第59話 月光に隠されたもの
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2008年。
リナ、そして父親の魁斗が、謎の組織に狙われた。
イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。
2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。
霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。
後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。
慎吾は犯人の手がかりを探す途中、分倍河原駅で死体を発見。翌日調布駅にいた慎吾は、そこでも殺人事件の現場に遭遇する。
そして不審な男を見かけ、追いかけるが・・・
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第59話 月光に隠されたもの
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(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)
2012年12月15日(土)、午後5時32分。羽鳥邸。
羽鳥邸に戻ってきた慎吾。
数時間前、調布駅で事件があった。慎吾は警察と関わりたくないため、なるべく現場である売店には近づかないようにしていた。そのため、どんな事件だったのかはわからない。
それよりも慎吾は・・・
黒いコートの男・・・秋津駅でも見かけた、不審な男が気になっていた。
大きなサングラスで、その顔はよくわからなかったが・・・この連続殺人事件に、何かしら関わっているように思える。
電車に乗り込んだその男を追いかけようと、慎吾は同じ電車に乗り込んだ。しかしドアが閉まる直前、男は電車から降り、結局は逃げられた形になる。
慎吾はそのまま布田駅まで行き、すぐに調布駅に戻ったが・・・、男を見つける事は出来なかった。
慎吾「・・・ ・・・」
電車から降りた際、慎吾は男と目が合ったような気がした。そして彼は、自分に何かを言ったようにも見えた。
(慎吾「彼は・・・ いったい・・・」)
考えながら自分の部屋・・・羽鳥邸2階にある客室に戻ろうとすると、応接室で声をかけられる。
後藤「遅かったな。どこ行ってたんだ?」
ソファに座っている後藤が、タバコをふかしながら慎吾を呼び止めた。
慎吾「あ・・・ いえ・・・ ちょ、ちょっと、近場を散歩して・・・」
後藤「家を出て、7時間近くになるぞ?
散歩にしては、長すぎやしないか?」
灰皿にタバコを押しつけ、じっと慎吾を睨み付ける。
慎吾「あ・・・ せっかく、東京にいるので・・・ いろいろと・・・」
言いながら、逃げるように部屋へと戻っていく慎吾。後藤は新しいタバコに、100円ライターで火を付ける。
後藤「ふん・・・。嘘をつくのが下手な男だ・・・」
再びタバコをふかしながら、慎吾が部屋に入る姿をじっと見ていた。
・・・ ・・・。
同時刻。リナの部屋。
リナは長時間、パソコンの画面とにらめっこをしていた。
【月光】の楽譜に隠された情報を元に辿り着いたサイトは、テキストのみのシンプルなサイト。
生前のヒロが、テロリストに関する情報や報告書をまとめた個人サイトだった。
それらは日付と共に、英語や日本語でまとめられている。これらはヒロの属していた機関・SISに送られたり、自分の父親に送られたようで、それらの宛先もあった。
羽鳥魁斗を狙ったテロリストの目的は、彼の開発したセキュリティソフトに使われたアルゴリズムであると断定。リナが学校で襲撃された事や、羽鳥邸を爆破された事など、詳細な情報がまとめられている。
そのテキストは・・・2008年12月10日、水曜日。午後8時の文書を最後に途絶えていた。ヒロが亡くなる数時間前だ。
その最後の文書は英語で書かれているが、ヒロの死後、英語を必死に勉強したリナは、その内容を理解出来た。。
レインボーブリッジで、羽鳥瞳の用意した身代金を受け取った後・・・
身代金を犯人に引き渡す際【主犯を特定】し、かつ【羽鳥魁斗を救出する】・・・その2つの任務を遂行するという内容だ。
テキストの一番下には、再びパスワード入力画面があった。
PASS-WORD
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【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
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【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】
16×16で、256文字も要求している。仮に16進数で256桁だと仮定しても、その組合せは16の256乗・・天文学的な数字だ。
最初リナは月光の楽譜にある音符を数値化して、適当に256文字入れてみた。しかしパスは通らず・・・そのサイトはフリーズした状態になってしまう。
パソコンを再起動させてみたが、今度は最初のパスワード入力画面でパスワードを入れてもログイン出来ない。
あらゆる手法を試してみたが、お手上げ状態だった。しかしようやく1時間後、再びサイトに入る事が出来た。
(リナ「このサイトは間違ったパスワードを入力すると・・・、
自動的に1時間は、外部接続をシャットアウトする。
そんなプログラムが仕組まれている・・・」)
そこでリナはサーバに侵入して、パスワード保護を回避状態にしようとした。
しかし・・・
ハッキングの名手と自負しているリナは、どうやってもサーバに侵入できない。
(リナ「こ、これは・・・」)
リナはこれまで、あらゆるサーバに侵入してきた。唯一侵入できないのが・・・
(リナ「ハドリアンズ・ウォール・・・」)
しかしヒロが生きていた頃、このウォールは世に出回ってない。
(リナ「だとしたら・・・」)
父親の魁斗が販売前のセキュリティシステムを、ヒロに提供した・・・ そう考えるのが1番妥当だ。
リナ「・・・ ・・・」
256文字という長いパスワードに加え、1度入力をミスったら1時間は何も出来ない。さらにはハドリアンズ・ウォールという強固なセキュリティで守られている。
(リナ「この先に・・・
この先に絶対、何か重要な手がかりがある・・・」)
確信に近い思いだが・・・皮肉にも自分の父親が、その先の侵入を阻んでいる。
ふと、リナの携帯にメールが入った。
【着信】 歴ヲタ 【タイトル】 なし
【内容】 今、戻りました。すぐに話したい事が!
「OK」と返事をして、見ていたサイトを閉じる。1分後、いつものようにベランダに通じる窓を、コンコンと叩く音が聞こえた。
・・・ ・・・。
同時刻。応接室。
カシャン。
鳴っていた携帯を落とした後藤は、すぐさまそれを拾い上げ電話に出る。
後藤「どうした?」
藤岡「源さん! 調布駅でまた殺人が!」
電話の向こうから、藤岡の声が聞こえてきた。
後藤「何だと!? これで3日連続だぞ!! ホトケはトイレに!?」
藤岡「いえ。今回は売店の中・・・女性店員が被害者です。死因は・・・」
藤岡の口から、おぞましい殺害法が伝えられる。
後藤「ぐ・・・ なんて事だ・・・ で? 同一犯か? 別か?」
藤岡「それはまだ調査中です。わかり次第、また連絡しますので」
後藤「そうか・・・。わかった、連絡を待ってる」
電話を切った後藤は、大きなため息をついた。
・・・ ・・・。
同時刻。リナの部屋。
リナ「犯人らしき男を見た!?」
慎吾「えぇ・・・ しかもその男、秋津駅でも見た男だったんです!」
リナの部屋で慎吾は、この日自分が見た事をリナに伝えていた。
慎吾「売店でまた、何か事件があったのは確かです。
男を追いかけたので、くわしくは見てませんが・・・
警察の人がいっぱい来てたから、また殺人事件だと・・・」
リナ「妹が誘拐された翌日から・・・ 3日連続で殺人事件・・・?」
慎吾「売店には近づいてないので、現場がどうとか・・・
どんな状況だったかはわかりません。だからリナ先輩に・・・」
リナ「わかった」
慎吾の意図を察したリナは、すぐに警視庁のページに侵入する。最新の事件について検索してみたが、調布駅での事件に関するものは見つからなかった。
リナ「事件から時間も浅いし・・・
まだ報告書は作成されてないようね、今日の事件については」
慎吾「そうですか・・・」
小さなため息をついたリナは、別のサイトを開く。
リナ「あった・・・ やっぱり殺人事件だわ・・・」
慎吾「え!? どこのページを見たんですか?」
リナ「【5ちゃんねる】って掲示板よ。
あんたも埋蔵金の時に見てたじゃん。
この掲示板はね・・・
リアルタイムで、事件現場の報告をする人もいるんだから」
リナはその掲示板から、断片的に情報を整理して慎吾に伝える。
【おい! 今日、調布駅で人が殺されたってよ!?】
【俺、調布駅いたぜ。そん時! 警察がいっぱい来てた!】
【なんか、女性店員が殺されたみたい】
【聞いた噂じゃ、出血多量とか?】
【私、あの店員さんから毎日お茶を買ってたのに・・・ショック】
リナ「名前や死因はくわしくはわからないけど・・・
誰かが死んだってのは間違いなさそうね」
慎吾「そうですか・・・」
現時点で、調布駅で起こった事件を探るのは無理だと判断した慎吾。
慎吾「あの・・・
今日も【C】で始まる調布駅で、殺人が起きたから・・・
明日は・・・」
リナ「【D】で始まる駅で、また人が殺される?」
慎吾「はい。可能性は・・・ かなり高いかと・・・」
軽く頷いたリナは、キーボードを叩きながら慎吾に返事する。
リナ「OK! 【D】で始まる駅を検索してみる」
駅名を検索したリナは、都内で【D】から始まる駅を表示した。
代官山 大師前 代田橋 台場 大門 田園調布
リナ「この6つね。
しかも、どの駅もここから近いっちゃ近いわよ・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
ディスプレイに映し出された、6つの駅を見つめる慎吾。
慎吾「ど、どこだろう・・・?
犯人が次に・・・ 事件を起こそうとする駅は・・・?」
リナ「さすがにあたしにも、わからないわよ。
殺人犯の考える事なんて・・・」
しばらく駅名を見ていた慎吾。突然、何かに反応したような声を出した。
慎吾「目黒?」
リナ「え?」
慎吾「あ、いや・・・ すいません、リナ先輩。
目黒に近い駅って、この中にあります?」
リナ「目黒駅に近いなら代官山・・・ いや、田園調布の方が近いわね」
慎吾「田園調布・・・ですか・・・」
リナ「ちょっと・・・ 何よ、目黒って?
どっからそんな単語出てきたの?」
慎吾「あー・・・ 何でだろう?
突然頭の中に【目黒】って言葉が・・・入ってきたみたいな?」
リナはじっと慎吾を睨み付ける。
リナ「・・・ ・・・」
慎吾は視線を合わそうとしない。
(リナ「・・・ 変だ・・・。 ここ数日、何か変だ」)
思えば、箱根で荒らされたリナの部屋にいた時からだ。普段引っ込み思案な慎吾が
慎吾「一騎当千・・・ 僕がいれば千人力です!」
絶対に言わないようなセリフを口にした。翌日には文字化けしたメールを、誰かからの暗号だと指摘し・・・昨日は死体の第一発見者。そして今日は、突然目黒を口にして、明日の殺害現場を予想している。
リナ「あんたさぁ・・・ 最近、様子が変よ。何かあったの?」
リナはズバリ聞いてみた。
慎吾「・・・ ・・・」
しばらく沈黙を保っていた慎吾は、窓を見ながら口を開く。
慎吾「・・・ 江浜さんが亡くなった時・・・ 僕はこう言われました」
以前、徳川埋蔵金を巡る事件で世話になった・・・今は亡き霊能力者、江浜。彼は慎吾に言葉を遺している。
江浜「君の前には、君しか助ける事ができない人たちが現れるだろう。
そういう人たちを・・・君には救って欲しい」
リナ「覚えてるわよ。私もその時、側にいたし。じゃ、何?
あなたしか助ける事が出来ない人ってのが・・・
私って事?」
慎吾はリナに視線を合わせると、無言で微笑んでみせた。
リナ「確かに・・・暗号の事とか、ABCの事とか・・・
あんたの直感というか霊感はすごいと思うし、必要かなって思う。
でも、なんか・・・ 釈然としないわね・・・」
唇をとんがらせながら、やや不満といった表情を素直に浮かべるリナ。慎吾はただ笑っているだけだった。
慎吾「とりあえず・・・ 今、僕が話せるのはこれだけです。
リナ先輩は何か進展はありました?」
リナ「わ、私? あー・・・ 今のところ特には・・・」
【月光】の楽譜の中、ヒロが自分に託したであろうそのサイト・・・
(リナ「慎吾には悪いけど・・・
しばらくあのサイトは、秘密にしておこう・・・」)
慎吾「そうですか。朝、書斎にいた時、リナ先輩の様子が・・・
あ、いえ、失礼。何でもないです」
苦笑いする慎吾を、リナは無表情で見つめた。
(リナ「・・・。けっこう私の事も見てるのね・・・」)
慎吾「じゃぁ最後に・・・
駅名が明記されている地図が欲しいんですが」
リナ「・・・ うん。わかった」
慎吾に要求されたものをプリントアウトして渡す。
慎吾「ありがとうございます。
これまで事件の起きた駅の配置とか見ながら・・・
何か気づく点がないか、部屋に戻って調べてみますね」
そう言うと慎吾は、お辞儀をする。そしてベランダから、リナの部屋を出て行った。
リナ「・・・ ・・・」
黙って慎吾が出て行くのを見たリナ。再びパソコンを操作し・・・
PASS-WORD
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何とか、この先にあるものに辿り着こうと、頭を悩ませ始めた。
・・・ ・・・。
午後10時ちょうど。羽鳥邸、応接室。
後藤と仕事を交代するため、藤岡が羽鳥邸に姿を現した。ソファに座っていた後藤が、声をかける。
後藤「あぁ、藤岡。今日はこちらに動きはなかった。
それにしても調布駅の事件・・・」
コートを脱ぎながら藤岡が返す。
藤岡「えぇ。昨日、一昨日の殺人と、関連してる可能性が非常に高いです」
後藤「連続殺人・・・か?」
藤岡「まだ確定ではありませんが・・・
1人の捜査官が、ある事に気づきまして。
ヘタしたら明日もまた・・・」
後藤「ホトケが出る?」
藤岡「えぇ・・・。警察でも今、緊急対策を打ち出しています。
報道規制をしいて、一般の情報公開は制限。
連続殺人となると、大衆にも影響が出ますからね。
水面下で、捜査を拡大中です」
後藤「そうか・・・。こっちは誘拐事件。あっちは連続殺人か・・・」
藤岡は眼鏡をかけ直し、神妙な顔をしてさらに続ける。
藤岡「源さん・・・もう1つ大事な話が・・・」
後藤「なんだ?」
藤岡「調布駅の防犯カメラに、ある不審な男が映っていたんです」
後藤「不審な男? 誰だ、いったい?」
藤岡「えぇ・・・ それは・・・」
・・・ ・・・。
午後10時7分。羽鳥邸2階、客室。
今まで起こった3件の事件の資料を、じっと眺める慎吾。2件は警視庁の最新報告書で、調布駅で起きたこの日の事件については、掲示板の情報を集めたものだ。
そしてリナにプリントアウトしてもらった、駅名が明記されている地図。慎吾はベッドで横になりながら、じっとそれらを見ていた。
ドンドン!!
突然、誰かが大きな音をたてて部屋のドアを叩く。慎吾は手にしていた事件の資料や地図を、慌ててベッドの下に隠した。
慎吾「は・・・はい!」
そして自らドアを開く。そこには後藤と藤岡、2人の捜査官が厳しい表情で立っていた。
慎吾「あ・・・ あの・・・ 何か?」
慎吾から見て、右側に立っていた後藤が声をかける。
後藤「今日の昼・・・ 君はどこにいたかな?」
慎吾「え? 昼・・・ ですか?
い、言った通り、都内を見て回って・・・」
左側に立っていた藤岡が、鋭い眼光を浴びせ声をかけた。
藤岡「今日の昼過ぎ、調布駅で人が殺された。
その事件は知っているかな?」
慎吾「い・・・ いえ・・・ 」
藤岡「ふん。おかしいな・・・
君は事件が起こったとき、調布駅にいたはずだ」
慎吾「え!? ぼ、僕が・・・ですか?」
藤岡「あぁ。通報を受けた警察は、真っ先に防犯カメラをチェックした。
事件が起きた前後の時間・・・」
藤岡の人差し指が、慎吾に向けられた。
藤岡「調布駅構内を歩く君が映っていたよ。
しかも、全ての防犯カメラに映っていた。
長い間、調布駅にいたようだな」
慎吾「・・・ ・・・」
後藤「君は前日も分倍河原駅で、遺体を発見している。
その前も殺人事件の起こった秋津駅にいた。
3日連続、殺人現場に現れたとなると・・・
とても偶然とは思えない」
慎吾「・・・ ・・・」
何も言葉が見つからない慎吾。
後藤「悪いが部屋の中を調べさせてもらう」
言いながら後藤が部屋の中に入ってくる。
慎吾「!?」
思わず慎吾は、ベッドの下に視線を移した。今、そこを調べられたら・・・警視庁のページから違法にダウンロードした資料や、殺人事件の起きた駅をチェックした地図がある。
慎吾「ま、待ってください!!」
黙っていた慎吾が大きな声を出す。
慎吾「れ、令状は!?」
後藤の足がピタリと止まった。
慎吾「令状はありますか?
令状無しに部屋の中を探る権利は・・・ないはずです」
法律の事は全くわからないが、推理小説でよく見かけるセリフをとっさに真似して言った。
後藤「・・・ ・・・」
立ち止まったまま、苦虫をかみつぶした表情を浮かべる後藤。
藤岡「源さん、彼の言う通りですよ」
部屋の外に立っていた藤岡は、静かに声をかけた。
しばらく立ち尽くしていた後藤は、頭をポリポリとかく。そして周りを凝視しながら、ゆっくりと部屋の外へ出た。
後藤「全く・・・
リナ君の彼氏は、ヘタに法律がどうこう言ってきやがる・・・」
後藤は4年前、ヒロを尋問しようとした時の事を思い出す。あの時、取り調べの仕方がどうこうと、ヒロがいちゃもんをつけてきたため、休憩を与える事になった。そして・・・ 警察署から脱走された。
嫌な記憶が甦った後藤は慎吾を睨み付ける。
後藤「いいか、よく聞け!」
睨み付けたまま、声を荒げた。
後藤「明日は1歩も外へ出るな!
君がどこかの駅に姿を現す度、人が死んでるんだからな!」
後藤は怖い形相で、慎吾を睨み続ける。
慎吾「・・・ ・・・ わかりました・・・」
とりあえずこの場は、自分が不利と判断した慎吾。後藤の言う事に、しぶしぶ頷いた。他にも何か言いたそうな表情を浮かべた後藤だが、そのまま部屋を出て行った。
まだ部屋の入り口にいた藤岡が、慎吾に声をかける。
藤岡「1ついいか? 何故、調布駅に?」
慎吾「たまたまです・・・」
藤岡「殺害現場の近くに、君が映っていたのも偶然か?」
慎吾「えぇ・・・。ただ、お腹が空いただけです・・・」
藤岡「・・・ ・・・」
鋭い眼光で慎吾を睨み付けた後
藤岡「そうか・・・」
一言だけ言葉を残し、藤岡は部屋を出た。慎吾はすぐにドアを閉め、鍵をかける。
そして大きく深呼吸をした。
慎吾「た・・・ 助かった・・・」
・・・ ・・・。
羽鳥邸の玄関先で、藤岡は後藤にコートを渡していた。渡されたコートを羽織りながら後藤が声をかける。
後藤「令状は・・ 取れるか?」
藤岡「無理だと思います。
あの後、分倍河原駅でのカメラもチェックしましたが・・・
彼があの駅に現れたのは、被害者死亡推定時刻の後。
調布駅でも、売店に近寄る彼の姿は確認出来ていません」
後藤「・・・ そうか・・・
だが、絶対ヤツから目を離すんじゃないぞ!」
藤岡「わかってます」
後藤は小さな溜息をついて、玄関を開けた。
後藤「・・・。じゃぁ、また明日朝10時に」
藤岡「えぇ・・・」
後藤の背中を見送った藤岡は、慎吾の事を考えていた。
(藤岡「殺害現場が【売店】なんて一言も言ってないし・・・
報道もされてない。なのに・・・
あいつは【売店】で人が殺された事を知っていた・・・」)
応接に戻ってきた藤岡。
(藤岡「分倍河原にもあいつはいた・・・。
どういう事だ、いったい・・・?」)
慎吾の部屋の扉をじっと見つめる。
(藤岡「ベッドの下に・・・ 秘密あり・・・」)
後藤が慎吾の部屋に入ろうとした際・・・ 慎吾は反射的にベッドの下を見た。藤岡はそれを見逃さなかった。
藤岡「・・・ ・・・」
しばらく悩む藤岡。
(藤岡「羽鳥リナの彼氏は・・・
みな、殺人犯というシナリオか・・・?」)
(第60話へ続く)
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次回予告
田園調布駅で、再び殺人が起こる可能性がある・・・
そう思っていた慎吾だが、外出禁止令のため身動きが出来ない。
捜査官にその事を話すべきか迷っていた。話せば、自分が疑われ・・・
話さなければ、4人目の犠牲者が出る。
葛藤の中、慎吾が選んだ道は・・・?
次回 「 第60話 容疑者・慎吾の葛藤 」
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