・・・


30分以上も同じ場所から動かない事を、とても心配していた。


リナ「死んだと思ったじゃない!ばか!!」


その大声に、再び携帯を耳から突き放す。


慎吾「僕は・・・ いったい・・・?」


リナ「何があったの? 簡単に状況だけ説明して!」


慎吾「・・・ ・・・」


頭を振り、ぼやけた脳内を少しずつ覚醒させる。


慎吾「確か・・・ トイレにあの男がいて・・・ えっと・・・

    男に羽交い締めにされて・・・ 奥の個室に・・・」


少しずつ、意識がはっきりとしてきた。


リナ「はぁ!? あんた犯人ともみ合いになったの!?」


慎吾「い、いえ・・・もみあいというより・・・一方的にやられて・・・ 

    最後は確か・・・ 銃を向けられました。


    で、でも・・・ 生きてます。はい、大丈夫です!」


リナ「・・・ ・・・」


確実に慎吾は危険な目に遭っていた・・・ リナはその事を認識する。


リナ「いい? よく聞いて。周りを警戒しながら大学を出て!

    大学を出て、北にちょっといけば【東小金井】って駅がある」


慎吾「東小金井・・・?」


リナ「そう! 私は今、吉祥寺ってトコで、そこに向かってる途中だから。

    あんたもすぐそこに来て!」


慎吾「わ・・・ わかりました・・・」


携帯を切って起ちあがろうとした慎吾。左ふとももに強烈な痛みを感じた。


慎吾「あが!」  (※あが! = 「痛い!」の沖縄方言)


ジーンズを降ろして、痛い箇所を確認すると・・・太ももに何かが刺さった跡があり、そこから流れたであろう血がうっすらと固まっていた。


慎吾「こ、これは・・・?」



・・・ ・・・。


同時刻、都立病院。


藤岡「あまり携帯を落とさないで下さいよ」


藤岡は静かに携帯を後藤に返した。


後藤「あぁ、わかってるさ」


ポケットに携帯を入れる後藤。


後藤「じゃぁ・・・ また、一仕事残ってるんでな」


後藤は病室を出ようとした。


藤岡「源さん!」


それを藤岡が呼び止める。


後藤「何だ? まだ何かあるのか?」


振り返った後藤はじっと藤岡を見た。


藤岡「堂島を連れていってください」


後藤「堂島・・・? あぁ、弟の方か!」


藤岡「俺は明日まで病院だし・・・。

    今、警察で信用出来るのは・・・源さんと堂島だけです」


後藤「堂島か・・・。兄を亡くしたばかりだが・・・」


藤岡「えぇ。兄を殺されて、非常に憤慨してましたし・・・。

    あいつは完全にシロ。


    俺の代わりとして、あいつを同行させて下さい」


後藤「・・・ ・・・」


藤岡「堂島には、俺から連絡を入れておきます」


後藤「わかった。

    じゃぁお前が入院してる間は、堂島を連れて行くとしよう」


藤岡「えぇ。あいつなら・・・

    絶対あいつらを、逃がしはしないでしょう」


後藤「ふっ。お前ほどじゃぁないが・・・ 堂島も頼りにするとしよう。

    他に言う事は?」


藤岡「いえ・・・」


後藤「じゃぁ、今度こそ行かせてもらおうとしよう」


藤岡「お気を付けて」


軽く笑顔を見せた後藤はコートを羽織り、病室を後にした。



・・・ ・・・。


午後8時33分。東小金井駅。


駅前で待っていたリナは、右手に慎吾の姿を確認して胸をなで下ろす。慎吾に会ったら、開口一番。


「ばか! 心配させて!」


と、言うつもりだった。しかし・・・


慎吾は左足を引きずるように歩いている。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「あ! リナ先輩!!」


リナの姿を見た慎吾は・・・足を引きずりながらも、早足でリナの所へやってきた。


慎吾「すいません。何か僕、気を失っていたようで」


笑いながらリナに声をかけてくる。


リナ「・・・ ・・・ ま、まぁ・・・ 無事でよかったわ・・・」


笑顔ではあるが・・・ 足の引きずり方を見る限り、かなり痛そうだ。最初用意していたセリフは、自然に胸の奥へ消えた。


リナ「とりあえず・・・家に戻るわよ」


もっといい言葉のかけ方があるだろうが・・・ うまい言葉が見つからない。慎吾の斜め後ろに立ち、慎吾の背中に軽く手を添えながら一緒に歩く。


慎吾「あ、あれ・・・? 電車で行くんじゃ?」


リナは駅の中ではなく、左の通りを目指して慎吾を押していった。

少し広い通りに出ると、ちょうど横から走ってきたタクシーを止める。


リナ「話はタクシーの中で」


慎吾の背中を押して、タクシーに乗せ、自らも乗り込んだ。


リナ「ひばりヶ丘まで」


運転手に行き先を伝えたリナ。しばらくタクシーが走った後、慎吾の話を聞くことにした。


・・・ ・・・。


午後9時42分。羽鳥邸近くの通り。


左足を引きずる慎吾、そしてその背中を押すリナ。羽鳥邸の入り口目指して、ゆっくりと通りを歩いている。


慎吾「世界同時多発テロ・・・ 僕らには手が出せる事件じゃないですね」


リナ「えぇ、私達は・・・妹を助けるので精一杯だし・・・。

    それにあんたも・・・ 危険な目に遭って大変だったわね・・・」


慎吾は笑って見せた。


慎吾「いえ・・・。でもあの人は・・・殺人犯じゃないのは確かです。

    なんていうか・・・。


    どこかで会ったことあるようなオーラを持ってたし」


リナは首をかしげる。


リナ「それがわからないのよね・・・。危険な目に遭ったのに・・・。

    まるでそいつが、こちら側の人間みたいな言い方して・・・。


    だいたいさぁ。あんたの知り合いに英語で喋る人いんの?」


慎吾「いえ・・・ いないですが・・・。なんていうか・・・」


リナ「まぁ、続きは家の中で・・・。あんたの傷も気になるし・・・。

    毒じゃない事を祈っておいて・・・」


ちょうど2人は、羽鳥邸前の大きな銀門に辿り着いた。リナが門の前にあるボタンを押す。


リンゴーン・・・


呼び鈴が鳴った。


リナ「とりあえず、その左足の傷。井上さんに見てもらうから」


慎吾「多分・・・。麻酔銃かとは思うんですが・・・」


しばらくすると・・・


ブーーー・・・


甲高い機械音と共に、銀色の門が開いた。銀色の門の奥にはさらに赤い門がある。やがて赤い門が開くと・・・。


いつもそこにいるはずの・・・井上の姿が見えない。


リナ「あら? 井上さんは・・・?」


慎吾「いないですね?」


リナ「でも、門を開くには、誰かが内側から開けないと・・・」


邸内には、門を開けた誰かがいるはずだ。


慎吾「・・・ ・・・」


しばらく門の前に立っていた2人だが、井上が現れる気配はない。


リナ「まぁ・・・ 入っておきましょう・・・」


リナと慎吾は門をくぐる。いつもなら、井上から受けるはずの金属探知の検査・・・それを受けず、中へと入って行った。


2人が門をくぐった後、羽鳥邸の大きな門が閉じる。


慎吾「・・・ ・・・」


門の横に警備小屋がある。そこに井上がいて、門を開け閉めしているのだろう・・・。そう2人は思っていた。


リナ「井上さん。何で姿を見せないのかしら?」


慎吾「・・・ ・・・」


やがて2人は、玄関の前に辿り着く。


慎吾「・・・ ・・・」


ふと慎吾が立ち止まった。ドアノブに手を伸ばさず、何かを考える表情を浮かべる。


リナ「 ? 」


慎吾の斜め後ろに立ち、慎吾の背中を押していたリナが首をかしげた。


慎吾「リナ先輩・・・」


リナ「どうかした?」


門をくぐってから、何かが慎吾に危険を知らせている。


慎吾「いったん外に出ましょう。なんだか気分が悪くなっちゃって・・・」


そう言うと慎吾は、踵(きびす)を返した。


慎吾「!?」


しかし・・・ 振り返った瞬間、慎吾は目を丸くする。


制服を着けた男・・・ 井上ではない男が、慎吾に銃を向けていたからだ。


リナ「な・・・」


リナも振り返り、男を見た瞬間、目を大きく見開いた。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾もリナも、その男に見覚えがある。


(慎吾「布田駅で会った警察官だ・・・」)


堂島「安全装置はすでにハズしている」


その男・・・堂島は銃を慎吾に向けたまま、静かに口を開いた。


リナ「・・・ ・・・」


この日慎吾とリナは犯人の指示に従い、布田駅へ向かった。そしてコインロッカーの1つに、リナは荷物を入れ・・・直後、ロッカーは爆発。


爆発直前・・・ 慎吾とリナは、今、目の前にいる男に注意を受けていた。


リナ「・・・ ・・・」


普段のリナなら、例え相手が警察だろうと、無礼な態度を取る人間には【口】で反論する。しかし・・・


(リナ「よ、よりによって・・・」)


布田駅で爆破騒ぎの疑いをかけられると思い、逃げ出した。その状況を知っているだけに、下手な事を口にするわけにはいかない。


(リナ「こんな、ややこしい状況に・・・」)


頭の回転の速いリナは、どうするべきかを考えた。


堂島「中に入れ。外へ出ることは許さん」


冷静だが・・・ 強い口調で2人に言い放つ。


堂島「これは脅しじゃない。早く中に入るんだ」


堂島の握る銃の先は・・・ 慎吾に真っ直ぐ向けられたまま。


つい2時間前も慎吾は、銃を向けられた。しかしそれは麻酔銃・・・本物の銃ではなかった。


慎吾「・・・ ・・・」


だが、今向けられているのは・・・ 紛れもなく本物の銃だ。





             (第77話へ続く)

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次回予告


母親と井上、そして捜査官の後藤が待つ応接室。慎吾とリナは、その応接室に姿を現す。


そして・・・ 


後藤に厳しい追及を受ける中・・・ 犯人からの電話が鳴り響いた。



次回 「 第77話  潔白を証明できないワケ 」

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