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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
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48/147

第47話  強  行(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナと父親の魁斗は、謎の組織に狙われる。魁斗はリナとヒロを救うため、自ら囮になり、組織に捕まってしまった。


ヒロはリナを湾岸警察署に届けるが・・・その警察署に、覆面男らが侵入するのを目撃する。


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   第47話  強  行(2008年)


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2008年12月11日(木)、午前3時1分。湾岸警察署、モニター室。


「おい。屋上の監視カメラ映像が消えてるぞ」


監視カメラ64台の映像をチェックしている4人の男がいる。その1人が、屋上のカメラ映像に異常があるのに気づいた。


男は、すぐに内線をかける。


「あぁ、14階か? 屋上のカメラがおかしいんだ。

  悪いが、ちょっと見てきてくれるかな?」


「OK」


受話器の向こうの人物は、軽く返事をした。


内線を受けた14階の署員は、懐中電灯を持って屋上へと向かう。


カチャリ。


屋上へ出る扉を開けた瞬間だった。


パス!


突然、胸に矢が刺さった。


「ん?」


とぼけた声を出し、その矢を見る。その矢がぐにゃりと曲がったかと思うと・・・


男は気を失った。


「よし! 侵入するぞ!」


直後、覆面男らが屋上の扉から次次と署内へと入っていく。


(「いいか。最初は麻酔銃を使え。なるべく大きな音は出さぬようにな。

   内部の人間に気づかれぬよう、対象に近づける所まで行くんだ」)


そうマスターに指示されていた覆面男達。麻酔銃と本物の銃を持ちながら、静かに湾岸警察署内部に侵入していった。



・・・ ・・・。



「あれ?」


モニター室。つい先ほど監視カメラのチェックを願い出た男が、再び声を上げる。目の前にある監視カメラの映像が・・・次次と途絶えていった。


かつて留置されたヒロが、警察署を脱出した時と同じ状態だ。もっともこの時間、警察署に留置されている人物はいないのだが・・・。


「な、何が・・・?」


脳裏にヒロが脱走した時の事が甦る。すぐに各部署に緊急の連絡を入れ始めた。



・・・ ・・・。


湾岸警察署7階、中央にある一室。


リナと瞳が抱き合っていた。羽鳥コーポレーションで出会って以来の再会だ。


瞳もリナ同様、秋津駅での襲撃に遭遇した。しかし運良く、傷1つ負う事無く、警察に保護されていた。


瞳「とにかく、あなただけでも無事でよかった・・・」


イギリスから帰国して、まだ夫とは会っていない。心から夫の事を心配するが・・・


瞳「もう・・・絶対、どこにも行かないで・・・」)


涙を流しながら、リナを強く抱きしめる。


リナ「うん・・・」


瞳同様、ずっと魁斗の事が気になっているリナ。その表情はもの悲しげだ。


リナ「雛(ひな)は?」


リナはまだ、イギリスから帰国している妹に会っていない。


瞳「奥の部屋で寝てるわ。顔を見てあげて」


リナ「うん」


ようやく小さな笑顔を母親に見せたリナは、奥の部屋へ向かおうとした。


ジリリリリリーーン!!


突然甲高い、大きな金属音が鳴り響いた。


瞳「何!?」


リナ「?」


直後、署内放送が全館に流れる。


「警察署内に侵入者あり! 

  屋上から数名の武装した連中が侵入した模様!


  署の者は速やかに武器を所持し、警戒態勢にあたる事!

  それ以外の者は、近くの署員の指示を受け、速やかに行動せよ!」


放送を聞いた瞳が眉をひそめた。


瞳「な・・・ 日本で1番安全な警察署と聞いていたのに・・・」


瞳の脳裏には、秋津駅で襲撃された恐ろしい記憶が甦る。


リナ「・・・ ・・・」


リナも信じられないという表情で、流れる署内放送に耳を傾けた。


瞳「ね、狙いは・・・ 私達・・・?」


パニックになった瞳は慌てて奥の部屋へ行き、次女の雛子の手を握りしめる。


瞳「リナ! あなたも早く奥の部屋に! 隠れるのよ!!」


奥の部屋にいる母親とは対照的に、リナは何をするのが最善なのか考えていた。


(リナ「ヒロ先生なら・・・? パパなら・・・?」)


冷静なリナはまず部屋の扉の鍵を閉め、右ポケットに入っていたワイヤー型スタンガンを取り出す。そして、部屋の中に設置されている固定電話を手にした。


リナ「通じない・・・」


受話器を取っても、ボタンを押しても無音のまま・・・


リナ「・・・ ・・・」


幾度となく、リナは襲われてきた。


(リナ「狙いは・・・ 私・・・ どうする・・・!?」)


これまでの事を考えると、狙いが自分である事は明白。このまま待っているだけでは、いずれ武装した連中がやってくるだろう。


かといって廊下に出たら・・・敵と遭遇した時点で逃げ切れるはずがない。リナは数秒悩んだ後、奥の部屋に向かった。


妹の雛子はぐっすりと眠っているようで、瞳がその手を握りしめながら何か独り言を呟いている。


リナ「ママ!」


リナが声をかけると、瞳はびくっと驚いた様子を見せた。


瞳「な、何・・・?」


リナ「レインボーブリッジで携帯電話拾ったでしょ? 持ってる?」


瞳「あ、あれは警察が押収したわ」


リナ「じゃぁ、ママの携帯電話貸して! 急いで!」


瞳「ど、どうして?」


リナ「内線通じないの。携帯で助けをよぶ」


端的に説明をするリナ。


瞳「助けって・・・ど、どこに!?」


リナ「時間がないの! 銃を持った連中がすぐそこにいるのよ!

    貸して!!」


母親の返しに、多少イラッときたリナが声を荒げた。驚いた表情の瞳は、慌てて自分の携帯電話を差し出す。


リナの携帯は、2度目の敵の襲撃で失うハメになった。リナの携帯から発するGPS信号を敵が追跡してきたため、ヒロが破棄したのだ。


(リナ「ヒロ先生・・・」)


しかしヒロの携帯番号と携帯アドレスだけは、何度も何度も見つめて暗記している。瞳から携帯電話を受け取ったリナは、すぐにヒロの電話番号を入力して電話をかけた。


(リナ「お願い! 通じて!!」)


最初に襲撃された時、電話が通じなかった事を思い出す。


(リナ「ヒロ先生!!」)


祈るような気持ちで携帯を握りしめた。



・・・ ・・・。


2分前。


警察署の裏口から侵入したヒロは、大きな柱の影に隠れていた。


ヒロ「・・・ ・・・」


監視カメラの位置と、内部にいる人間の状況を把握しようとしている。


(ヒロ「人が多いな・・・」)


奥まで入ることが出来ずに、ヒロは困っていた。


本来この時間に、署内には一部の人間しかいないはずだが・・・

数時間前のレインボーブリッジでの身代金引き渡し、それに秋津駅での武装集団の襲撃と、警察もハードな24時間を送っている。そのため、署内にはまだ多くの人が残っていた。


(ヒロ「くそ・・・」)


指名手配されているヒロにとって、警察署に入って行くことなど自殺行為に等しい。しかし、マスターの一派が署内に侵入するのをこの目で見た。


(ヒロ「危険だが、行かねば・・・ リナが危ない」)


ジリリリリリーーン!!


ヒロ「!?」


「警察署内に侵入者あり! 

  屋上から数名の武装した連中が侵入した模様!


  署の者は速やかに武器を所持し、警戒態勢にあたる事!

  それ以外の者は、近くの署員の指示を受け、速やかに行動せよ!」


放送が鳴り響くと、署内にいた多くの連中が一斉にどこかへ走り出した。


ヒロ「?」


署内にいる警察官は通常、拳銃保管庫に銃を預けている。緊急放送を聞き、自分の銃を取りに行くため、保管庫へと向かったのだ。


(ヒロ「どこへ? まぁ、よくわからないが都合がいい・・・」)


彼等がどこへ向かったかわからないヒロだが、人が少なくなったおかげで警察署の奥へと走っていった。


突然ヒロの携帯がバイブした。見覚えのない番号からの着信だ。


ヒロ「・・・ ・・・」


一瞬迷ったヒロだが、走りながら電話に出た。


リナ「ヒロ先生!?」


聞き覚えのある声が聞こえてきた。


ヒロ「リナか!? 今どこだ!?」


リナ「7階の真ん中あたりの部屋にいるの! それより・・・」


ヒロ「どうした!?」


リナ「銃を持った男・・・   きゃー!!!」


ヒロ「リナ!!」



             (第48話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


武装した覆面男等11人が警察署に侵入してきた。


7階の一室にいた羽鳥リナ・瞳・雛子の親子。

その部屋に銃を持った覆面男が侵入してきた!


ヒロは急いで非常階段を駆け上がるが・・・



次回 「 第48話  最後の攻防 (2008年) 」

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