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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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68/147

第67話  リナへの指示

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こり始めた。


誘拐事件から5日目、誘拐犯からと思われた電話に出たのはリナの妹。

犯人に代わって、翌日午後5時に、府中本町へ1億を持ってくるよう指示した。


その夜、リナに不審なメールが届く。指定されたサイトを見ると・・・

15歳のリナが、人を殺す動画が流れていた。


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   第67話  リナへの指示


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月18日(火)、午前0時31分。羽鳥邸、リナの部屋。


少しずつ・・・閉ざされた過去の記憶が甦ってきた。


(リナ「あの時・・・ 確か、銃を拾った・・・」)


4年前、あの倉庫で銃を手にした。


(リナ「そして・・・ 撃った・・・」)


自分の発砲した銃弾が・・・ 一人の男の命を奪った。あの時、人を殺した認識はない。だが今見てる映像は、自分が人を殺した事実を示している。


やがて銃撃戦は静まり・・・ ヒロと15歳の自分が、静かに抱き合うシーンでフェードアウトした。直後


【 Come to Fuda station at 3:00 p.m. today. 】

(今日の昼3時、布田駅に来い)


【 You will lose your sister immediately if you do not come. 】

(来なければ、ただちに妹を失う事になるだろう)


【 I will text your cellular phone again. 】

(また、携帯に連絡する)


と、画面に映った。20秒後、ページは真っ黒になる。再度読み込みしても、どんな操作をしても・・・動画もメッセージも、2度と映しだされる事はなかった。


リナ「・・・ ・・・」


キーボードを打ち、そのサイトがアップされているサーバを特定するが・・・


(リナ「すでに消されている・・・」)


目を閉じ・・・大きなため息をつき、しばらく考え込む。

やがて目を開くと・・・


(リナ「今日・・・ 布田駅に3時・・・」)


机の引き出しを手前にひいた。


(リナ「慎吾は【F】以外、殺さないだろうって言ってたけど・・・」)


引き出しの中から、銃型のスタンガンを取り出す。


(リナ「布田駅に行かなければ・・・」)



・・・ ・・・。


午前10時。応接室。


いつもの時刻に、後藤が現れた。


後藤「お疲れさん。昨日も言った通り・・・ 」


眼鏡をとり、レンズをハンカチで拭き取りながら藤岡が応える。


藤岡「わかってますよ。今日は休んでおきます。ただし・・・」


後藤「ただし?」


藤岡「11時の打ち合わせまではここにいます。

    その後、署に戻ります」


後藤「少しは眠っておけよ」


藤岡「ずっとこのヤマを追ってきて・・・

    身代金引き渡しの現場に立ち会えないんですよ?


    眠れるわけがない」


後藤は唇をとんがらせて、2,3度頷いた。


後藤「ま・・・ それもそうだな・・・」


藤岡「例の件、もう少しでカタがつきそうなので。

    現場に行けない代わりに・・・


    今日中に、ハッキングしたヤツを特定しておきます」


後藤「出来そうか?」


藤岡「えぇ。もう半分以上、出所を特定したようなもんですから・・・」


ポンと藤岡の肩を叩く後藤。


後藤「さすがだ。今日の夜・・・ お互いうまい酒を飲めそうだ」


笑いながら2度、3度と藤岡の肩を叩いた。


藤岡「・・・ ・・・」


藤岡は無言で頷いた。



・・・ ・・・。


午前11時。


応接室で簡単な説明を受けた瞳。


後藤「お手数ですが、1度署まで来ていただきます。

    そこで・・・ あなたの腕に【GPSチップ】を埋め込みます」


瞳「チップを・・・?」


後藤「万が一の場合を考えての事です。超小型GPSを・・・

    極細(ごくぼそ)の針で埋め込みますから、痛みはありません。


    傷跡も蚊に刺された程度ですから、ご安心下さい」


身代金引き渡しの時間まで、あと6時間。やや緊張した瞳が静かに頷いた。


瞳「雛子が助かるなら・・・ 何にでも従います」


後藤「では・・・ 今後の事については、署で今一度・・・」


瞳「えぇ・・・」


後藤は瞳と共に、玄関を出る。藤岡は玄関先で、後藤に声をかけた。


藤岡「お気を付けて・・・」


小さく笑った後藤。


後藤「あぁ・・・ お前は?」


藤岡「なんか・・・ 急に気が抜けましたよ。少し眠気が・・・」


そう言うと藤岡は、小さなあくびをした。


藤岡「せっかくなので、ここで1~2時間仮眠とってから移動します」


後藤「へ~。お前の口から眠気なんて・・・ 初めて聞く言葉だ」


笑いながら後藤は、藤岡の二の腕を軽く叩く。


後藤「2時間でも3時間でも寝ておけ。起きたらまた頑張ってくれよ」


藤岡「了解です。ではまた・・・ 夜に」


後藤は瞳に視線を合わせると、再び真剣な表情になる。


後藤「では・・・ 署まで万全の警備の元、ご案内します」


藤岡「・・・ ・・・」


後藤を見送った藤岡は、応接室に戻り・・・ ソファに横になり、静かに目を閉じた。



・・・ ・・・。


午後1時14分。応接室。


ぐっすり寝ている藤岡の横を・・・


1組のカップルが静かに通り過ぎて行く。


赤い眼鏡と大きなポニーテール、薄赤のトレーナーに動きやすそうなジーンズ姿のリナ。慎吾もまた、黒いトレーナーにジーンズ姿。2人ともリュックを背負っている。


慎吾は一瞬だけ、寝ている藤岡の方を見るが・・ すぐに玄関へと向かって行った。


そして2人は、羽鳥邸を後にする。



3分後。


藤岡はゆっくり目を開いた。


(藤岡「・・・ 戻ってくる様子は、ないな・・・」)


現在、羽鳥邸に残っているのは藤岡、そして警備主任の井上の2人。


井上は、庭先にある警備小屋で待機している。前日まで羽鳥邸の警備にあたっていた他の警察の者は、全て府中本町駅へと向かった。


羽鳥邸の中にいるのは藤岡だけだ。


藤岡「・・・ ・・・」


ソファから立ちあがり、静かに2階へ続く階段を登っていく。


そして2階の1番奥・・・ リナの部屋の前で立ち止まった。


両手に手袋をはめながら、ドアを上から下にかけてゆっくり眺める。


藤岡「 ? 」


2つある蝶番(ちょうつがい)の下の方に・・・ シャーペンの芯が、横にひっかけるように置かれてあった。このままドアを開けば、音も無く折れてしまうだろう。


(藤岡「子供だましのトラップを・・・」)


藤岡は静かにシャーペンの芯を取り・・・ ドアノブに手をかけた。


藤岡「・・・ ・・・」


鍵がかかっている。


(藤岡「まぁ、そうだよな・・・」)


ポケットの中から、細い針金のような物を2本取り出すと・・・

それを鍵穴に差し込んで、手慣れた手つきで動かした。


カチャリ


鍵が開く音を確認するとドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開ける。


20畳ある広い部屋。フローリングの床下にはカーペットが敷かれ、雑誌類が乱雑に置かれていた。


藤岡「・・・ ・・・」


4年前、羽鳥邸が覆面男らの襲撃を受けた際、藤岡はこの部屋に入った事がある。


(藤岡「あの時、忽然と消えていた。

     ハーグリーブスの手引とはいえ、見事な神隠しだった・・・」)


部屋には入らず、しばらく中の様子を見る。トラップらしき物がない事を確認すると、警戒しながら部屋の中に入っていった。


藤岡「・・・ ・・・」


リナの部屋のあちこちを見て・・・何かを探す。


藤岡「・・・ ・・・」


2~3分。部屋の物はなるべく動かさないよう、ある物を探していたが・・・結局、見つける事は出来なかった。


(藤岡「ノートパソコンは・・・ 肌身離さずってわけか・・・」)


小さなため息をつきながら、藤岡はリナの部屋を後にする。内側から扉の鍵をかけ、外側から扉を閉める。折らずに抜き取ったシャーペンの芯を、蝶番の上にセットし直す事を忘れない。


そして・・・


今度は慎吾が泊まっている部屋へと向かった。そこには鍵がかかっておらず、すぐに中へと入れた。


藤岡「・・・ ・・・」


リナの部屋と違って、整然と物が片付けられた状態だ。一直線にベッドに向かった藤岡は・・・ ベッドのマットレスを持ち上げる。するとそこから、A4用紙が数10枚出てきた。


藤岡「・・・ ・・・」


携帯を取り出すと、写真モードにする。部屋の中の様子や、ベッドの下から出てきた書類の山を撮影した。


撮影後、手袋をはめた手で書類を取り上げ、目を通す。全て警視庁の内部サイトにアップされている事件の報告書・・・警察の者以外、手にしえない書類だ。


(藤岡「ベッドの下・・・

     エロ本を隠す中学生と同じレベルだな・・・」)


藤岡はそれらを全て押収した。


(藤岡「目的の物・・・半分は手に入れた。次は・・・」)


静かに慎吾の部屋を出た藤岡。


(藤岡「次は、【F】駅だ」)


玄関まで一直線に歩いて行き、音も立てず外へと出て行った。



・・・ ・・・。


午後3時7分。布田駅。


リナと慎吾は、駅構内にあるコインロッカーの前に立っていた。構内の至る所に、制服をつけた警察や警備員が数m単位で歩き回っている。私服警官もいるようだ。


リナ「・・・ ・・・」


コインロッカーの1つに、ある物を押し込み鍵を閉める。


そして・・・


2人は、ホームへ向かって歩いて行った。


小走りに階段を降りている時・・・


ドッッゴオオオオーーーン!!!


駅構内に爆音が鳴り響く。


リナが先ほど鍵をかけたロッカーは・・・


大きな爆音と共に、吹き飛ばされていた。




             (第68話へ続く)

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次回予告


リナは、犯人から布田駅に来るよう指示された事を慎吾に伝える。

慎吾はリナと共に、布田駅に向かう事にした。


犯人の不可思議な行動に、何か裏があると慎吾はよむが・・・。


一方、羽鳥家の運転手・安田は・・・ 意外な場所にいた。


次回 「 第68話  安田の行方 」

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