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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第3章 ゲームの行方
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61/147

第60話  容疑者・慎吾の葛藤

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2008年。

リナ、そして父親の魁斗(かいと)が、謎の組織に狙われた。


イギリス諜報機関に属するヒロは、リナを守るために命を落とす。さらに、リナの父親・魁斗も遺体で発見された。


2012年、女子大生となったリナの携帯に「妹を誘拐した」という電話が届く。


霊能力を持つ1つ下の後輩、慎吾を連れて実家へ戻ったリナ。誘拐犯は期限内に1億を差し出さなければ、雛子を殺すと宣言。


後藤と藤岡は4年越しで、再び羽鳥家の誘拐事件を担当する。


慎吾は犯人の手がかりを探す途中、分倍河原(ぶばいがわら)駅で死体を発見。翌日調布駅にいた慎吾は、そこでも殺人事件の現場に遭遇する。


殺人事件現場にいた慎吾は、2人の捜査官に疑われてしまった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第60話  容疑者・慎吾の葛藤


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(誘拐犯が示したタイムリミット・・・12月19日24時)


2012年12月16日(日)、午前0時14分。羽鳥邸、2階。


ベッドの上・・・2つの殺人事件の資料を、穴の開くほど見つめている慎吾。


コンコンコンコン・・・


何者かが、外から窓を叩いている。早く開けろと言わんばかりに、その音は鳴り止むことがない。


慎吾「あ! 今すぐ開けます!」


慎吾は、慌ててベランダに通じるドアを開けた。外から、リナが寒そうに入ってくる。


リナ「ったく、早く開けてよ! おー・・・ さむー・・・」


タンクトップにショートパンツという、いつもの部屋着・・・その上から、薄手のコートを羽織っただけの姿だ。


慎吾「わ、わざわざ来てもらって・・・すいません」


エアコンの前に立って、暖を取るリナ。


リナ「ホントにもう・・・あんた容疑者だって?」


事前に慎吾からの携帯メールで、状況を把握していたリナ。眉をひそめがら慎吾に声をかけた。


リナ「全く・・・めんどくさい事になったわね・・・はい、コレ」


手にしていたA4用紙3枚を、慎吾に手渡す。


慎吾「ありがとうございます。

    ホントは僕の方から行きたいんですが・・・


    万が一、リナ先輩の部屋に行く所を見られたら・・・

    また、ややこしい事になりそうな気がして・・・」


心配性の慎吾。不審な行為を1階にいる捜査官に見られないよう、リナの方から来てもらっていた。


リナ「別にこれぐらい平気。

    それに、あんたにはもうちょっと働いてもらいたいしさ」


リナが渡したのは、調布駅で起きた事件の報告書。警視庁のページから違法にダウンロードしたものだ。慎吾はすぐにそれを読み始める。


リナ「3枚目は遺体の写真だから、閲覧注意してね」


慎吾「・・・ ・・・」


返事する事なく、慎吾は報告書を凝視していた。


慎吾「被害者は、調布駅で売店の店員をしている・・・

    【中條(ちゅうじょう)千賀子(ちかこ)】(47歳)。


    やっぱり、【C】で始まる名前だ・・・」


死亡推定時刻は、午後2時20分から35分の間。


午後2時20分頃、被害者が店頭に「5分で戻ります」の注意書きを出している所を、売店の前を通った数名に目撃されている。売店の中には店員が1人のみで、被害者以外には誰もいなかった。


その後、10分過ぎても業務を再開する気配がなかったため・・・ずっと待っていた客の一人が「早く開けてくれ」と中に声をかける。時刻は2時35分頃。


そして・・・ 倒れている店員を発見。


最初寝ていると思った客は、店員に声をかけ続けたが・・・異変に気づいて中に入る。そこで被害者が顔面蒼白になっているのを見つけ、駅員に連絡。そして警察に通報が入り、現場の状況から殺人事件と断定した。


慎吾「・・・ ・・・」


報告書を読み続ける慎吾は、死因を見てゴクリと唾を飲み込んだ。


慎吾「500ml注射器で・・・ 血液を抜かれた? しかも6本!?」


被害者は、中国製のガラス注射器で血液を抜かれた・・・致死量を遙かに超える、3リットルもの血液を抜かれて死亡。そしてその注射器6本は・・・


慎吾「現場に残された・・・」


リナ「異常者よ・・・ 完全に狂ってるわよ、この犯人は」


暖まった体を慎吾に向けて、リナが声をかけた。


慎吾「・・・ ・・・」


さらに報告書を、隅々まで読む慎吾。


慎吾「秋津駅、分倍河原(ぶばいがわら)駅の殺人事件の犯人と・・・

    かなりの確率で同一犯とみなしてるようですね、警察は」


リナ「えぇ。でも、それだけじゃないわ。

    あんたが言った、【ABC】にも触れてるわよ」


慎吾は2枚目の用紙を読みながら


慎吾「ホントだ・・・」


独り言のように呟いた。


この事件においては、駅名と被害者名の頭文字が、時系列で【A】【B】【C】となっている。もしこの一連の事件が同一犯で、【A】【B】【C】を意図したというのであれば、次の殺人事件が起こりうる可能性は高い。


慎吾「警察も・・・【ABC】に気づいたんですね」


 代官山 大師前 代田橋 台場 大門 田園調布 (五十音順)


以上は、4人目の殺人が行われる可能性がある駅である。


(慎吾「・・・ 警察もここまで特定している。でも・・・」)


慎吾のカンでは、次は田園調布で殺人が起こるはずだ。


リナ「一応、この6つの駅では、明日・・・」


リナは部屋の時計を見た。


リナ「いや、もう今日ね。多くの警察官が警戒にあたるそうよ」


慎吾「そうですか・・・」


さらに報告書2枚目の最後の方には、この件に関しては報道規制をしく事が書かれてあった。


【A】【B】【C】の事を公にすれば、野次馬が【D】の駅に殺到する事が予想され・・それだけ警戒態勢が取りづらくなる。また駅に人が殺到すれば、いたずらに被害者の候補を増やす事になる。警察にとっては、デメリットが大きくなるという見解だ。


リナ「だから・・・ニュースでも、この事件は取り上げてなかったのね」


慎吾「ホントは・・・ 駅自体を閉鎖するのが1番いいのですが・・・」


リナは手を横に振った。


リナ「ないない。主要な6つの駅を1日閉鎖なんて・・・

    絶対そんな事しないわよ」


慎吾「そうですか・・・」


3枚目の用紙には、被害者の遺体写真がプリントされている。血の気がひいたを通り越して、真っ白な死に顔が写っていた。その瞳は正面を向き、まるで写真の中から慎吾を見つめているようだ。


慎吾「・・・ ・・・」


報告書に集中してる慎吾を見て、リナがあくびをした。


リナ「じゃ、私は戻るわ。

    何かあったらお互い携帯にメールするって事で」


言いながらリナは、ベランダに出ようとした。


慎吾「待ってください」


それを慎吾が止める。


リナ「何? まだ、何かあった?」


慎吾は真剣な眼差しで、リナを見つめた。


慎吾「そろそろ・・・ 教えてくれませんか?」


リナ「・・・ ・・・」


リナも慎吾を見つめ返す。


リナ「何を・・・?」


そして静かに聞き返した。じっとリナを見つめる慎吾は、少しためらいながら声を出す。


慎吾「4年前・・・ 何があったんですか?」


予想通りの事を、慎吾は聞いてきた。


リナ「・・・ 何故、それを聞くの?」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「それ以前に・・・何であんたが、4年前の事を知っているのよ?」


微妙な空気が流れる中、慎吾は思い切って口を開く。


慎吾「・・・ 新城さんにも少し聞きました。その・・・彼氏さんの事を。

    あの写真に写っていた人ですよね?」


箱根で・・・荒らされたリナの部屋で見た写真。あどけなさの残るリナと、細身のハンサムな男性が写っていた。


リナ「・・・ ・・・」


リナは視線を慎吾からそらし、窓越しに外を見る。外を見ながら、背中の慎吾に声をかけた。


リナ「・・・ だから? なんで、4年前の事を聞くのよ?」


慎吾「リナ先輩も・・・ 今回の事件と4年前の事件。

    何か関わりがあると思っているのでは?」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾と出会ってから1年も経っていない。ヒロの事を話した事もなければ、自分が誘拐された事、銃撃戦に巻き込まれた事など・・・慎吾に限らず、誰にもこの話をした事はない。


(リナ「なのに慎吾は・・・

     この事件が、4年前と関連すると言っている・・・」)


慎吾「僕は・・・ リナ先輩の妹さんを助けたいだけです」


(リナ「何故、4年前の事件を? これも霊能力ってヤツ・・・?」)


慎吾の嘘偽りのない瞳は、真っ直ぐにリナに向けられている。窓の外を見ているリナも、その視線を強く背中に感じた。


リナ「・・・ ・・・ はぁ・・・」


小さなため息をついたリナは、しばらくうつむいた。妹の事は絶対に助け出したいが、自分の力だけでは限界があるだろう。


慎吾は警察よりも早く調布駅での殺人も察知したし、今度は田園調布で事件が起こると予知もしている。


冷静に考えれば・・・


(リナ「妹を救出するために、慎吾の力は必要不可欠・・・」)


そして何より・・・慎吾の言う通り、妹の誘拐事件は4年前と関わりがあると感じているリナ。


(リナ「でも今は・・・」)


やがて顔を上げ、振り返って慎吾に視線を合わせる。


リナ「・・・ もう少し・・・ 時間が欲しい。

    出来れば・・・4年前の事は、思い出したくない」


今のリナが出せる精一杯の返事だった。


慎吾はリナの言葉を聞いて、ニコッと笑って見せる。最悪「あんたになんか、絶対話さない」と言われる覚悟をしていただけに、このリナのセリフは全然いい返事だと捉えた。


リナ「あんたの力が必要なのは認める。もし、どうしても・・・

    4年前の事を明かさなければいけない時が来たら・・・


    必ず話す。約束する」


そう言うとリナは、慎吾の前に小指をピンとたててみせた。無言で頷いた慎吾は、笑顔のまま自分の小指をリナに絡ませる。


慎吾「その答えで十分です。必ず妹さんを助けましょう」


指切りげんまんをした後、リナは静かに自分の部屋に戻っていった。


慎吾「・・・ ・・・」


リナが出て行くと、慎吾はベッドで横になりながら報告書を再度読み返し始める。


そして・・・


葛藤していた。


(慎吾「この犯人は・・・田園調布で、また人を殺すつもりだ・・・」)


その事を、捜査官に伝えるべきかどうかを・・・。


報告書によれば・・・


6つの【D】駅に多くの警官を配備し、警戒にあたらせる予定だ。だが田園調布にだけ、集中的に警官を配備すれば・・・


(慎吾「6駅に配備するよりも、さらに殺人の起こる可能性は低くなる」)


しかし、もし捜査官に「田園調布で殺人が起こるから」などと言おうものなら・・・自分が事件に関与していると思われるのは必至。


(慎吾「犯人は・・・人が多く行き交う売店でも、殺人を犯した。

     例え警察が警戒していても・・・必ず人を殺すつもりのはず」)


田園調布で狙われるであろう人物のためにも、警察にこの事を話すべきか・・・


あるいはリナの妹を救うためにも、これ以上警察にマークされないよう黙っておくべきか・・・


警察に話せば自分が疑われ、話さなければまた人が死ぬ。


慎吾「・・・ ・・・」


心はすでに決まっている。


(慎吾「後はどうやって・・・

     疑われないよう、捜査官の人に伝えるかだ・・・」)


思い悩む慎吾は、いつの間にか深い眠りに就いていた。



・・・ ・・・。


同時刻、リナの部屋。



          PASS-WORD 


【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】

【 ■■■■ ■■■■ ■■■■ ■■■■ 】


リナは、ずっとこの画面を見ていた。


(リナ「4年前の事を知らない慎吾でさえ・・・

     今回の誘拐事件が、4年前と関わりがあると言う・・・」)


慎吾「リナ先輩も・・・ 今回の事件と4年前の事件。

    何か関わりがあると思っているのでは?」


見透かしたように慎吾は言い放った。霊感が強く、嘘がつけない性格を考えると・・・


(リナ「やっぱり妹の誘拐は、4年前の事件と関連がある・・・?」)


だとしたら・・・


(リナ「なおさら、この256文字の向こうにある情報が欲しい・・・  

     それが雛(ひな)を助ける事に繋がるはず・・・」)


しかしどの方向から攻めても、ハドリアンズ・ウォールが侵入を許さない。


妹の命が危機にさらされているというのに・・・その救出の前に立ちはだかるのは、今は亡き父親のセキュリティだ。


(リナ「どうすれば・・・」)


パスワード入力画面をじっと見つめたまま、リナは苦悩し続けた。



・・・ ・・・。


12月16日(日)、午前8時半。羽鳥邸、応接室。


慎吾は藤岡と相対(あいたい)していた。


藤岡「俺に何か? 外出は禁止だぞ?」


藤岡はノートパソコンを静かに閉じた。ソファの背にもたれ、腕組みをしながら慎吾を見つめる。


ソファに腰掛けている慎吾は、ゆっくりと喋り始めた。


慎吾「外には出ません。聞いてください。僕が・・・

    分倍河原(ぶばいがわら)駅で、たまたま遺体を発見した時・・・」


藤岡「本当に【たまたま】・・・ かな?」


藤岡が茶々を入れる。


慎吾「えぇ、たまたまです」


毅然(きぜん)と言い放つ慎吾。


慎吾「前日の秋津駅の事件と被害者は、ニュースで知ってました。

    そして分倍河原駅での事件」


藤岡「君が遺体を発見した・・・」


慎吾「えぇ。取り調べを受けた後、家に戻ってニュースを見た時・・・

    被害者の名前を知りました。その時・・・


    アガサクリスティの【ABC殺人事件】を思い出したんです」


藤岡「・・・ ・・・」


銀縁眼鏡の奥から、鋭い目つきで慎吾を見ている藤岡。


藤岡「たった2つで・・・ 【ABC】が絡んでいると思ったのか?」


慎吾「えぇ・・・」


警察も【ABC】を知っている。慎吾はその事を知らないフリをしながら、注意深く話した。


藤岡「警察では、調布駅の後に【ABC】に気づいたが・・・

    君は分倍河原で、それに気づいたというのか?」


慎吾は静かに首を縦に振る。


慎吾「そうです。だから昨日は・・・ 

    【C】で始まる調布駅で、何かがあるかもしれないと思って・・・


    僕はそこに出向いたんです」


藤岡「そして・・・ 実際に事件が起こったと?」


慎吾「えぇ・・・ そうです・・・」


藤岡「ふん。いいシナリオだな。

    だが・・・君が【ABC】の順に事件を起こした・・・


    そう考える方が、1番スジが通っていると思うが?」


今度は静かに首を横に振る慎吾。


慎吾「僕は今日、ここから1歩も外を出ません。約束します。

    ただ【D】で始まる駅を・・・


    警察の人たちに、警戒にあたらせて欲しいんです」


藤岡「君に言われなくても、朝一から警戒にあたってるよ」


もちろんその事は、知っている。

    

慎吾「・・・ 特に・・・・ 田園調布駅を警戒して欲しいです」


突然藤岡の目が大きく見開いた。ただでさえ鋭い視線が、さらに深く鋭い眼光となって、慎吾を突き刺す。


藤岡「まるで・・・ 次の殺人現場が見えているようだな?」


鋭い眼光に負けず、慎吾は藤岡の目を見て声を出した。


慎吾「僕・・・ 調布駅で見たんです。犯人らしき男を・・・

    追いかけようとしたんですが・・・逃げられました」


藤岡「・・・ ・・・」


鋭かった目つきが、やや緩和したように見えた。


藤岡「今度は、別の誰かを犯人に仕立て上げる気か?

    いい加減にして欲しいな」


慎吾「ほ、本当です。

    黒いコートでサングラスの・・・多分40代の男です」


藤岡「・・・ ・・・」


慎吾「その男、秋津駅で事件があった時もいました。

    その時は、白いコートにサングラスの格好でいたんです」


藤岡「・・・ 信用できんな」


言いながらも、藤岡は慎吾の話を注意深く聴き入っている。


慎吾「し、信じてください!

    その男が駅の防犯カメラに映ってないか、調べて欲しいんです」


藤岡「防犯カメラのチェックは、すでにやっているさ。

    君以外、怪しい人物が映っていたという情報はない」


慎吾「もっとくわしく調べてください。だってその男・・・

    秋津駅で、藤岡さんの写真か動画らしきものを撮っていました」


再び藤岡に鋭い眼光が宿った。


藤岡「何だと?」


普段冷静な藤岡が、声を荒げる。


慎吾「だから・・・ 秋津駅でその男・・・ 

    藤岡さんを携帯で撮っていたみたいなんです・・・」


藤岡「本当か?」


慎吾「嘘は言いません・・・その男、調布駅で逃げられた時に・・・

    【田園調布】って言葉を、口にしたように見えたんです」


嘘はついていない。あの男は、確かに何かを慎吾に言ったように見えた。


【D】で始まる6つの駅を発音しながら、その男の口元を思い出すと・・・最もしっくりくるのが【田園調布】・・・それは事実だった。


藤岡はじっと慎吾を見つめながら、何かを考えている。10数秒後、慎吾を睨み付けたまま、口を開いた。


藤岡「いいだろう。源さんと交代したら、署に戻って・・・ 

    君の言う男が映ってないか、再度防犯カメラをチェックする」


慎吾「お、お願いします!! 絶対何か進展あると・・・」


キッと睨み付ける藤岡を見て、少しずつ声のトーンを落とす慎吾。


慎吾「進展があるかなと・・・ 思います。はい・・・」


藤岡「・・・ ・・・」


藤岡は睨み付けながらも、慎吾に対しての印象が変わりつつあった。


(藤岡「この男・・・ 何者だ?」)


最初はただのナヨナヨした、どうでもいい男と思っていたが・・・


(藤岡「たった2つで【ABC】を見抜いただと・・・?」)


今は、この事件に関わる重要な人物と位置づけ始めていた。


そしてそれは・・・


後の慎吾の運命を大きく変える事でもあった。




             (第61話へ続く)

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次回予告


湾岸警察署に戻った藤岡は、慎吾の言う不審な男が駅の防犯カメラに映っていないかチェックする。


慎吾は外出禁止令を出され、羽鳥邸から一歩も外に出ることが出来ない。夜には、藤岡と後藤のさらなる追求に追い詰められる。


その時、4人目の犠牲者が・・・


次回 「 第61話  窮  地 」

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