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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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64/147

第63話  連続殺人のシナリオ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当。

誘拐事件の翌日から、近辺では連続殺人事件が起こる。


アガサクリスティの【ABC殺人事件】を模倣するがごとく、4人目の【D】が殺された。


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   第63話  連続殺人のシナリオ


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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月17日(月)、午前4時12分。羽鳥邸、応接室。


1人静かにノートパソコンを操作していた藤岡。


藤岡「・・・ ・・・」


ディスプレイの画面を見ていて、何かに気づいた。


(藤岡「・・・ これは・・・」)


画面を見つめながら、眉をひそめつつ高速でキーボードを叩く。ふとマナーモードの携帯がバイブした。


右手でキーボードを叩きつつ、左手で携帯を手にし、電話に出る。


藤岡「藤岡だ」


声「藤岡さん・・・ 大変な事に・・・」


電話の向こうから、重苦しい声で話す同僚の声が聞こえてきた。


藤岡「どうした?」


声「恵比寿駅で・・・ 遺体が発見されました」


藤岡「・・・ ・・・」


しばらく沈黙を保っていた藤岡。


藤岡「・・・  状況は?」


声「えぇ、午前4時に・・・」


この日【E】で始まる8つの駅に、警察や民間の警備会社から手配した警備員を配置する事になっていた。ここ数日、【A】【B】【C】【D】で起きた連続殺人・・・この日起こるであろう【E】駅での殺人を止めるためだ。


始発前の午前4時には、警備担当40人が恵比寿駅に集合。3分程警備手順を確認した後、全員でトイレやエレベーターなど駅構内を見て回っていたところ・・・


1人の警備員が施錠された「びゅうプラザ」・・・旅行センターの中で遺体を発見。


声「自分は、遺体を直接見たわけではありませんが・・・

   首を何かで刺されたようで・・・今、鑑識が向かっている所です」


藤岡「・・・。これで5人目か・・・ 他には?」


声「いえ、今のところは・・・」


藤岡「そうか、わかった。また何かあれば連絡をくれ」


そう言うと藤岡は静かに携帯を切った。


(藤岡「明日は・・・ いよいよ【F】か・・・」)


そして再びパソコンの画面を見つめた。


(藤岡「警視庁のページに、侵入しているヤツがいる・・・」)


所属不明の何者かが、警視庁のページに不正アクセスしているのに気づいた藤岡。高速でキーボードを走らせて、侵入者を特定しようとするが・・・


(藤岡「・・・。なかなか高度なプログラムを組んでるじゃないか。

     特定するには。少しばかり時間がかかるな・・・」)


コンピュータ犯罪捜査官である藤岡はいくつかの方法を試してみたが・・・


(藤岡「ハドリアンズ・ウォールの外からきた・・・?

     それとも、最初から内部にスパイがいたか・・・?」)


侵入者の割り出しは簡単ではないと判断した。


(藤岡「どちらにせよ、面白い・・・。まぁ、どこの誰かは・・・」)


腕組みをして、ディスプレイをじっと見つめる。そして・・・


(藤岡「見当は付くがな・・・」)


ちらりと2階を見た。



・・・ ・・・。


午前9時21分。リナの部屋。


リナ「いいの? 私がそっちに行ってもよかったのよ?」


リナは、自分の部屋に慎吾を招き入れていた。


慎吾「多分・・・ 昨日ほどは、疑いは持たれてないと思うので」


前日は、警察にかなり疑われていた慎吾。


リナ「ふ~ん・・・」


慎吾「それで、昨日の事件・・・

    田園調布で起きた事件の報告書がアップされてませんか?」


リナ「そう言うと思った。はい、コレ」


リナは前日同様、A4用紙3枚を渡した。


慎吾「あ、ありがとうございます」


すでにプリントアウトされていた、田園調布駅で起こった殺人事件の報告書。受け取った慎吾は、すぐに目を通す。


リナ「被害者の司法解剖の結果は、まだ出てなかったけど・・・

    それ読むだけでも、十分ひどい事がわかるわよ」


慎吾「・・・被害者は、堂島(どうじま)大悟(だいご)。

    やっぱり【D】だ・・・」


田園調布駅での警備中、突然嘔吐して意識不明に陥る。心肺停止状態で同僚の心臓マッサージを受けるも、心肺は停止したまま。駆けつけた救急隊員に病院に運ばれ・・・病院で死亡が確認された。


鑑識は嘔吐物の中から、5種類の毒物を採取。


シアン化カリウム、ヒ素、テトロドトキシン、パリトキシン、ツボクラリン


慎吾「ひどい・・・ 

    1種類だけでも十分殺傷力の高い毒物なのに・・・」


シアン化カリウム・・・別名「青酸カリ」ともよばれ、映画やドラマなどでもよく聞く毒物の1つだ。


ヒ素・・・98年に起きた「和歌山毒物カレー事件」・・・4人が死亡したこの事件で、カレーに混入された毒としても有名である。


リナ「どうやって、毒物が体内に入ったのかしらね・・・ 

    テトロドトキシンって、フグとかにある毒でしょ?


    ネットで調べたけど、テトロドキシンって・・・

    摂取から死に至るまで、早ければ20分程度とあったわ」


テトロドトキシン・・・「ふぐ毒」とも言われる。調理師免許を持たない者がふぐを調理し、それを食べた人が死亡するという事件は、時折耳にする。ふぐを「鉄砲」と呼ぶのは、「あたると死ぬ」というのが由来である。


慎吾「でも被害者は・・・

    午後6時の警備以降、何も食べてないと書かれてあります」


パリトキシン・・・テトロドトキシンよりも毒性が強い事でも知られる、いわゆる【猛毒】である。


ツボクラリン・・・傷口から体内に入ったりすれば、骨格筋が麻痺し、呼吸困難を誘発。わずか少量でも、人を窒息死させる殺傷力を持っている。


リナ「例えば、仕事の途中で喉が渇いて・・・

    缶ジュースとか、ペットボトル飲料を買って飲んだんじゃないの?


    きっと、それに毒を入れていたのよ。犯人は」


しばらく考えた慎吾は、軽く首を振った。


慎吾「自販機でそれらを買ったとして・・・

    【D】の人物が購入するかどうかもわからないです・・・


    ヘタすれば【D】以外の人物を、殺してしまう可能性もあります」


リナ「そりゃそうだけど・・・」


慎吾「それに、これだけたくさんの毒。即効性の毒もありますし・・・

    普通は一度に摂取は出来ないはずです。


    1つの毒が回れば、他の毒は体が受け付けない・・・」


リナ「よくわからないけど・・・

    じゃぁ、どうやって彼は毒を飲まされたのよ?」


慎吾「例えば・・・

    同僚の誰かが、毒を混ぜた何かを直接渡したとか」


リナ「ちょっと待ってよ!  同僚って・・・

    それじゃ、警察の中に犯人がいるって事になるじゃん!」


慎吾「全くの他人が、これだけ多種の毒を与えるのは・・・

    考えづらいかなって・・・」


リナ「だからって・・・

    仮にも警察が、こんな恐ろしい方法で人を殺すわけ?」


慎吾「その可能性も・・・ 否定できないと思います」


リナ「えー・・・ あんた推理小説とか、ドラマとか見過ぎじゃないの?

    いくら何でも・・・


    警察に連続殺人犯なんて、現実味なさ過ぎだわ」


慎吾「あくまでも可能性って事ですよ。0%ではないという意味で・・・」


リナ「でも・・・」


しばらく考えるそぶりを見せた慎吾。数秒後、リナに再び声をかける。


慎吾「あの・・・ リナ先輩。言っておかなければならない事が・・・」

    

リナ「何?」


慎吾「この・・・ 連続殺人事件の行(ゆ)く先です」


リナ「行(ゆ)く先?」


慎吾「えぇ。僕たちは、この連続殺人事件が・・・

    【ABC】に沿って行われているのは気づきました。


    しかし【何故行われているか?】を考えるのを忘れてました」


リナ「・・・ なるほど。

    てっきり私は【Z】まで続くかと思ったけど・・・


    あれ? ちょっと待ってよ・・・」


何かに気づいたリナ。


リナ「あんた、確か・・・

    この事件が、小説になぞらえているみたいな事言ったわよね?」


慎吾「えぇ、確かに。アガサクリスティの【ABC殺人事件】です」


リナ「じゃぁ、その【ABC殺人事件】の犯人の目的は何だったのよ? 

    ひょっとして同じじゃない?」


慎吾「その小説で真犯人は・・・1人だけを殺したかったんです。

    【ABC】にそって人を殺す無差別殺人と思わせ・・・


    自分に疑いがかからないようにしたんです」


リナ「え!? 人一人殺すため、関係ない人も殺しまくったって事!?」


慎吾「そうです。もちろん主人公のポアロは見抜いたのですが」


リナ「小説とはいえ・・・すごい恐ろしい設定だわ。

    でもまさか、この犯人も・・・


    誰か1人を殺すために、他の人はただ殺されたって言うの?」


慎吾「僕には・・・【ABC殺人事件】よりも・・・

    もっと深い何かが、あるように感じるんですが・・・」


眉間にしわを寄せながら語る慎吾。


慎吾「何かがひっかかってるんですが・・・ 

    明確には判らなくて・・・ ただ・・・」


リナ「ただ?」


慎吾「言いづらいのですが・・・ 

    この殺人事件のシナリオが・・・見えました」


リナ「もったいぶらず早く言ってよ!!」


慎吾「紙と鉛筆はありますか? 書いて説明します」


リナは自分の机の上にあったシャーペンと、プリンタ用紙を慎吾に渡す。

受け取った慎吾はリナの机の上に用紙を置き、とある関係図を書いて見せた。


A 安藤愛子 8箇所  秋津駅

B 板東文太 7箇所  分倍河原駅

C 中條千賀子 6本  調布駅

D 堂島大悟 5種類  田園調布駅


被害者のイニシャルは、順に【AA】【BB】【CC】【DD】となっている。それを見たリナが声を出した。


リナ「これはもう、偶然の域を超えてるわ。

    同一犯によるものと断定していいわね」


リナは、数字の部分を指さす。


リナ「この8箇所とか、6本とかってのは?」


慎吾「この数字は、被害者の刺し傷とか殴打された箇所の数です。

    安藤さんは8箇所刺され、板東さんは7箇所殴られ・・・


    中條さんは6本の注射器で、血を抜かれてます。

    そして堂島さんは・・・5種類の毒を盛られた」


リナ「・・・ カウントダウンしてる? ひょっとして」


慎吾「そうです」


E 4?

F 3?

G 2?

H 1?


慎吾「おそらくこの犯人は・・・

    あと4人殺すつもりじゃないでしょうか? 

   

    【E】【F】【G】【H】の4人を」


リナ「待って。カウントダウンするなら、【0】までじゃない?」


慎吾は首を横に振った。


慎吾「いえ・・・ おそらく【H】は・・・ 【ひばりヶ丘駅】。

    そして、殺される予定の人物・・・つまり【HH】は・・・」


リナ「・・・ ・・・」


突然リナの目が大きく見開いた。


リナ「ま、まさか・・・」


慎吾は黙って頷いた。


リナ「羽鳥(はどり)雛子(ひなこ)・・・。い、妹を・・・?」


慎吾は小さく首を縦に振った。


慎吾「えぇ。これで3日前、犯人の言った意味が判りました」


3日前羽鳥邸に電話してきた犯人は、1億の要求と同時に確かに言った。


声「ゲームはすでに始まっているぞ」


と・・・。


慎吾「これは犯人によるゲームなんですよ・・・」


羽鳥雛子を誘拐し、翌日から毎日【ABC】順に1人ずつ殺す。

期限内に1億が犯人の手に入らなければ・・・ 


慎吾「名字と名前に、8番目のアルファベット【H】を持つ・・・」


リナ「羽鳥(はどり)雛子(ひなこ)を殺す・・・?」


慎吾「えぇ・・・。アルファベット順で、カウントダウンしながら・・・

    最期は【HH】を殺す。


    あたかもゲームをクリアしていくように・・・」


リナ「う、嘘でしょ!? く・・・ 狂っているわよ、そんなの・・・」


慎吾「今の所・・・そのシナリオに沿ってます・・・。

    おそらく次は、【E】駅で【E】の名前の人物が・・・


    4とういう数字が絡む、殺され方をする」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「そのシナリオが確かなら・・・

    今、起きている連続殺人の犯人と・・・」


リナ「妹を誘拐した犯人は・・・」


慎吾「同一人物で間違いないかと・・・」


リナ「・・・ ・・・」


リナは机の上の用紙を、じっと見続けていた・・・。



             (第64話へ続く)

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次回予告


外出禁止令の出されている慎吾は、何も出来ない。

一方、自分の力ではこれ以上、妹には近づけないと思ったリナは・・・


4年前の事件の事を、慎吾に話し始めた。


次回 「 第64話  嫉  妬 」

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