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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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70/147

第69話  鍵

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐事件から5日目、犯人の代わりにリナの妹が身代金受け渡しの場所を指示する。リナはその夜、犯人から布田駅に来いというメッセージを受け取った。


慎吾と2人で、布田駅に向かうのだが・・・?


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   第69話  鍵


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月18日(火)、午後2時34分。布田駅。


北口周辺で警備にあたっている男・・・ 布田駅警備でのリーダーを務めるのは、警視庁から派遣された堂島(どうじま)秀夫(ひでお)。


2日前、兄の大悟(だいご)を亡くしたばかりだ。


兄とは違って細身の秀夫。制服をピシッと着こなし、鋭い視線で警戒の目を光らせる。


ふとその視線が、一際(ひときわ)光った。この場にいるはずのない男を捉えたからだ。


堂島「藤岡さん! どうしてここに!?」


銀縁眼鏡で白いコートをつけた藤岡が、布田駅北口に現れた。堂島の姿を確認した藤岡は、堂島の前まで小走りに駆け寄ってきた。


堂島「藤岡さん! 今日は待機命令が出てるでしょ!?

    俺の兄貴は、それに背(そむ)いて殺されたんですよ!?」


立ち止まった後、軽く深呼吸をして口を開く藤岡。


藤岡「わかってる。だが大事な情報を突きとめたんだ!

    今、行われている連続殺人事件。その犯人の情報をな・・・」


堂島「え・・・?」


堂島の態度が豹変する。


堂島「ま、待ってください・・・連続殺人の犯人って・・・。

    そ、それって・・・」


藤岡の鋭い視線が、堂島を睨み付ける。


堂島「お、俺の兄貴を殺したヤツ!?」


藤岡「あぁ、そうだ」


2度頷いた藤岡。


藤岡「いいか。落ち着いてよく聞くんだ。この連続殺人犯は・・・

    ナイフやバットなど、殺害に使った道具は残している。


    しかし体毛や物品など、本人に繋がる物は一切残してない」


真剣に藤岡の話を聞く堂島。


藤岡「俺の突きとめた情報では、犯人は複数いる。

    今から俺は・・・そいつらの1人がいると思われる場所に行く」


堂島「ちょ・・・そいつらの1人って・・・

    待って下さい。情報が急(きゅう)すぎて・・・」


藤岡「ゆっくり説明したいところだが、時間がない。

    俺は証拠をこの手で捉(とら)えるため、その場所へ向かう」


堂島「な、何言ってるんですか? 1人でなんて危険ですよ!?

    お、俺も行きますよ! 兄貴を殺したヤツ、絶対捕まえます!!」


首を横にふる藤岡。


藤岡「都内の警察や警備員は、今日の【F】駅に最大限動員されている。

    それに・・・  俺が1人で行かなければならない理由がある」


堂島「何ですか? その理由って・・・」


藤岡「今は・・・ 言えない。これは警察全体にも関わる事なんだ」


堂島「警察全体?」


藤岡「あぁ。単なる連続殺人事件・・・

    そう思っていた以上の事が・・・今、起こっている」


堂島「な、何言ってるんですか? もう少し、わかるように・・・」


藤岡「今はわからない方がいい。とにかく今は、確実な証拠が必要なんだ。

    確実な証拠がなければ・・・我々警察も大変な事に巻き込まれる」


ゴクリと唾を飲み込む堂島。


堂島「俺は・・・藤岡さんのような、東大の頭脳は持ってません。

    話はよく見えませんが・・・ 何か大変な事が起こっている・・・


    って、事ですね?」


藤岡「あぁ、そうだ。そして今は、ヘタに動いてはいけない時」


堂島「俺の兄貴を殺したヤツですよ・・・ 

    それでも俺は、動いてはいけないと!?」


藤岡は、深く頷いた。


堂島「そんな・・・」


しばらく呆然とする堂島。完全に納得してはいないものの、やがて首を縦に振った。


堂島「藤岡さんが、そう言うなら・・・ よっぽどの事なんでしょう。

    わかりました。今は、藤岡さんに・・・任せます」


藤岡「すまないな。それと1つお前に頼みがある」


堂島「頼み?」


藤岡「あぁ、その為に俺はここに来たんだ。

    考えたくはないが・・・もし万が一の事が、俺にあれば・・・」


コートの胸ポケットから、USBメモリを取り出す。


藤岡「これをお前に預ける。今まで俺が集めた証拠が入っている。

    ただし・・・ 

   

    そのファイルには時限式の閲覧プログラムが組まれている」


堂島「 ? 」


藤岡「明日の午後3時ちょうど・・・

    その時間にしか、ファイルは見られないようにしてある。


    今は見られないって事さ」


堂島「なんでそんな手間のかかる事を? 今すぐ、教えてくださいよ!」


やや興奮気味の堂島は、声を荒げた。


藤岡「俺にとっても、堂島は可愛い後輩の1人だった。ホシは挙げたいさ。

    だがここでヘタに動くと・・・


    連続殺人よりも酷い、大惨事が起こる!」


藤岡は冷静な口調・・・それでいて語気を強めた口調で語る。


藤岡「俺が24時間後も無事なら・・・

    お前達の協力の元、一気にカタをつける。約束する!


    だが、もし俺に何かあれば・・・

    お前が兄貴の敵(かたき)を討つんだ!」


堂島「・・・ ・・・」


何か言いたげな表情を見せる堂島。


藤岡「お前の気持ちもわかる。だが・・・ ここは俺に任せてくれ」

      

藤岡は堂島に鋭い眼光を浴びせたまま、微動だにしない。

しばらく口を真一文字に結んでいた堂島は・・・ 藤岡の目を見つめながら深く頷いた。


藤岡「よし・・・」


USBメモリを堂島に渡した。


藤岡「もっとも・・・ お前の力を借りるつもりはないがな・・・」


堂島は、胸ポケットの奥深くにUSBメモリをしまう。


堂島「分かりました。でも、危険な場面では・・・

    いつでも俺を応援に呼んでくださいよ!」


藤岡「あぁ・・・。約束するよ。何かあれば、真っ先にお前に声をかける」


そう言うと藤岡は、堂島に背中を向け、駅構内に入っていこうとした。


堂島「ま、待ってください! ど、どこへ?」


背中を向けたまま藤岡は・・・ 小さな声で言った。


藤岡「府中本町さ。俺が探している奴は・・・そこに現れる」


そして藤岡は、人混みの中へ姿を消した。



・・・ ・・・。


同時刻。京王線・新宿行きの電車の中。


リナ「・・・ ・・・」


布田駅が近づいてくると、リナの心臓はバクバクとなり始めた。

これから、妹を誘拐した連続殺人事件の犯人と接触するかも知れない。


(リナ「布田駅まで・・・ あと数分・・・」)


自分だけが関わっているなら、もっと強気になれただろうが・・・今回は妹の命がかかっている。判断ミスは絶対に許されない。


4年前、覆面男らにリナと父親は誘拐された。裏で糸をひいていた黒幕がいるはずだ。


その黒幕は、銃撃戦ですら平気でしかけてきた。


そして今回・・・関係のない一般市民を1人ずつ殺している。妹を誘拐した人物は・・・人の命を平気で奪える、考えるだけでも恐ろしい人物だ。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾が横にいるだけでも、かなり心強い・・・ とはいえ、不安な気持ちを全て拭(ぬぐ)えるわけではなかった。


リナはリュックの中からノートパソコンを取り出し、起動させる。


慎吾「あ・・・ 調布駅だ・・・」


リナの横に座っていた慎吾が声を出した。2人の乗った電車は、調布駅でいったん止まる。


リナ「次よ、布田駅は」


ノートパソコンを操作しているリナは、視線を合わせることなく慎吾に伝えた。


慎吾「秋津、分倍河原、調布・・・ 

    今まで殺人が起こった駅を経由してますね」


リナ「この電車、新宿まで行くから・・・ 

    そっからなら田園調布も、恵比寿もすぐよ」


慎吾「今まで起こった殺人事件は全て・・・ 

    この近場なんですね・・・」


リナ「布田駅も、府中本町駅も・・・ どちらもすぐだし・・・」


慎吾「【F】駅か・・・」


出来る事ならば、次の殺人を止めたいと思うが・・・


(慎吾「まずは、布田駅・・・」)


今ある選択肢は、布田駅に向かう・・・だけだ。


リナはずっとパソコンの画面を見ている。もうすぐ犯人の指定した駅に着く状況で・・・


何を見ているのか気になった慎吾は、横から覗いてみた。


慎吾「メール・・・ ですか?」


リナはチラッと慎吾を見た後、またパソコンの画面に視線を移す。慎吾がパソコンの画面を見るのを、とがめる事はしない。


リナ「うん。死んだ彼氏からの・・・ 最後のメールよ」


【もしこのメールを君が読む時は・・・ おそらく俺は死んでいるだろう】


この書き出しで始まるメールは・・・ 延々とリナへの愛の言葉が綴(つづ)られている。4年前の事件以降、なるべくヒロの事、過去の事は考えないようにしていたが・・・


深夜、犯人から示された動画にはヒロが映っていた。

ヒロの事を思い出すと、心臓を握られたように苦しい感覚に襲われ、涙がこぼれそうになる。


しかし・・・


これから危険を冒さなければならないリナは


(リナ「ヒロ先生・・・ 力を貸して・・・」)


ヒロの愛の言葉が綴られたメールを見て、少しでも勇気を奮い立たせようとしていた。


慎吾「あの・・・ 最後のそれ、何ですか?」


2   35 485813   85  15644845  41     8  

48 416 14384  8  64  318414  384 18613  

48 434 3821  641  38  4313  3848    83  

47 488 9198  869  467  55  75139 57895 

87 638 41089  3  89817    781871 81718 

4   18     36   4161214  8498488     1 


7  897  371   845  4841  3 4

14  8  143  8  913 1834 54 3

413   648  991  36 5345 43 8

1443 4831  864  18 6913 98 7

1515 85286  5  951  81  5898

1438 981713   96998    177 2


慎吾はメールの最後にある、変な数字の列を指さす。


リナ「わからないの?」


慎吾「 ? いや・・・ ちっとも・・・」


リナはマウスでドラッグしてみせた。スペースの部分が暗転して


□■■■□□

□□■□□□

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□□□■■■□□□■■□□□■■□□■□□□□■□□■□

□□□□■□□□□■■□□□■■□□■□□□□■□□■□

□□□□■□□□□□■■□■■□□□■■□□■■□□□□

□□□□■□□□□□□■■■□□□□□■■■■□□□■□


文字が浮かび上がる。


慎吾「あ! なるほど! 」


慎吾が納得したと同時に、電車は布田駅に停車した。


リナ「着いたわ・・・ 行かないと!」


メールに夢中になってたリナは、すぐにパソコンを閉じて慎吾と共に電車を降りた。


ホームに降り立ったリナと慎吾。辺りには、警戒にあたっている警察官や警備員の姿がたくさん見える。


(リナ「あとは・・・ 犯人からの連絡があるはず・・・」)



・・・ ・・・。


午後2時59分。


慎吾とリナは、最初駅構内をウロウロしていたが・・・たくさんの警察や警備員に怪しまれないよう、1度改札口を出て、駅の外を歩いていた。


そして3時になる頃を見計らって、再び駅構内へと入っていく。


改札口付近を通りかかった時・・・リナの携帯から、メール着信を伝えるメロディが流れた。


即座に確認すると、昨日とは違うアドレスだったが・・・ 


(リナ「きた・・・」)


【Go to a restroom. And find a key in the second private room.】

(トイレに向かえ。そして、2つめの個室の中から鍵を探し出せ)


慎吾と共に、メール内容を確認する。


慎吾「トイレに行って・・・ 2番目の個室で鍵を見つけろ・・・」


リナ「へ~。あんた・・・英語、読めるの?」


意外といった表情で、リナは慎吾を見つめた。


慎吾「まぁ、センター試験程度なら・・・。一応大学生なんで」


自信なさげな表情で応える慎吾を、「ふ~ん」という顔で覗き込むリナ。


リナ「ま、私にメール来てるんだし・・・ 女子トイレって事よね」


慎吾「えぇ・・・ さすがに僕は・・・行けません。気をつけてください」


リナ「わかってる・・・。じゃぁ、ちょっと行ってくるわ」


そう言うと、リナはトイレに向かって歩いて行った。


慎吾「僕は改札口付近で路線図を見て、悩むフリを・・・」


リナ「わかった!」



・・・ ・・・。


周りの人物に警戒しながら、リナは女子トイレに入って行く。そして誰も使用していない、2つ目の個室のドアを警戒しながらゆっくりと開けた。


リナ「・・・ ・・・」


パッと見(み)は、普通のトイレだ。ドアを閉め、しばらく個室の中を探る。便器のフタ、トイレットペーパーの芯、便器の裏・・・


(リナ「あった・・・」)


便器の裏の下側に、ガムテープで貼り付けられた鍵を見つけた。ガムテープをはがして、鍵を手にする。


(リナ「 ? コインロッカーの鍵・・・」)


リナは手に入れたコインロッカーの鍵を握りしめ、トイレを出た。改札口手前にいた慎吾が、リナに気づいて寄ってくる。


慎吾「ど、どうでした?」


慎吾に鍵を見せた。


リナ「これがあった・・・」


慎吾「コインロッカーの鍵ですね・・・。

    そのロッカーを・・・開けろって事ですか?」


リナ「まぁ、普通に考えればそうだけど・・・」


慎吾「中に・・・ 何か入ってるのかな?」


2人は、鍵に書かれた番号のロッカーを探す。


慎吾「ありました」


駅のちょうど真ん中辺りに、その番号のロッカーはあった。


慎吾「僕が開けましょう。鍵、貸してください」


ニコッと笑いながら右手を差し出す。


例えばロッカーの中に、危険な何かがあるかもしれない。リナを危険な目に遭わすまいと思ってとった行動だが、リナがそれを拒否する。


リナ「ううん。これは私に指示された事。私が開ける」


リナは鍵を差し込み、横に回す。


ガシャン。


無機質な音が鳴り響いた。ゆっくりと開くと・・・



             (第70話へ続く)

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次回予告


犯人の指示に従い、リナは行動する。

しかし・・・


布田駅構内で大きな爆破騒ぎが起こった。



次回 「 第70話  パスワード 」

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