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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
39/147

第38話  魁斗救出(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナの父親・魁斗かいとは、覆面をつけた男らに誘拐されてしまう。


イギリスから帰国したリナの母親・瞳。レインボーブリッジでバイクに乗ったヒロは、瞳の用意したお金を奪い去る。


羽鳥魁斗は、マスターからもらったタバコを使い、監禁場所から脱出したが・・・。


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   第38話  魁斗救出(2008年)


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2008年12月10日(水)、午後9時46分。

レインボーブリッジ、芝浦ふ頭側。


「お、俺は何にも知らねぇよ!!」


軽トラックの男は、レインボーブリッジふ頭側で警察に拘束された。荷台に乗っていた2500万円入りのリュックを問いただされるも、何も知らないの一点張りだ。


「こんなリュック、見た事ねぇ!!」


バイクを運転するヒロが、2つのリュックのうち、1つを軽トラックの荷台に押し込んだ。追跡のかく乱を狙った行動だが、運転手からしてみれば、ただのとばっちり。


男の様子を見ていた藤岡は、後藤に連絡を入れる。


藤岡「軽トラックの男は、この事件に無関係です・・・。

    バイク男の追跡を、全力でお願いします!」


後藤「了解!」


連絡を受けた後藤は、パトカー、白バイ、および警視庁ヘリでの追跡を、今一度通達した。



・・・ ・・・。


ババババババ・・・


芝浦ふ頭上空を警視庁ヘリが、ライトを照らしながら飛んできた。ライトの先には、猛スピードで走るバイクがいる。


男の肩には、身代金の入ったもう1つのリュックが担がれていた。


ヒロ「・・・ ・・・」


バイクを運転するヒロは、ライトを避ける事なくバイクを走らせる。


(ヒロ「ミスターカイト・・・」)


警察の無線を傍受した際、魁斗が都立病院にいる情報をキャッチした。今すぐにでも、都立病院へ行きたいが・・・。


ファンファンファン・・・


バイクの後方からは、白バイやパトカーが派手なサイレンを鳴らして追いかけてくる。


(ヒロ「まずは・・・ 警察を振り切ってから・・・」)


誘拐されたはずの羽鳥魁斗、そして娘のリナ。リナは羽鳥コーポレーションにいて、携帯を通じ母親とコンタクトをとった。


さらに今し方警察に入った情報では、羽鳥魁斗も都立病院にいるという。警察の立場から考えれば、誘拐犯とされるヒロを逃がす意味など全くない。


(ヒロ「必然的に俺を捕まえれば、【The End】ってわけか・・・」)


背後のサイレン音を、その超人的な聴力で聞き取り・・・

ヒロのバイクは、加速して市街地へ向かって行った。


後藤「バイクは市街地へ入った!! 各自、分散して追い詰めろ!

    絶対に逃がすな!」


ヘリからの情報を受けた後藤は、大声で各車に指示を出す。十数台のパトカー、および白バイはあらゆる方向から、ヒロを追跡してきた。


ヒロ「・・・ ・・・」


ヒロのバイクは、先頭を走るパトカーの300m先にいる。上空ヘリは、バイクの詳細な位置を、逐一地上へ伝えていた。


港区にはいくつかのトンネルが点在している。その中の1つ、六本木トンネルにヒロのバイクは進入した。


トンネル中央、急ブレーキでバイクを止めたヒロ。すぐにリュックの中から2500万円の金を取り出し、別のカバンに入れ替えた。


空になったリュックは、そのまま左肩に担ぐ。手際よく15秒で作業を終えると、再びバイクを走らせトンネルを出て行った。


・・・ ・・・。


藤岡「・・・ ・・・」


リュックに取り付けられたGPS。その信号をパソコンのディスプレイで見ていた藤岡。


GPS信号は、バイクと共に動いているが・・・


藤岡「男は六本木トンネルで一時停止。

    15秒後に発進し、トンネルを出ています!


    金だけトンネル内に隠した可能性あり!」


後藤「パトカー2台はトンネル内で停止せよ!

    付近に不審な物や、協力者がいないか調べろ!」


藤岡から後藤、後藤から現場の警察へと連絡が行き渡る。


ヒロ「・・・ ・・・」


もちろんその情報もヒロの耳に入っていた。


15秒の足止めを食らったヒロのバイク・・・そのすぐ後ろに、1台のパトカーが迫ってきた。やがてスピードを上げたパトカーは、バイクの右に横付けする。


「そこのバイク! すぐに止まりなさい!!」


パトカーのマイク音声が、道路中に響き渡る。


(ヒロ「・・・ ようやく来たな・・・」)


チラリと右側を見たヒロは、背中から右手で銀棒を取り出す。そして迷わず、パトカー左・後部座席の窓ガラスをたたき割った。


パトカーを運転していた警察官は、すぐに無線を入れる。


「こちら12号車! 男は所持していた鈍器でパトカーに攻撃!

  そして渋谷方面に向かって逃走!」


無線を受け取った後藤は、すぐに指示を出した。


後藤「銃で威嚇しろ! 周りに気を遣い、ホシは撃つなよ!」


助手席にいた警察官は銃を取り出し、窓を開ける。後藤の指示を傍受していたヒロは、迷わずアクセル全開でパトカーの前に出た。


パァーーン・・・


警察官は空に向けて1発、発砲した。直接自分を撃たない事を確信しているヒロは、パトカーの前を走りながら逃走を続ける。


しばらくバイクの後ろを走っていたパトカーは、渋谷駅手前で細道に入ったヒロのバイクを見失ってしまった。


「渋谷駅手前でバイクを見失いました!」


パソコンのディスプレイを見ていた藤岡。


藤岡「源さん! バイクはまだパトカーのすぐ前です!」


後藤「バイクはまだ目の前にいるはずだ! 周辺をしっかり確認しろ!」



・・・ ・・・。


5分後。


パトカーを振り切ったヒロは、ヘリの追跡を防ぐため、ビルの地下駐車場にバイクを止めていた。腹部にくくりつけていた2500万入りのカバンを取り外し、しっかりと手にする。


黒服を脱ぎ、バイクシートの中から白いコートを出したヒロ。黒服はシートの奥へ詰め、軽装の上から白いコートを羽織る。


サングラスをつけると、歩いてビルの中に入って行った。


ヒロ「・・・ ・・・」


外ではたくさんのパトカーや白バイのサイレンが聞こえている。それを聞きながらヒロは、何食わぬ顔で恵比寿駅に向かって行った。


周囲を警戒しながら、恵比寿駅に入ったヒロ。コインロッカーの前に立ち止まると、さりげなく手に持っていたカバンを押し込み鍵をかける。


(ヒロ「よし・・・ 次は・・・」)


駅の外に出たヒロはタクシーを拾い・・・


ヒロ「都立病院まで」


行き先を伝えた。



・・・ ・・・。


後藤「何故、バイクの男を確認出来ない!?」


藤岡「GPS信号は、パトカーと同じ位置にあります!」


後藤「12号車! 目の前にバイクがいるはずだぞ!」


12号車に乗っている2人は、いくら目を凝らしてもバイクを確認出来ない。助手席の警察官が後部座席を見た時、それに気づいた。


「リュ、リュックが・・・」


2500万円を入れたはずのリュックが・・・後部座席にある。


「ま、窓ガラスを割られた時だ・・・」


ヒロは銀色の棒で、パトカーの窓ガラスを割った際・・・

空になったリュックを、パトカーに押し込んでいた。


後藤「何だと!? リュックが、パトカーの中に!?」


「お、お金は・・・入っていません・・・」


リュックの中を確認した警察官が、元気のない声を出す。


藤岡「く・・・」


藤岡のパソコンに映し出されているGPS信号は・・・パトカーの後部座席にある、空になったリュックからの信号だった。


藤岡「やられた・・・」


後藤「警視庁ヘリに、パトカー、白バイ・・・

    20台以上使って逃げられただと!?」


後藤の頭に血がのぼる。


後藤「くっそぉ・・・」


後藤はパトカーのボンネットを拳でたたきつけた。10秒ほど息をきらせたあと、指示を出す。


後藤「渋谷方面の者は、そのまま都立病院へ! 羽鳥魁斗の確保!」


羽鳥瞳の話では、娘のリナが羽鳥コーポレーションにいるという。


後藤「残りは羽鳥コーポレーションに! 羽鳥リナの身柄を確保だ!」


・・・ ・・・。


午後10時22分。都立病院、207号室。


魁斗「う・・・」


魁斗は再び目を覚ました。先ほどより意識はハッキリしているが、体のムカムカは収まっていない。病院のベッドの上で点滴を受けている事を、ようやく理解した。


横を見ると、点滴の管に何かを注射している看護婦がいた。


魁斗「な、何を・・・?」


体格のがっちりしている看護婦は、魁斗の方を見て笑顔で応える。


「体内に残ってるニコチンを中和するお薬です」


そのまま看護婦は、注射液を注入した。魁斗は再び目を閉じ、大きく深呼吸する。


魁斗「ふ~・・・  ん・・・?」


急に手足が痺れ始めた。


魁斗「あ・・・」


違和感を感じた魁斗は声を出そうとするが・・・声も出せない。手足の感覚もなくなった。


(魁斗「ど、毒!? いや・・・弛緩剤しかんざいか、何かか!?」)


魁斗の様子を確認した看護婦は、ベッドの足のストッパーをはずし、ベッドごと魁斗を移動させる。


(魁斗「マ、マスターの一味!?」)


体の自由を奪われた魁斗。抵抗することなど出来ず、はたから見たらベッドの上の病人だ。看護婦はそのまま救急搬送の出入り口から、魁斗が横たわるベッドと共に、外へ出て行った。



ちょうどその頃・・・1人の捜査官が、通報した医者に警察手帳を見せていた。捜査官の後ろには、数名の制服警官もいる。


捜査官「あなたが110番した医者ですか?」


医者「えぇ、そうです。運ばれた患者がこれを持っていたので」


医者は、トイレットペーパーの切れ端を見せた。そこには魁斗がタバコの葉で書いたメッセージが書かれてある。


捜査官「ふむ。その患者はどちらに?」


医者「207号室です」


捜査官「207号だ!」


捜査官は背後の警察官に伝えた。捜査官は引き続き医者からの事情聴取をし、制服警官はすぐに207号室へ向かう。



2分後。207号に向かったはずの警官が、走って戻ってきた。


捜査官「どうした?」


警官「い、いません! 207号室はベッドすらありません!」


捜査官「何だと!?」



・・・ ・・・。


病院裏側の駐車場に、ベッドを移動させる看護婦がいた。魁斗はベッドの上で身動きが取れず、声も出せない。意識はハッキリしているものの、ベッドを押す人物の顔を下から見上げるだけだ。


魁斗「・・・ ・・・」


看護婦は黒いライトバンの前で立ち止まると、運転席の窓をコンコンと叩いて合図し、トランクを開ける。


トランクを開けると・・・ 


目の前に白いコートの男がいた。


看護婦「!?」


男と目が合った看護婦は、驚いた表情を見せる。視線の先に、いるはずのない男がいたからだ。


男「病院から連れ出すなら・・・」


その男は、すでにON状態のスタンガンを取り出す。


男「俺だってそうするね」


白いコートの男・・・ヒロは手にしたスタンガンを、迷わず女の腹部に押しつけた。




             (第39話へ続く)

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次回予告


リナも魁斗も救い出した。

全てはうまくいったかのように思えたが・・・


マスターからの電話を受け取ったヒロは・・・愕然とする。



次回 「 第39話  唯一のミス(2008年) 」

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