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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
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第40話  銃撃戦(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナの父親・魁斗(かいと)は、覆面をつけた男らに誘拐されてしまう。


イギリスから帰国したリナの母親・瞳。レインボーブリッジでバイクに乗ったヒロは、瞳の用意したお金を奪い去った。


自力で監禁場所から脱出した羽鳥魁斗も助け出したが・・・

今度はリナが敵の手に・・・


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   第40話  銃撃戦(2008年)


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2008年12月10日(水)、午後10時46分。秋津駅周辺。


藤岡「日曜の夜、どうやって君は部屋から抜け出したのかな?」


リナ「・・・ ・・・」


ヒロ・ハーグリーブスに誘拐された羽鳥リナ(もっとも警察の見解だが)。レインボーブリッジで、羽鳥瞳が身代金を指定場所に置いたその後・・・


羽鳥コーポレーションで、リナの無事が確認された。


容疑者のハーグリーブスが逃走中ゆえ、警察は羽鳥邸を危険と判断。リナと瞳は、その身を湾岸警察署へと移送される事になった。


警察署へ向かうパトカーの中・・・後部座席に、藤岡とリナが座っている。


藤岡「俺はあの時、1階にいた。

    君が1階の風呂場から出て、2階の部屋に戻る姿も確認している。


    なのに君は、武装した連中が家を襲撃した時・・・

    すでに部屋にはいなかった」


リナ「・・・ ・・・」


あの時、リナはヒロの指示通り動いた。おかげで家での襲撃に遭遇する事はなかった。


後藤「ハーグリーブスは、署の留置室から逃走した。

    そして君をさらい、身代金を要求した」


助手席に座っていた後藤も、リナに声をかけてきた。


リナ「・・・ ・・・」


藤岡「君は非常に危険な状況を経て、ここにいる。

    誘拐犯につながる情報を少しでも欲しいんだ」


身代金の受け渡しが行われる前、ヒロはリナを羽鳥コーポレーションに連れてきた。その際、警察には余計な事を喋らないよう、リナに伝えた。


まだ正体の知れぬ黒幕が、ヒロを誘拐犯に仕立て上げ・・・黒幕の思惑通り、警察はヒロこそが犯人だと思っている。


ヒロ「その方が、ミスターカイトを助け出すには都合がいい」


ヒロはそう言っていた。


現時点で魁斗の無事は確認出来ていない。ヒロの容疑を晴らしたいが・・・


リナ「・・・ ・・・」


リナは沈黙を保つ。


後藤「まぁ、色々あって混乱してるだろう・・・。

    署でまた、くわしく話を聞かせてもらおう」


後藤は何も喋らないリナを背に、頭をかきながら無線機を取った。


後藤「あぁ、後藤だ。今から羽鳥リナ、そして瞳を署にお連れする。

    7号車と8号車だ・・・


    今は野塩1丁目。秋津駅の近くを走行中だ」


リナ・藤岡・後藤を乗せたパトカーは、秋津駅の200m北を駅に向かって走っていた。母親の瞳は、後続のパトカーに乗っている。


さらに警護のパトカーを含む7台が、連なって走っていた。


後藤「まだ羽鳥魁斗の情報は入ってないか?

    そうか・・・ うん・・・。わかった。


    とにかく何かわかればすぐ連絡を」


リナ「・・・ ・・・」


リナは黙って後藤の様子を見ている。まだ、父親の居所すら定かではないようだ。


(リナ「きっとヒロ先生が・・・ パパを助けてくれる・・・」)


父親の無事が確認されるまで、リナはパトカーの中で沈黙を破るつもりはなかった。


しかし・・・


藤岡「 ? 」


1分後、リナが悲鳴をあげる事態が発生する。


藤岡「・・・ ・・・」


何かに気づいた藤岡が、運転手に声をかけた。


藤岡「ちょっと・・・ 車を止めて下さい」


後藤「どうした?」


助手席の後藤は、藤岡の方へ振り返る。


藤岡「不審なトラックが・・・前を塞(ふさ)いでいるので・・」


後藤「トラック・・・?」


後藤が目を凝らして前を見ると、信号もない道路の真ん中で、大きなトラックが横に止まっていた。右手マンションの入り口から出てきたのだろうか・・・このままでは、こちらのパトカーは直進できない。


後藤「左だ! 左に入れ!」


少し嫌な感じがした後藤は、念のため運転手に左折を指示した。さらに無線を手にし、移送中のパトカー、および警護に回っているパトカー全台に連絡を入れる。


後藤「前方に不審車両あり。2号車の者は、トラックの運転手に職質!

    他はトラックを避(さ)・・・」


指示をしながら後藤の目が大きく見開いた。後藤の指示通りパトカーが左に曲がると・・・・


銃を持った覆面姿の男が、真正面に2人立っていた。


後藤「な・・・」


2人の男は、手にしていた銃をパトカーに向ける。


後藤「全員伏せろ!!」


急ブレーキと共に、後藤の大声が車内に響いた。


リナ「な、何!?」


ダン! ダン! ダダン!


ガガガガガガ!!!


わけもわからずリナが伏せた瞬間、銃声が鳴り響いた。1人の男はマシンガンを連射している。


リナ「きゃー!!」


後部座席にいて、前の景色がよく見えなかったリナ。突然の大きな銃声を聞いて、パニックに陥(おちい)る。


何が起こっているか分からない状況で、とにかく頭を抱えて身を低くした。


藤岡は銃を取り出し、後部座席のドアを開け外に出る。ドアを盾にし、前方にいる2人の覆面男に向けて・・・


パン! パン!! パパン!!!


4発、発砲した。


後藤は頭を低くしたまま、必死に無線を握り直す。


後藤「秋津駅から、北約100m地点で襲撃を受けた!

    相手はマシンガンを所持し・・・」


タンタンタン!!


突然背後からも、銃声が聞こえてきた。


後藤「敵の人数は不明! 至急応援を!!」


藤岡の撃った4発の弾は、前に立ちはだかる2人を撃ち抜く。どこに命中したかはわからないが、2人の男はその場で倒れた。


再びパトカーに乗り込んだ藤岡は、運転手に声をかける。


藤岡「すぐ車を出せ! 後ろも襲撃に遭っている!

    前を突っ切るんだ!!」


運転手はパトカーを急発進させた。東に走り、秋津駅からは遠ざかる方向へ向かう。


後藤「・・・ ・・・」


後藤がバックミラーを見ると、先ほどのトラックが追いかけてきているのが見えた。


藤岡「そこを左だ!」


藤岡は運転手に左折を指示しながら、時折後方を見る。トラックの助手席にいた男が、窓から身を乗り出し・・・


左手に持っていたマシンガンを発砲してきた。


ガガガガガガ!!!


(リナ「な、何が起こっているの!?」)


リナは泣きそうな顔をしながら、銃声から逃げるように頭を低くする事しか出来ない。


後藤「もっとスピードを上げろ!」


後藤は、運転手をせき立てる。


(後藤「これも・・・ ハーグリーブスの差し金!?」)


パァン!!


パトカー右後部車輪が、弾丸の直撃を受け破裂した。10m程蛇行したパトカーは、車体を斜めにして止まってしまう。


藤岡「源さん! ここは俺が食い止めます!

    この先を北に行けば、ちょっとした林があります!」


藤岡は喋りながらも1発、後方のトラックに発砲した。 


藤岡「狙いは羽鳥リナです!

    彼女を連れ、そこで身を隠して下さい!」


後藤「わ、わかった!」


迫り来るトラックを確認しながらも、後藤は頭を低くして外に出た。後部座席のドアを開け、中にいるリナの手をひいて外に出す。訳も分からず、リナはただ後藤に手を引かれて走って行った。


リナ「ヒ、ヒロ先生・・・」


逃げながら彼氏の名を叫ぶ。


藤岡は、リナと後藤が走り去るのを見た後・・・迫り来るトラックに向けて銃を構え直した。



・・・ ・・・。



羽鳥コーポレーションでリナの元にいた安田。彼は警察とは別に、リナの警護のため、署に向かって車を走らせていた。パトカー群の後方を、ゆっくりとついていく。


パトカーの無線も傍受していたが・・・突然、銃撃を受けているというやりとりが流れた。同時に、前方から銃撃音が聞こえてくる。


安田「な・・・」


事態が急変していることを察知した安田。急ブレーキで車を止め、懐(ふところ)から銃を取り出し、警戒しながら外に出ていった。


状況を確認すると・・・前方のトラックの荷台から、覆面をつけた男数名がパトカー群に向け、派手にマシンガンを発砲している。


そして警察も銃を発砲し、応戦していた。


安田「・・・ ・・・」


何発もの銃声が鳴り響く・・・映画でしか見られない光景は、とても現実世界とは思えない。


安田「こ・・・ここは・・・ 本当に日本か・・・・!?」


銃撃戦を目の当たりにし、思わず安田は呟(つぶや)いた。


(安田「狙いは・・・リナお嬢様・・・?」)


安田は左手の民家に侵入して、走って行く。そしてリナの乗るパトカーを探し出そうとした。


その時!


安田「ぐ!!」


突然、安田の右足に激痛がはしる。右太ももを見ると、大量に血が流れ出していた。


(安田「しまった・・・」)


すぐに上着を脱ぎ、袖の部分を引きちぎると太ももに縛り付ける。銃撃戦の流れ弾は、無情にも安田の右足を貫通していた。


安田「・・・ ・・・」


幸(さいわ)いにも、急所でない事を確認した安田。右足を引きずりながら、再びリナを探し始めた。



・・・ ・・・。



後藤はリナを連れ、背中にいくつもの銃声を聞きながら北へ走っていた。しばらく走ると、右手に林が見える。


後藤「ひとまず、あそこに身を隠・・・」


手をひくリナに声をかけようとした時・・・絶望的な光景が目に入ってきた。


林の手前で・・・銃を持った男が3名立っている。


後藤「!?」


あわてて後ろを振り返ったが・・・


そこにも銃を持った男が2名立っていた。


まるでここに来る事が分かっていたように・・・。


リナも前後に5名の覆面男が立っているのを確認する。


(リナ「ヒ、ヒロ先生!!」)


恐ろしい光景を直視出来ないリナは、目を閉じて怯えるだけ。


過去・・・ リナは覆面男らに、2度襲撃されている。しかしその時はヒロが守ってくれた。


しかし今は・・・


(リナ「ヒロ先生!!」)


彼氏はいない。


後藤が銃を取り出すより早く、覆面男の1人は発砲した。


後藤「う・・・」


リナの目の前で、後藤は地面に突っ伏す。


(リナ「ヒ、ヒロ先生!! 助けて!!」)


心の中で彼氏の名を叫ぶリナ。


その右腕を覆面男は力強く掴んだ。


リナ「・・・ ・・・」


恐怖のあまり、声を出すことも出来ない。


覆面男は近くに止めてあったバンまで、引きずるようにリナを移動させた。ぶっきらぼうにリナを後部座席に押し込むと・・


車は北に向け、急発進した。




安田「はぁ、はぁ・・・」


安田が必死でリナに追いついた時には・・・リナを拉致した車が出発する時だった。藤岡も後藤に追いついたが・・・ 倒れた後藤の向こう、バンが走り去るのを確認するだけだった。


藤岡「・・・ ・・・」


・・・ ・・・。


「7号車を襲撃した車は秋津駅を北へ逃走中!! 相手は銃を乱射!」


「羽鳥リナの確保が最優先だ!」


「捜査官、数名が負傷!!」


「SATの応援を今すぐ要請します!!」


「羽鳥瞳は無事!」


「救急車も至急!」


「羽鳥リナが、見あたりません!」


警察無線を傍受していたヒロ。尋常でない事態が起こっている事は、すぐにわかった。


ヒロ「何てことだ・・・」



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


リナは目隠しをされ、バンの後部座席に座らされていた。周りは見えないが・・・両側を武装した男に挟まれている事は、肌で感じる。


時折、冷たい金属のようなものがリナの体に触れた。それが銃であろう事は、容易に想像出来る。


(リナ「ヒロ先生・・・」)


恐怖に怯えつつも・・・彼氏が助けてくれる事を強く強く、祈り続けた。



・・・ ・・・。


どれぐらいの時間が経っただろう・・・。バンは静かに止まると、エンジンを切った。そして覆面男らが車を出る音が聞こえる。


車に残されたリナは、突然うなじに冷たい金属のような堅い物が押し当てられたのを感じた。


(リナ「な、何!?」)


ガシャン!!


無機質な金属音と共に、リナの首に激痛が走る。


リナ「きゃ!!」


異様なほどの熱さと痛みが、首から全身に伝わる。そしてリナは気を失った。



・・・ ・・・。



ジャラジャラ・・・


リナ「・・・?」


静かに意識を取り戻したリナ。目隠しされたままだ。


リナ「・・・ ・・・」


どれぐらい気を失っていたのだろう・・・。


リナ「っつ・・・」


うなじの部分に痛みを感じたが、その痛みの正体はわからない。反射的に右手で首をさすろうとしたが・・・


ジャララ・・・


何かが、その腕を引き留める。


両腕に冷たい感覚があり、何か巻き付けられているようで自由に手を動かせなかった。目隠しされているため、自由を奪うものの正体は不明だ。


リナ「・・・ ・・・」


いったいここがどこで、自分がどういう状況になっているかは全くわからない。


ただ・・・周りに人の気配は感じられなかった。


リナ「・・・ ・・・」


不安と恐怖が、時間とともに増していく。


リナは・・・ 


とある港の31番倉庫にいた。


倉庫の奥で・・・椅子に座らされ、両腕と椅子が鎖に繋がれた状態だ。


リナ「・・・ ・・・」


リナの目を覆う、たった1枚の布きれは・・・あらゆる情報を遮断している。リナに暗闇を与え、恐怖を増幅させる道具だ。


15歳の少女の体は、恐怖と寒さで極限にまで体を震わせている。


そして再び・・・


残酷なほど、ゆっくり時が進み始める。


(リナ「ヒロ先生、ヒロ先生、ヒロ先生・・・」)


発狂しそうな状況の中・・・


リナはひたすら彼氏の名前を呼び続けた。


・・・ ・・・。



リナが鎖に繋がれて20分が過ぎた頃・・・。

もっともリナの中では、2時間近い時を刻んでいたのだが・・・


リナ「ヒロ先生、ヒロ先生、ヒロ先生・・・」


いつの間にか、実際に声を出していた。静寂だけがリナの身を包む中、何とか正気を保っている。


リナ「 !? 」


突然、遠くで何かが聞こえた。


タンターン!  ガガガガガガ!!!  ズキューン!!


それが銃声だと知るには、5秒もかからない。


さらなる緊張が走った。歯を食いしばり、体中を堅くして・・・


【希望】なのか【絶望】なのか、はたまた別の何かなのか・・・


リナは【その時】を待ち続けた。


ヒロがリナを救うため、命を賭けたゲームに参加しているとも知らず・・・


リナ「ヒロ先生! ヒロ先生!! ヒロ先生!!」


再び、ヒロの名を連呼する。


【その時】が来るまで・・・。



             (第41話へ続く)

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次回予告


ヒロは魁斗を隠れ家で待機させた。そして自らは、閉鎖された港へ向かう。


携帯電話を通して、この事件の黒幕の男と・・・

ヒロは最後のかけひきをする。


そして全てを賭けた戦い、いや・・・


ゲームが今始まった。


次回 「 第41話 最後のかけひき(2008年) 」

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