ヴィタ・ブルックスの今
あら、どうしたの?アメリア。
え?昔のパパとママのお話を聞きたいの?
本人たちに聞いてみたらいいじゃない、ちゃんと教えてくれるよ?
……周りの人たちから話を聞きたいの?
わかったわ。
わたしも聞いた話で、あんまり確かじゃないけど……
後でアレックスお兄様とかに、聞いてみてもいいかもね。
―――
パパはね、今のアメリアよりも小さい頃に、『男の子になります!』って突然、言い出したんだって。
しかも王様……その時はまだ王子だった、アーリヤ陛下のお誕生日会でいきなり。
その時は、大騒ぎになったそうよ。
この時から、パパは自分のことを“パトリック”って周りに呼ばせ始めたんだって。
それから、おじいちゃまに『男の子になるなら、たくさんお勉強しなさい』って言われて、いっぱいお勉強したらしいわ。
……アレックスお兄様と、どっちが勉強してるか?
ふふっ!今度、アメリアが自分で聞いてみるといいわ!
おじいちゃまは、『“お勉強してね”って言ったら、パパは諦めてくれるだろうな』って思ってたらしいの。
でも、パパは頑張ってお勉強して、本当に“おじいちゃまの代わり”ができるまでになったんだって。
もし、パパがお勉強してなかったら、王妃様……
つまり、アーリヤ陛下のお嫁さんになってたんだって!
……ってこの前、王城に行った時にアーリヤ陛下が言ってただけなんだけどね。
そのあとパパは「絶対しません」って、すぐ答えてたのよ!
面白かったあ!
話が逸れちゃった?
ごめんごめん。
それから、おじいちゃまの跡を継ぐために“お嫁さん”を探してて……
そうして、出会ったのがママだったんだって!
ママから聞いた話だと、ママのお家ってあんまり楽しくないお家だったらしいの。
そのお家から助け出したのが、パパなんだって!
素敵よね。
まるで、囚われの姫を救う王子様……
え?続き?……わかってるって。
最初の頃は、パパもママも今みたいに仲良くなかったらしいの。
全然、想像できないわよね?
今でも一緒に寝てるのに。
(……多分だけど近々、妹か弟が増える気がするのよね。)
あっ!ううん、なんでもないの。
それで、パパが言うには、パパが先に好きになったって言ってたんだけど……
ママにも聞いたら、ママの方が先に好きになったって言ったのよ。
……きっと、同じ時期にお互いを好きになったのね。
いいなあ、わたしもノア様と……
……はいはい、続きね?
ええと確か、顔合わせの時にすぐに、このお家に住まわせたって言ってたはず。
なんの用意もしてなかったママに、家具やドレスをすぐ揃えたんだって!
で、その“お買い物デート”してる時に、パパが「笑顔でいてください」みたいなことを言ったらしいの。
そこで、ママはパパのことが大好きになったんだって。
……会ってすぐのママに、いっぱい色んなものを買ってるんだから、やっぱりパパもママも同時に好き同士になったのよね。
そのあとに、ママの妹がお家に遊びに来たんだって。
この時のことを聞こうとすると、いっつもパパは変な顔になるのよね。
「見た目だけで生きる女性にはなってはいけません」って、
苦いお茶を飲んだ時みたいな顔になるのよ!
……でも、「あの人が来たから、私はもっとノエルを好きになれたんです。」って言うパパの顔はすごかったなあ。
すっごい、嬉しそうな顔だったの。
新人のメイドたちが、顔を真っ赤にして走って行っちゃうくらい。
アメリアも今度、聞いてみたらどう?
きっとパパの嬉しそうな顔が見れるよ。
一緒についてってあげるからさ。
そうしてしばらくして、パパとママは学園に通いだしたのよ。
そう、わたしが今通ってるところね。
本当はパパが一年生で、ママが二年生だったらしいんだけど、
アーリヤ陛下が、パパを特別に二年生にしちゃったらしいの。
二年生にしちゃうなんて……
本当にアーリヤ陛下とパパって、仲良しさんだったのね!
アーリヤ陛下の他に、カイルおじ様……
ほら、アメリアの誕生日に『馬のお人形』をくれた人!
あと、ヘーレー陛下……
もう!アメリアったらヘーレー陛下も忘れちゃった?
お誕生日に『穂先が炎になっているホウキ』をくれた方よ!
それから、ノア様……
……アメリアの誕生日に『氷魔法でできたリボン』を贈ってくれた、麗しのノア様……
(わたしも、パパとママみたいにノア様と愛し愛され……)
……こほん、なんでもないわ。
みんなと仲良しさんだったのよ。
ああ、でも確かパパたちの時に、絵本の『聖女』がいたらしいの。
そうそう、アメリアが寝る前にいつも読んでもらってる『四つの星と闇の聖女』のモデルになった人よ。
絵本だと、『やみの聖女は反省して、じぶんから“黒きしょうき”をじょうかする旅にでました。』ってあったけど、
絵本のモデルになった人なんだから、きっとその人も反省したのよね。
だって――
あら、もうパパとママの話はいいの?
ふふっ、絵本が読みたくなったのね。
いいわ、今日の宿題はもう終わらせちゃったし、今日はわたしが絵本を読んであげる。
さあ、行きましょ!
「ヴィタ、アメリア。おやつを食べましょう!」
「今日は、二人が大好きなアップルパイですよ!」
お父様とお母様が、わたしたちを呼んでいる声が聞こえた。
(――だってお父様もお母様も、今すごい幸せそうなんだもん)
ヴィタは、アメリアに合わせて『パパ』『ママ』呼びしてますが、実際は『お父様』『お母様』呼びに変わりました。
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