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アマデウスの謎  作者: 伊吹 由
第2章 リナの過去
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第25話  捜査官(2008年)

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  慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2


       「アマデウスの謎」 


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前回までのあらすじ


2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。


霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。


話は・・・ 4年前の2008年。

リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。


リナの父親・魁斗(かいと)が開発したセキュリティソフトを狙ったテロリストがいる。その情報を得たヒロは、相棒の安田と共に周辺を調べる。


リナは学校で、正体不明の覆面男達の襲撃を受けるが、ヒロによって窮地を脱した。自宅に戻ると、父親の魁斗を誘拐したという電話が届き、羽鳥邸の1階が突然爆破される。


そして犯人は、ロンドンにいる羽鳥瞳の帰国と、5000万円の身代金を要求した。

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  第25話  捜査官(2008年)


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2008年12月6日(土)、午前7時34分。羽鳥邸。


ヒロは静かにリナの携帯を折りたたむ。リナは泣きそうな顔をしながら、ヒロを見つめると・・・恐る恐る聞いてみた。


リナ「パ・・・パパは・・・?」


リナの目の奥をじっと見つめるヒロ。そしてガタガタと震えている新城に視線を合わせた。


ヒロ「ミスターカイトは無事です。今から警察が来ますので・・・

    事情を説明しましょう・・・」



・・・ ・・・。


午前7時39分。


パトカーと消防車が数台羽鳥邸の前に止まった。かけつけた消防士らは、爆破された羽鳥邸内を見て、騒然となる。まるでテロ攻撃があったかのような惨状に・・・ 一様は驚きの表情を見せた。


ヒロが先頭に立って、制服警官の1人に事情を説明する。羽鳥コーポレーションの社長・・・羽鳥魁斗が誘拐された旨を端的に説明し、リナと新城は相づちを打った。


事態が深刻と判断した制服警官は、すぐに警視庁に電話をかける。


1時間後。


警視庁から2人の捜査官が羽鳥邸を訪れた。爆撃を受けたような羽鳥邸の惨状を見て、捜査官の一人、後藤は驚きの声をあげた。


後藤「おいおい・・・。テロ攻撃でもあったのか、ここは・・・?」


ベテラン捜査官・後藤(ごとう)源治郎(げんじろう)、50歳。短髪に刈り上げた白髪交じりの後藤は、色あせた茶色のコートを脱ぐ。


そして後藤の後ろに続いてきた若い男・・・藤岡(ふじおか)二三弥(ふみや)、30歳。羽鳥邸の惨状を目にしても、驚く様子を見せず、冷静に辺りを見渡した。


藤岡「・・・ ・・・」


後藤と組んで2年目の藤岡は、東大卒の頭脳の持ち主。2年後には警視庁特別捜査官であるコンピュータ犯罪捜査官へと昇進する事になる。


後藤「なるほど。羽鳥社長は、黒い車で誘拐されたと・・・。

    ここにいる3人とも、目撃したわけですね?」


3人は声を出さずに頷いた。


藤岡「車のナンバーは見てませんか?」


ヒロ「残念ながら。

    2階の窓からは、車の上の部分しか見えなかったので・・・」


ヒロは正直に昨晩起こった事も話した。学校までリナを迎えに行った際、覆面を着けた連中がリナを誘拐しようとした事を。


後藤「何故すぐに通報しなかったのです?」


ヒロ「学校からは携帯電話が繋がらなかったんです」


後藤「繋がらなかった?」


ヒロ「えぇ。何故かはわかりませんが・・・」


初めてリナ襲撃の事実を知って驚く新城。その新城を横目に、ヒロとリナは後藤に応える。


リナ「私の携帯も繋がりませんでした」


ヒロ「何とか無事に戻ってこれたので、通報しようかと・・・

    思ったところで・・・コレですよ」


ヒロは1階の惨状をチラッと見た。


藤岡「ふむ・・・親子とも狙った同時誘拐って事ですね。

    で? 犯人からの要求は・・・金?」


ヒロ「えぇ。ですが、もう1つ。リナの母親・・・」


ヒロはリナをちらりと見る。


ヒロ「ロンドンにいる羽鳥瞳を、3日以内に帰国させろと。

    その時また電話するから、彼女を出せと・・・」


後藤「何故、副社長である彼女を呼び出すので?」


ヒロ「金を・・・ 引き出すためでは?

    社長が誘拐された今、副社長が会社の財源を動かす事になるので」


藤岡「なるほど。要求はいくら?」


ヒロ「5000万と・・・」


藤岡「受け渡し方法は?」


ヒロ「いえ、聞いてません。とにかくまた3日後に連絡すると・・・」


2人の捜査官から矢継ぎ早に質問を受けるヒロは、1つ1つ的確に応えていった。


ヒロ「・・・ ・・・」


受け答えをしながら、心の中では安田の事が気になる。


(ヒロ「あいつは・・・ 社長を追いかけているだろうか・・・?」)



・・・ ・・・。


30分後、2人の捜査官は事情聴取を終えた。


後藤「こんな状況ですが、鑑識や捜査班が誘拐犯に繋がるものがないか・・・

    邸内を調べさせてもらいます。見つかったら・・・」


後藤は困った表情を浮かべた。


後藤「ふむ・・・羽鳥家の人間は今・・・リナ君、君だけだ。

    なので、君に報告する事になる」


リナは驚いた表情を見せる。


リナ「わ、私に?」


ヒロはリナの肩に手を置いた。


ヒロ「俺はしばらくここにいる。今、リナの母親も妹もロンドンだ。

    とりあえず、警備主任の井上さんにも来てもらおう」


藤岡はヒロを睨み付ける。


藤岡「あなたは、ただのピアノ講師ですよね?」


笑う余裕のないヒロはすぐに応えた。


ヒロ「ピアニストでもあります。日本じゃあまり名は売れてないですがね。

    同時に俺はミスターカイトは友人だ。色々お世話になっている。


    両親が側にいてやれないリナのために、俺はしばらくここに残る」


藤岡「・・・・」


後藤「リナ君も不安でしょう。

    安心できる人物が側にいてやれば心強いはずだ」


後藤はヒロの提案に賛同した。


ヒロ「羽鳥家には警備主任の井上さんがいる。

    残念ながら俺は連絡先を知らないが」


リナ「あ・・・ 私、知ってる。今から事情を説明して来てもらうわ。

    あと安田さんにも連絡した方がいいわよね?」


後藤「安田という男は?」


ヒロ「羽鳥家の警備員の1人ですよ」


後藤「とにかく今は、羽鳥家に関わっている人物を全て呼んでもらおう。

    ここ数日の事情を聴取したい」


コクリと頷(うなず)いたリナは、静かに携帯をかけ始めた。



・・・ ・・・。


【警視庁】と背中に書かれた作業服を着た男達数名が、羽鳥邸の中をあくせくと歩き回る。1人の鑑識が、破損した電話の受話器から起爆装置のようなものを発見した。


後藤は羽鳥コーポレーションから、ロンドンにいる瞳の連絡先を聞き出し・・・深夜のロンドンに電話を入れる。


後藤がゆっくりと事情を説明すると・・・電話の向こうから鳴き声が聞こえてきた。


後藤「心中お察しします。お手数ですが・・・ すぐに帰国を・・・」


藤岡はドアの半分が吹っ飛んだ1階の書斎の中にいた。中はちょっとした図書館になっていて、あらゆるジャンルの書物が数1000冊、本棚に陳列されていた。


入り口付近の本棚は倒れて本が散乱している。奥へ行くほど爆破の影響は少なく、本棚も本も無事な状態のままだった。


藤岡「・・・ ・・・」


藤岡はある本棚の前で立ち止まる。


初等整数論  リーマン予想  ゴールドバッハ  ABC問題  暗号理論 ・・・

特殊相対性理論  量子力学  シュレディンガー方程式  ナノテクノロジー ・・・


数学や物理学のキーワードが含まれた書物がたくさん置かれてある。


藤岡「・・・ ・・・」


東大卒の藤岡は、その言葉の意味を理解していた。白い手袋をすると、その中の1冊を抜き取りページをパラパラとめくる。


ふと視線を本棚の奥に移すと・・・ 小さな机の上にパソコンが1台置かれてあった。書斎の1番奥だったため、爆破の影響はほとんど受けずに無傷だ。


藤岡は机の所までゆっくりと歩いて行き、ノートパソコンを開くと静かに起動させた。


PASSWARD 【       】


パスワードが必要らしく、中を見ることは出来ない。小さなため息をついた藤岡は、電源を落としノートパソコンを閉じた。


ふと机の引き出しを見ると・・・ ロックがかかっている。そして横に4桁の数字を入力する液晶画面があった。


藤岡「・・・ ・・・」


それをじっと見つめる藤岡は、鑑識を呼んだ。



・・・ ・・・。


藤岡「源さん」


藤岡だけでなく後藤を知る人物は、皆彼の事を【源さん】とよぶ。


後藤「どうした?」


現場の中心にたって指揮を執っている後藤。鑑識の1人と話していたのを中断し、藤岡の方を振り返った。


藤岡「書斎があって、その奥に・・・パソコンがありました。

    そして、パソコンのあるデスクの引き出しに、ロックがかかってます」


後藤「それで? 何か見つかったか?」


藤岡「えぇ。引き出しから、あのピアノ講師の指紋が出てきました」


後藤「ふむ・・・ じゃあちょっと彼に話を聞くか」


藤岡は後藤の胸を軽く押した。


藤岡「源さん、今はダメです。ちょっと俺に調べさせてもらえませんか?」


後藤「調べる?」


後藤の眉間にしわがよる。


藤岡「えぇ。あのヒロという男・・・かなり怪しい気がします。

    確か、数ヶ月前にこの家のピアノ講師になったばかり・・・


    そして、今日この事件・・・」


後藤「考えすぎじゃないのか? 羽鳥魁斗の友人と言っていたし」


藤岡「その情報、裏は取れていません。

    それに彼の話には・・・いくつか不審な点もあります」


後藤「不審な点?」


藤岡「えぇ。彼の証言に、指紋・・・。俺がもう一度洗ってみます。

    そして源さんに報告しますので・・・


    あのヒロという男は俺に任せてください」


後藤「まぁ、お前がそこまで言うなら・・・」


藤岡「俺のカンでは、あのヒロという男・・・



     間違いなく、羽鳥魁斗誘拐に絡んでます」 

     

    


             (第26話へ続く)

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次回予告


誘拐された羽鳥魁斗は、とある密室で目を覚ました。

監獄のような場所で、娘のリナの事を心配する。


一方父親を誘拐され、泣き続けるリナ。

そんなリナを見たヒロは、自分の素性をリナに明かそうと決意した。


イギリスの諜報機関に所属する諜報員だと・・・


そして・・・



次回 「 第26話 告  白(2008年) 」

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