↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹のヴィアトール  作者: yaoyao
PR
4/9

風が奏でる祝祭都市の街 ソナリア

「ふふふーん、ふふーん♪ ――ねぇアルト、聴こえる? 空気が歌ってるみたい!」


プランタン号の操縦桿をリズミカルに

トントンと叩きながら、

エーテル・ヴィアトールはご機嫌に鼻歌を歌っていた。


アクア・ルミナの遺跡で見つけた『

青銅の羅針盤』に導かれ、白い雲の海を越えること数日。


エーテルたちの前に現れたのは、巨大な盆地に広がる、

おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかな街

――音響の祝祭都市『ソナリア』だった。


この街の建物はすべて、巨大なホルンやチェロ、

オルガンといった楽器の形をしている。


山から吹き下ろす心地よい風が

建物の隙間を通り抜けるたび、

街全体が優しく美しい三重奏(トリオ)のメロディを奏でる、

文字通りの「音楽の街」だ。ここでは耳の大きな兎人(とじん)族や、歌を愛する妖精族が、毎日をまるでお祭りのように陽気に暮らしている。


「確かに綺麗な音色だが……おいエーテル、お前の鼻歌のせいでプランタン号の飛行リズムが狂ってるぞ! ちゃんと真面目に操縦しろ!」


エーテルの膝の上で、不満そうに耳をピクピクと動かしているのは、使い魔のアルトだ。


音の街に敬意を表してか、

今のアルトは『眼鏡をかけた、お洒落な蓄音機(ちくおんき)』の姿に変身している。

人間にはなれない彼だが、

この姿なら「お説教」の声がラッパからよく響く。


「大丈夫だよー。ほら、もうすぐ着陸場――わぁっ、見てアルト! あそこで兎人族の人たちが、おっきなハープを演奏してる! 楽しそう!」


「おい、よそ見をするな! 着陸コースがズレて――って、あっちの巨大オルガンのパイプに向かって突っ込んでるぞ! 速度を落とせーっ!」


「うにゅ!? ブレーキ、ブレーキ……あ、間違えて加速の魔法陣を踏んじゃった!」


「このド天然魔術師――!!」


エーテルが焦ってペダルを踏み込んだ瞬間、

プランタン号はおんぼろの翼を派手に羽ばたかせ、

爆発的な七色の魔力光を吹き出しながら猛加速した。


彼女は世界に数ある魔術師の頂点、

世界を優雅に照らす10人の大天才に与えられる最高峰の称号――『十聖の魔術師』の一人。

その天才的な魔力は、おんぼろ船を恐ろしい速度の弾丸へと変えてしまう。


ズドォォォン……!!


プランタン号は、

ソナリアの象徴である中央広場の超巨大パイプオルガン

――その一番大きな『低音のパイプ』の真っ只中へと、

すっぽりと頭から突っ込んでしまった。


「……ぷはっ。いたたた、ちょっと狭いね、アルト」


「狭いじゃ済まない! 完全に詰まったぞ! しかも、パイプを壊しちまったせいで、街の風のメロディが……!」


アルトの言う通り、プランタン号がパイプを塞いでしまったことで、街を流れる美しい三重奏が「プーーーー……」

という、

マヌケなおならのような低音一色に変わってしまった。


街中の兎人族や妖精族たちが、

一斉に耳を押さえて「なんだこの不協和音は!?」と

広場に集まってくる。


「大変、街の音楽が台無しになっちゃった! よーし、こうなったら私の魔法で、もっと素敵な音楽にしちゃおう!」


「待て、お前は『色彩の魔術師』だろ!? 音楽はどうするんだよ!」


「アルト、大きいラッパになって!」


「ええい、やけくそだ!」


ポンッ、と紫の煙が上がり、

アルトはプランタン号の甲板を埋め尽くすほどの

『巨大な蓄音機のラッパ』へと変身した。


「世界よ、音にも鮮やかな命を――

『響け、七色の交響曲(シンフォニー・カラー)』!」


エーテルが両手を広げて呪文を唱えると、

彼女のピンク色の髪がまばゆく輝いた。


次の瞬間、アルトの巨大なラッパから、

ただの音ではなく、目に見える『色とりどりの光の音符』がドババババッ! と街中に向けて噴き出したのだ。


ドレミの音階に合わせて、赤、青、黄色、緑の光の粒子がソナリアの空を華やかに染め上げていく。


それは、エーテルの色彩魔術によって

「視覚化された音楽」だった。


耳を押さえていた街の人々が、

呆然とその美しさに目を見張る。


「わあ……綺麗……!」


「音が、色になって踊ってる……!」


不協和音は大パニックを引き起こすどころか、

エーテルの天然な思いつきによって、街の歴史上、

最も鮮やかで美しい

「光の演奏会」へと塗り替えられてしまったのだ。


「ふふん、大成功!」


「ふぅ……。心臓に悪いのは相変わらずだが、本当に大したもんだよ、お前は」


ラッパの姿のまま、

アルトは感心したように息を漏らした。


しかし、この光の演奏会が、

街の奥深くに眠る『あるもの』を刺激していることに、

二人はまだ気づいていなかった――。


最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。