第24話 爆 破 (2008年)
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慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン2
「アマデウスの謎」
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前回までのあらすじ
2012年、女子大生リナの妹が誘拐された。
霊能力を持つ1つ下の後輩・慎吾を連れて実家へと戻るリナ。誘拐犯から1週間以内に1億円を用意しろと要求され、羽鳥邸にいた面々は不安になる。
話は・・・ 4年前の2008年。
リナの新しいピアノ講師、そして彼氏となるヒロ・ハーグリーブス。
リナの父親・魁斗が開発したセキュリティソフトを狙ったテロリストがいる。その情報を得たヒロは、相棒の安田と共に周辺を調べる。
リナは学校で、正体不明の覆面男達の襲撃を受けるが、ヒロによって窮地を脱した。
しかし自宅に戻ると、父親の魁斗を誘拐したという電話が・・・
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第24話 爆 破 (2008年)
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2008年12月6日(土)、午前7時23分。羽鳥邸。
ヒロの脳は一瞬であらゆる事を処理し始めた。
まずこの声は、リナの身辺を探っていた英語教諭・・・
(ヒロ「江口の声ではない」)
そして自分の事を【ミスターボンド】と呼び、昨夜の事を話している。
(ヒロ「リナを誘拐しようとした連中の仲間か・・・」)
必然的に・・・
今、手にしてる受話器に盗聴器を仕掛けさせたテロリストの一味。
(ヒロ「そう考えるのが妥当・・・」)
ヒロは、落ち着いて声を出す。
ヒロ「用件は?」
男「羽鳥魁斗を誘拐した。まずはその事を伝えておく」
リナと新城を一瞥したヒロは、意識した低い声で返す。
ヒロ「・・・。目的は・・・ ransomか?」
すぐ横にいるリナと新城に内容を悟られないよう、ヒロは【身代金】とは言わず【ransom】と告げた。
男「まぁ、そう言ったところだ」
電話の男に通じた。
ヒロ「この手の交渉は・・・ 分かってるだろ? 確認が必要だぜ?」
リナと新城に気を遣いながら語るヒロは、誘拐した魁斗が無事である事の確認を要求する。
男「ふ、いいだろう。すぐに確認させてやる」
ヒロ「・・・・ ・・・」
相手にもヒロの意図は通じた。
男「その前に1つ質問だ。今、その家には何人いる?」
ヒロ「・・・俺を含めて3人だが?」
男「ならば3人とも2階の廊下、中央の窓へ移動しろ。
そして窓の向こうを見るがよい。
それがお前の要求に応える事になるだろう」
ヒロ「・・・ わかった。だが確認は俺1人でいいだろう?」
男「それでもいいが・・・
羽鳥家は家族を1人減らす事になるぞ?」
ヒロ「・・・」
ヒロは無言のまま受話器を切らずに、電話の横に置いた。
リナ「ヒロ・・先生?」
新城「悪質ないたずら電話でしたでしょ!?」
終始不安そうなリナ。そして怒り心頭という表情を浮かべる新城。
ヒロ「あぁ・・・2人とも。ちょっと2階の廊下まで来ていただきたい。
いたずらかどうかはそれでわかるらしい・・・」
新城「そんな悪質ないたずらに付き合う気はありません!」
そう言うと新城は奥のキッチンへ歩き始めた。
ヒロ「ミス・新城!!」
突如大声を出すヒロ。リナと新城は驚いた表情でヒロを見つめた。
ヒロ「Excuse・・・ 大声をあげるなんてレディに失礼な事をした。
ただ今だけは俺の言う通りにして欲しい」
ヒロは真剣な眼差しで新城に訴える。
新城「・・・ ・・・」
ただならぬ事態を察した新城。しばらくの沈黙の後、無言で首を縦にふった。3人はゆっくりと2階の階段を上り・・・ そして中央の大きな窓の所へ歩いて行く。
ヒロがゆっくりと窓の外に視線を移すと、後ろの2人も同じ方向へと視線を移した。
ヒロ「!?」
ヒロの視界に・・・ 羽鳥魁斗が映る。
羽鳥邸を囲う塀の向こう側。1台の黒い車が公道に止まっていた。右向きに止まる黒い車の後部座席・・・窓が開いていて、そこから魁斗の顔を確認出来た。疲弊しきったという青白い表情で、肩で息をしている。
そして魁斗の横には・・・昨晩見たのと同じ、覆面をした男がナイフのようなものを魁斗の首にあてていた。
リナと新城はヒロより数秒遅れで、黒い車とナイフを突きつけらている魁斗を見つける。
リナ「ぱ・・パパ!!」
新城「旦那様!!」
運転席はブラックウィンドウで、外から中の様子は全く見えない。しかし運転席の男は・・・羽鳥家の窓際にいる3人を、ブラックウィンドウ越しにじっと見つめていた。
ヒロはすぐに廊下を走り出し、1階へと下りようとした。
その時・・・
ドゴーーーーーン!!!
耳が潰れるかと思うほどの轟音が羽鳥家を襲った。もの凄い勢いの風が邸内を吹き荒れ、ヒロは反射的に両手で顔をかばう。
リナ「キャーー!!」
2階にいたリナは悲鳴をあげ、新城はリナを抱きしめた。
パリンパリンパリリリィーーーン・・・
轟音の後を追うように、今度は1階全ての窓ガラスが粉砕する音が響き渡る。
ヒロ「な・・・」
恐る恐る手を下ろして邸内を見るヒロ。
邸内の1階は・・・
何かの爆撃を受けたような惨状と化していた。
ヒロ「何が・・・?」
口を半開きにしながら、数分前とは全く様相の違う羽鳥邸内を見つめる。つい先ほどまで相手と会話していた電話は跡形もなく、1階の全ての窓は木っ端微塵の状態だ。
いたる所に置かれてあった花瓶や絵画、調度品なども元の形を留めていない。
(ヒロ「もし、1階にいたら・・・ 死んでいた・・・?」)
視線を2階に移すヒロ。怯えるリナを家政婦の新城が抱きしめ、2人ともうずくまっていた。すぐに2階にいる2人の元へ走っていき、声をかける。
ヒロ「だ、大丈夫ですか?」
新城「な、何ですか!? 今の音は!? ま、まるで地震のような・・・」
新城はパニック状態だったが、しっかりとリナを抱きしめている。リナは恐怖でただ怯えているだけだ。
窓の外を見ると・・・
あの車はもう見えない。
ヒロ「・・・ ・・・」
しばらく外を見渡すが、車は見つからない。
ヒロ「ん?」
視線を羽鳥邸の庭に移すと・・・粉々になった大量のガラスがキラキラと太陽の光を反射させていた。
ヒロ「・・・ ・・・」
2階から今一度、爆音が鳴り響いた1階の様子を見る。
(ヒロ「ガラスが・・・ ない・・・」)
庭にはたくさん見られたガラスの破片が、邸内では少ししか見あたらない。それどころか、電話があったはずの場所の周りにはほとんど物がない。
(ヒロ「まさか・・・」)
突然リナのスカートから、パッフェルベルのカノンが流れた。ポケットに入れてある携帯の着信音だ。
先ほどの衝撃でまだ動揺しているリナ。震える手でゆっくりと携帯電話を取りだした。着信を見ると・・・
着信【 パパ 】
リナ「!?」
つい1~2分前・・・ ナイフをノドにつきつけられていた・・・
その父からの着信だった。
リナは携帯の着信をヒロに見せる。
ヒロ「俺が出る」
ゆっくりとリナの手から携帯を受け取り、通話ボタンを押す。そして静かに声を出した。
ヒロ「Hello.」
携帯の向こうから小さな笑い声が聞こえてくる。
男「ふっふっふ。ミスターボンド、君が出ると思ったよ。
他の2人は無事かな?」
ヒロ「・・・ ・・・」
ゴクリと唾を飲み込むヒロ。
ヒロ「あぁ・・・」
男「羽鳥家の家族が1人減らずに・・・ よかったと言うべきかな?
ふっふっふ・・・」
ヒロ「受話器に・・・小型爆弾を仕込んだな?」
男「ほう・・・。思ったよりは頭が働くようだな。
娘の誘拐も阻止出来たわけだ」
男は静かに応えた。
ヒロ「・・・ ・・・」
1階のガラス窓は全て外で粉々になっていて、邸内にはほとんどガラスは見られなかった。そして電話があった箇所を中心にした半径5m・・・ 固定された物以外は全て吹き飛ばされていた。
最初は外からの爆破攻撃かと思ったが・・・ この惨状は中から爆発が起こった事を示している。
リナと初めてデートした日・・・ その日、1階の固定電話に盗聴器が仕掛けられた事は分かっていた。しかし、ヒロは羽鳥邸内でどうしてもぬぐえない違和感を感じていた。
その正体がようやく今わかった。小型爆弾特有の周波数だ。遠隔操作できない盗聴器とは違い・・・ 電波を発する爆弾が、邸内の微妙なリズムを狂わしていたのだ。
超人的な聴力を持つヒロにしか気づかない違和感だった。
男「もうすぐパトカーと消防車がそちらに訪れるだろう。
その前にこちらの要求といこうか」
ヒロ「・・・ 言え」
リナと新城は不安な眼差しでヒロを見つめている。毅然とした態度で携帯を握っているヒロだが・・・ リナ達の不安を拭うことは出来ない。
男「要求は2つ。まずはロンドンにいる羽鳥瞳だ。3日以内に自宅へ呼び戻せ」
ヒロ「・・・ ・・・」
男「そして2つめ。今日から1週間以内に、5000万円を用意してもらおう」
ヒロ「断れば?」
男「言う必要が?」
ヒロ「・・・ ・・・」
男「そろそろサイレンが聞こえてきたろう?
警察に誘拐の事をしっかり話すんだな」
ヒロ「・・・。【警察に通報するな】・・・そう言うのが誘拐犯では?」
男「ははは。まだわかってないな。ミスターボンド」
ヒロ「・・・ どういう事だ?」
男「何故俺が江口をあてたと思う? あいつは囮さ」
ヒロ「・・・ ・・・」
男「ミスターボンド。お前は完全に囮にやられたんだよ。
そちらの行動は、全てこちらの手の内にあったという事だ」
ヒロ「・・・ ・・・」
否定できなかった。そして図星だった。
江口の行動は・・・ ド素人そのもの。彼を泳がせることで、テロリストを引っ張り出すつもりだったが・・・
今思えば江口はエサ。それに釣られたヒロは・・・ リナを危険な目に合わせた。そして相手はリナに注意をひきつけ、本命の羽鳥魁斗を誘拐した。
(ヒロ「完全に・・・ 相手に踊らされていた・・・」)
ヒロは心から自分を責めた。
(ヒロ「くそ! 何故、こんな簡単な陽動作戦に気づかなかったんだ!」)
男「日本の警察ごときで俺は捕まえれらないってわけさ。
ジェームズボンドですら、こちらに翻弄されてるぐらいだからな」
ヒロ「・・・ ・・・」
ヒロはリナと新城を一瞥する。2人とも不安そうにヒロを見つめていた。
男「3日後の同じ時間、この携帯に連絡する。
その時、羽鳥瞳を出せ。出せなければ・・・ ご想像の通りだ」
ヒロ「必ず・・・ミスターカイトを助ける」
男「ふふ、お前の事はよく知っている。ヒロ・ハーグリーブス。
MI6(エム・アイ・シックス)の腕利きスパイと聞いているが?」
ヒロ「・・・ ・・・」
ヒロは再び、新城とリナを見た。
男「では、ミスターボンド。今度は3日後に。
直接会う事を楽しみにしているよ」
直後一方的に電話が切れた。
ヒロ「・・・ ・・・」
(第25話へ続く)
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次回予告
羽鳥邸に2人の捜査官が訪れた。
ヒロはチームを組んでいる安田と連絡が取れない。
捜査官の1人は、邸内をくまなく調べる。そして・・・
ヒロに疑いの目を向けた。
次回 「 第25話 捜査官(2008年) 」
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