第70話 パスワード
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。
誘拐事件から5日目、犯人の代わりにリナの妹が身代金受け渡しの場所を指示する。
リナはその夜、犯人から布田駅に来いというメッセージを受け取った。慎吾と2人で、布田駅に向かい・・・犯人からのメールの指示に従う。
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第70話 パスワード
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月18日(火)、午後3時6分。布田駅。
リナ「・・・ 何も・・・ ないわ・・・」
空っぽのロッカーの中を見て、リナが呟く。直後、再びリナの携帯からメール着信音が流れた。先ほどとは違うアドレスからだが・・・
【 Put all your luggage in the coin-operated locker. 】
(コインロッカーの中に、荷物を全て入れろ)
リナ「・・・ ・・・」
犯人からのメールだと確信する。
慎吾「コインロッカーに・・・荷物を入れろ?」
リナの携帯を覗き込んだ慎吾が声をかける。
リナ「何をさせたいのかわからないけど・・・
今は従うしか道はないわ・・・」
慎吾「そうですね・・・」
リナは自分の背負っていたリュックを、ロッカーの中に押し込んだ。そして300円を入れ、ロックする。
慎吾「この後は・・・?」
しばらくロッカーの前で立ちすくむ2人。1分程して、三度リナの携帯が鳴り響いた。
【 Last mission. Return to your house with the key. 】
( 最後だ。鍵を持って、家に戻れ )
またしても初めて見るアドレスからのメールだが、犯人からのメールだと疑う余地はない。
リナ「・・・ 家に帰れって・・・」
慎吾「・・・ ですね・・・」
しばらくメールを覗き込んでいた2人に・・・ 1人の男が声をかけた。
「君達、さっきからここで何をしてるのかね?」
制服を着けた警察官・・・この日、布田駅警備陣のリーダーを務める堂島だ。
慎吾「あ・・ いえ・・・ その・・・」
リナ「あ、すいませ~ん。お巡りさ~ん。
別れよう~って言ってるのに~、この男がしつこくって~・・・」
まるでギャルのようなしゃべり方で、リナは慎吾の肩を軽く押しのける。
リナ「お巡りさんからも~、ちょっと言ってやってくれません?
男は引き際が肝心だ! って~」
慎吾曰く、口から出任せの達人のリナは、その場しのぎの嘘をついた。
慎吾「ちょ、ちょ、ちょっと・・・」
大きなため息をついた堂島は、冷めた目を慎吾に投げかける。
堂島「とにかく、ここにいると邪魔だ。
立ち止まらず、歩きながら別れ話をするといい」
慎吾の肩を軽く叩いた後、堂島はリナに聞こえないよう、小さな声で慎吾に耳打ちした。
堂島「まぁ、こんな美人・・・ 別れたくないよな。
応援しているから、頑張れ」
言いながら、慎吾の背中を押し出す。
慎吾「あ・・ の・・・」
堂島「さぁ、行った、行った!」
押された慎吾。すでに歩き出していたリナの後ろを、ついていく形になった。
リナ「あんたさぁ・・・ 適当に合わせておけばいいのよ。
学習しないわね~。ヘタに警察に目をつけられたら大変よ?」
慎吾「そ、そうですね・・・。はい、すいません・・・」
リナは自分の荷物に後ろ髪をひかれながら、ホームへ続く階段を降りていく。その時・・・
ドッッゴオオオオーーーン!!!
背中から爆音が聞こえ、地震のような揺れを感じた。
リナ「な!?」
慎吾「え!?」
リナと慎吾が同時に振り返り、降りていった階段を逆戻りする。
リナ「あ・・・」
階段を登り切った2人の視線の先では・・・ 先ほどリナのリュックを押し込んだロッカーを中心に、火と煙がモウモウと上がっていた。その近くでは多くの警察官が、慌てて対応している。
慎吾「ば・・・ 爆発した・・・?」
ロッカーに向けて歩き出そうとした慎吾を、リナが止める。
リナ「ま、待って!」
慎吾「だ、だって・・・
さっきのロッカーあたりですよ?」
リナ「だからよ!! こんな何10人も警備してる中で・・・
爆破したロッカーの前に私達は立っていたのよ!
しかも警察官にも声をかけられたし・・・」
慎吾「あ・・・ そうか・・・」
ただでさえ、警戒態勢を強めている警察がいる中、ロッカーが爆発したとなれば・・・
慎吾「ついさっきまでそこにいた・・・ 僕らが疑われる・・・」
リナ「行くわよ! ちょうど電車来たし!」
2人は踵を返して、階段を降りていった。発車直前の、高尾山口行に乗り込む。
慎吾「はぁ・・・ はぁ・・・」
リナ「ふ~・・・」
息を整えながら2人は、電車の中の座席に座った。
慎吾「しかし・・・ いったい何が・・・」
リナ「・・・ ・・・」
あの火と煙では・・・ 自分の荷物は諦めるしかないだろう。
リナ「どうして・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
2人は、しばらく放心状態のままだった。
・・・ ・・・。
その頃・・・布田駅構内では、多くの警備員がコインロッカーの前にかけより、野次馬客を避難させていた。
ロッカーの爆発の後、騒然としてパニックになる者もいる。かと思えば、笑いながら携帯で燃え上がるコインロッカーを動画撮影している者もいた。
「駅構内。ロッカーの中に、爆発物があった模様!」
「一般客を速やかに避難させろ!」
「爆発物処理班を!」
「連続殺人犯人による可能性は!?」
「ロッカーに人を近づけるな! 他にも爆発物があるかもしれん!!」
「今の所、けが人はいません!!」
「周りに怪しい人物がいないか探せ!!」
布田駅で警備にあたっていた全ては、連続殺人犯による爆破テロの可能性を視野に入れ、堂島を中心に慌ただしく動いていた。
・・・ ・・・。
電車の中。やや落ち着きを取り戻した慎吾が、リナに声をかける。
慎吾「・・・ どうして、犯人は英語でメールするんですかね?」
軽くため息をついた後、リナが静かに応えた。
リナ「特定されないようによ。
最初にメールが届いた時、出所を探ろうとしたけど・・・
世界中のあらゆるサーバを経由していた。
なおかつ複雑なコードをかけてたのよね」
慎吾「・・・ ・・・」
リナ「つまり日本語に対応してない場所を経由させ・・・
メールをたらい回しにして、こちらに送ってきたの」
慎吾「あー・・・ そう・・・ですか・・・」
パソコンにくわしくない慎吾が、眉をひそめる。
リナ「日本語メールなら、もっと簡単に特定できるんだけど・・・
ネット世界で、英語に対応してない場所なんてまずないでしょ?」
慎吾「なるほど・・・ 何となくわかりました・・・。
英語でメールした理由が・・・」
リナ「メールの出所をハッキリさせようと思ったら・・・
私にも簡単な作業じゃないわ」
慎吾「とにかく・・・ 犯人はかなり頭のいい人物って事ですね?」
リナ「そりゃそうよ。これだけ人を殺しても、捕まらないんだし」
自分の【人を殺しても】の言葉で、不意に妹の事を思い出したリナは暗い顔をした。
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく何かを考え込む慎吾。
慎吾「ひょっとしたら・・・ あのリュックの中に・・・」
リナ「 ? 」
慎吾「リュックの中に・・・ 犯人の欲しい物があったのかも」
リナ「何かって・・・ 何よ・・・?」
慎吾「あのリュックに・・・ 何が入ってました?」
リナ「何って・・・ ノートパソコン、筆記用具、化粧品・・・
それにスタンガン。財布と携帯はポケットにあるし・・・」
念のため、財布と携帯をポケットから取りだし、それらが無事である事を確認するリナ。
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく考えていた慎吾。
慎吾「考えられるとしたら・・・ ノートパソコンですね」
リナ「何が? 何を考えたら、ノートパソコンに繋がるの?」
慎吾「ほら。最初に誘拐犯から連絡があったのは・・・
ラーメン屋にいた時ですよね?」
リナ「うん・・・」
慎吾「リナ先輩。ノートパソコン、いつも持ち歩いているじゃないですか」
リナ「まぁ・・・ 体の一部みたいなものだし・・・」
慎吾「犯人が、リナ先輩の部屋で探していたのは・・・
ノートパソコンじゃないでしょうか?
前も言った通り、身代金だけが目的なら・・・
リナ先輩に連絡する理由がないですし」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「わざわざ箱根からひばりヶ丘まで・・・
リナ先輩をおびき出した・・・そう、考えられませんか?
犯人が手に入れたい物を・・・ 持って来させたんですよ」
リナ「それが・・・ ノートパソコンって事?」
慎吾「えぇ。犯人の立場で考えると・・・
箱根では見つけられなかった、リナ先輩のノートパソコン。
リナ先輩がそれを常に持ち歩いてると睨んで・・・
今回、布田駅まで持って来させたのではないでしょうか?」
リナ「う~ん・・・ そう思えないんだけど・・・」
慎吾「妹さんの誘拐から、リナ先輩はずっと家で待機してました。
あの家では、毎日警察の方が警備してましたから・・・
ノートパソコンを奪う機会がなかった。
だから今日、この日がチャンスと思い、呼び出した・・・」
リナ「でも・・・ あの爆破じゃ、木っ端微塵よ。
手に入れたい物をぶっ壊す?」
慎吾「・・・ ・・・」
再び慎吾が考える。
慎吾「ノートパソコンの中にある・・・ 情報とか?
何か知られたくないものが、それに入っていたとか・・・?」
首を横にふるリナ。
リナ「別に犯人が欲しそうな情報なんて・・・
ノートパソコンにはな・・・」
突然リナが言葉を止めた。
リナ「・・・ ・・・」
リナの脳裏に、ひっかかっていた何かがフラッシュバックする。
PASS-WORD
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目を大きく見開いて、固まるリナ。
慎吾「どうしました? リナ先輩?」
リナ「パ・・・ パスワードだ・・・」
(第71話へ続く)
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次回予告
犯人が布田駅に呼び出した理由は・・・
パスワードを破壊するためだった。
そう理解したリナは、慎吾と別行動をとる。
慎吾は府中本町に向かい・・・ そして藤岡も府中本町に現れた。
次回 「 第71話 【F】に集まる男達 」
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