オルジュ・ブルックスの今
あっ!いたいた、アメリア!
入学おめでとう!
先輩であり、お姉ちゃんであるジュジュになんでも聞いてね!
入学式が終わったら、今日はもう授業ないから一緒に帰ろっか。
……おや?リアちゃん、なんか元気ない?
うんうん、ヴィタ姉はノア先生のところに行きっぱなしだし、
アレックス兄は『経営を学びたい』って、イグニス王国に留学しちゃったし、
……それにパパもママも、ニコラスとカレンのことで手一杯だもんね。
(ニコラスが産まれてから、間隔開けずにカレンを産んだから『パパに負担かけるな』ってママが、ノア先生に怒られてたよなぁ)
ふっふっふ!
しょうがないなあ、ジュジュお姉ちゃんがリアちゃんを甘やかしちゃうぞ!
え?いらない?
そういう気分じゃない?
もうっ!このかわい子ちゃんめ!
“よしよし”しちゃうもんねー!
今日は何する?お馬さん乗る?剣の素振りする?
あ!昔みたいに絵本読む!?
――あや、全部ジュジュがしたい事だってバレた?
えへへー!
わわわ!怒んないでよー!謝るからー!
えーと、えーと。
……そうだっ!
リアちゃん知ってる?
学園の行事で、競技大会があるじゃん?
種目の一つの『借り物競走』があるんだけど。
お題で『好きな人』を引いて告白したら、両想いになれるっていうジンクス!
それの始まりが、パパとママなんだって!
すごくない!?
おっ!興味出てきちゃったねぇ〜
ジュジュお姉ちゃんと一緒に楽しくおしゃべりしよ!ねっ!
この前、学園の卒業生だっていう『ネリエ』って人が遊びに来てて、教えてくれたんだけど……
え、『ネリエ・スージー』?
たぶん、そんな名前だった気がするけど……
えっ!リアちゃんがよく読んでた『四つの星と闇の聖女』の作者なのっ!?
うそぉ!知ってたらサインもらっとけばよかったあ!
そうそう、その人が「借り物競走で、“好きな人を引くと両想いになれる”という場面を実際に見た世代ですよ!」って言ってて、
「その当時、知らない人はいない“パトリック・ブルックス”様と“ノエル・ブルックス”さん……」って言い出したから、
ジュジュってば、つい「えっ!?パパとママ!?」って、おっきい声出しちゃったの。
そしたら、その人もすごい驚いてたの!
「えっ、お子さんなんですか!?」って聞かれたから、思わず「はいっ!」って返事しちゃった!
それからね、たっくさんお話を聞かせてくれたの!
……そっか!お話を書く人だったから、あんなにお喋りが上手だったんだあ!
ん?はーい、続きね?
パパとママが二年生の時の競技大会での話。
それは、伝説の始まりだった……
最初の種目から事件が起きまくり……今でも語り継がれる二人三脚での『王子の笑顔事件』
なんと、犯人の片方はパパだったらしいの!
犯人ってか、普段から爽やかな笑顔のアーリヤ陛下がパパには、ものすっごい甘い笑顔を向けたってだけの話。
……そんなの王宮行けば、いつでも見れるのにね。
――って言ったら、
ネリエさんは「ああ、今でもなんですね……」って呟いてたけど、なんのことだったんだろう?
まあ、二人三脚で勝ったのはカイルおじちゃんだったらしいんだけど!
その時は、身体強化魔法使ってなくて、一位だったんだって!
ジュジュもカイルおじちゃんみたいに、足が速くなりたいなあ。
おっといけない、ここからが本題。
学園始まって以来のラブロマンっ!
借り物競走に出てたのは……なんと、ママの方だったんだって!
ねー!びっくりだよね!
ジュジュもてっきり、パパが公開告白したのかと思ってたや!
待機テントの中で、借り物競走参加者を見つめるパパ。
きょろきょろと誰かを探す素振りをするママ。
そして二人の視線が――
ぱちり。
――合ったんだって!
お互いに惹かれ合うように、手を伸ばし合う二人。
しかし、二人の行く手を阻む四つの手!
……へ?
“もうちょっと普通に喋って”?
だって、ネリエさんがこうやって話してたんだもん!
それにこういう物語口調の方が、かっこいいじゃん。
ほらほら、続きいくよっ
その四つの手っていうのが、ノア先生、カイルおじちゃん、ヘーレー陛下、そしてアーリヤ陛下だったんだってさ!
しかも、そこまで近い場所にいたわけじゃないのに、パパを見つけてわざわざパパの元に向かったらしいの。
……こうして聞くと……もしかして四人とも、パパのこと好きだったのかな?
――なんてねっ!
アーリヤ陛下はともかく、他の三人は想像つかないなあ。
ああ!続きね、続き。
パパの目の前にあるのは、四人の手。
その光景を見たママは、伸ばした手を諦めかけたみたいなの。
でも、パパは四人を振り切って、ママの元まで駆け寄ったんだって!
そうして、一番にゴールしてお題を確認したら『好きな人』!
ね!ママってたまに、特大の愛をパパにぶつけるからびっくりするよね!
この時も、そうだったみたい。
でも……そのあとの言葉がね……
「私は悲しいです。彼女が、私を――“好きな人”だと思っていることが。」
……パパ何言ってんのーっ!?って話だよね!
ジュジュも思わず「えっ!なんでえ!?」ってネリエさんに聞いちゃったもん!
だけど、次の言葉で「そうきたかーっ!」って感じだったの!
「私は、こんなにも彼女のことを“愛している”のに。」
これには周りの人も立ち上がって拍手したんだって!
……それはさすがに言い過ぎな気はしたけど。
でもでも!止まない拍手や口笛の嵐だったらしいの!
――それで、今日まで新婚さんみたいに熱々なんだから、そりゃ学園のジンクスにもなりますよねって話!
あ、お家着いたね!
ジュジュが先に降りるから、ちょっと待ってね。
……はい、アメリアお手をどうぞ。
ふっふっふ!この時を待っていたのだよ!
リアちゃんと強制手つなぎいー!
このままお家の中入っちゃうもんねー!
そうだ、そろそろニコもカレンもお昼寝してるだろうから、
パパとママに頼んで、借り物競走を再現してもらおうよ!
「こら、ジュジュ!走らない。」
あっ!パパごめんなさーいっ!
「おかえり、二人とも。」
ほら、アメリア!せーのっ
「「ただいまー!」」
子供たちの中で、悪役令嬢特性が高いのは以外にもオルジュだったりします。
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